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持続可能かつ倫理的な生産と調達を | 小規模コーヒー農家をブロックチェーンで支援

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かつて今以上に、人びとが小規模ビジネスや組織、ブランドを支援したいと願っていたときはなかったのではないでしょうか。

たとえそれが、はるか彼方の地であっても、すばらしい体験を味わわせてもらえるのであれば。

 

そうした体験を最も感じられるものの一つが、コーヒーではないでしょうか。

アメリカでは1日あたり4億杯のコーヒーが消費されており、個人当たりの消費量では世界第3位。そして日本は世界第4位です。

しかし、そのふくよかな味と香りが私たちの心を豊かにし、たくさんのすてきな時間を与えてくれているにも関わらず、私たちはその生産者に感謝の気持ちを伝えるすべを持っていませんでした。

その多くは、熱帯気候の地域で大変な苦労をしている小規模コーヒー農家の方たちです。

 

ここに、ある調査結果があります。

18歳から24歳までのコーヒー消費者たちの3分の2が、持続可能かつ倫理的に生産され、調達されたコーヒーを飲みたいと言っており、そのためであれば、いくらかの割増料金を支払うことも厭わないと答えているのです。

 

■ 小規模コーヒー農家と消費者の距離を近づける

コーヒー消費者とコーヒー農家の距離が遠く離れているということは、消費者がコーヒー農家の苦労を感じにくく、また彼らの労働の実態を掴みづらいということを意味しています。

コーヒー農家の暮らしは苦しいものです。彼らの生活はコーヒー豆の価格変動に大きく依存しており、価格が低く厳しい年には、彼らの収入はゼロに等しくなってしまいます。

近年では、2018年に業界全体のコーヒー栽培平均利益率がマイナス2%を記録しています。

 

コーヒー豆のほとんどを生産している小規模コーヒー農家の平均年間世帯収入は、3,000米ドルを下回っているのです。

あなたが地元のお気に入りのコーヒーショップで頼んでいる500円のフレンチプレスも、コーヒー豆農家がそこから得ている収入は、おそらくは5円程度である可能性が高いのです。

 

こうした背景ゆえに、私たちは「Farmer Connect」という、IBM Blockchain上に構築されたコーヒーサプライチェーンの可視性と公平性を高めるトレーサビリティプラットフォームの登場に大いに元気付けられています。

そして、小規模コーヒー農家とその家族の運命が変わるのではないかと、大きな期待を寄せています。

エル・ポルベニールコーヒー農園所有者 アナ・マリア・ドニス氏 https://www.youtube.com/watch?v=8WWUq8ojSPU

 

2020年の1月、IBMとFarmer Connect、そして大手食品メーカーJ.M. スマッカーを含むコーヒー業界の主要メンバー・グループは、ブロックチェーンアプリ「Thank My Farmer」を発表しました。

「Thank My Farmer」はコーヒー消費者向けのアプリで、使用しているコーヒー豆についてどのような種類の豆がどのように栽培され、調達されたのかを確認することができるものです。

さらに「Thank My Farmer」を通じて、コーヒー愛好家は小規模農家のコーヒー苗木や農業機械の購入資金や、農家や地域の学校に清潔な水を届けるインフラ整備費用、地域の子どもたちのための学用品購買費用など、コーヒー農家とその周辺地区の生活改善支援プログラムに金銭支援をすることもできます。

なお、すでにアプリを通じてコーヒー農家へ送られた感謝の気持ちと金銭から、すでに資金調達を完了し実際に生活改善支援をスタートしているプログラムも存在しています。

 

■ QRコードでシングルオリジンの「こだわりの一杯」に迫る

2020年7月、フォルジャーズやダンキンドーナツなど、広く愛されているコーヒー・ブランドを傘下に持つJ.M. スマッカー社は、トレーサビリティプラットフォーム「Farmer Connect」を基盤とした新たなサービスの提供を発表しました。

単一品種・農園・生産処理を施された、1850ブランドの100%シングルオリジン・コロンビアコーヒーのパッケージに、新たにQRコードが貼付され、消費者に詳細情報が提供されるようになったのです。

コーヒー・サプライチェーンのトレーサビリティと公平性、そして効率を高めるという使命を当初から追い続け、Farmer Connectプラットフォームの開発にも深く関わってきたJ.M. スマッカー社のこのサービスにより、アメリカのコーヒー愛好家たちはその「こだわりの一杯」をさらに楽しめるようになります。

「Thank My Farmer」の利用シーン https://www.youtube.com/watch?v=3bD7BF7Bqvk

 

そしてこの新サービスにより、コーヒー愛好家は「Thank My Farmer」アプリを通じて、自分のお気に入りのコーヒーがどのような旅路を廻り、自分の元までやってきたのかを確認することができます。

そして手軽に感謝のチップを送ることで、コーヒーが栽培されているコロンビアのコーヒー農家を支援する地域プロジェクトと、現地の社会起業家を支援することができます。

 

今回お伝えした発表は、まだ序章に過ぎません。ブロックチェーン・プラットフォームのシングルオリジンコーヒーへの展開は、今後、最も広く流通しているマルチオリジン・ブレンドコーヒーのトレーサビリティの基礎を築くものとなるでしょう。

そして今後、信頼できるブロックチェーンを通じて、もっと多くのコーヒー農家とデジタルにつながり、私たちは感謝の気持ちを伝えられるようになるでしょう。

 

「Thank My Farmer」は、私たちの小さな感謝の気持ちを、遠く離れた小規模コーヒー農家へと集めていく「贈与経済(ギフトエコノミー)」的な行動の社会実装の一事例です。

今後はおそらく、こうした取り組みがさまざまな分野・地域へと拡がっていくことでしょう。

そしてこの広がりがある規模にまで達したとき、私たちの生活は、貨幣経済一辺倒の現在の姿から、新しい姿へと変革していくのではないでしょうか。

 

 

Farmer Connectについて

Farmer Connect社は、伊藤忠商事、コロンビアコーヒー生産者連合、JMスマッカー(米国)、ジェイコブズ・ダウ・エグバーツ(オランダ)、RGCコーヒー(カナダ)、ベイヤーコーヒー(ベルギー)、スカフィナ(スイス)など、世界のコーヒー業界のトップ組織をパートナーとしている、テクノロジーを通じた人間的な消費の実現を推進するというビジョンを持った、スイス・ジュネーブに拠点を構えるスタートアップです。

世界中のコーヒーとカカオのサプライチェーンにおけるトレーサビリティ、持続可能性、効率の向上を、ブロックチェーン技術などのテクノロジーを基点にサポートすることで、グローバル企業のコストと非効率性の削減と、小規模農家や中小社会的企業の支援を同時に実現します。

より詳細な情報はこちらでご確認ください。

 

関連ソリューション: IBM Blockchain

 

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当記事は『Bringing region-to-cup traced coffee to U.S. stores with 1850 Coffee』をベースに、日本のお客様向けに編集したものとなります。

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