NVMeとは

NVMeとは

NVMe(不揮発性メモリー・エクスプレス) は、フラッシュ・ストレージソリッドステート・ドライブ(SSD)で使用される、入出力(I/O)ごとのシステム・オーバーヘッドを削減した、高度に並列化されたデータ転送用のプロトコルです。

NVMe SSDは、並列処理とポーリングができるようにデバイス・ドライバーを変更することで、従来のHDD(ハード・ディスク・ドライブ)よりも高速な応答時間を実現できます。これらの改善により、遅延が短縮され、エンタープライズ・ワークロードだけでなく、多数のコンシューマー・アプリケーションやプロフェッショナル・アプリケーションにとっても理想的な装置です。

SSDとは

SSDとは、フラッシュ・メモリーを利用してコンピューター・システムに永続的なデータを保存する半導体ベースのストレージ・デバイスのことです。SSDの各メモリー・チップは、メモリーのビットを含むメモリー・セル(別名:ページまたはセクター)が収められたブロックで構成されています。HDDやディスケット・ドライブなどの磁気ストレージとは異なり、SSDはNAND型チップという不揮発性ストレージ・テクノロジーを使用しており、データを維持するための電力を必要としません。

HDDには、プラッターの回転と読み取り/書き込みヘッドの移動によって生じる固有のレイテンシーとアクセス時間が存在しますが、SSDには可動部品がないため、はるかに高速に動作します。現在SSDは、構造化データ・ワークロードの推奨業界標準となり、HDDを上回る支持を獲得しています。

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NVMeが重要な理由

NVM Expressは、2008年から2011年にかけて、Serial Advanced Technology Attachment(SATA)およびSerial Attached SCSI(SAS)プロトコルの代替として開発されました。NVMeのレイテンシーとパフォーマンスの向上は、競合する技術よりも優れているため、モノのインターネット(IoT)人工知能(AI)機械学習(ML)など、他の重要なテクノロジーの開発にも貢献しました。

今日、ユーザーはアプリケーションに対してかつてないほど高速な応答時間を求めています。NVMeプロトコルは、ユーザーが導入しているアプリケーションの種類に関係なく、次世代の高性能、高帯域幅、低遅延のエクスペリエンスを提供するために構築されました。NVMe SSDは、主にPCIe(Peripheral Component Interconnect Express)バスを介してフラッシュ・ストレージにアクセスするため、「仲介役」としてのコントローラーが不要になり、遅延が短縮されます。ただし、NVMeは、ファイバー・チャネルやイーサネットなどのあらゆるタイプの「ファブリック」相互接続や、イーサネット、iWarp、RoCEv2、iSER、NVMe-TCP内でも動作します。

NVMe SSDは、数万の並列コマンド・キューを実行できるため、単一のコマンド・キューしか展開できないSCSIプロトコルを使用して接続されたドライブよりも高速にプログラムを実行できます。接続方法はプロトコルに依存しません。たとえば、NVMe PCIeは、NVMeプロトコルを実行しているPCIeリンクを介して、単一のドライブを接続できます。

NVMeは、高性能の不揮発性ストレージ・メディア用に構築されており、グラフィック編集ソフトウェア、クラウド・コンピューティング環境、ファームウェア、大規模データベースなど、要求が厳しく、コンピューティング負荷の高い今日の環境に最適です。NVMeは、SCSIよりもインフラストラクチャーのフットプリントが小さく、消費電力が少ないため、エンタープライズ・ワークロードを迅速かつ効率的に処理できます。

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NVMe、SAS、SATAの違い

HDDは、データの保存とアクセスの方法として業界で推奨されていましたが、SATAとSASは適切なソリューションでした。どちらのテクノロジーも、HDDとのデータのやり取りを容易にするSCSIストレージ・インターフェースとして設計されていたためです。SASは、SCSIプロトコルを実行しているSASポートを介して単一のドライブを接続し、その後PCIeリンクに接続します。SATAは、ATAコントローラー経由でATAプロトコルを実行しているSATAポートを介して単一のドライブを接続し、その後PCIeリンクに接続します。

最近までほとんどのSSDは、SASまたSATAを使用してコンピューター・システムの他の部分と接続していました。しかし、ストレージ業界においてソリッドステート・テクノロジーが台頭するにつれ、HDDとの併用が主流なSASとSATAは、ますます適合しにくい組み合わせになってきました。2023年のInternational Data Corporation(IDC)のレポートによると、NVMeは、コンピューターを1台以上の周辺機器に接続するための標準規格であるシリアル拡張バス、PCI Express経由で接続されたシステムへのデータ転送を高速化するように設計されています。

