AIエージェント通信とは

執筆者

Cole Stryker

Staff Editor, AI Models

IBM Think

AIエージェント・コミュニケーションとは

AIエージェント通信とは、人工知能エージェントが互いに、人間や外部システムと対話して情報を交換し、意思決定を行い、タスクを完了する方法を指します。この通信は、複数AIエージェントが連携するマルチエージェント・システムや、人間とAIのやり取りにおいて特に重要です。

大規模言語モデルLLM):膨大な量のデータでトレーニングされた機械学習アルゴリズムにより、エージェントに推論の能力が付与されます。生成AI機能により、エージェントは知っている情報を他のエンティティーと共有できます。エージェントが相互に通信できるようになると、エージェント・システムはその構成要素の単なる総和以上のものになります。

マルチエージェント・システムは、それぞれが各分野で専門知識を持つ人間のチームのようなものと考えられます。自律的なエージェントは、自身の環境について自分だけが認識できる情報を共有し、グループ全体で理解を共有します。より多くのエージェントが複雑なエージェント・ワークフローを通じて互いに「対話」できるようになると、自律的に調和して連携するエージェントのエコシステム全体が利用可能になることが期待できます。

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AIエージェント・コミュニケーションのメリット

ネットワーク化されたAIエージェントは、共通の目標に向けてシングル・エージェントよりも効率的に連携できます。しかし、行動を調整するためには、効果的にコミュニケーションできる必要があります。

AIエージェント間の効果的な通信は、状況認識の向上と、より多くの情報に基づく意思決定につながります。エージェントがデータを共有すると、リアルタイムの情報に基づいて戦略と対応を改良できます。

複雑なシステムでは、分散型AIが複数のエージェントにタスクを分割できるため、問題解決の迅速化につながります。単一のAIがすべてを処理するのではなく、複数のエージェントが問題のさまざまな側面に特化して、その結果を伝えることができます。

通信するAIエージェントは互いに学習できるため、時間の経過とともに適応性が向上します。洞察を交換することで、共有された経験に基づいて自分の行動を改善します。マルチエージェントAIシステムは効率的に拡張できるため、より大量のデータやより複雑なタスクを処理することもできます。

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AIエージェント・コミュニケーションの種類

AIエージェントは、その役割、環境、目標に応じてさまざまな方法で通信します。通信には明示的または暗黙的なものがあり、直接メッセージを交換したり行動を間接的に観察したりします。

一部のシステムは集中管理に依存しており、単一のAIがデータを処理して他のエージェントに配布します。また、AIエージェントがピアツーピアで対話する分散通信を使用することもあります。

エージェント間のコミュニケーション

ほとんどのエージェントはLLMを利用しているため、人間の自然言語で相互に会話することがよくあります。エージェントは、リソースを共有するだけでなく、意図を示し、階層内で調整し、リソースの割り当てについて交渉できる必要があります。

研究者たちは、エージェントが精度の低下を最小限に抑えながら、より迅速に通信できるようにすることを目的とした、Microsoftの「DroidSeek」などのエージェント間通信のより効率的なモードの作成に取り組んでいます1。エージェント通信で最も使用されている2つのプロトコルは、KQML(Knowledge Query and Manipulation Language)とFIPA-ACL(Foundation for Intelligent Physical Agents – Agent Communication Language)です2

米国国防高等研究計画局は1990年代にKQMLを開発し、高度なAIエージェントが実現可能になるずっと前にエージェント間通信の基礎を築きました。FIPAの開発者は、この作業をベースにすぐに改良を加え、標準化と意味の明確化に関する改善を行いました。

AIエージェントの多くは、クラウド・コンピューティングやモノのインターネット(IoT)デバイスを利用してリアルタイムのデータを交換します。クラウドAIシステムは大規模なデータ・セットを保管、取得、分析し、IoTに接続されたデバイスはネットワーク間でセンサー情報を共有します。

人間とAIのコミュニケーション

AIエージェントは、自然言語処理(NLP)、音声認識、視覚インターフェースを使用して人間とコミュニケーションをとることもできます。OpenAIのChatGPT、AppleのSiri、AmazonのAlexaなどのバーチャル・アシスタントは、NLPを使用して人間のクエリーを解釈し、意味のある応答を生成します。

