APIテストは、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)が意図したとおりに機能することを検証するプロセスです。通常、APIにさまざまなデータ要求を送信し、その応答が信頼性、パフォーマンス、ユーザビリティー、セキュリティーの期待に合致していることを確認します。
APIテストでは、データと書式の正確性、エラー処理、認証と認可の順守、互換性の問題、負荷に関する問題などを確認します。開発チームは、これらのテストを手動で実行することも、ソフトウェアを使用してテストを自動化し、プロセスの効率を最大化することも選択できます。いずれの方法を選ぶ場合でも、包括的なAPIテストには、APIやアプリケーションの最適なパフォーマンスとセキュリティーを確保するための多様なテスト手法が必要です。
モダン・アプリケーションは通常、データ層、サービス(またはアプリケーション)層、プレゼンテーション層の3つの層で構成されます。サービス層にはアプリケーションのビジネスロジック(およびAPIの中核機能)が含まれており、APIが他のアプリケーション・コンポーネントや機能とどのように通信するかを規定します。
従来、開発者はソフトウェア開発ライフサイクルの終盤にAPI層のテストを実装していました。しかし現在では、多くの企業がAPIファーストの開発戦略を採用しており、開発チームはAPIを通じて提供されるサービスのネットワークとしてアプリケーションを構築しています。
最適化されたAPIを維持することはAPIファースト・アプローチにおいて極めて重要であるため、開発者はライフサイクルのより早い段階でAPIテストの実践を取り入れることを選択することがよくあります。このプロアクティブなアプローチは「シフトレフト」として知られ、チームが問題を早期に発見して修正し、コストのかかるエラーやプロジェクトの遅延を防ぎ、開発プロセス全体を最適化するのに役立ちます。
ただし、APIテストはデプロイ後も継続される場合があることに留意する必要があります。本番稼働後のテスト(シフトライト・テストとも呼ばれます)は、シフトレフト戦略と併用することで、DevOpsやCI/CDパイプラインに継続的なフィードバックループを組み込める補完的なテスト手法を企業に提供します。
APIテストはより安定性と信頼性の高いAPIの構築を支援することに加えて、企業に大きなメリットをもたらします。また、エンタープライズ・ソフトウェア・アプリケーションの品質向上、開発コストの最小化、ソフトウェアの提供スピードの加速なども実現します。
APIはあらゆるところにあります。それらは幅広いシステムやプロセスをつなぐ役割を果たしており、企業も個人ユーザーもそこに多くのことを期待しています。APIテストは、それらが本来のとおりに動作することを保証します。これについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
API(SOAP、GraphQL、REST APIを含む)は、デジタル世界においてアプリケーション、Webサービス、システム、データベースを接続します。企業はこれにより、データベースを統合し、基幹のレガシー・システムを最新のプラットフォームと接続し、異なる環境でのデプロイメントを接続できます。また、外部の開発者やパートナーにサービスを提供し、よりつながりのあるユーザー体験を実現します。
個々のユーザーは、気付かないうちに常にAPIに触れています。例えば、ユーザーが天気アプリケーションに都市名を入力して現在の気象状況を調べると、アプリケーションは気象APIを呼び出してリアルタイムの気象データを取得します。同様に、ユーザーがナビゲーション・アプリケーションで「経路を取得」をクリックすると、アプリケーションのバックエンドは経路APIを呼び出し、ステップごとの経路情報を取得してユーザーに返します。
さらに、今日のユーザーは信頼性が高く、超高速に応答するアプリケーションとの対話を期待しています。読み込み時間が1秒から3秒に増加すると、ユーザーの離脱率は32%上昇します。1さらに、読み込み時間が3秒以上となると、ユーザーの40%がサイトを離脱します。2APIの重要性の高まりにより、多くの組織がAPIファースト・アプローチを採用しています。ここではAPIがアプリケーションの主要な構成要素と見なされ、それに応じた注目が集められます。
APIレベルの問題は、ユーザーに対してレイテンシーの増加などのパフォーマンス問題を引き起こし、企業データをサイバー攻撃にさらす可能性があり、いずれも企業の収益に悪影響を及ぼします。これらの問題を回避するために、アプリケーションやAPIファーストのネットワークには、安全で高性能なAPIが必要です。そして、そのようなAPIを構築し維持するためには、継続的なテストが不可欠です。
