ソフトウェアテストとは

ノートPCで協働してコーディングする2人の開発者。

執筆者

Stephanie Susnjara

Staff Writer

IBM Think

Ian Smalley

Staff Editor

IBM Think

ソフトウェアテストとは

ソフトウェア・テストは、ソフトウェア製品やアプリケーションが、特定の要件に従って正しく、安全に、かつ効率的に機能することを評価・検証するプロセスです。

堅固なテストを行う主な利点は、バグを特定し性能を改善することで、高品質のソフトウェアを提供できることです。

現在、ソフトウェア・テストはアジャイル変革、DevOps継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)パイプラインによって推進され、最新の開発プラクティスに深く組み込まれています。テストはもはやリリース前の最終工程ではありません。設計・計画段階から始まり、デプロイ後も継続します。

このテスト・アプローチにより、リリースの迅速化を支援し、変化の激しいITインフラストラクチャー環境でのリスクを低減できます。開発サイクルの初期段階からテストを行うシフトレフト・テストのような実践は、チームが課題をより早く見つけるのに役立ちます。本番環境での監視と検証に焦点を当てるシフトライト・テストは、実運用の利用状況に迅速に適応することを可能にします。

最新のソフトウェア・テスト戦略は、自動化人工知能(AI)クラウドネイティブなアーキテクチャー(たとえばマイクロサービス)の進歩と歩調を合わせて進化し続けています。ソフトウェアの複雑化とリリース・サイクルの加速が進むなか、インテリジェント・テストは一層普及しています。

Fortune Business Insights の報告によれば、2024年のAI対応テストの世界市場規模は8億5670万米ドルでした。2025年の10億1090万米ドルから2032年には38億2400万米ドルへと成長すると予測され、予測期間の年平均成長率(CAGR)は20.9%です。1

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ソフトウェアテストの歴史

ソフトウェア・テストは、第二次世界大戦直後に登場したソフトウェア工学の発展とともに始まりました。コンピューター科学者のTom Kilburn 氏は、世界初のソフトウェアの作者として知られており、1948年6月21日に英国のマンチェスター大学で公開しました。これは、基本的な機械語命令によって数値計算を行うものでした。

ソフトウェア開発の黎明期において主なテスト方法はデバッグであり、その状況はその後20年続きました。1980年代になると、開発チームはソフトウェアバグの特定と修正に留まらず、より幅広い視点を持つようになりました。より広範な機能と信頼性を確保するために、実際の環境でアプリケーションをテストするようになったのです。

この転換により、テストをより広い視点で捉え、品質保証を重要な焦点として重視する考え方が始まりました。テストは、チームが高品質でコスト効率とセキュリティーに優れたソフトウェアを作成するための体系的なプロセスであるソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の不可欠な一部となりました。

1990年代から2000年代初頭にかけては、自動テストが台頭し、テスト駆動開発(TDD)のような新しい実践も広がりました。同時期には、ソフトウェアをモジュールに構成するオブジェクト指向プログラミング(OOP)などのモジュール化手法も普及しました。このモジュール設計により、ユニット・テストと呼ばれる小さなコード単位に対する集中的なテストを書きやすくなりました。さらに、モバイルやWebアプリケーションの拡大に伴い、パフォーマンス、ユーザビリティー、セキュリティー・テストなどの新たなテスト戦略が求められるようになりました。

過去10年では、アジャイル手法やDevOpsの進展により、チームのソフトウェアの構築と提供の方法が根本的に変わりました。テストは継続的かつ自動化され、開発からデプロイに至るまでのあらゆるフェーズに統合されています。現在、多くの企業が、独自およびオープンソースの自動化ツールや継続的テスト・プラットフォーム(例:Katalon Studio、Playwright、Selenium)を活用して品質保証を実現しています。これらのツールは、速度や拡張性の向上、およびお客様からの信頼の獲得にも貢献します。

