ACCES Employment社は、多様な背景を持つ求職者と主要な雇用主とをつなげる非営利機関です。ACCES社はグレーター・トロント・エリアの7つの地域と、オンライン利用でカナダ全土からの応募に対応し、毎年2,800人以上の雇用主と4万人以上の求職者の支援を行っています。中でも、国際的な訓練を受けたプロフェッショナルや、カナダに新しく入国する人々に注力しています。またACCES社は、カナダへの入国を承認された世界中の人々に対して到着前のサービスも提供しています。

他の多くの非営利団体や雇用サービス部門と同様に、ACCES社はデジタル変革を戦略的優先事項に位置付けています。対面による対話をオンライン・ツールで補完することで、企業は望ましいチャネルを通じて顧客にリーチできるようになりました。また入国前の移民にサポートと準備を提供するには、デジタル・サービスが不可欠です。デジタル・サービスによって、機関のスタッフの増員や負担を増加することなく、キャパシティーを増やすことができます。

「デジタル・テクノロジーの導入は、パンデミック以前からACCES社の重要な戦略的優先事項でしたが、その重要度と緊急度は、より一層増しています」と、ACCES社のプレジデント兼CEOのAllison Pond氏は言います。

この変革ジャーニーは2016年に本格的に始まり、Accenture社による大きな技術助成金がACCES社のデジタル・サービスのモダナイズに寄与しました。新しいオンライン学習ハブや、さまざまな仮想サービスの開発、さらにSalesforce CRMの拡張は、素晴らしい結果をもたらしました。ACCES社の利用者数は、2016年の16,000人から2018年の36,000人と、2年間で2倍以上になりました。

この劇的な増加を踏まえて、ACCES社は次の開発段階に入ることとなりました。それは、顧客サービスのジャーニーを加速させるために、テクノロジーの活用によって増大する顧客を効率的に処理する方法を確立することです。「私たちは、ここでも引き続きテクノロジーの活用によってプロセスを合理化し、当社のサービスを求めるすべての人たちに応えられるようにしたいと考えていました」と、サービス・アンド・ストラテジック・イニシアチブ担当の上級副社長、Manjeet Dhiman氏は言います。「そこで、AIの導入が、私たちの組織に価値をもたらしてくれるのではないかと考えました」

IBM Watsonの導入で、VERA仮想アシスタントは1カ月に

1,800

以上の会話が可能に

VERAのインテリジェンス、効率性、可用性により、初年度に

500

時間以上の労働時間を短縮

同社にとって特に問題となっていたのは、増加する一方の日常業務と、求職者からの絶え間ない問い合わせに従業員が忙殺されていることでした。具体的には、同社の所在地、カウンセラーの空き具合、予約の必要の有無、このプログラムの適格基準、求職とイベント登録の支援、etc。このような情報はWebサイトに記載されていますが、直接聞いた方が早いという人も多くいます。そこで、多くの人員を割くことなく情報を対話式に提供することが課題でした。

ACCES社は各種の問い合わせをデジタル処理する最初の窓口として、AIを活用した仮想エージェントや会話型アシスタントの導入を検討しました。そこで2019年に、ACCES社は技術開発プロジェクトへの2度目の助成金を求める提案書をAccenture社に提出し、承認されました。このプロジェクトを進める中で、ACCES社は開発ベンダーにRFPを発行しました。その内容は、Webサイトの訪問者がWebサイト上で直接対応できる仮想アシスタントの開発でした。この仮想アシスタント開発の目的は、FAQに24時間365日回答することで従業員を雑務から解放し、ユーザーのイベント登録を支援し、従業員が対応する求職者のリードを作成することで、従業員の何百時間もの労働時間を削減することでした。

ベンダー評価の結果、ACCES社のチームはデータ・サイエンス、機械学習、およびAIのエキスパートであるIBMのビジネス・パートナーであるNewcomp Analytics社を選択しました。Newcomp社の強みについて、Dhiman氏は「IBMのエンタープライズ向けAIソリューションには非常に気に入った点がいくつかありましたし、Newcomp社はこのようなツールの実装に関する専門性という点で突出していました」と語ります。またNewcomp社は、プロジェクトの理解度や、実証済みの実装アクセラレーターに関する専門知識、ACCES社のスタッフに対するAI関連の指導、そして将来的な取り組みをサポートする能力において、ACCESチームに好印象を与えました。