APIテストは、APIが期待どおりの結果を提供し、さまざまな入力やシナリオに対して一貫してその結果を返すことを検証します。これにより、チームは問題がユーザー・インターフェースに到達して大きな課題となる前に、サーバーレベルで対処できます。
APIテストは、セキュリティー脆弱性の調査など、インターフェース・レベルで実行するには危険または非現実的なシナリオを、安全にシミュレートするのに役立ちます。また、各マイクロサービスが一般的に独自のデータストアを管理し、APIを通じて機能を公開するマイクロサービス・アーキテクチャーにおいて、APIテストはマイクロサービスが効果的かつ安全に相互作用できるようにします。
APIの健全性を完全かつ正確に把握するためには、ITチームが以下を含む多様なテストを実施する必要があります。
機能テスト(ユニットテスト、回帰テスト、統合テストを含む)は、特定のリクエストに対してAPIが正しい応答とデータ形式を確実に提供するようにします。これには、特定のリクエストをAPIエンドポイントに送信し、期待されるステータスコード、レスポンス本文、データ構造が返されるかどうかを確認することが含まれます。
機能テストの目的は幅広く、正常系やエッジケ・ース、エラー処理、ビジネス・ルールの順守など、さまざまなテスト・シナリオにおける機能の妥当性を検証することにあります。
単体テストはソフトウェア・テスト手法の1つであり、アプリケーションの個々のユニットやコンポーネント(関数、メソッド、クラスなど)を単独でテストし、意図したとおりに動作することを確認します。APIにおいては、1つのAPIエンドポイントに対して1つのリクエストを送信し、1つのレスポンスまたは一連のレスポンスを受け取ることを意味します。
ユニットAPIテストは、コードベースの各部分が正しく動作することを確認し、開発者がバグを早期に検出して、より信頼性の高いAPIコードを作成できるようにすることを目的としています。
パフォーマンス・テストは、APIの速度、応答性、スループットをさまざまな状況で評価し、トラフィックの急増や多数の同時APIコールをどのように処理するかを検証します。チームは、負荷テスト、ストレス・テスト、エンデュランス・テストなど、さまざまなパフォーマンス・テストを実施することで、トラフィックのボトルネックを特定し、特にAPIが大規模で動的なシステムの一部である場合に、低レイテンシーを確保できます。
例えば、IT担当者は、ホリデー・セールのような大規模なオンライン・ショッピングイベントの際に、ECサイトのショッピングカートAPIがどれだけ迅速かつ確実に応答するかを確認したい場合を考えてみましょう。
セキュリティー・テストは、APIが機密データを保護し、不正アクセスを防ぐために実施されます。これには、クロスサイト・スクリプティングやSQLインジェクション、認証や認可プロトコルの脆弱性など、エンドポイントの弱点を特定することが含まれます。セキュリティー・テストでは、暗号化されていないデータ転送、脆弱なパスワードの使用、安全でないネットワーク・アーキテクチャーも特定できます。
例えば認証テストでは、APIキー、JSON Web Token(JWT)、OAuthアクセストークン、従来のユーザー名とパスワードの組み合わせなど、API認証メカニズムの有効性を検証します。また、APIペネトレーション・テスト(APIペンテストとも呼ばれます)は、現実のサイバー攻撃をシミュレーションし、APIの応答を評価することで、チームがセキュリティー上の脆弱性を特定するのに役立ちます。
統合テストは、通常APIのユニットテストが完了した後に、システムのさまざまなコンポーネントやモジュールがどのように連携して動作するかを評価します。チームはAPIの入力と出力をテストし、モジュール間のやり取りやインターフェースを検証する必要があります。
統合テストによって、問題のあるデータ交換や通信プロトコル、外部システムへの依存関係が明らかになり、これらがインターフェース上の不具合やアプリケーション全体のパフォーマンス低下につながる可能性を把握できます。チームは、APIコンポーネントを段階的に統合してテストするインクリメンタル・アプローチ、すべてのコンポーネントを一度に統合してシステム全体をまとめてテストするビッグバン・アプローチ、あるいはその他のテスト手法を利用できます。
統合テストはAPI開発において見過ごされることがありますが、特にアプリケーションが外部APIに依存している場合には、アプリケーションの健全性を維持するための重要なプロセスです。
ストレス・テストと負荷テストには、API の容量を決定するという同様の目的があります。
ストレス・テストでは、APIを通常の運用限界を超えて負荷をかけ、その限界点を明らかにします。リソース制約や極端な負荷といった状況をシミュレーションし、ボトルネックや拡張性の問題、そして不具合が発生する前にAPIが処理できる最大容量を特定します。
