ITインフラストラクチャーとは

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執筆者

Mesh Flinders

Staff Writer

IBM Think

Ian Smalley

Staff Editor

IBM Think

ITインフラストラクチャーとは

情報技術インフラストラクチャー(ITインフラストラクチャー)とは、企業がIT環境を効果的に管理・運用するために利用するハードウェア、ソフトウェア、およびネットワークのコンポーネントを指します。

ITインフラストラクチャーは広義の用語で、サーバーデータストレージ・システム、ネットワーキング・デバイス、オペレーティング・システム(OS)など、さまざまなテクノロジーやデバイスを含みます。

今日、ITインフラストラクチャーは世界中の多くの成功している企業の基幹業務を支えており、プロセスの自動化、クラウド・コンピューティング、ソフトウェア・アプリケーションのデプロイメントといった、企業の成長を可能にする業務機能を実現しています。また、人工知能(AI)生成AIといった変革的なテクノロジーを支える重要な要素ともなっており、これらが発展するために必要な堅牢なネットワーク・インフラストラクチャーITサービスを提供しています。

世界的に、ITインフラストラクチャー、ITシステム、そしてITインフラストラクチャー・セキュリティーの需要は急速に拡大しており、その一因となっているのがクラウド・コンピューティングの成長と、それを支えるために必要な特定のインフラストラクチャーであるクラウド・インフラストラクチャーです。今後7年間で、ITインフラストラクチャー市場は年平均成長率(CAGR)10.5%で成長し、1,200億米ドルから2,410億米ドルに拡大すると予測されています。1

ITインフラストラクチャー・ソリューションの最大手プロバイダーには、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft社(Azure)、IBMといった、テクノロジー業界で広く知られる企業が名を連ねています。

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ITインフラストラクチャーの仕組み

ITインフラストラクチャーは、コンピューターやサーバーといったハードウェア・コンポーネントと、それらの動作に必要なオペレーティング・システムなどのソフトウェア・コンポーネントで構成されています。これらのコンポーネントを連携することで、幅広いITサービスや機能が実現されます。

ITインフラストラクチャーの主要コンポーネント

ITリソースは通常、ハードウェアとソフトウェアの2つのグループに分類されます。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

  • ハードウェア・コンポーネント:ハードウェア・コンポーネントは、ほとんどのITインフラストラクチャー環境の基盤を形成します。例としては、サーバーやルーターといったシンプルなネットワーク・デバイスのほか、データストレージ、ファイアウォール、ルーターのようなより複雑なツールがあります。コンピューターやモバイル・デバイスといったエンドユーザー向けのハードウェア・コンポーネントにより、従業員はデータやサービスをやり取りし、リソースを共有して組織のビジネスニーズに対応することができます。

従来のITインフラストラクチャーとクラウド・インフラストラクチャーの比較

現在、企業は主に2種類のITインフラストラクチャー、従来型とクラウド型に依存しています。従来型ITインフラストラクチャーは、通常オフィスビルやデータセンターに設置されるハードウェアおよびソフトウェア・コンポーネントで構成され、プライベートまたは社内専用の用途に利用されます。

一方、クラウド・インフラストラクチャーは、インターネット経由で提供されるコンピューティング・リソースで構成されます。

2000年代初頭まで、従来型ITインフラストラクチャー環境がテクノロジー分野を支配していました。しかし、Amazon Web Services(AWS)などの企業がインターネット経由でソフトウェア・ソリューションを提供し始めると、クラウド・コンピューティングとクラウド・インフラストラクチャーの利用が広がりました。クラウド・アーキテクチャーは従来型ITインフラストラクチャーに比べてはるかに高い拡張性と柔軟性を提供し、AI、生成AI、機械学習(ML)モノのインターネット(IoT)といった新しいテクノロジーの重要な基盤となっています。

クラウド・インフラストラクチャーは従来型ITインフラストラクチャーと同様のコンポーネントを多く含みますが、従来型IT環境ではサポートされない仮想化と呼ばれる新しいテクノロジーに大きく依存しています。

