ビジネス・オブザーバビリティーとは

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ビジネス・オブザーバビリティーの概要

ビジネス・オブザーバビリティーは、企業のデータフロー、ビジネス分析、主要業績評価指標(KPI)をリアルタイムでエンド・ツー・エンドに可視化し、組織のパフォーマンスを包括的に理解するための取り組みです。

ビジネス・オブザーバビリティーは、IT運用をより広範なビジネス目標と整合させます。 企業は、インフラストラクチャー、ソフトウェア・アプリケーション、お客様とのやり取り、ビジネス・イベントなど、さまざまなソースからのデータを継続的に収集、監視、分析する必要があります。

従来の監視の実践とは異なり、事前に定義されたパフォーマンス指標に基づいて問題を検知して報告するだけでなく、ビジネス・オブザーバビリティー戦略では、組織全体のデータを統合して相関付け、文脈を踏まえた包括的なビジネス運用の全体像を作り出します。ビジネス・オブザーバビリティーのツールを使用すれば、チームは障害やメンテナンス上の問題を予測し、問題発生時の修復ワークフローを自動化し、お客様とのやり取りを最適化するための提案を行えます。

その結果、ビジネス・オブザーバビリティー・ソリューションは、企業が生の運用データを意思決定に活かせるビジネス・インテリジェンスへと変換することを可能にします。リーダーは、ビジネスプロセスの最適化、カスタマー・ジャーニーの改善、リアルタイムでのデータに基づく意思決定を行えるようになります。

ビジネス・オブザーバビリティーの仕組み

現代のビジネスとそのコンピューティング・ネットワークは複雑で、動的なトラフィック・フロー、分散アーキテクチャー、クラウドネイティブ・アプリケーション、地理的に分散したビジネスチームなどが関係します。

オブザーバビリティーは、組織が複雑なITシステムをより深く理解するための正式な分野として確立されました。ビジネス・オブザーバビリティーは、ITオブザーバビリティーの原則と実践をビジネス全体に適用する取り組みです。ITリソース、運用戦略、チームの優先事項が、全社的なビジネス目標に向かって機能するようにすることを目的としています。

「オブザーバビリティー」という用語は、制御理論に由来します。制御理論は、動的システムを自動制御するための工学理論です(例えば、流量制御システムからのフィードバックに基づいて、配管内の水の流れを調整するなど)。

ITの分野では、オブザーバビリティーにより、最新の分散テクノロジー・スタックを深く可視化し、問題を自動的にリアルタイムで特定して解決できます。 システムのオブザーバビリティーが高いほど、ITチームはネットワークやアプリケーション・パフォーマンスの問題の根本原因を、追加のテストやコーディングを行うことなく、より迅速かつ正確に特定できることが多くなります。

オブザーバビリティーから得られる洞察は、組織がより適切に意思決定し、将来のニーズを予測し、リソースをより効率的に配分し、サイバーセキュリティーの防御を強化するうえで役立ちます。その結果、企業は変化するネットワーク需要に適応し、状況が変化してもデジタル・インフラストラクチャーを確実に管理できるようになります。

ビジネス・オブザーバビリティーは、オブザーバビリティーのアプローチをさらに一歩進めます。従来のオブザーバビリティーが主に技術レイヤーに焦点を当てるのに対し、ビジネス・オブザーバビリティーは、技術的シグナルとリアルタイムのビジネス指標(収益、コンバージョン、解約、顧客体験など)を統合します。ビジネスリーダーやチームは、ITシステムが最適に稼働しているかを把握できるだけでなく、ITシステムの健全性が主要なビジネス成果にどのように影響するかも理解できます。

ビジネス・オブザーバビリティーの構成要素

ビジネス・オブザーバビリティーの戦略とソリューションは、一般的に各組織のニーズに合わせて調整されますが、次のような主要なプロセスや機能を含むことが多いです。

主要業績評価指標(KPI)

KPIは、パフォーマンス目標に対する進捗を示す定量値であり、オブザーバビリティーの取り組みが支援すべきビジネス目標を定義するうえで役立ちます。

ビジネス・オブザーバビリティーの観点では、KPIにより、売上の増加や顧客満足度の最大化などの戦略的優先事項を、ビジネス側と技術側の利害関係者の間で整合させられます。

