グリーン ITとも呼ばれる持続可能なITには、IT機器(ノートPCやデスクトップコンピューター、サーバーや関連システム)を環境に配慮した方法で設計、製造、使用、廃棄する方法を見つけることが含まれます。また、二酸化炭素排出量を削減し、エネルギー効率を高める機会を見つけ出すために、IT運用全体が与える影響を理解することも含まれます。
企業が企業責任の取り組みを優先するようになったため、ITリーダーと最高情報責任者(CIO)は持続可能なITに関する施策を探求しています。その目標は、機能を落とすことなく、潜在的なコスト削減を実現しながら、持続可能性を高めるためにITインフラストラクチャーを最適化することです。
持続可能性とは、将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たすために資源を責任を持って使用することを指します。ITの文脈では、IT運用による環境への影響を最小限に抑えながら、ビジネス目標の達成を支援する戦略、テクノロジー、施策を導入することを意味します。組織の持続可能性に関する施策は通常、環境、社会、ガバナンス(ESG)指標に基づいて測定されます。
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デジタル化が進む中、ITインフラの二酸化炭素排出量は重大な問題です。情報通信技術(ICT)部門は、地球温暖化の主な原因である世界の温室効果ガス排出量の1.8%から3.9%を占めています1 。世界的に情報の保存に関する需要が拡大し続けているため、特にデータセンターに対する懸念が高まっています。国際エネルギー機関は、2022年において、データセンターは460テラワット時(TWh)を消費したと推定しています。これは世界の電力使用量全体の2%に相当します。同機関は、2026年までにその数が2倍以上になると予測しています。2
加速する技術の進歩とIT製品やサービスの需要は、電子廃棄物(e-廃棄物)の増加も引き起こします。国連の推定によると、世界で年間約5,400万トンの電子廃棄物が発生しており3、リサイクルされるのはそのうちのわずか20%です。電子廃棄物の不適切な廃棄は、有害物質を地球環境に放出し、土壌や水源を汚染する可能性があります。
企業は、さまざまな戦略や施策を実行することで、IT運用の持続可能性を高めることができます。その際に考慮すべき要素には、次のようなものがあります。
持続可能なITの主な方法として、エネルギー管理を改善し、データセンター、サーバー、その他のIT機器で消費される電力の量を削減することが挙げられます。例えば、エネルギー効率に優れたハードウェアは消費電力が少なく、熱の発生も少ないため、冷却の必要性が少なくなります。また、電源管理ソフトウェアを使用することで、アイドル状態にある機器の電源を切るプロセスを自動化できるため、さらにエネルギーを節約できます。低電力プロセッサー、ソリッドステート・ドライブ、エネルギー効率の高い冷却システムなどの新しいテクノロジーも、運用の効率を向上させます。
ITワークロードをクラウドに移行すると、物理インフラストラクチャーの必要性が減り、エネルギーが節約され、電子廃棄物が削減されます。クラウド・プロバイダーは多くの場合、再生可能エネルギーを利用でき、高度な冷却技術を導入できるため、オンプレミスよりもエネルギー効率の高いデータセンターを実現できます。また、クラウド・サービスには拡張性があることから、企業の成長に伴って物理サーバーを生産し設置する必要がなく、製造による排出量も削減されます。
仮想化とは、ひとつの物理サーバー上で複数の仮想マシンを実行できるようにし、追加のハードウェアの必要性を減らす方法です。サーバの数が少ないほど、電力と冷却に必要な電力も少なくなります。
持続可能性を優先するサプライヤーからIT製品とサービスを責任を持って調達することで、ITサプライチェーンの環境への影響を軽減できます。多くの場合、サプライチェーン全体がもたらす影響を考慮する必要があります。スコープ3排出量の対象となる原材料や天然資源の抽出、製造プロセス、輸送も考慮する必要があります。
持続可能なIT戦略では、設計、製造から耐用年数管理まで、製品のライフサイクル全体について検討します。この戦略には、寿命、再利用、修理可能性、リサイクルを考慮した製品設計と、埋立地の使用を削減するために、IT機器の適切な廃棄とリサイクルを確実に行う効果的な電子廃棄物管理プログラムの導入が含まれます。
持続可能なソフトウェア開発では、必要な処理能力とメモリーを削減し、ひいてはエネルギー消費を削減する効率的なコーディングの実践に重点を置いています。グリーンコーディングの取り組みには、効率性を高めるためのアルゴリズムの最適化、コードの冗長性の削減、アイドル時に低電力状態に入るソフトウェア設計などが含まれます。また、持続可能なソフトウェアは将来の変更に適応できるように設計され、長く使用できるため、頻繁なリプレースやアップデートを必要としません。
人工知能(AI)は、プロセスを最適化し、システム障害を予測し、日常的なタスクを自動化することで、エネルギー消費と無駄を削減できます。機械学習(ML)アルゴリズムは、データ内のパターンを分析し、エネルギー効率を向上させることができます。また、モノのインターネット(IoT)デバイスは、エネルギー使用量をリアルタイムで監視し、効率化を図ります。例えば、データセンターのスマート・サーモスタットは、必要に応じて冷却するよう最適化するため、無駄な冷却が抑えられます。
持続可能なITの施策を導入することは、環境への悪影響を軽減するだけでなく、多くのメリットをもたらします。エネルギー効率と資源効率向上は、企業全体のコスト削減につながります。また、国連の持続可能な開発目標(SGD)の達成を支援し、世界規模での新たな規制や優遇措置への対応を促進します。
持続可能なITシステムが増えれば、異常気象や資源不足などの気候変動がもたらす危機に直面した際の組織の復旧が早くなります。消費者や投資家が環境の持続可能性を重視する中、こういった取り組みはブランドの評判を高めます。そして、持続可能性への取り組みの推進は、イノベーションを促進し、競争上の優位性をもたらします。また、より持続可能な未来を実現するために、企業は新しいテクノロジーやビジネス・モデルの開発を手がけるようにもなります。
持続可能なITには多くの利点がありますが、一方で多くの課題と限界もあります。持続可能なITに移行するために新しいテクノロジー、インフラストラクチャー、トレーニングへの先行投資が必要になることもあり、コストがひとつの問題となり得ます。大規模な組織では、大規模で複雑なシステムにサステナビリティーに関連する施策を組み込んだり、古いシステムから移行したりする際に、困難に直面することもあります。また、技術革新のペースが速いため、組織が最新の持続可能なITソリューションを追い続けることは容易ではありません。