カスタマー・サポートでは、AIチャットボットがユーザーの問い合わせを理解して応答することで自動サポートを提供します。一部のAIモデルでは、テキスト、音声、画像を組み合わせてインタラクションを強化するマルチモーダル通信も組み込まれています。

AIエージェント・コミュニケーションの課題

AIエージェントは、精度、効率、セキュリティー、拡張性に影響を与える可能性のあるいくつかの課題に直面しています。

標準化されたプロトコルの欠如
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AIエージェントは異なるプラットフォームで動作することが多く、それぞれが独自のプロトコル、データ形式、通信言語を使用しています。プロトコルには、メッセージの構文と意味に関する情報が含まれています。プロトコルは、人間のプログラマーによって事前に定義されるか、またはエージェント間の通信から自然に発生する自発的なものとして現れる可能性があります。

標準化されたメッセージング・フレームワークがないと、エージェントがお互いのメッセージを解釈して応答するのが難しく、非効率を引き起こす可能性があります。例えば、スマート・シティーでは、交通管理システムと自動運転車が異なる通信プロトコルを使用しているため、シームレスなデータ共有や調整ができなくなっている場合があります。

曖昧さと誤解

AIエージェントは情報を正確に処理する必要がありますが、メッセージの解釈の曖昧さには依然として課題があります。エージェントがメッセージを誤って解釈すると、誤った行動につながる可能性があります。カスタマー・サービス用チャットボットでは、「注文を変更したい」などの曖昧なユーザー・クエリーが誤解され、誤った変更やキャンセルにつながる可能性があります。

遅延

多くのAIユースケースではリアルタイム通信が必要ですが、ネットワークレイテンシーや計算上の制約により応答時間が遅くなる可能性があります。これは、瞬時の意思決定を必要とする自律システムでは特に問題となります。自動運転車では、AIエージェントはカメラ、センサー、GPSからのデータを即座に処理する必要があります。データ交換に遅延が生じると、ナビゲーションが不適切な決定を下す可能性があります。

セキュリティーとプライバシー

ネットワーク経由で通信するAIエージェントは、サイバー攻撃、データ侵害、敵対的な操作に対して脆弱です。悪意のある攻撃者がAIの通信を傍受または改ざんする可能性があり、誤った意思決定やシステム障害につながる可能性があります。

認証、安全なエンドポイント、機密データの適切な取り扱いが最も重要です。例えば、医療AIシステムでは、攻撃者がAIエージェント間で交換された診断データを変更した場合、誤った治療の推奨につながる可能性があります。

拡張性

通信システム内のAIエージェントの数が増えると、通信のオーバーヘッドが増加し、拡張性の課題につながります。エージェントは、リソースを過負荷にすることなく、大規模なインタラクションを効率的に管理する必要があります。

金融市場では、何千ものAIチャットボットが通信し、市場の変化に対応しています。一度にデータを交換するチャットボットが多すぎると、ネットワークの輻輳が発生する可能性があります。

適応性

AIエージェントは、リアルタイムの情報更新が必要な動的な環境で効果的にコミュニケーションする必要があります。AIエージェントが新しい状況に適応できない場合、予期せぬ変化により意思決定プロセスが中断される可能性があります。

災害対応では、AI、自律型ドローン、ロボットが、建物の倒壊やネットワーク信号の損失などの予測不可能な障害に基づいて戦略を継続的に調整する必要があります。

人間の言語理解

AIエージェントが人間と対話する際、言語理解、感情的文脈、推論スタイルの違いにより、コミュニケーション上の課題が生じます。AIは、明確な応答を提供しながら、人間の意図を正しく解釈する必要があります。

バーチャル・アシスタントでは、皮肉や地域の方言、暗黙の要求を理解することが依然として課題です。例えば、ユーザーが「ここはものすごく寒い」と言った場合でも、AIアシスタントはサーモスタットを上げてほしいと思っていることを認識しない可能性があります。

脚注

1 『Droidspeak:KV Cache Sharing for Cross-LLM Communication and Multi-LLM Serving』、Liu、シカゴ大学、Microsoft、2024年12月19日。

2 『The current landscape of Agent Communication Languages』、Labrou、メリーランド大学、1999年3月。

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