例えば顧客満足度を最大化するために、ビジネスKPIとしてネット・プロモーター・スコア(NPS)を、技術KPIとして平均修復時間(MTTR)を使用することが考えられます。NPSは、お客様が他者にその企業を推奨する可能性を測定できます。MTTRは、利用者から提出されたインシデントやサービス・リクエストに対し、ITチームが対応するまでに要する平均時間を追跡します。

適切なKPIの設定には、これらの目標に直接影響する基盤となるプロセス、ワークフロー、データ・パイプラインを特定することが一般的です。 KPIを設定することで、チームは上位レベルの目標から、目標達成に必要な技術システムや具体的なアクションまでを明確にたどれるようになります。

データ収集とリアルタイムのパフォーマンス監視

オブザーバビリティーを実現するには、ビジネスのパフォーマンスを深く可視化できるよう、企業は(アプリケーション、サーバー、データベースマイクロサービスなどから)大量のテレメトリーとビジネス・データを収集する必要があります。

テレメトリーとは、オブザーバビリティーの「柱」を構成するメトリクス、ログ、トレースを指します。メトリクスは、一定の時間間隔におけるシステムのパフォーマンスと健全性を示す、生データ、派生データ、または集約した定量測定値です。例えば、サーバーやアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)の状態を測定します。

ログは、ネットワーク内で発生するすべてのイベントとアクションを詳細に記録したタイムスタンプ付きのテキスト記録です。これにより、何がいつ起こり、ネットワークのどこで発生したかについての詳細な情報が得られ、トラブルシューティング、デバッグフォレンジック分析に役立つコンテキストを提供します。

さらにトレースは、ネットワーク上のデータ・フローを捕捉し、複数のデバイスやシステムを通過するパケットの経路や挙動について、リアルタイムの洞察を提供します。トレースにより、ITおよびDevOpsチームは、トランザクションのエンド・ツー・エンドの流れを把握できます。これにより、複雑で多層的な環境におけるルーティングの遅延や障害を特定しやすくなります。

カスタムのビジネス指標はデータ・セットを補完し、製品やドメイン固有のKPI(例えばサインアップ率)を、データウェアハウスエンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)顧客関係管理(CRM)プラットフォーム、カスタマー・サポート・チケット、POSシステムなど、さまざまなソースから取得します。

これらのシグナルは技術的な健全性を超え、ビジネス・コンテキストをオブザーバビリティーのワークフローに直接組み込みます。その結果、チームはビジネスに影響を与えるアクションを監視し、相関付け、最適化できます。

データのコンテキスト化

データのコンテキスト化は、ビジネスとネットワークのエコシステム(例えばトポロジー、デバイスの役割、アプリケーションの依存関係)に関する追加情報を付加することで、ITとビジネスのメトリクス、ログ、トレースを充実させます。コンテキストがなければ、未加工データからは行動につながる意味を引き出せません。

コンテキストがあることで、ITチームはネットワーク・イベントを特定のアプリケーション、ユーザー、ビジネス上の意思決定と相関付けられます。その結果、データ・サイロが解消され、狙いを定めたトラブルシューティングが容易になり、より適切な意思決定が可能になります。

例えば、月間売上が急減した場合、それだけを見れば不安を感じるかもしれません。しかしコンテキスト化により、トラフィックの傾向、地域の出来事、祝日シーズンの基準値が売上にどのように影響するかを把握できます。売上の低下が、お客様が旅行に出ることが多い祝日の週末と重なっている場合、その落ち込みは一時的ではあるものの避けがたい変動である可能性があります。狙いを定めた対策が必要なシステム上の問題ではない、と判断できます。

データ分析と相関

分析フェーズでは、オブザーバビリティー・プラットフォームが企業全体のテレメトリー・データとビジネス・パフォーマンス・データを集約し、相関付けます。

相関は、メトリクス、ログ、トレース、コンテキスト・データを結び付け、IT環境と企業全体を包括的に可視化します。これによりITチームは、イベント間やビジネスの各レイヤーにまたがる関係性を把握し、運用面およびビジネス面の成果を左右する根本的なパターンを明らかにできます。​

