フューチャーデザイン

時間は幻影 – ブック・オブ・フューチャーズ (Bespokeの『Book of Futures』日本語訳)

記事をシェアする:

 

位置決めるのフェーズでは主に研究対象と活動フィールドを定義するのですが、実際の作業にあたっては心構えが大切です。

『Book of Futures』の日本語訳第4回は、『時間は幻影(time is an illusion)』をお届けします(第3回はこちら)。

 

 

When the great Italian engineer Michele Besso died in 1955, his good friend Albert Einstein wrote in a letter to Micheles sister:

著名なイタリアの工学者、ミシェル・ベッソが1955年に亡くなった際、親友のアルバート・アインシュタインは遺族に手紙を書いています。

 

Michele has left this strange world a little before me. This means nothing. People like us, who believe in physics, know what the distinction made between past, present and future is nothing more than a persistent, stubborn illusion

「ミシェルは少しばかり先んじて、この奇妙な世界を去っていった。これは大したことではない。
我々のように物理学に信を置く者にとって、過去、現在、未来の間の別離とは、単に頑固でしつこい幻想という意味でしかないのだから。」

 

To explain what this means, Carlo Rovelli, writes in his book Seven Brief Lessons on Physics, about heat. Understanding the laws of thermodynamics is crucial to understanding the question of time. Rovelli exemplifies with a spoon that is placed in a cup of hot tea. Heat moves from hot things to cold things, but not vice versa, and therefore the spoon becomes hot. There is an exchange of heat over time. As soon as there is heat, the future is different from the past.

この言葉の意味を説明するのに、カルロ・ロヴェッリは『Seven Brief Lessons on Physics』(邦題『世の中ががらりと変わって見える物理の本』)という本の中で、熱について書いています。
熱力学の法則の理解には、時間の理解が不可欠です。
ロヴェッリは、熱い紅茶が注がれたカップに入れられたスプーンを例に説明します。熱は熱いものから冷たいものへと移動する、だがその逆はないので、スプーンが熱くなる。熱は時間の経過とともに移行する。
そこに熱が存在すれば、未来はすぐに過去とは異なるものになる、と。

 

In every case where there is no exchange of heat, the future behaves exactly like the past. If there is no friction, a pendulum can swing forever, and the future of pendulum is predictable. If there is friction, if there is heat, the pendulum will slow down, and we would be able to distinguish the future from the past. This means, the difference between the past and the future exists only when there is heat, and heat means friction, movement, change.

熱交換の発生しないところでは、未来は常に過去とまったく同じふるまいを見せます。
摩擦がなければ振り子は永遠に動き続けるので、振り子の未来は予測可能です。しかし摩擦がそこにあり熱がそこにあれば、振り子は遅くなっていき、私たちは過去と未来の間に違いを見出します。
つまり、過去と未来が異なるのは、そこに熱があるときだけであり、熱とは摩擦や動きや変化を意味しているのです。

 

The change is not predictable though. Even for the tea spoon. It heats up because the tea and the spoon interact through a specific number of variables. But the value of these variables is not enough to make a prediction of the future exactly. It is only enough to say that the tea with optimum probability will heat up the spoon. As unlogic as it sounds, it is not impossible that the tea will become hotter when the cold spoon is introduced, it is just extremely improbable.

しかし、変化は予測不可能なのです。ティースプーンのことですら予測できません。
スプーンが熱くなるのは、紅茶とスプーンが一定数の変数を介して相互作用するためです。
でも、変数の値は、未来を正確に予測するには不十分なのです。そこから確実に言えるのは、紅茶がスプーンを熱くする確率が最も高いであろうということだけです。
とても不合理に聞こえるでしょうが、冷たいスプーンを挿入した際に紅茶がより熱くなる可能性はゼロとは言えず、その可能性が極端に低いとしか言えないのです。

 

Modern physics suggests that the now is an illusion. That the universal flow of time is a generalization that simply does not work. We say that the past no longer exists, and that the future does not yet exist. That only the things of the present exist. But there is nothing that corresponds to the notion of the now in physics. Confused? If you hold the now up against here, it might help: The two words here and now are indexical – they point to the context in which they occur. If things that are not here exist, then things that are not now should also exist.

代の物理学は、<今>が幻想であることを示しています。時間は普遍的に流れるものであるという考えは、もはや成り立たないのです。
過去が存在しないのであれば、未来もまた存在していません。そこに存在しているのは現在だけです。
しかし物理学には<今>に該当する概念が存在しません。混乱してきましたか?
<今(now)>を<ここ(here)>に置き換えると理解しやすいかもしれません。<今>も<ここ>も、共に言語学的には「指標詞」と呼ばれるもので、それらが示すのは文脈においての対象です。
<ここ>ではないものが存在するのであれば、<今>ではないものもまた存在するのです。

 

What happens if you don not put the teaspoon in the tea? What if you leave it on the table and pour the tea over it? What if you choose to do something highly unpredictable? It is simple, your surroundings will change over the course of time. When you create friction, motion, action, you create change over time. You still cannot predict the future, but you can make changes that with a certain probability will change the future. With no motion, there is no distinction between past and future. There is stagnation.

茶にスプーンを入れなければ、一体何が起きるのでしょうか?
あるいはスプーンをテーブルに置いたままそこに紅茶を注ぎかけたら? あるいはもっと想像を超えるような何かをした場合には?
答えは実にシンプルで、状況は時間の経過とともに変わっていくだけです。摩擦、運動、行動を起こすとは、経時的変化を起こすということです。未来を予測できないことに変わりはありませんが、それでも、ある程度の確率で未来を異なるものにする変化を、私たちは起こすことができるのです。
運動のないところでは、過去と未来の間に違いはないのです。そこにあるのは停滞です。

 

The future is created where there is motion. By behaviour, conversation, interaction, culture, the future is constantly altered. And most of it is unconscious. If we dare to regard time as a whole, that we can manipulate, there is good news: Not only is the past and the present now. The future is now. And it belongs to those who move.

未来は動きのあるところで生みだされます。
行動により、会話により、インタラクションにより、文化により、未来は常に変化させられ続けています。そのほとんどは無意識のうちに。
時間全体をコントロール可能だと大胆に捉えられる者は、「過去と現在だけが<今>ではない。未来も<今>だ。」という素敵な知らせに迎えらます。
その知らせは、アクションを起こす者にだけ届けられるのです。

 

 

世の中ががらりと変わって見える物理の本』を読んだ方がいましたら、翻訳した内容が正しいかどうかぜひ、教えてください。私も近いうちに読んでみようと思います。

 

Happy Collaboration!

 

コラボレーション・エナジャイザー

More フューチャーデザイン stories

訃報 八木橋(パチ)さん 118歳 著述家

  訃報 八木橋(パチ)さん 118歳 著述家 八木橋昌也(やぎはし まさや) 一九六九(昭和四十四 […]

さらに読む

救われない話とエンターテインメント、あるいはセルマソングス

uneasy(不安)でありながらuncomfortable(不快)にしないこと。それがエンターテインメントとし […]

さらに読む

大巨人と王子

  昨年末にさまざまな物語を紹介している本を読んだのですが、その中にとてもおもしろい民話が載っていま […]

さらに読む