仮想化

仮想化とは、1台の物理マシンから仮想環境を作成できるテクノロジーです。仮想化は、ソフトウェアを用いてハードウェアの上に抽象化層を構築し、プロセッサー、メモリー、ネットワーク、ストレージといったリソースを複数の仮想マシン(VM)に分割します。各仮想マシン(VM)は、それぞれ独自のオペレーティング・システム(OS)を実行し、別個の物理コンピューターのように動作します。

クラウド・コンピューティングとクラウド・インフラストラクチャーの要となる仮想化は、テクノロジーを活用し大規模なビジネス課題を解決する新たな方法を企業が模索した2000年代に普及しました。

仮想化はクラウド環境のデプロイメントにおいて重要な役割を果たし、リソースをより効率的に共有できるようにします。仮想化は、多くの新しいクラウドベースのサービスの開発に不可欠で、それらのサービスは現在のIT環境を支える基盤となっています。例として、Infrastructure-as-a-Service(IaaS)Platform-as-a-Service(PaaS)Software-as-a-Service(SaaS)ハイブリッドクラウドなどがあります。

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ハイブリッドクラウドでAI対応を実現

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ハイブリッドクラウドの台頭

2011年に導入されたハイブリッド型のクラウド・インフラストラクチャーは、それまで企業が採用してきたさまざまなアプローチを統合し、単一で柔軟かつコスト最適化されたITインフラストラクチャーを実現することを目指しました。ハイブリッド・クラウドのアプローチはアジリティーを重視しており、仮想化を活用して必要に応じて迅速にコンピューティング・リソースをプロビジョニングすることで、企業が状況の変化に即座に対応できるようにします。

ハイブリッドクラウド・アーキテクチャーでは、インフラストラクチャー・リソースをオンプレミス、パブリッククラウド、プライベートクラウドの3つに分類します。

  • オンプレミス:ハードウェア、ソフトウェア、データ・ストレージ、その他のコンピューティング・リソースといった従来型のITインフラストラクチャー・リソースで、通常はオフィスビルやオンプレミスのデータセンターに設置されます。
  • パブリッククラウド:サーバー、ネットワーク・デバイス、データ・ストレージなど、サードパーティーのクラウド・サービス・プロバイダー(CSP)によってホスティングされ、インターネット経由で提供されるリソース。
  • プライベートクラウド:PaaSやIaaSといった仮想化されたインフラストラクチャー・リソースで、分離され、単一の顧客のみに利用可能なもの。

最近の調査によると、世界のハイブリッドクラウド市場は急速に成長しています。2023年に1,250億米ドルに達し、2032年までに5,586億米ドルへ拡大すると予測されています。2加速するデジタル・トランスフォーメーションとクラウド・サービスの広範な採用がこの成長を牽引しており、企業に対して拡張性の向上、コスト削減、運用の柔軟性をもたらしています。

最新のITインフラストラクチャーのメリット

現在、ITインフラストラクチャーに依存するデジタル・テクノロジーは、ビジネスのほぼあらゆる側面を支えています。個々の従業員がノートPCやモバイル・デバイスで行う業務から、AIやIoTを活用した自動化に依存するネットワーク化された製造工場に至るまで、最新のインフラストラクチャーはコミュニケーションを改善し、新たな効率性を生み出し、イノベーションを推進します。最も一般的なメリットは次のとおりです。

イノベーションの促進

最新のITインフラストラクチャーは、いくつかの重要な方法で組織のイノベーションの加速を支援します。マイクロサービスのような柔軟なITアーキテクチャーを活用するDevOpsチームは、開発サイクルを短縮し、ビジネス・アプリケーションの市場投入までの時間を削減できます。最新のITシステムにより、組織はデータをより迅速に収集・処理でき、新しい製品や機能に対する顧客の反応を、しばしばリアルタイムで把握することが可能になります。

リアルタイムの意思決定

市場は一瞬で変化する可能性があり、今日最も成功している企業はリアルタイムで対応できる力を持つ必要があります。最新のITインフラストラクチャー・ツールは、従来用いられていたバッチ処理に代わりデータ・ストリーミングを利用することで、アプリケーション、システム、ビジネス・プロセスからの継続的なデータ取り込みと分析を可能にします。

