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ジェレミー・リフキンの第3次産業革命 | 新しい根源的共有経済の衝撃

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ジェレミー・リフキンが『限界費用ゼロ社会』を書いたのが2015年。その2年後、私は『勝手要約『限界費用ゼロ社会』』というブログ記事に要旨をまとめました。2年経っていたからこそ時代が追いついて、内容がはっきり理解できました。

そして先日、今から2年前の2018年にNYのブルックリンで行われた講演『The Third Industrial Revolution: A Radical New Sharing Economy』をYoutubeで見ました。

 

 

衝撃的でした(そして続けて3回見ました)。

ここ数年で自分がIoTやAIというテクノロジーについて学んだのと、地球温暖化や循環経済(サーキュラーエコノミー)について学んだこともあり、2年前に語られたリフキンの言葉がグッと目前に迫ってきました(これほどの知の巨人が本当に心から恐れているのです! 私もようやく本当の危機感を持って感じられるようになった気がします)。

そしてまた、COVID-19後を見据えるべき今だから、社会をアップデートするまたとないチャンスの今だからこそ、多くの人が見るべきものじゃないかと心から思います(なお、動画には日本語字幕も付いています)。

 

動画は100分超えの長さですが、リフキンのストーリーテラーとしての力と熱量がすごく、おそらく見始めて10分を過ぎたらもう止めることはできないでしょう。

とは言え、今の時代100分を費やすことを躊躇する人が多いのも理解できます。もし、全部を見る時間が取れないという人は — あるいはまず要旨を確認したいという方は — かなり絞って要点をまとめたので、まずはこちらをお読みください。

なお、チャプター毎にかなり文字量が異なりますが、これは実際に各チャプターにリフキンが費やした時間を反映しています。

 


■ オープニング

世界中でGDP(国内総生産)が減速しています。それはこの20年間、世界中の生産性が低下しているからです。その結果失業率が非常に高くなり、それが最も際立っているのがミレニアル世代です。

そして私たちは環境変化の真っ只中にいますが、もっとも恐ろしい「地球の水循環の変化」がまったく明らかにされていません。この惑星の気温が0.6℃上がる毎に、大気に吸い上げられる水分量は7%上がり、それが千年に一度にしか起こらないはずの大雨大雪洪水を「新しい日常」にしています。

この環境変化による最悪の結果を阻止するチャンスは、40年以内に炭素の使用を無くす以外ありません。それを実現する経済的パラダイム・シフト – 新しいヴィジョンと戦略、実行力が必要です。

 

■ Chapter 1: 歴史上の重大な経済革命 | The Great Economic Revolutions in History

「コミュニケーション・テクノロジー」「新しいエネルギー源」「交通と輸送機関」の3つのテクノロジーが、現在の私たちの経済生活の基盤となっています。

20世紀の間中その3つを支え続けたのは化石燃料です。肥料、殺虫剤、建築材、ほとんどの医薬品、化学繊維、動力、交通機関、温熱照明 — すべて化石燃料から作られそれによって運ばれています。

 

OPECは、世界を原油で溢れさせ、アメリカのシェールガスやカナダのタールサンドなどの新規のライバル企業を全滅させました。そして今は化石燃料企業同士が争っています。

メルケルが首相となってすぐ私はドイツに呼ばれ、そこで彼女に告げました「ドイツ国内のあらゆる事業が接続された基盤が何年も前に生産性のピークに達しているままでは、成長は不可能」だと。

 

■ Chapter 2: 生産性の科学 | The Science of Productivity

経済成長理論でノーベル賞を受賞したロバート・ソロウは、「生産性を活発化するのはより良い機械と労働者」という考えが誤りで、それが生産性の約14%しか占めていないことを突き止めました。

古典的経済論が記された18世紀末頃の経済学者たちは、経済にはまったく関連のない「すべての作用はそれと等しい反作用を伴う」というニュートン物理学のセオリーを経済に取り入れてしまった。

