ソフトウェア・テストは、ソフトウェア製品やアプリケーションが、特定の要件に従って正しく、安全に、かつ効率的に機能することを評価・検証するプロセスです。
堅固なテストを行う主な利点は、バグを特定し性能を改善することで、高品質のソフトウェアを提供できることです。
現在、ソフトウェア・テストはアジャイル変革、DevOps、継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)パイプラインによって推進され、最新の開発プラクティスに深く組み込まれています。テストはもはやリリース前の最終工程ではありません。設計・計画段階から始まり、デプロイ後も継続します。
このテスト・アプローチにより、リリースの迅速化を支援し、変化の激しいITインフラストラクチャー環境でのリスクを低減できます。開発サイクルの初期段階からテストを行うシフトレフト・テストのような実践は、チームが課題をより早く見つけるのに役立ちます。本番環境での監視と検証に焦点を当てるシフトライト・テストは、実運用の利用状況に迅速に適応することを可能にします。
最新のソフトウェア・テスト戦略は、自動化、人工知能(AI)、クラウドネイティブなアーキテクチャー(たとえばマイクロサービス)の進歩と歩調を合わせて進化し続けています。ソフトウェアの複雑化とリリース・サイクルの加速が進むなか、インテリジェント・テストは一層普及しています。
Fortune Business Insights の報告によれば、2024年のAI対応テストの世界市場規模は8億5670万米ドルでした。2025年の10億1090万米ドルから2032年には38億2400万米ドルへと成長すると予測され、予測期間の年平均成長率(CAGR)は20.9%です。1
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ソフトウェア・テストは、第二次世界大戦直後に登場したソフトウェア工学の発展とともに始まりました。コンピューター科学者のTom Kilburn 氏は、世界初のソフトウェアの作者として知られており、1948年6月21日に英国のマンチェスター大学で公開しました。これは、基本的な機械語命令によって数値計算を行うものでした。
ソフトウェア開発の黎明期において主なテスト方法はデバッグであり、その状況はその後20年続きました。1980年代になると、開発チームはソフトウェアバグの特定と修正に留まらず、より幅広い視点を持つようになりました。より広範な機能と信頼性を確保するために、実際の環境でアプリケーションをテストするようになったのです。
この転換により、テストをより広い視点で捉え、品質保証を重要な焦点として重視する考え方が始まりました。テストは、チームが高品質でコスト効率とセキュリティーに優れたソフトウェアを作成するための体系的なプロセスであるソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の不可欠な一部となりました。
1990年代から2000年代初頭にかけては、自動テストが台頭し、テスト駆動開発(TDD)のような新しい実践も広がりました。同時期には、ソフトウェアをモジュールに構成するオブジェクト指向プログラミング(OOP)などのモジュール化手法も普及しました。このモジュール設計により、ユニット・テストと呼ばれる小さなコード単位に対する集中的なテストを書きやすくなりました。さらに、モバイルやWebアプリケーションの拡大に伴い、パフォーマンス、ユーザビリティー、セキュリティー・テストなどの新たなテスト戦略が求められるようになりました。
過去10年では、アジャイル手法やDevOpsの進展により、チームのソフトウェアの構築と提供の方法が根本的に変わりました。テストは継続的かつ自動化され、開発からデプロイに至るまでのあらゆるフェーズに統合されています。現在、多くの企業が、独自およびオープンソースの自動化ツールや継続的テスト・プラットフォーム(例:Katalon Studio、Playwright、Selenium)を活用して品質保証を実現しています。これらのツールは、速度や拡張性の向上、およびお客様からの信頼の獲得にも貢献します。
相互に接続されている今日の世界では、ソフトウェアの欠陥がもたらす影響はかつてないほど深刻になっています。リリースの遅れやソフトウェアにおける欠陥はブランドを毀損し、顧客の不満や不満を引き起こす可能性があります。最悪の場合、バグや欠陥により、連携先のシステムの機能が低下したり、重大な誤動作が発生する可能性があります。
2024年7月に発生したDelta Air Lines(デルタ航空)に関する事例を考えてみましょう。サイバーセキュリティー企業のCrowdStrike 社が提供した欠陥のあるソフトウェア更新により、Microsoft Windows プラットフォーム全体で広範なシステム障害が発生しました。デルタ航空は米国内の航空会社の中で最も深刻な運航影響を受け、数千便の欠航と5億米ドル超の損失が推定されています。2この出来事は、特にサードパーティー製ソフトウェアをミッションクリティカルなシステムに統合する際に、徹底したテストが極めて重要であることを示しています。
テスト自体にはコストが発生しますが、効果的なテスト技法とQAプロセスを実装することで、開発およびサポートの年間費用を何百万米ドルも節減できる可能性があります。初期段階のソフトウェア・テストは、製品が市場に出る前に問題を特定します。開発チームがテストのフィードバックを早く受け取るほど、重大な問題に迅速に対処できます。