セキュリティーの向上

最新のITインフラストラクチャーには、サイバー攻撃侵害などの複雑な問題からデータやその他の貴重な資産を保護するための堅牢なシステム群が備わっています。高性能なストレージ・システムによってデータがバックアップされ、強力な災害復旧オプションによって予期せぬ事態が発生した際の代替手段が提供されます。ファイアウォールや次世代アンチウイルス(NGAV)・ソフトウェアから、侵入検知ソリューション(IDS)や耐量子暗号化まで、今日のITインフラストラクチャー・ソリューションは企業のセキュリティー維持を支援します。

より高速なネットワーク

SlackやZoomといった生産性・コラボレーション・アプリから、重要なインサイトを得るための機密かつ時間的制約のあるデータの分析に至るまで、現代の企業はネットワークの高速性とセキュリティーに依存しています。最新のITインフラストラクチャー・コンポーネントは、ネットワークのレイテンシーを低減し、負荷分散を自動化するように設計されています。このようにして、ネットワーク・トラフィックは重要なアプリケーションに優先的に割り当てられ、ワークロードに関係なく、ユーザーはより高速でシームレスな体験を得ることができます。

ダウンタイムの減少

ITインフラストラクチャー、特にパブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドの各種アーキテクチャーは、サーバーのプロビジョニングを迅速化し、ミッションクリティカルなアプリケーションのダウンタイムを削減します。医療や輸送のようにダウンタイム・ゼロが重要となる分野で事業を展開する企業は、最新のITインフラストラクチャー・コンポーネントに依存し、業務の中断を最小化し、ダウンタイムを排除しています。

ITインフラストラクチャーのユースケース

現代の企業は、その基幹業務プロセスの大部分をITインフラストラクチャーに依存しています。製品やサービスの製造、保管、提供から、データの保護やカスタマーサポートの課題解決に至るまで、代表的なユースケースを以下に示します。

クラウド・コンピューティング

過去20年間、クラウド・コンピューティング(インターネット経由でコンピューティング・リソースやサービスを提供する仕組み)は、多くの企業にとって不可欠な存在となっています。ITインフラストラクチャーはクラウド・コンピューティングにおいて重要な役割を果たしており、高速で安全なインターネット接続を可能にするネットワーク・コンポーネントから、アプリケーションが重要なデータにアクセスできるようにするデータ・ストレージ・ソリューションまで、幅広い要素を支えています。

災害復旧

ITインフラストラクチャーは災害復旧において重要な役割を果たし、予期せぬ事態発生後に企業が業務を復旧するのを支援します。例えばクラウド・ベースのデータ・ストレージは、サイバー攻撃や自然災害の後に機密データを復旧するのに役立ち、ダウンタイムを最小限に抑えて重要なシステムを再稼働させることができます。

ビッグデータ分析

ビッグデータ分析(大量のデータを処理・分析してインサイトを抽出すること)は、HadoopApache Sparkといった専門的なITインフラストラクチャー・コンポーネントに依存して機能します。高度なソリューションでは、大規模なデータセットを扱う際にAIやMLを活用してタスクを自動化し、インサイトを迅速に導き出すこともあります。

例えば、AIを活用したプロセス・マイニング(異なるシステムのイベント・データを分析して新たな効率性を発見するデータ分析手法)は、IBM Institute for Business Value(IBV)の最近の報告によると、ITオペレーション、従業員エンゲージメント、さらには顧客満足度までも大きく改善しています。

DevOps

DevOpsチームは常に最新かつ高度なITインフラストラクチャー・ソリューションに依存し、ソフトウェア開発サイクルを短縮し、最先端のアプリケーションを提供してきました。現在では、クラウド対応のインフラストラクチャーが開発者間のリアルタイムでのコラボレーションを促進し、プロセスを改善するだけでなく、生成AIの活用によって開発プロセスの一部を自動化することも可能になっています。

オペレーション

AIやMLを活用することで、一部のITインフラストラクチャー運用チームはタスクを自動化し、旧来のプロセスを効率化する新しい方法を開発しています。例えばAIオペレーション(AIOps)は、自然言語処理(NLP)とMLモデルを組み合わせて、ITコンポーネントから生成される膨大なデータを分析し、リソース最適化の機会を見出します。

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