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ソフトウェア・テストの重要性

相互に接続されている今日の世界では、ソフトウェアの欠陥がもたらす影響はかつてないほど深刻になっています。リリースの遅れやソフトウェアにおける欠陥はブランドを毀損し、顧客の不満や不満を引き起こす可能性があります。最悪の場合、バグや欠陥により、連携先のシステムの機能が低下したり、重大な誤動作が発生する可能性があります。

2024年7月に発生したDelta Air Lines(デルタ航空)に関する事例を考えてみましょう。サイバーセキュリティー企業のCrowdStrike 社が提供した欠陥のあるソフトウェア更新により、Microsoft Windows プラットフォーム全体で広範なシステム障害が発生しました。デルタ航空は米国内の航空会社の中で最も深刻な運航影響を受け、数千便の欠航と5億米ドル超の損失が推定されています。2この出来事は、特にサードパーティー製ソフトウェアをミッションクリティカルなシステムに統合する際に、徹底したテストが極めて重要であることを示しています。

テスト自体にはコストが発生しますが、効果的なテスト技法とQAプロセスを実装することで、開発およびサポートの年間費用を何百万米ドルも節減できる可能性があります。初期段階のソフトウェア・テストは、製品が市場に出る前に問題を特定します。開発チームがテストのフィードバックを早く受け取るほど、重大な問題に迅速に対処できます。

  • アーキテクチャー上の欠陥
  • 設計上の判断ミス
  • 無効な、または正しくない機能
  • セキュリティーの脆弱性
  • 拡張性における問題

十分なテスト時間を確保できる開発プロセスは、ソフトウェアの信頼性を高め、エラーの少ない高品質なアプリケーションの提供につながります。お客様の期待に合致し、あるいはそれを上回るシステムは、売上の拡大、市場シェアの向上、そしてユーザー・エクスペリエンスの改善をもたらします。

手動テストと自動テストの比較

ソフトウェア・テストは、主に2つのカテゴリに分類されます。

  • 手動テスト
  • 自動化テスト

手動テスト

手動テストは、自動化ツールを使用せず、テスト・ケースをテスト担当者が手動で実行するプロセスです。テスト担当者は、ボタンをクリックしたり、テキストを入力したり、出力結果を検証したり、エンドユーザーがソフトウェアをどのように操作するかシミュレーションします。

手動テストは通常、探索的テストやユーザビリティー・テスト、そして自動化する必要がないぐらいアプリケーションが小さい場合に行われます。

自動テスト

自動テストでは、スクリプトとツールを使用して、ソフトウェアのテストを自動的に実行します。この基本的な方法は、テストタスクを反復して行う場合や、同じテストを複数回実行する必要がある大規模なシステムに有用です。

自動テストを活用することで、ソフトウェアに対して迅速かつ一貫性のあるテストを実施できます。また、人為的なエラーが減り、長期的なテスト効率が向上します。

ソフトウェア・テストのレベル

一般に、ソフトウェア・テストはソフトウェア開発ライフサイクルの中で4つのレベル(または段階)で実施され、それぞれがアプリケーションの特定の部分に焦点を当てます。

  • 単体テスト
  • 統合テスト
  • システム・テスト
  • 受け入れテスト
単体テスト

単体テストは、各ソフトウェア・ユニットが意図したとおりに動作することを検証します。このユニットとは、アプリケーションの中のテスト可能な最小コンポーネントを意味します。

統合テスト

統合テストは、ソフトウェア・コンポーネントまたは機能が連携して有効に動作することを確認します。

システム・テスト

システム・テストは、システム全体のエンドツーエンドの挙動を検証します。この段階には、機能テスト、非機能テスト、インターフェース・テスト、ストレス・テスト、リカバリー・テストが含まれます。

受け入れテスト

受け入れテストでは、システム全体が意図したとおりに動作するかを検証します。

ソフトウェアテストの種類

ソフトウェアテストには、前述したレベルに該当するさまざまなタイプがあり、一般的には次の2つのカテゴリに分類できます。

  • 機能テストは、ソフトウェア・アプリケーションが規定された要件どおりに振る舞うかどうかを検証します。
  • 非機能テストでは、負荷やストレス、異なる環境など、さまざまな条件下でソフトウェアがどのように動作するかを評価します。