負荷テストは、同時リクエスト数やユーザー活動のレベルが変化した場合に、APIがどのように動作するかを測定します。これにより、開発チームはAPIがさまざまなトラフィック負荷にどのように応答するかを把握でき、APIトラフィックを効果的に管理し、応答時間やエラー率を最小限に抑えられます。
ドキュメンテーション・テストは、APIが明確に文書化されていること、そしてそのドキュメントが機能を正確に記述していることを確認するために行われます。また、このテストでは、API機能の統合を検証し、APIがドキュメントに記載されたとおりに動作することを確認します。
ドキュメンテーション・テスト担当者は、APIが期待どおりのデータを返すこと、パラメーターが正しく定義されていること、データ形式が最新のドキュメントと一致していることを確認できます。
相互運用性テストでは、APIが異なるオペレーティング・システム、フレームワーク、ハードウェア環境、プログラミング言語と効果的に接続し、通信できるかを検証します。APIは、その定義上、相互運用性を本来備えているべきです。
API相互運用性テストは、APIが業界標準、プロトコル、データ形式に準拠し、さまざまなクライアント・アプリケーションやサービスと幅広く互換性があることを確認します。また、APIが標準的なデータ形式(JSON、XML、Protocol Buffersなど)、通信プロトコル(HTTP、WebSocket、gRPCなど)、文字エンコーディング、ローカライゼーション、認証メカニズムをサポートできることも確認します。
コントラクト・テストは、2つのシステムやモジュール(例えば2つのマイクロサービス)のやり取りを記録し、その通信の互換性と有効性を評価します。APIのやり取りが事前に定義されたコントラクトに準拠していること、そしてそのコントラクトがデプロイメント全体で一貫性を保っていることを検証します。これにより、マイクロサービス・アーキテクチャーにおけるAPIテストに特に有効です。
コントラクト・テストを活用することで、開発者はマイクロサービスやサードパーティーAPIの統合における問題を防ぎ、フロントエンド開発者とバックエンド・エンジニアの間のコミュニケーションを円滑にできます。
APIファズ・テスト(APIファジングとも呼ばれます)は、アプリケーションのAPIのセキュリティーと安定性を評価します。入力検証エラー、バッファー・オーバーフロー、インジェクションの欠陥などの脆弱性やその他のセキュリティー問題を検知するために、APIに不正な形式や予期しない入力を幅広く送信します。
ファジングを行うと、APIが予期しない動作を示し、入力やリクエストの処理方法に潜む欠陥が明らかになります。この手法によって、ITチームはアプリケーションを侵害する恐れのあるセキュリティー問題を洗い出せます。
エンドツーエンド・テストは、APIがシステム全体やアプリケーションの中でどのように統合され、機能しているかを包括的に評価します。実際のシナリオをシミュレーションし、APIがシステム構成要素、データベース、外部サービスとどのように連携するかを開発者が把握できるようにします。
エンドツーエンド・テストのプロセスには通常、包括的なテスト環境の構築、認証と認可の検証、関連するテストデータの準備、さまざまなパラメーター設定によるデータ要求の送信、そしてデータの一貫性を確保するためのAPI応答の検証が含まれます。
API主導の環境における最適なテスト手法は、APIの性質や複雑さによって異なります。主に「作成、読み取り、更新、削除」といった基本操作を処理するシンプルなAPIの場合、手動テストで十分なことがあります。手動テストは比較的わかりやすいプロセスで、APIリクエストを送信し、その応答が期待どおりかどうかを確認します。
手動APIテストでは、テスト計画を作成し、テストするシナリオと基準を決定することが重要です。その後、チームは必要な入力パラメーターを準備し、データ要求を送信して、エラーや予期しない結果がないかAPIの応答を確認します。
APIがより複雑であったり大規模なデータ操作を必要とする場合には、オープンソースやサードパーティーのツールを用いたAPIテストの自動化によって、テスト・プロセスを効率化できます。自動テストは、手動テストより効率的でスケーラブルであるため、大規模プロジェクト、規制の厳しい環境、機密データの取り扱いに特に有効です。
APIテストとAPIモニタリングの目的は、APIが最適に機能し、アプリケーションが他のアプリケーションやサービスと効果的に通信できるようにすることです。ただし、それぞれが注目するのはアプリケーション・ライフサイクルの異なる段階です。
APIテストは、開発中にパフォーマンスやセキュリティー、信頼性の問題を検出することに重点を置くプロアクティブな手法であるのに対し、モニタリングはデプロイ後の問題検出を優先します。APIモニタリング・ツールは、APIのテレメトリーを時間経過とともに追跡・可視化し、チームが過去のデータを分析してリリース後のAPI全体にわたるパフォーマンスの傾向を把握できるようにします。
