全体レポート

信頼による卓越
AI/Data包摂時代のリーダーシップ
本年で20回目となるIBM経営層スタディでは、デジタル時代において競争優位の源泉となるデータと、企業が構築すべき「3つの信頼」との間に存在する関係性が明らかになった。特に、データ活用の「先導者」がいかに信頼を構築し、かつ梃子として、独自の優位性を獲得しているかに着目し、デジタル時代の卓越に向けたステップやアクションを調査結果に基づき整理した。
分析の観点
経営者13,484名の方々のご回答結果を分析し、デジタル世界の先導者たる回答者の方々と、始動者の方々とを比較することで、デジタル時代にどのような経営のリーダーシップが求めらているのかを洞察した。
先導者:調査対象の9%を占める。信頼を軸として、事業戦略とデータ戦略の高度な融合を実現している。データから高い価値を得ることを目標とし、データをふんだんに業務に活用する企業文化を醸成している。売上成長率と利益率において、競合他社を凌駕している。
始動者:調査対象の25%。事業戦略とデータ戦略の融合に取り組み始めたばかりで、まだデータ駆動型の企業文化は醸成されていない。データからの価値創出は限定的な領域にとどまっている。
「顧客は、銀行にデータに基づくパーソナライズされたサービスを期待している。つまり、自分を深く理解してくれということだ。しかし、企業への信頼が揺らぐ昨今、顧客からどこまで情報を共有してもらえるだろうか」
CEO 銀行
オーストラリア
かつてから顧客が企業や組織に対して抱いていた「信頼」。たとえばブランドイメージや組織イメージといった種類の信頼は、その重要性を相対的に失いつつある。これからのデジタルディスラプションの地平において、顧客が特に重要視するようになる「信頼」とは、顧客自身のデータ(個人情報)の取り扱いに関するものである。
近年、顧客は、従来よりも自らの個人情報を企業に対して積極的に開示しなくなっている一方で、企業に対しては情報取り扱いに関する透明性や説明責任を求めるようになってきている。つまり、企業には新しい種類の信頼が求められ、その信頼は、企業にとっての新たな優位性を構築するものになるだろう。
ステップ 1
顧客からの信頼を獲得する。顧客データの取扱いに関する透明性を確保し、アカウンタビリティー(説明責任)を果たす。また、顧客データによって創造される価値を、顧客と企業の双方が享受する仕組みを整える。
ステップ 2
顧客からの信頼獲得に成功した企業は、顧客との互酬関係に立脚し、自社サービスを発展させていく。そうすることで、顧客から共有されるデータの拡大を図るとともに、自らもそのようなデータ活用方法への習熟を図る。
ステップ 3
顧客からの信頼に加え、自社事業におけるデータ活用方法に対する信頼をもって、自らのビジネスモデル革新を推進する。
「AIの広範な活用のためには、それによってもたらされる解に一切の偏りがなく、明快に説明できる根拠が不可欠である。それを抜きにした活用には必ず限界が来るので、私たちはAI利用における倫理規定や原理原則の整備を社内で進めている」
ソニー株式会社
執行役 常務 人事、総務担当
安部和志
データは、高度なアナリティクスやAIと組み合わせることで、優れた意思決定のための洞察抽出や、意思決定そのものの自動化を実現することができる。ただし、その実現には、自社が保有するデータに対する企業としての深い信頼が前提となる。データに基づく競争優位の確立に向け、企業はデータの質と系譜を把握し、アルゴリズムよるバイアスを排除したうえで、エビデンスに基づく解を導き出す能力を獲得しなければならない。
しかし、まずはデータと共に考え、行動する企業文化を醸成する必要があるだろう。
ステップ 1
意思決定の質とスピードを高めるために、データを活用する企業文化を醸成する。社員に適切な分析スキルやツールを提供する。
ステップ 2
データを文脈の中で理解し、将来に向けた新たな可能性を見出す目的で、AI等のデジタル ・テクノロジーを活用する。
ステップ 3
堅牢なガバナンスを構築したうえで、構造化された、リアルタイムで正確なデータを活用できるようになると、データそのものへの信頼が醸成される。
「都市のさらなる成長のためには、データ駆動型ビジネスを振興し、国際的な都市間競争において主導的な立場を取ることが肝要となる。そのために、PPPプラットフォームの構築を通じたオープンで廉価なデータ提供により、スタートアップや外資系企業などの新規参入を支援している。」
松下隆弘
戦略政策情報推進本部長、東京都庁、日本
経営者の多くは、エコシステム内でのデータ流通・共有が莫大な価値を創出する可能性を認識している。一方、データを占有することで独自の優位性を確保できることも、また事実である。
どのデータをエコシステム内のパートナーと共有し、どのデータを自社で占有するのか。戦略的に自社の優位性を確保しつつも、エコシステム全体としての競争力向上も図っていかなくてはならない。
このような経営意思決定の舵取りにおいても、先導者は一歩先を進んでいる。
ステップ 1
どのデータを自社の「競争」優位性の源泉として専有し、どのデータをエコシステムの「共創」優位性のためにパートナーと共有すべきかを判断する。
ステップ 2
デジタル・ビジネス・プラットフォームには、データ共有のための新たな規範や方法論が必要となることを認識したうえで、信頼できるエコシステム・パートナーとのデータ共有を進める。
ステップ 3
自社データのマネタイズ戦略を体系化し、ビジネスモデルに適用する。データの共有と流通がもたらす価値を定量化することで、連携すべきエコシステム・パートナーを評価・選定する。
顧客が公平だと認めるデータの扱いを学び、信頼を獲得または回復する
データ提供の見返りとして、顧客にとって価値あるものを提供する
データ・プライバシーに関するポリシーや取り組みを強化する
データを自社にとって戦略的なアセットと位置付ける
あらゆる顧客接点でデータを用いたパーソナライゼーションを実現しエンゲージメントを向上させる
データに基づく意思決定を経営層の最重要事項に据える
データを解放し力を与える
データやテクノロジー活用がもたらす可能性を追求する
アナリティクス、AIモデル、データ・プロセスについて透明性を確保する
データ・ソースの範囲や多様性の拡大を競争優位につなげる
顧客、市場、および競合他社に対するより深い洞察を探求し続ける
共有すべきデータと占有すべきデータを特定する
自社を越えて共有・流通するデータに対して、安全性、透明性、および説明責任を果たす
それぞれの役割を認識し、緊密なコラボレーションを通じて自らが獲得できる価値を理解する
自社データを最も貴重な資産の1つとして認識し、マネタイズ戦略を策定する
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