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企業の社会的責任
公開日:2023年12月22日
寄稿者:Amanda McGrath、Alexandra Jonker
企業の社会的責任(CSR)とは、企業は社会と環境にプラスの影響を与える原則と方針に従って運営されるべきであるという考え方です。
CSRを通じて、企業は経済的利益や収益性だけでなく、自社の行動が地域社会や世界全体に与える影響を基にして意思決定を行います。CSRは法的義務にとどまりません。倫理的で持続可能な責任ある事業慣行を自主的に採用することで、企業は消費者、株主、従業員、社会に利益をもたらすことを目指しています。
環境パフォーマンス・データを管理するために使用されるプロセスと、温室効果ガス (GHG) 排出量を計算するために必要な手順について学習します。
トリプル・ボトム・ライン」の理論は、組織が社会的責任を追求する助けとなるものです。財務のフレームワークとしてのトリプル・ボトム・ラインとは、企業のビジネス・モデルが人(people)、地球(planet)、利益(profit)という3つのPを軸として展開されるべきであるという考え方を指します。企業はこの3つすべてを最大限に生かすことで、世界にプラスの影響を与え、成長の障壁を取り除くことを目指しています。
企業の社会的責任への取り組みは、一般的に、環境、倫理、慈善、経済の4つのカテゴリーに分類されます。それぞれの種類のCSRは、企業の全体的CSR戦略に貢献します。
ますます多くの企業が全体的な環境への影響を評価し、天然資源を保護し、気候変動への影響を最小限に抑えることを目的としたCSRに取り組んでいます。CSRでは、エネルギー消費の削減、再生可能資源の使用、廃棄物の最小化など、環境に配慮した実践を通じて、事業における持続可能性を奨励しています。
環境責任は、事業運営によるマイナスの影響を排除すること(主に汚染原因となる業務を制限すること)と、植樹や生物多様性を支援するプログラムへの参加などの活動を通じてマイナスの影響を相殺することにかかっています。
CSRの取り組みは、多くの場合、公正な賃金、安全な労働条件、従業員やサプライヤーの適切な待遇の確保など、社会的影響や人権問題に焦点を当てています。また、社内外で説明責任を果たすことを奨励しています。倫理的CSRには、公正な労働慣行の遵守、職場での差別の撤廃、サプライチェーンの透明性の確保などがあります。
CSRの実践には、地域や国の慈善活動、教育プログラム、災害救援などの前向きな目的や組織への金銭、資源や時間の寄付などがあります。慈善的なCSRを採用している企業は、ボランティア活動を通じて支援したり、地域のイベントを後援したり、地域の非営利団体に寄付したり、スキル研修プログラムを支援したりして、拠点を置いている地域社会と関わりを持っています。
企業の社会的責任には、お金が企業の唯一の動機にならないようにすることが含まれています。こうした意図を示すために、企業は、たとえ代替案がコスト削減、収益増の可能性がある場合でも、その選択が自社の価値観と一致していることを確認するための方針と手順を制定しています。経済的CSRには、職業訓練や雇用創出の支援、地域におけるパートナーシップの構築など、企業が事業を展開する地域社会の経済発展と成長を支援する取り組みも含まれています。
CSRには次のようなメリットがあります。
CSRは、組織のブランド・アイデンティティーだけでなく、収益にも好影響を与えます。エネルギー効率の改善など、一部のCSRの取り組みは運営コストを削減し、最終的には節約につながる可能性があります。消費者は、自らの価値観を共有するブランドをますます好むようになってきています。CSR方針は、組織がこのような価値観を示し、信頼とロイヤルティーを築いて競争上の優位性を高められる方法です。
また、より多くの労働者が自分の価値観と一致する雇用主を求めるようになるため、CSRは優秀な人材を引き付け、従業員のエンゲージメントと定着を促進するのにも役立つだけではなく、倫理的・社会的問題に積極的に取り組むことで、法律上の問題や、罰金、風評被害を予防できる可能性があります。