以下は、各カテゴリに含まれる一般的なテスト種別の一覧です。

機能テストの種類

  • ホワイトボックス・テスト: テスト対象ソフトウェアの内部構造、ロジック、機能に関する知識に基づいて実施するテストです。
  • ブラックボックス・テスト: テスターがソフトウェア・システムの内部動作に関する情報を持たずに実施するテストです。
  • アドホック・テスト: 事前に定義されたテストや文書に従わず、アプリケーションの欠陥を見つける(あるいは意図的に破壊する)ことを試みるテストです。
  • 探索的テスト:探索的テストは、ソフトウェアテスト担当者がソフトウェアのエラーにつながりうる予測困難なシナリオや状況を明らかにするのに役立ちます。
  • 回帰テスト: 回帰テストは、新しい機能の追加や変更によって既存機能が壊れたり劣化したりしていないかを確認します。最近の変更が新たな欠陥を導入していないことを確かめます。
  • 健全性テスト:健全性テストは、特定の機能が期待どおりに動作するかどうかを評価します。完全な回帰テストを行う時間がない場合、テスト担当者は健全性テストを活用し、メニュー、機能、およびコマンドを表面レベルで検証できます。
  • スモーク・テスト: アプリケーションの基本機能が正しく動作するかを確認する予備的なテストです。ビルドがさらなるテストを実施できるだけの安定性を備えていることを確認するのに役立ちます。
  • ユーザー受け入れテスト(UAT):ユーザー受け入れテスト(UAT)は、エンド・ユーザーが実施する受け入れテストの一形態で、システムが自らのニーズを満たし、実運用のシナリオで適切に動作することを確認します。

非機能テストの種類

  • リカバリー・テスト:リカバリー・テストは、ソフトウェアが障害にどのように応答し復旧するかを検証し、データやプロセスが正しく復元されることを確認します。
  • パフォーマンス・テスト:パフォーマンス・テストは、さまざまな負荷条件でソフトウェアがどのように動作するかをテストします。
  • 負荷テスト:負荷テスト(パフォーマンス・テストの一種)は、実際の負荷分散条件下でのパフォーマンスを評価します。
  • ストレス・テスト:ストレス・テストは、システムが故障するまでにシステムがどれだけの負荷に耐えられるかを確認します。
  • セキュリティー・テスト:セキュリティー・テストは、ソフトウェアにハッカーなどによる悪意ある攻撃に対する脆弱性がないかどうかを検証します。
  • ユーザビリティー・テスト:ユーザビリティー・テストは、お客様がシステムのユーザー・インターフェースを使ってタスクを効率的かつ直感的に完了できるかを検証します。

ソフトウェアテストのベスト・プラクティス

効果的なソフトウェア・テストは、ライフサイクル全体での検証に必要な範囲、アプローチ、リソースを定義した堅実なテスト計画から始まります。

複雑な環境でスケールし適応するために、テスト・チームは、自動化を支え、CI/CDパイプラインと統合し、プラットフォームや環境をまたいだ継続的な検証を可能にする堅牢なテスト・フレームワークに依存します。これらのフレームワークは、テスト設計、テスト実行、結果分析など、あらゆるフェーズを支援し、課題の早期検知、リスク低減、リリースまでの時間短縮に寄与します。また、コード・レビューも品質保証において重要な役割を果たし、テスト開始前の段階で欠陥の早期発見やコーディング標準の順守を徹底できます。

テストの実施には時間を要します。小規模なシステムでは、手動テストまたはアドホック・テストを行うだけで十分な場合がありますが、大規模なシステムでは、タスクを自動化するために複数のツールが使用されることが一般的です。自動テストは、チームがさまざまなシナリオを実装し、差別化要因(コンポーネントをクラウド環境に移行させるなど)をテストし、何が機能し、何が機能しないのかに関するフィードバックを迅速に得るのに役立ちます。