 

考えるべきは経済効率性(天然資源が価値連鎖を通して転換される毎に失われるエネルギーの割合)です。ドイツは18.5%、日本は90年代に効率性20%に達した。それが限界で以来変わっていない。

私はメルケル首相に「第2次産業革命の基盤に接続されている限り、経済効率性20%は超えられない」と伝えました。物理学者でもある彼女は「第3次産業革命をドイツで行います」と答えました。

 

■ Chapter 3: 新しいスマートな基盤 | A New Smart Infrastructure

今、ワールド・ワイド・ウェブ、再生可能エネルギー用インターネット、交通・輸送用インターネットからなる1つのスーパーインターネットが作られています。IoT(Internet of Things)です。

これは第3次産業革命です。これまで独占的な力を手にしていた中央権力や仲介業者を回避し、協力的で、オープンで、透明であるほどうまく機能する中立性の高い相互貢献型のネットワーク経済です。

 

一方で、ミレニアルズ以降の3世代は、政府や巨大モノポリー企業のデータ独占、プライバシーの確保、サイバー犯罪との戦い…これらの新しく苦しい政治運動を続けることとなります。

この運動に勝ち続ければ、あなたはこの新しい基盤に繋がりビッグデータ分析により経済効率性を劇的に向上できるでしょう。そしてエコロジカル・フットプリントとコストが劇的に削減されたとき、まったく新しい経済システムが生じます。

 

■ Chapter 4: 限界費用ゼロ社会と共有経済の誕生 | Zero Marginal Cost and the Rise of the Sharing Economy

20世紀末のナプスター(ファイル共有システム)の登場はデジタル革命につながり、限界費用(1ユニットの生産費用)ゼロを実現しました。ウィキペディアは知識の民主化を進め、ミレニアル世代は共有経済という新しい経済システムを生みだしました。

アダム・スミスは「個人は自己利益を追求するだけで公益には無関心だ」と言いました。私の世代はそう聞かされて育ちました。でもミレニアル世代は誰もアダム・スミスを読んでいないようです!

 

IoTによって、限界費用ゼロ体制はデジタル界から物質界へと広がり、今や何百万人が再生可能エネルギーを限界費用ゼロ近くで生産しています。次の20年間で輸送交通も同じになるでしょう。

メルケル首相との最初の会話からの10年で、ドイツでは電力の32%が太陽と風力発電となりました。太陽も風もタダですからドイツに請求書を送ってきません。近いうちに限界費用ゼロとなるでしょう。

すべての人がそれを共有できるようになったとき、第2次産業革命国はどうやってそれと競うのでしょうか?これは大国ドイツだけの話ではありません。小さな隣国デンマークもすでにこれを行いました。誰にでもできることなのです。

 

太陽熱はいたる所で少しずつ集めなければなりません。風も地熱も同様です。地域が協力し合う協同組合が力を持ちます。比喩的にも文字通りの意味でも「パワー(エネルギー)・トゥー・ザ・ピープル」です。

第3次への移行期間の間に、何千という企業と提携して、エネルギー管理、ビッグデータ分析、アルゴリズムやアプリのサポートをするという運営システムに転換できない企業は倒産するでしょう。

ヨーロッパに続いたのは中国です。最初に現政権に呼ばれて話をしたわずか11週間後には、中国のエネルギー供給網をインターネット化し、何百万という中国人が自分たちの地域で太陽と風力から生産したエネルギーを共有するための、820億米ドルを投じたプロジェクトがスタートしました。

 

地球温暖化におけるCO2排出の1番の原因はビル建築、2番が肉の消費、3番目が輸送機関です。でも求められるものが車の所有権からモビリティへのアクセス権へと変化したので、次の2世代にかけて自動車の80%が排除されます。

生き延びたければ、交通機関業界もこの転換期の間に新システムへ転換しなければなりません。

ダイムラー社はこの3年で30万台のトラックにセンサーを装備し、経済効率性と生産性を高め、環境負荷を減らすための交通、天候、倉庫のデータをヨーロッパ中から集めています。

