ネット・ゼロとは

霧の中の太陽エネルギーと風力タービンを上空から見た様子

共同執筆者

Amanda McGrath

Staff Writer

IBM Think

Alexandra Jonker

Staff Editor

IBM Think

ネット・ゼロとは

ネットゼロとは、人間の活動によって排出される量を相殺するのに十分な温室効果ガスが大気から除去されている状態を意味します。

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ネットゼロの達成

輸送やエネルギー生産(特に化石燃料の燃焼)、工業プロセスでは、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス(GHG)として知られるその他のガスが生成されます。これらのガスは地球の大気中に熱を閉じ込め、地球温暖化の一因となります。ネットゼロ・エミッションの達成には、国または地域や地域社会、企業が脱炭素化に向けた措置を講じることが必要です。つまり、再生可能エネルギー源の使用や炭素回収・貯留技術の導入など、自然または人工的な手段を通じて同等の量を除去することで、自らが生み出す排出量を相殺する必要があるのです。

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ネットゼロが重要な理由

地球の気温は産業革命以前に比べてすでに1℃上昇しており、気候変動の影響はますます深刻になっています。気候変動を遅らせるための措置を講じなければ、地球は異常気象や海面上昇、食糧不足などの壊滅的な結果に直面することになります。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化を産業革命以前の水準より1.5°C(2.7°F)の上昇に抑えるために(これを超えると気候変動の影響が著しく深刻になる基準)、2050年頃までに世界中で二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロ(ネットゼロ)を達成すると述べています。推進派は、ネットゼロを達成することで、気温上昇を遅らせ、新たな経済的機会を創出し、公衆衛生を改善し、将来の世代のためにより良い環境に貢献すると信じています。

ネットゼロの歴史

ネットゼロの概念は過去数十年にわたって進化してきましたが、気候変動への懸念の高まりにより、近年大きく勢いを増しています。

1970年代~2000年代初頭:初期の議論

排出量のバランスを取ってネットゼロ効果を達成するという考えは、気候変動と持続可能性に関する初期の議論に端を発しています。この用語は、1970年代から1980年代にかけて科学文献や政策論説に登場し始め、多くの場合、エネルギー効率や再生可能エネルギー戦略にリンクしていました。2000年代には、カーボン・ニュートラルの概念が一般的になりました。これは、ネットゼロと同様に、大気から同量の二酸化炭素を吸収することで排出量を相殺できるという考えでした。これにより、多くの企業や組織がカーボン・ニュートラルへの取り組みを発表し始めました。

2015~2018 年:国際的な活動

2015年の国連気候変動会議(COP21)において、世界各国およびその他の利害関係者は、地球の温暖化を産業革命前の水準から2℃未満の上昇に抑え、これを1.5℃に抑えることを長期的な目標とする世界的な枠組みを定めた画期的な国際条約であるパリ協定にコミットしました。この目標の達成には、今世紀後半に世界の排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)にする必要があることがこの協定で確認されました。2018年、IPCCは地球温暖化の影響に関する特別報告書を発表し、人為的な二酸化炭素の排出量を2030年までに2010年比で約45%減少させ、2050年頃には実質ゼロ(ネットゼロ)にする必要があると示唆しました。

2019 年から現在:ネットゼロ・コミットメント

2024年の時点で、140カ国以上がネットゼロ目標を設定しており、これは世界の排出量の約88%に相当します。9,000社を超える企業、1,000の都市、1,000の教育機関、600の金融機関が国連の「Race to Zero」キャンペーンに参加し、2030年までに世界の排出量を半減させるために、厳格かつ迅速な行動を取ることを約束しました。1

ネットゼロ目標の設定方法

ネットゼロ排出目標は、国または組織の温室効果ガス排出量と、それを削減・相殺する能力を包括的に理解した上で設定されます。最初のステップは、スコープ1排出量(所有または管理する発生源からの直接排出)とスコープ2排出量(購入したエネルギーの生成による間接排出)およびスコープ3排出量 (サプライチェーンで発生する間接排出)を含む現在のGHG排出量を計算して、ベースライン排出量インベントリーまたは炭素会計を実施することです。

目標設定を支援する国際協力は数多くあります。科学的根拠に基づく目標設定イニシアティブ(SBTi)は、カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)や国連グローバル・コンパクト(UNGC)、世界資源研究所(WRI)、世界自然保護基金(WWF)の協力で、企業が地球温暖化を抑制するために必要な科学的根拠に沿った削減目標を設定するために、調査やデータを活用できるようにすることを目的としています。SBTiは、企業が最新の気候科学との整合性を確保しながら目標を策定し、検証するための枠組みとガイドラインを提供します。目標はまた、各国が気候変動行動計画の概要を示す国内決定拠出金(NDC)を提出しなければならないというパリ協定の規定にも影響されます。また、ネットゼロ・エミッション達成に向けた長期的なビジョンを示す世紀半ば戦略を策定している国もあります。