モニタリングとテストの両方の実践は、APIとアプリケーションをエンドユーザー向けに最適化するうえで欠かせないため、健全なAPIエコシステムを維持するには両方が必要です。
APIファーストのソフトウェア開発、クラウドネイティブなSaaSアプリケーション、CI/CDパイプラインの加速的普及により、APIは今やデジタル環境全体に広く存在しています。それはまた、APIがこれまでになく急速に進化していることを意味します。したがって、競争優位の維持を目指す企業は、革新的なAPIテスト・ツールや手法の導入を検討する必要があります。
新たなテスト・トレンドの例としては、以下のようなものがあります。
DevOpsチームや品質保証エンジニアは、テストの効率化と強化のために人工知能(AI)や機械学習(ML)の技術を活用しています。3
AIを活用したツールは、複雑なAPIワークフローにおけるテストケースの生成を自動化し、迅速化できます。例えば機械学習を活用することで、APIテスト・ツールはより賢く、より最適化されたテストケースを生成し、API全体にわたるテスト範囲を拡大できます。テスト・ツールはMLアルゴリズムを活用して予測分析を行い、チームがテストの失敗を予測して実際のAPIの問題を未然に防げるようにします。
さらに、エージェント型AI(AIエージェントが人間に代わって自律的にタスクを実行できる技術)の導入により、APIツールは自己修復型のAPIテストを作成し、異なるブラウザー、デバイス、オペレーティング・システムにまたがってテストを選択・優先順位付けし、実行できるようになります。
企業はますますゼロトラスト・アーキテクチャー4の導入を進めており、APIとのやり取りを試みるあらゆるデバイスやユーザーに対して、強固な認可と認証の実践を重視しています。
ゼロトラストAPIセキュリティーは、組織の内外を問わず、いかなるネットワーク・トラフィックも自動的に信頼すべきではないという原則に基づいて運用されます。ユーザーとデバイスの双方は、デフォルトで信頼できないものと見なされます。ゼロトラストの原則は、脆弱になりやすい外部公開APIやエンドポイントを保護するうえで特に有効です。
API仮想化により、チームはシミュレートされたAPIの開発とテストを並行で行える環境を構築できます。仮想化されたAPIを利用すれば、アクセスできないAPIや、テストに多大なコンピューティング・リソースを必要とするAPIをテストすることが可能になります。これによりAPIへの依存を減らし、複雑なマイクロサービス・アーキテクチャーにおけるAPIテストを効率化できます。
シフトレフト・テストが開発プロセスの初期段階で積極的に問題を検出・解決することを重視するのに対し、シフトライト・テストはリリース後の実環境においてAPIのパフォーマンスとセキュリティーを検証します。予測やシミュレーションに依存するのではなく、APIテスト担当者は実際のアプリケーション利用からデータを収集するために制御された実験を実行でき、これによってシフトレフト・テストでは予測できない問題を明らかにできます。
シフトレフト戦略を補完する形でシフトライト・テストを活用することで、開発者は開発ライフサイクルのあらゆる段階でエンドツーエンドのAPIテストを実施できます。そして今日のコンテナ化されたクラウドネイティブなマイクロサービス・ベースのアーキテクチャーにおいては、これらの手法を組み合わせることが、CI/CDの目標を達成するうえで極めて有益となります。
シフトライト・アプローチは、本番稼働後のソフトウェア試験も容易にします。例えばカナリア・リリースを利用すれば、開発者は新機能を一部のユーザーに先行提供し、広範なリリースの前にモニタリングとテストを行えます。また、A/Bテストを利用することで、開発者は2つのバージョンのAPIをリリースし、どちらがより優れて機能するかを確認できます。
厳格なAPIテストの実践により、次のことが可能になります。
進化するビジネス・ニーズに対応する、動的で拡張性の高い統合を可能にします。AIを活用したAPI駆動型のオートメーションです
アプリケーションとシステムを接続して重要なデータに迅速かつ安全にアクセスする IBM 統合ソリューションにより、ビジネスの可能性を最大限に引き出します。
エージェント型AIの時代にハイブリッドクラウドを最大限に活用しましょう
1 「6 Website load time statistics and why they matter」、Shopify社、2024年9月13日。
2 「Top website statistics today」、『Forbes』誌、2024年6月4日。
3 「Securing APIs in the age of AI」、『DevPro Journal』誌、2025年3月17日。
4 「10 API security trends every developer must know in 2025」、楽天シックスセンス、2025年1月12日。