一見無関係に見えるデータ・ポイントも相関によってつなぐことで、根本原因分析を迅速化し、ネットワークの問題やビジネス上の課題により効果的に対応できるようになります。例えば相関を活用すれば、ビジネス部門とDevOpsチームは、連鎖的なIT障害の発端を特定のビジネス上の意思決定にまでさかのぼって追跡できます。

例えば、大規模空港で新しい手荷物処理システムが故障したとします。ビジネス・オブザーバビリティーのツールを使えば、その障害を、空港の経営層が下した意思決定と結び付けて把握できます。例えば、手荷物追跡ソフトウェアに対する集中型の変更管理システムを導入せず、自動化戦略を実行するための集中型の意思決定体制も整備しないまま、すべての空港ターミナルで手荷物処理を全面自動化した、というケースです。

具体的には、空港内の複数のチームが(それぞれ別のリーダーに報告していたため)、手荷物管理に関して相反する意思決定を行いました。分散したエコシステムのもとで、追跡ソフトウェアには何千件もの不整合が蓄積し、その結果、手荷物の誤配送や紛失が何千件も発生しました。

機械学習(ML)人工知能(AI)は、分析プロセスで重要な役割を果たします。

AI駆動型のオブザーバビリティー・ツールは、オンプレミスのデータセンターやクラウド環境から得られる膨大なテレメトリーデータ・セットを継続的に分析し、ネットワーク・アクティビティーをより広く可視化します。

また、MLアルゴリズムを活用して、オブザーバビリティー・ソリューションが運用のベースラインを学習し、異常を検知し、障害を予測し、修復の指針を提示できるようにすることも可能です。これらの機能により、企業は運用に支障が出たり、ユーザー体験に影響が及んだりする前に、潜在的な問題を予測できます。

データの可視化

ビジネス・オブザーバビリティーのツールは、多くの場合、複雑なデータを直感的に理解できる形式で提示するダッシュボードや可視化ツールを備えています。ヒートマップやデータ・フロー図などの可視化により、チームはITシステムの状況と、ビジネス目標に向けた進捗を迅速に評価できます。

アラートと通知

アラートは、特定の条件やしきい値によりトリガーされる自動通知です。多くのオブザーバビリティー・ソリューションは、重大なインシデントと軽微な異常を見分ける、インテリジェントな(AIを活用した)アラート機構も提供しています。アラート疲労を軽減し、ビジネス部門とITチームが最も影響の大きい問題に集中できるようにします。

IBM DevOps

DevOpsとは

Andrea Crawfordが、DevOpsとは何か、DevOpsの価値、そしてDevOpsのプラクティスとツールがアイデア考案から本番環境までのソフトウェア・デリバリー・パイプライン全体でアプリケーションを動かすのにどのように役立つかについて説明します。IBMのエキスパートが指導するこのカリキュラムは、ビジネス・リーダーが成長を促進するAI投資の優先順位付けに必要な知識を得られるように設計されています。

ビジネス・オブザーバビリティーのユースケース

ビジネス・オブザーバビリティーにより、企業はビジネスプロセスを支えながら、IT環境と運用を最適化するための、きめ細かな実行可能な洞察を得られます。次のようなさまざまなユースケースで大きな価値を発揮します。

収益の最適化

技術的・運用上のシグナルを、ユーザーあたりの平均収益などのビジネスKPIに直接結び付けることで、チームは収益創出の障害や機会をほぼリアルタイムで把握できます。

例えば、ストリーミング・サービスを考えてみましょう。ビジネス・オブザーバビリティーのツールは、ストリーミングの品質やユーザー行動データを、サブスクリプションのライフタイムバリューや広告収益といった収益化指標と関連付け、狙いを定めた改善策やオファーを検討できます。

マーケティング支出とコンテンツの提供内容が変わらないのに月次の解約率が上昇していることにマーケティング・チームが気付いた場合、オブザーバビリティー・ツールを使って、再生や起動の遅延も増えていることを突き止められます。その結果、視聴時間が減少していることも分かります。

この問題に対処するために、運用チームは、影響を受けている地域とデバイスに対するコンテンツ配信ネットワーク(CDN)のルーティングを調整し、動画のバッファリングと起動遅延を削減できます。時間の経過とともに、平均視聴時間の増加と解約率の明確な低下が確認でき、継続的なサブスクリプション収益の増加につながります。