NVMeのプロトコルは、SSD専用に設計されているという事実に加え、SCSIよりも効率的であるため、MLやAIなどのリアルタイム・アプリケーションに、より適したソリューションとなっています。クラウド・コンピューティング環境の人気が高まる中、NVMeは、組み込まれているその高い性能とデータ保護機能により、ハイブリッドクラウドマルチクラウド、メインフレームのストレージ環境にも適しています。

SASまたはSATAドライブ上でNVMeストレージを使用するメリットの一部を次に示します。

パフォーマンスの向上:NVMeテクノロジーは、PCIeを使用して、SSDストレージをサーバーまたは中央処理装置(CPU)に直接接続できます。この大幅なパフォーマンス向上により、NVMeテクノロジーは、ゲーマー、ビデオ編集者、その他SASやSATAを使用したHDDよりも高いパフォーマンスを必要とするユーザーに好まれるデータ・ストレージ/転送オプションになりました。

高速:NVMeドライブは、NVMeコマンドの送受信がより高速で、より優れたスループットを実現できるため、SASまたはSATAドライブよりも高速に動作します。

互換性の向上:NVMeは、SASやSATAよりも互換性の高いオプションであると広く考えられているほか、AI、ML、クラウド・コンピューティングなど、重要で変化の激しいテクノロジーと並行して開発されるため、更新も頻繁に行われます。NVMeテクノロジーは、携帯電話、ノートPC、ゲーム機など、すべての最新のオペレーティング・システムでシームレスに動作します。

帯域幅の向上: PCIe接続は、SASポートやSATAポートよりも帯域幅が広く、豊富です。また、世代が新しくなるごとに性能が向上し、前世代の帯域幅の2倍になります。SASとSATAは帯域幅が低く、固定されているため、時間の経過とともに改善されることはありません。PCIe接続を際立った存在にしているもう1つの特長は、「レーン」単位で拡張できるということです。そのため、同じ世代であっても、レーン数を2倍にすれば帯域幅を2倍にすることができます。

NVMeとSATAについて詳しく知りたい方は、「NVMe versus SATA: What's the difference?(NVMeとSATAの違い)」をご覧ください。

NVMeの仕組み

SSDとフラッシュ・ストレージが登場するまで、すべてのHDDストレージ・システムでSATAが使用されていました。しかし、モバイル・アプリケーション、ビデオ・ゲーム、AIなどの新技術によってコンピューティング環境への要求が高まるにつれ、SATAの限界が明らかになりました。具体的には、SATAは速度が遅く、帯域幅も低いため、新しいアプリケーション機能の鍵となる大規模なデータ転送がスムーズに行えなくなりました。

NVMeは、処理時間を低下させずに大量のデータ転送を行わなければならない環境における、SSD向けのSATAよりも優れたデータ・ストレージ/転送オプションとして発明されました。NVMeにより、SATAドライブの場合と同様に、PCIeバスおよびM.2またはU.2アダプターを使用して、SSDをCPUに直接接続できます。また、NVMeを使用すると、SSDをCPUに直接接続し、大量のデータを迅速に読み書きできるようになります。

さらにNVMeは、より高いパフォーマンスを実現するために、PCIeベースのSSD向けのレジスター・インターフェース、コマンド・セット、機能グループを定義します。PCIeバス経由で接続すると、NVMeプロトコルにより遅延が短縮され、1秒あたりの I/O 操作(IOPS)が最適化されます。

NVMeドライバーは、Windows、Linux、MacOSなど、多くの種類のオペレーティング・システム(OS)に対応しています。また、NVMeプロトコルは、NANDフラッシュ対応SSDを含むあらゆる種類のNVMをサポートしています。最後に、NVMeは、従来の「割り込み」ベースのデバイス・ドライバーではなく、並列コマンドキューと「ポーリングループ」を使用することで、遅延とシステム・オーバーヘッドを低減するほか、グラフィック・カードが基盤となるCPUよりも高速に動作する場合をはじめとした、CPUのボトルネックを回避します。

NVMe SSDのフォーム・ファクター

NVMe仕様のもう1つの重要な差別化要因は、フォーム・ファクター、つまりサイズ、構成、物理設計が他のデバイスとの互換性に与える影響です。最近になり、Storage Networking Industry Association(SNIA)が、SSD技術に関する合意された業界全体のフレームワークを作成するための、企業およびデータセンターにおける標準フォーム・ファクター(Enterprise and Datacenter Standard Form Factor:EDSFF)を確立させるために招集されました。