十分なテスト時間を確保できる開発プロセスは、ソフトウェアの信頼性を高め、エラーの少ない高品質なアプリケーションの提供につながります。お客様の期待に合致し、あるいはそれを上回るシステムは、売上の拡大、市場シェアの向上、そしてユーザー・エクスペリエンスの改善をもたらします。
ソフトウェア・テストは、主に2つのカテゴリに分類されます。
手動テストは、自動化ツールを使用せず、テスト・ケースをテスト担当者が手動で実行するプロセスです。テスト担当者は、ボタンをクリックしたり、テキストを入力したり、出力結果を検証したり、エンドユーザーがソフトウェアをどのように操作するかシミュレーションします。
手動テストは通常、探索的テストやユーザビリティー・テスト、そして自動化する必要がないぐらいアプリケーションが小さい場合に行われます。
自動テストでは、スクリプトとツールを使用して、ソフトウェアのテストを自動的に実行します。この基本的な方法は、テストタスクを反復して行う場合や、同じテストを複数回実行する必要がある大規模なシステムに有用です。
自動テストを活用することで、ソフトウェアに対して迅速かつ一貫性のあるテストを実施できます。また、人為的なエラーが減り、長期的なテスト効率が向上します。
一般に、ソフトウェア・テストはソフトウェア開発ライフサイクルの中で4つのレベル(または段階)で実施され、それぞれがアプリケーションの特定の部分に焦点を当てます。
単体テストは、各ソフトウェア・ユニットが意図したとおりに動作することを検証します。このユニットとは、アプリケーションの中のテスト可能な最小コンポーネントを意味します。
統合テストは、ソフトウェア・コンポーネントまたは機能が連携して有効に動作することを確認します。
システム・テストは、システム全体のエンドツーエンドの挙動を検証します。この段階には、機能テスト、非機能テスト、インターフェース・テスト、ストレス・テスト、リカバリー・テストが含まれます。
受け入れテストでは、システム全体が意図したとおりに動作するかを検証します。
ソフトウェアテストには、前述したレベルに該当するさまざまなタイプがあり、一般的には次の2つのカテゴリに分類できます。
以下は、各カテゴリに含まれる一般的なテスト種別の一覧です。
効果的なソフトウェア・テストは、ライフサイクル全体での検証に必要な範囲、アプローチ、リソースを定義した堅実なテスト計画から始まります。
複雑な環境でスケールし適応するために、テスト・チームは、自動化を支え、CI/CDパイプラインと統合し、プラットフォームや環境をまたいだ継続的な検証を可能にする堅牢なテスト・フレームワークに依存します。これらのフレームワークは、テスト設計、テスト実行、結果分析など、あらゆるフェーズを支援し、課題の早期検知、リスク低減、リリースまでの時間短縮に寄与します。また、コード・レビューも品質保証において重要な役割を果たし、テスト開始前の段階で欠陥の早期発見やコーディング標準の順守を徹底できます。
テストの実施には時間を要します。小規模なシステムでは、手動テストまたはアドホック・テストを行うだけで十分な場合がありますが、大規模なシステムでは、タスクを自動化するために複数のツールが使用されることが一般的です。自動テストは、チームがさまざまなシナリオを実装し、差別化要因(コンポーネントをクラウド環境に移行させるなど)をテストし、何が機能し、何が機能しないのかに関するフィードバックを迅速に得るのに役立ちます。
堅実なテスト・アプローチは、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)、ユーザー・インターフェース(UI)、システムの各レベルを包含します。テストは自動化し、できるだけ早期に実行するほど効果的です。社内でテスト自動化ツールを構築するチームもありますが、ベンダーのソリューションには、次のような主要なテスト管理作業を効率化する機能が備わっています。
ソフトウェア開発のスピードが上がり、システムがますます複雑になるにつれて、ソフトウェア・テストも連動して進化を続けています。今後のテストの方向性を形作る主なトレンドは次のとおりです。
モノのインターネット(IoT)の急速な拡大は、実環境での接続性、セキュリティー、パフォーマンスのテストに独自の課題をもたらしています。さらに、より多くのデバイスがエッジコンピューティングに依存するにつれて、テスト・ツールは多様な環境をシミュレーションし、さまざまなネットワーク条件下でもソフトウェアが確実に動作できるようにする必要があります。
AIを搭載した自己修復システムは、軽微な問題を検知して自動的に修正しすることでダウンタイムを削減します。予測テストは機械学習 (ML)を活用して実行され、チームは潜在的な障害を予測し、本番環境に障害が発生する前に対処することができるため、ソフトウェアはより堅牢で信頼性の高いものとなります。
生成AIは、ソフトウェア・テストにおける強力なツールとして台頭しています。高度な機械学習手法を用いてソフトウェアの挙動に基づく動的なテスト・ケースを生成し、人間のテスターが見落としがちな新しいシナリオを自動的に作成することで、テスト網羅性とソフトウェアの信頼性を高めます。
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