パンデミックの年におけるAIの発展

ACCES社は、開発支援とAIサポートをNewcomp社に依頼しました。ACCES社とNewcomp社のチームは各種の要件を元に、アジャイルで反復型のプロセスを採用して仮想エージェントを開発しました。ACCES社のスタッフはビジネスの知識で、Newcomp社のスタッフはテクノロジーの専門知識で、それぞれ力を発揮しました。パンデミック期間中は完全なリモート作業に対応するようにワークフローやAIのダイアログにかなりの変更を加える必要があったため、反復型開発がプロジェクトの遂行に役立ちました。「パンデミックの期間中、私たちは対面によるサービスの提供を中止しなければなりませんでした」と、Dhiman氏は説明します。「その結果として、AI開発プロセスについても多くの調整を行う必要がありました」

このソリューションは、AI搭載の会話型インターフェースを提供するIBM Watson® Assistantソフトウェアと、ユーザーの質問に対して非構造化コンテンツをリトリーブするインテリジェントな検索およびテキスト分析エンジンであるIBM Watson Discoveryソリューションを採用しています。いずれのAIサービスもIBM Cloud®上で実行されます。これにより開発チームには、エージェントを稼働させる各種のサービスの統合ビューが提供されるため、サービスの現在の状態と使用状況の履歴を確認できます。これらのビューを見ながら、AI変革を通じてソリューションを改善、最適化する方法について、議論を促進することができます。

開発者はさらに、アシスタントをSalesforceに統合しました。この統合により、ユーザーのプロフィールがACCES社のスタッフによるフォローアップの手掛かりとしてCRMツールに自動的に取り込まれます。

コンピューターに向かう開発者

開発が完了すると、ACCES社はエージェントに、Virtual Employment and Resource Attendant(仮想雇用およびリソース・アテンダント)を略して、VERAという名前を付けました。これは、カナダの非営利雇用サービス部門がAIアシスタントを導入する先駆けとなりました。

VERAは複数のサービス・エリアで1日24時間、週に7日、人間のオペレーターの介入を必要とせずに以下の対応を行います。

  • 求職者、雇用主、およびボランティアからのFAQへの回答
  • 特定のACCESプログラムおよびサービスへのユーザーの紹介
  • ユーザーの興味が合致するワークショップやイベントへのユーザー登録の促進
  • レジュメのテンプレート、記事、動画、Webコンテンツなど、求職リソースへの直接リンク
  • 求職者へのEメール・フローの自動化
  • 登録しているお客様のサポート
  • スタッフがリードとして追跡するユーザー・プロフィールをSalesforce CRMに自動的に入力

VERAはさまざまなWebページに常駐し、7つの会話ブランチに対応し、100を超えるユーザーの意図を理解し、Watson Discoveryリポジトリーには2,000以上の文書を保有しています。各プログラム・ページには、このソリューションのカスタム・バージョンがポップアップ表示され、情報セッションへの登録やプログラム・チームからのコールバックをリクエストするためのクイック・リンクがご利用になれます。このようにして、このソリューションはプログラムでの仮想会話を、人間のエージェントとの会話につなげています。

「ユーザーが特定のプログラムの詳細を知りたい場合、そのブランチまで対話を進めて行くと、ユーザーの言語スキルや経験レベルなどに関する質問をされることがあります」と、 ACCES社のデジタル・サービスのディレクター、Aimee Holmes氏は言います。もう1つのブランチは、ユーザーが適切なプログラムを見つけるのに役立ちます。既存のお客様は独自のブランチを持ち、ここから各お客様の雇用コンサルタントとのご相談や、イベントへの登録、コールバックのスケジュールができます。最後に、ACCES社のサービスの利用を検討している事業主向けのブランチもあります。

VERAには、登録するつもりはないが求職活動のサポートが欲しい、というお試しユーザー向けのリソースもあります。履歴書の書き方チュートリアルや面接の際のヒントなどを、VERAから紹介しています。これらの資料の最後には「さらに詳しく知りたい方は、カウンセラーに個別にご相談いただけます」と記載されていることがあります。これはACCES Employment社の信頼性を高める好循環の一つです。

求職者を支援するためにキャパシティーを増加

ACCES社とNewcomp社のチームは2020年8月にベータ版を完成させ、2020年10月にテストとソフト・ローンチを終えた後、2021年1月にWebサイトに100%統合しました。それ以降の成果は、まさに素晴らしいものです。

VERAでは毎月、1,800件の会話が行われます。これは、プログラムやイベントの登録への誘導に大きく寄与し、75%のユーザー満足度を実現しました。「当社はWebサイトの刷新と合理化に併せてVERAを導入し、お客様にまったく新しい体験をお届けしています。これまで以上にインタラクティブで、簡単に情報を見つけられるようになりました」と、Dhiman氏は言います。

さまざまな作業から解放され、より重要な業務に集中できるようになったため、ACCES社の従業員はVERAを高く評価しています。一部のスタッフは、イベントを登録するよう、お客様にVERAを紹介しています。およそ100名の雇用主が、VERAを通じてACCES社とつながりました。Salesforceとの統合により、デジタル照会をお客様へと変換させるプロセスが合理化されました。