サプライチェーンの最適化

オブザーバビリティー・ソリューションを使えば、マネージャーは在庫水準、受注処理と移動、サプライヤーからの出荷状況を追跡し、在庫ライフサイクルの各段階をエンド・ツー・エンドで可視化できます。

例えば、玩具メーカーがクラウド・ベースのオブザーバビリティー・システムを、ERPと倉庫管理システムに統合したとします。各製品と出荷物はRFIDタグで追跡され、調達、倉庫、営業チームがアクセスできる一元的なダッシュボードにリアルタイムで更新されます。

インフルエンサーが同社の新作ホリデー向け玩具に関する動画を投稿して拡散すると、オブザーバビリティー・プラットフォームは、複数の倉庫で在庫水準が急速に低下していることを検知します。システムは即座に調達チームへアラートを通知し、サプライヤーへの緊急発注を促します。同時に、余剰在庫のある最寄りの倉庫から需要が集中しているエリアへ在庫を振り替えます。

また、システムは予測分析を使って、数日前から欠品を予測することもできます。リアルタイムの販売スピードをサプライチェーンのリードタイムと関連付けることで、需要が高い間に新作玩具の生産を優先できるよう、生産チームを支援します。

顧客体験の最適化

ショッピングが集中する繁忙期にEコマースサイトで発生するカート放棄の問題に対処するには、IT運用(ITOps)チームがビジネス・オブザーバビリティーのツールを活用できます。データベースクエリーやサードパーティーAPIがレイテンシーのしきい値を超えると、ツールがチームに通知します。

このアラートにより、オブザーバビリティー・プラットフォームは主要なメトリクスを分析し、分散トレースを実行します。商品を見つける段階から注文確定まで、購入プロセス全体を追跡して、各段階のレイテンシーを把握します。このツールは、パフォーマンスの問題と潜在的な収益への影響を可視化することもできます。

データ分析の結果、レイテンシーの原因がパフォーマンスの低いAPIにあることが分かれば、システムはIT担当者に対し、負荷分散とキャッシュの推奨事項を提示します。例えば、利用可能なサーバー間でデータトラフィックを再配分し、サーバー負荷を再調整するよう推奨することがあります。

現在の多くのオブザーバビリティー・ツールは、過去の監視データを分析し、類似するネットワーク・イベントを参照して、特定のイベント(ブラックフライデーのショッピングなど)が特定の地域でAPIを過負荷にすることを予測することもできます。そのうえでプラットフォームは、ホリデーシーズン中にAPIトラフィックがより適切に分散されるよう、バックエンド・サーバーを事前に再構成することをIT担当者に促します。結果として、遅いAPIがユーザー体験やコンバージョン率に影響する前に対処できます。

ビジネス・オブザーバビリティーのメリット

  • 意思決定の高度化ビジネス・オブザーバビリティーの取り組みは、過去のレポートではなく、関連性の高いリアルタイム・データをビジネスチームに提供します。これにより、経営層は機動力を保ち、データに基づくビジネス上の意思決定を行えます。
  • 運用効率の向上ビジネス・オブザーバビリティーは、ビジネスパフォーマンスのレポーティングを自動化し、ビジネスプロセスをきめ細かく測定できるようにします。これにより、チームは運用を効率化できます。
  • 異常の早期検知と問題の解決継続的なオブザーバビリティー・データのストリームにより、企業は異常やパフォーマンスのボトルネックを早期に発見し、改善機会を特定できます。非効率が収益に影響する前に対処できるようになります。
  • 包括的な根本原因分析オブザーバビリティー・ツールが提供する高度な分析により、ITOpsやビジネスパフォーマンスの問題の「なぜ」を把握できます。その結果、トラブルシューティングを迅速化し、システムのダウンタイムを短縮できます。
  • イノベーションの迅速化オブザーバビリティーの洞察により、リーダーとチームは運用上の問題への緊急対応ではなく、成長とイノベーションに集中できます。その結果、企業はイノベーションを迅速に進め、新しい製品を自信をもって提供できます。
  • 顧客体験の向上顧客の摩擦ポイントやトランザクションの問題をリアルタイムで検知することで、企業はユーザー体験への影響を最小限に抑えながら迅速に問題を解決し、顧客維持率を高められます。

執筆者

Chrystal R. China

Staff Writer, Automation & ITOps

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