そして自動運転テクノロジーにより、トラックの運転手たちはもはやドライバーではなく、経済効率性を高めるためにデータを管理・監視するソフトウェア・アナリストになったのです。

 

■ Chapter 5: 転換用の資金調達 | Financing the Transition

このチャンスを手にするために、ヨーロッパはEUと協力し、次の10年で第3次産業革命の基盤を構築します。資金は、投資先の優先順序を考え直し、すでに生産性のピークに達している古い基盤の補正費用の中からいくらかをそちらに振り分けます。

私たちはこれを「デジタルヨーロッパ」と呼んでいて、中国にも似たような「チャイナ・インターネット・プラス」という計画があります。さてアメリカはどうするのでしょうか?

 

■ Chapter 6: 集団就職の世代 | The Generation of Mass Employment

古い基盤からスマートな基盤への転換は、エネルギー供給会社や、建設業、不動産業の大仕事を意味します。ロボットやテクノロジー自体が絶縁体の設置や全電気供給網のデジタル転換作業はできません。次の2世代分の人間の労働が必要となります。

政府の多大な関与は必要ではありません。エネルギー貯蓄によって払戻しできるのですから、エネルギー供給企業を中心に進めることができます。もちろん難しいチャレンジですが、この5〜60年で人間が作った電気供給網、高速道路、都市を見れば可能であることが分かります。

 

■ Chapter 7: 新しい時代の新しい認識 | A New Consciousness for A New Era

私が子どもの頃は、親が「あなたのおもちゃを買ってきたわよ。自分のなんだから大事に使いなさい」と言いました。今はサブスクリプションサービスから新しいおもちゃが届き、「次の子も楽しめるように大事に使おうね」と親は言います。子どもが学ぶのは「市場と所有権」から「一定期間における経験へのアクセスと、循環経済の一部となる術」へと変わったのです。

2050年までに、「資本主義市場」と「共有経済の中」という2つの成熟したシステムが成り立ち、1日の中で人はそれを行き来するようになるでしょう。消費者主義から持続可能性へ、市場資本から社会資本へ。

 

「自由」の定義が、「自律性・独立性・排他性」から「ネットワーク・コミュニティーへのつながり」へ。「権力」の定義が「縦型のピラミッド」から「どこまでも横に広がるネットワーク」へ。「コミュニティー」の定義が「乏しい資源をめぐるゼロ・サム・ゲームの戦いにおける仲間」から「生物圏意識を持った地球環境を守る仲間」へと変化しています。

14歳の子が夕食の場で親に言っています「僕のハンバーグはたった3年分の牧草を得るために焼き払われてしまった熱帯雨林から来たの?」「そこでしか生活できない動物や植物の希少種は絶滅してまうよ」「CO₂を吸収するはずの木々がなくなったら洪水や干ばつがますます酷くなるよ」と。

 

私は、1973年にエネルギー問題に取り組み始め、1980年に『エントロピーの法則—地球の環境破壊を救う英知』という本を書きました。あの頃の私はフィードバック・ループを予測していなかった、もっと時間があると考えていたのです。今、私は、環境変化に本当に怯えています。

幸運なことは、私たちには第3次産業革命という、すばやく炭素を断ち切る新しい基盤の枠組みとそれを可能にするテクノロジーがあります。限界費用ゼロは環境負荷ゼロを実現し、循環経済を流通させるのです。

もし、環境変化に取り組み経済を動かす他のプランがあるのなら、ぜひそれを聞きたい。でも、誰もそれを見つけられていないのです。

 

 

いかがでしたか?

動画にはこの後、講演参加者とのQAタイムがたっぷり30分くらい取られています。もし「そちらも読みたい」という方がいるようだったら、近いうちに続きを載せようと思います。

Happy Collaboration!

 

 

コラボレーション・エナジャイザー

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