堅実なテスト・アプローチは、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)、ユーザー・インターフェース(UI)、システムの各レベルを包含します。テストは自動化し、できるだけ早期に実行するほど効果的です。社内でテスト自動化ツールを構築するチームもありますが、ベンダーのソリューションには、次のような主要なテスト管理作業を効率化する機能が備わっています。

  • 継続的テスト:継続的テストでは、プロジェクト・チームが利用可能になるたびに各ビルドをテストします。このテスト手法は、デプロイメント・プロセスに統合されたテスト自動化に依存しており、多くの場合、継続的デプロイメントの一部として実施されます。これにより、開発のより早い段階で現実的なテスト環境での検証が可能になり、設計の改善とリスク低減につながります。
  • 構成管理: 組織はテスト資産を一元管理し、どのソフトウェア・ビルドがテストされているかを追跡します。チームは、コード、要件、設計文書、モデル、テスト・スクリプト、テスト結果などの資産にアクセスできます。強力なシステムには、最小限の管理労力でチームがコンプライアンス要件を満たすのに役立つユーザー認証機能と監査証跡機能が含まれています。
  • サービスの仮想化:テスト環境は、特にコード開発の初期段階では利用できない場合があります。その場合、サービス仮想化を使用することで、欠落しているサービスやシステム、または未完成のサービスやシステムをシミュレートし、チームが依存関係を減らし、より早くテストできるようにします。元の環境を変更することなく、構成を再利用、展開、変更して、さまざまなシナリオをテストできます。
  • 欠陥(バグ)管理:欠陥の監視とバグ追跡は、テスト・チームと開発チームの双方にとって不可欠です。自動化ツールにより、欠陥の追跡、影響範囲や重大度の測定、関連する問題の把握が可能になります。
  • メトリクスとレポート: レポートと分析により、チーム・メンバーはステータス、目標、テスト結果を共有できます。高度なテスト・ツールはプロジェクト・メトリクスを統合し、結果をダッシュボードに表示します。チームは、プロジェクトの全体的な健全性を迅速に把握し、テスト、開発、その他のプロジェクト要素間の関係を監視することができます。

ソフトウェア・テストの未来

ソフトウェア開発のスピードが上がり、システムがますます複雑になるにつれて、ソフトウェア・テストも連動して進化を続けています。今後のテストの方向性を形作る主なトレンドは次のとおりです。

ローコードおよびノーコードのテスト

ローコードノーコード・プラットフォームの普及に伴い、非技術者向けの新しいテスト・ツールが登場しています。これらのツールはテスト・プロセスを簡素化し、ビジネス・ユーザーが自ら構築したアプリケーションに対して容易にテストを作成・実行できるようにします。専門的な技術知識を必要とせず、市場投入までの時間を短縮できます。

IoTとエッジのテスト

モノのインターネット(IoT)の急速な拡大は、実環境での接続性、セキュリティー、パフォーマンスのテストに独自の課題をもたらしています。さらに、より多くのデバイスがエッジコンピューティングに依存するにつれて、テスト・ツールは多様な環境をシミュレーションし、さまざまなネットワーク条件下でもソフトウェアが確実に動作できるようにする必要があります。

5Gと超低遅延のテスト

5Gの展開以降、自動運転や遠隔医療など超低レイテンシーを必要とするアプリケーションでは、専門的なテストが求められています。高速・低遅延の条件下でのパフォーマンス検証は、モバイルやエッジ系アプリにとって不可欠になりました。

AIを活用した予測および自己修復システム

AIを搭載した自己修復システムは、軽微な問題を検知して自動的に修正しすることでダウンタイムを削減します。予測テストは機械学習 (ML)を活用して実行され、チームは潜在的な障害を予測し、本番環境に障害が発生する前に対処することができるため、ソフトウェアはより堅牢で信頼性の高いものとなります。

テストにおける生成AI

生成AIは、ソフトウェア・テストにおける強力なツールとして台頭しています。高度な機械学習手法を用いてソフトウェアの挙動に基づく動的なテスト・ケースを生成し、人間のテスターが見落としがちな新しいシナリオを自動的に作成することで、テスト網羅性とソフトウェアの信頼性を高めます。

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