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NASAの宇宙計画とIBM〜映画『ドリーム』

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いよいよ明日(2017年9月29日)に公開が迫った映画『ドリーム』。もちろん、映画は映画であり、必ずしも史実に忠実ではありません。実は、NASAに初めて導入されたIBMのメインフレーム・コンピューターはIBM 7090ではないのです。歴史を紐解くと、NASAではIBM 7090よりも数世代前の機種から、IBMのメインフレーム・コンピューターが活用されていたのです。

NASAの宇宙計画に関する歴史の全貌は、IBM自身の公式なコンテンツとして年表(Space flight chronology)が公開されていますので、興味を持っていただけましたら、ぜひ、ご覧ください。

本記事では、Twitterで「映画ドリーム 豆知識」と題して紹介した、マーキュリー計画前後のIBMの宇宙史を一覧できるように整理します。

IBM 650

映画に登場するIBM 7090よりも前に、NASAのマーシャル宇宙飛行センターの前身の組織に、IBM 650が導入されていました。
IBM 650は、ジュピターC ロケットの開発に用いられました。

1955 The U.S. Army’s Computational Laboratory in the Guided Missile Division — which later becomes part of the National Aeronautics and Space Administration (NASA) Marshall Space Flight Center — uses two IBM 650 computers to design the Jupiter C (Composite Reentry Test Vehicle), which consists of a modified Redstone missile and upper stages. The IBM 650 is a workhorse general purpose digital computer capable of performing 78,000 additions a minute.”

IBM 701

映画で、黒塗りされた資料を透かしながら、キャサリン・ジョンソン(この時点ではキャサリン・ゴーブル)が検算する弾道飛行用ロケットのレッドストーンと軌道飛行用ロケットのアトラス。(この場面の本編映像が、映画.com「主人公にスパイ疑惑浮上!NASAで活躍した黒人女性を描く「ドリーム」本編映像を入手」で視聴できます)
軌道飛行用ロケットとして、ジョン・グレンの打ち上げに使われたアトラスの開発には、IBM 7090より前のシステムであるIBM 701が用いられました。

1953 IBM delivers one of its first 701 computers to Convair, the developer of the Atlas missile (which is later used in the Mercury program).”

IBM 704

ジョン・グレンの依頼で、キャサリン・ジョンソンが1962年に再計算したのは、1959年にキャサリン・ジョンソン自身が完成させた「軌道方程式」です。
「軌道方程式」が完成した時、スペース・タスク・グループ内のミッション計画解析部門は、IBM 704で計算試験を行いました。
参考:ハーパーBOOKS『ドリーム NASAを支えた名もなき計算手たち』第21章

IBM 704そのものは、衛星追跡とミサイルの設計用に導入され、1957年にはソビエト連邦(当時)の人工衛星であるスプートニクの追跡に、2台のIBM 704が使用されました。

1957 Two IBM 704 computers are used to track the Soviet Union’s Sputnik I, the world’s first artificial satellite.”

IBM 7090とサターン・ロケット

ジョン・グレンが地球周回を成功させる2年前にあたる1960年から、IBM 7090は、月への飛行を目的とするNASAのサターン・ロケットの設計・開発・シミュレーションで用いられました。

1960 A new IBM 7090 data processing system is acquired by NASA to perform key design and development calculations for Project Saturn — the development of a super booster with a thrust of 1.5-million pounds to power flights to the Moon. The solid-state 7090 is expected to provide the most accurate and detailed trajectory simulations ever plotted. It furnishes data from storage in 2.18 millionths of a second and adds 13,740,000 figures a minute.”
“Through simulation techniques in the early 1960s, NASA’s Saturn moon flight rocket was “flown” thousands of times within the IBM 7090 computer before real flight. The fully transistorized 7090 could perform 229,000 calculations a second. (VV2022)”

IBM 7094とジェミニ計画

マーキュリー計画とアポロ計画の間に実施されたジェミニ計画は、2人乗りの宇宙船の運用とランデブーやドッキング、そして宇宙遊泳を実現したものでした。
このジェミニ計画では、IBM 7090の後継機である IBM 7094がミッション・コントロールに使われました。

1965 NASA’s Real Time Computer Complex, developed by IBM for the Gemini program, features five linked 7094 Model II computer systems, five 2361 Core Storage Units, and two 1460s for off-line support.”
“IBM 7094-11 computers were used in the RTCC during NASA’s Gemini program and on the first three Apollo/Saturn missions. Later, IBM System/360 Model 75J mainframes, plus peripheral storage and processing equipment, were employed. Two computers were used during a mission: one was primary; the other operated identically but as standby.”

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現代のIBMのメインフレーム
これまでも、そして、これからも社会基盤を支えるIBMのメインフレームは、ブロックチェーン機械学習といった最先端のテクノロジーの基盤として、デジタル時代に求められる信頼を根幹から支えます。


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