そこで合意されたSSDの標準フォーム・ファクターは、2.5インチという、ほとんどのノートPCやデスクトップPCのドライブ・ベイに簡単に収まるサイズでした。つまり、NVMe SSDは既存のテクノロジーと高い互換性を持つことになります。2.5インチドライブは、消費者向けや企業向けのコンピューティング環境で広く使用されているため、システムのパフォーマンスを上げたいユーザーにとっては、HDDをNVMe SSDに置き換えることは難しい作業ではありません。

m.2 NVMeドライブ

M.2 SSDは、SSDで使用されるもう1つの物理フォーム・ファクターまたはコネクターです。この言葉は、NVMeと同じ意味で使用されることがよくありますが、両者は異なる種類のストレージ・テクノロジーです。NVMe SSDがマザーボード上のPCIeスロットに取り付けられ、競合製品よりもはるかに高速なデータ転送速度を実現するのに対し、m.2ドライブは物理的なフォーム・ファクター(コネクター)であり、超薄型ノートPCやタブレットなどの小型で電力制約のあるデバイスで高性能ストレージを実現します。

NVMeとダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー

ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー(DRAM)は、パーソナル・コンピューター(PC)、サーバー、およびワークステーションで使用されるランダム・アクセス・メモリー(RAM)の一般的なタイプです。NVMe SSDには、DRAM搭載タイプとDRAM非搭載タイプがあります。DRAM搭載タイプのNVMe SSDは、DRAM非搭載タイプよりも高価で高速であるため、写真や動画編集ソフトウェアなどのグラフィック集約型アプリケーションに適しています。DRAM非搭載のNVMeは、より手頃な価格で速度は遅いものの、それでもHDDやSATAのSSDよりもはるかに高速であるため、実行中のアプリケーションにそれほど速度やパフォーマンスを必要としないユーザーにとっては良い選択肢となります。

NVMeのユースケース

NVMeは、低遅延、低電力要件、さらにSASやSATAドライブよりも高速なデータ保存・転送機能を備えているため、ビジネス向けにも消費者向けにも適しています。NVMe SSDは、パフォーマンスを向上させ、データ・ストレージ容量を増加させるだけでなく、SASやSATAのSSDよりも入手しやすく、IntelやSamsungなどの信頼できる消費者向け企業から購入できます。ここでは、NVMeの一般的なユースケースを数件紹介します。

ハイパフォーマンス・コンピューティング

NVMe の速度、プログラミング性、並列処理能力は、刻一刻と更新される金融取引、AI、MLなど、幅広い高性能コンピューティング・アプリケーションに最適です。

要求の厳しいアプリケーション

多くの最先端アプリケーションでは、ストレージに大きなキュー深度が必要です。NVMeは、かつてのSAS/SATAと異なり、キューあたり最大65,000のキューとコマンドを保持できるため、数千コマンドの実行が可能になります。

データセンター

NVMe SSDは、データセンターのデータ・ストレージ容量を拡張し、SATA SSDと同等の価格でより高いパフォーマンスを発揮させるため、多くの現代企業がNVMe SSDへの切り替えを行っています。Enterprise Strategy Groupのレポートによると、ほぼ4分の3の組織が、すでにNVMeベースのSSDストレージを使用しているか、今後12カ月以内の導入を計画しているとのことです。1

グラフィック編集

家族の再会のビデオを編集している場合でも、アニメーション映画の制作に取り組んでいる場合でも、NVMeの高速データ転送により動画編集が大幅に高速化されます。簡単に言えば、動画編集ソフトウェアでシーンを編集およびレンダリングすると、大量のデータが生成されますが、NVMe SSDは、プロセスを減速させることなくこれらすべてのデータを処理できるということです。

DevOps

コンテナ化されたDevOpsアプリケーションにNVMeを導入することで、多くの開発者にとって大規模なビルドの時間が短縮され、コーディングのイテレーションが高速化しました。NVMeはまた、開発をより迅速かつ低コストにし、自由に使える幅広いツールを準備してチームがより迅速に開発を開始できるように支援します。

リレーショナル・データベース

NVMeフラッシュ・メモリー・システムは、アプリケーションのパフォーマンスを高速化し、リレーショナル・データベースに必要な物理サーバーの数を減らすことができます。これにより、従来のハード・ディスクよりもパフォーマンスが高速化し、運用する組織はクエリをより迅速に実行できるようになります。

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脚注

1 “ESG Research Report: Data Infrastructure Trends”, Enterprise Strategy Group, 15 November 2021