ACCES社の対面のワークフローと調和させるために、VERAはユーザーに連絡先情報と保有資格について確認しています。この情報によりコンサルタントはユーザーの全体像を理解できるため、ユーザーとの会話を継続する材料となります。この情報は使い慣れたSalesforce環境に表示されるため、円滑に見込み客や顧客との関係を管理できます。実際、スタッフはVERAの見込み客の約4分の1を顧客にできました。これはパンデミックの状況下では素晴らしい成果です。

「VERAは私たちが待ち望んでいた最高のタイミングで、新しい形のサービスを生み出しました」とHolmes氏は言います。ACCESチームの計算によると、このエージェントにより1年未満で従業員の労働時間をおよそ約500時間削減することができました。

開発チームは、正しくない回答をモニターすることにより、引き続きVERAの正確性を向上させています。そして、ワクチン接種が進み、パンデミックによるさまざまな制限が解除され次第、ACCES社はオンライン・サービスのメリットと対面による対話を組み合わせた、ハイブリッド形式の運用モデルを採用する予定です。オフィスに人が戻り、求職者が増えれば、ACCES社はそのプロセスを改定し、VERAが提供する情報も改定されるでしょう。このようにして、VERAは運用上の変更に合わせて調整します。

Newcompチームは今後もVERAをサポートし、ACCES社の担当者がAIに関する専門知識を獲得できるように支援します。このコラボレーションは既に、AIを他のサービス領域に注入するアイデアを生み出しています。例えば、VERAやAIを利用して、よりインタラクティブで魅力的なe-ラーニングを作成することができるかもしれません。「私たちは、AIや他のテクノロジーを活用する範囲をどんどん拡大して、当社のサービスの構築とモダナイズを継続したいと考えています」と、Dhiman氏は語ります。

「VERAの導入は、当社の雇用サービス提供には非常に重要です。そして、当社のサービスの需要拡大への対応能力も大幅に向上させます」と、ACCES社のプレジデント兼CEOのPond氏は言います。「私たちは、AIが我々の組織やセクター全体にもたらす新しい可能性に大きな期待を寄せています」

ソリューション

ACCES Employment社のロゴ

ACCES Employment社について

1986年設立のACCES社(外部リンク)は、求職者と、求職者の資格と経験に合致する職務を募集する雇用主とをつなげる非営利機関です。カナダのグレーター・トロントの7カ所とオンラインで、年間4万人近くの求職者にサービスを提供しています。ACCES社のビジョンは、カナダの住民の多様性、スキル、および経験を反映した、完全に包括的な労働力です。

Newcomp社のロゴ

Newcomp Analytics社について

With Watson®プログラムのメンバーであるIBMビジネス・パートナー、Newcomp社(外部リンク)は、銀行、教育、医療、その他の業界のお客様に、アナリティクスを活用した強力な洞察を獲得できるようサポートを提供しています。これまでに北米の400社を超えるエンタープライズに、各社が保有するデータを有効活用するための適切なツール、ソフトウェア、専門知識を提供してきました。カナダに拠点を置くNewcomp社は1991年に設立され、従業員はおよそ75人です。

With Watsonのロゴ

With Watsonについて

With Watsonプログラムは、Watsonテクノロジーを自社のオファリングに組み込んで提供している組織に、独占的なブランド、マーケティング、およびイネーブルメント・リソースを提供する、お客様を成功に導くためのグローバル・プログラムです。

© Copyright IBM Corporation 2021. 日本アイ・ビー・エム株式会社 〒103-8510 東京都中央区日本橋箱崎町19-21

2021年12月

IBM、IBMロゴ、ibm.com、IBM Cloud、IBM Watson、およびWith Watsonは、米国やその他の国におけるInternational Business Machines Corporationの商標または登録商標です。 他の製品名およびサービス名等は、それぞれIBMまたは各社の商標である場合があります。現時点でのIBMの商標リストについては、Webサイト "Copyright and trademark information"(https://www.ibm.com/legal/copytrade)をご覧ください。

本資料は最初の発行日の時点で得られるものであり、随時、IBMによって変更される場合があります。すべての製品が、IBMが営業を行っているすべての国において利用可能ということではありません。

記載されている性能データとお客様事例は、例として示す目的でのみ提供されています。実際の結果は特定の構成や稼働条件によって異なります。本書に掲載されている情報は現状のまま提供され、第三者の権利の不侵害の保証、商品性の保証、特定目的適合性の保証および法律上の瑕疵担保責任を含むすべての明示もしくは黙示の保証責任なしで提供されています。IBM製品は、IBM所定の契約書の条項に基づき保証されます。