CSRの取り組みは、人々がより責任のある消費者になるのに役立ち、自らの価値観に合った製品やサービスを利用しやすくなり、持続可能性や倫理的消費の問題について理解することができます。これにより、企業に対して、テスト、品質管理、安全対策を優先して投資するよう促すことができます。またCSRは、不良品や有害な製品が消費者に届く可能性を最小限に抑えることができます。
CSRは、環境への責任と持続可能な実践を促すため、地球全体の健全性にプラスの影響を与えることができます。CSRへの取り組みは、企業の温室効果ガス排出量削減や、気候変動を遅らせる鍵となるネットゼロ排出目標の追求を助けることができます。また、天然資源を保護し、公害を減らし、生態系の破壊を抑えることにも役立つでしょう。さらに、CSRに焦点を当てることで、環境に優しい製品や実践の研究開発への投資を支援できます。
企業の社会的責任は、地域社会を支援し、貧困、不平等、環境問題などの社会問題に取り組むことにつながります。CSRへの取り組みは、雇用を作り出すことで経済成長を促すことができます。また、先進的な企業は他の企業にもそれに倣うよう促し世論を形成することができ、プラスの波及効果を生み出します。企業レベルで倫理的行動に焦点を当てることで、社会のさまざまな面で倫理的行動の規範を広めることにつながります。
消費者は社会的責任のある企業からの製品やサービスを求めるようになってきています。一方、多くの投資家は、価値観が明確で自らの価値観と合う企業を優先しています。このような要求に応えるために、企業はCSRを業務の一環として対応するようになってきています。さらに企業は、グローバルに事業展開しサプライチェーンがますます相互に連関し合うなかで、複雑化する規制環境に適合し、世界各地の地域社会に与える影響に対して取り組むことが求められています。
環境問題、労働慣行、倫理的懸念に対する意識の高まりと、研究やコミュニケーションの改善により、CSRは事業戦略の中心的存在になってきています。CSR専門部署を設置している企業もあります。
CSRの例としては、以下のようなものがあげられます。
企業の社会的責任とは、企業が持続可能性や、社会的目的や倫理的な目的を支援する方針や慣行を採用するよう促す全体的な規範です。環境、社会、ガバナンス(ESG)は、その影響を測定または定量化する方法のことです。CSRとESGは、どちらも企業の価値観を反映するものですが、CSRは一般的に社内のフレームワークとして捉えられるのに対し、ESGのフレームワークは実社会への影響を示す方法として社外に対して用いられることがよくあります。
企業の社会的責任を構成する要素は変わり続けているため、CSRの取り組みを測定、管理できる基準は存在しません。CSRを採用する企業は、環境規制、労働規則、消費者保護基準などの現地法および国際法に従っています。
一部の取り組みでは、業界に特有の基準に準拠しています。例えば、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)は、持続可能性に関する報告基準を提供しています。国連などの機関は、企業が持続可能な慣行を採用することを奨励する、持続可能な開発目標(SDGs)などの世界的なガイダンスを導入しています。
CSRを採用する企業の多くは、CSRレポートにも取り組み、非財務指標のパフォーマンスを文書化し、社会的・環境的な影響に関する透明性を確保しています。CSRレポートは通常、任意です。ただし、一部の管轄区域では、投資家や消費者がCSRの取り組みを評価できるよう、大規模組織が社会的・環境的パフォーマンスを開示することを義務付けています。
CSRレポートは、組織の非財務指標のパフォーマンスを報告する慣行であり、社会と環境に対する組織の影響について透明性を提供します。
ネット・ゼロとは、大気中へ排出される温室効果ガスと大気から除去される温室効果ガスの量が均衡する状況のことです。
CRSDの目標は、利害関係者がEU企業のサステナビリティー・パフォーマンスや関連する事業への影響とリスクを適切に評価できるように透明性を提供することです。
トリプル・ボトム・ライン(TBL) とは、人(people)、地球(planet)、利益(profit)という3つのPを軸とした持続可能性の枠組みのことです。
ビジネスにおける持続可能性とは、事業運営によって引き起こされる環境的および社会的悪影響を排除するための企業の戦略と行動を指します。
脱炭素化とは、温室効果ガス(GHG)の排出量を削減し、大気中から除去する気候変動緩和の手法のひとつです。