そこから、排出量を削減する計画が策定されます。エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーへの転換、廃棄物管理の改善、輸送方法の変更、森林再生などの炭素除去プロジェクトによるオフセットなどが含まれます。こうした脱炭素化への取り組みは、ネットゼロ目標達成に向けた取り組みの中心をなすものです。

排出量削減目標が設定されたら、その目標を確実に達成するに、定期的な監視と報告が必要です。これには、排出量を長期にわたって追跡し、戦略に必要な調整を行うことが含まれます。信頼性と透明性を確保するために、多くの組織は排出量データと削減戦略の第三者による検証を選択しています。

ネットゼロとカーボン・ニュートラルは同じものか

「ネットゼロ」と「カーボン・ニュートラル」という用語は、同じ意味で使用されることがありますが、この2つにはいくつかの違いがあります。どちらもGHG排出量を均衡させる取り組みを指しています。しかし、カーボン・ニュートラルでは、組織は最初から排出量を必ずしも削減しなくても、排出量を単純に相殺することができます。一方、ネットゼロは、全体的な排出量を削減し、避けられない残留排出量の場合にはオフセットを使用することによって達成されます。SBTiはネットゼロの取り組みの検証に使用できますが、カーボン・ニュートラルの主張には使用できません。

ネットゼロを達成するための戦略

国や企業は、ネットゼロ・エミッションの目標を達成するためにさまざまな戦略を採用しています。主要な方法には以下が挙げられます。

再生可能エネルギーへの切り替え

多くの国が風力・太陽光・水力・地熱などの再生可能エネルギーに多額の投資を行っています。mまた、石炭火力発電所を段階的に廃止し、補助金や政策的インセンティブを通じてクリーンエネルギーの利用を促進しています。多くの民間企業や公的機関が事業の燃料として再生可能エネルギーへの移行を進めています。これには、ソーラーパネルの設置やサプライヤーからのグリーンエネルギーの直接購入、再生可能エネルギー証書(REC)の購入などが含まれます。

エネルギー効率の向上

各国は、建物や輸送、産業プロセスにおけるエネルギー効率を向上させるための基準や規制を導入しています。これには、車両の燃費基準からエネルギー効率の高い設計と建設を必要とする建築基準まで、あらゆるものが含まれます。また、温室効果ガスの排出量を削減する自転車道や歩行者用道路、廃棄物管理施設などの持続可能な開発プロジェクトにも投資しています。企業は、エネルギー消費を削減するために、LED照明や高効率空調システム、エネルギー管理ソフトウェアなどの技術に投資しています。また、エネルギー使用量を削減し、環境への影響を最小限に抑えるため、建物に持続可能な設計原則を取り入れています。

持続可能なサプライチェーン

企業はサプライヤーと協力して、 サプライチェーン全体を通じて排出量と気候への影響を削減しています。これには、より持続可能な原材料の調達や廃棄物の削減、サプライヤー自身のエネルギー効率の改善支援などが含まれます。

カーボン・オフセット

除去できない残留排出物については、多くの企業がカーボン・オフセット・プロジェクトに投資しています。これらのプロジェクトは、植林活動から再生可能エネルギーの設置まで多岐にわたり、他の場所での温室効果ガスの除去または削減に役立ちます。ただし、発生源での排出量を削減せずにオフセットのみに依存するだけでは、ネットゼロを達成するには十分ではないことに注意することが重要です。

交通機関の変更

多くの国が、税制優遇措置や補助金を通じて電気自動車(EV)の使用を奨励しています。中には、新しいガソリン車やディーゼル車の販売を禁止する期限を設定しているところもあります。車両を保有する企業では、電気自動車への切り替えや充電インフラの設置、従業員に電気自動車の運転を促すインセンティブの提供が増えています。

二酸化炭素回収技術

二酸化炭素回収・貯留(CCS)とも呼ばれる技術は、CO2排出を発生源から直接回収し、地下の地層に貯留して、大気と地球の温度への影響を軽減するために使用される方法です。一部の企業、特に重工業企業が、排出量を削減するためにCCSに投資しています。各国は、気候目標の達成を支援し、エネルギー安全保障を可能にするためにもこれを利用しています(そのため、環境への影響を削減しながら化石燃料の使用を続けられます)。

製品イノベーション

企業は、より耐久性があり、修理が容易で、使用後にリサイクルできるように設計された製品を開発するなど、製品やサービスをより持続可能なものに更新しています。

カーボン・プライシング(炭素価格)

この経済戦略には、企業のカーボン・フットプリント削減を奨励するために、炭素税または総量削減義務と排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード制度)を通じて炭素排出量に価格を付けることが含まれます。

自然生態系の保護

森林や湿地、その他の生態系は、大気中の二酸化炭素を吸収する上で重要な役割を果たしています。多くの国々がこれらの地域を保護し、劣化した生態系を回復するための政策を実施しています。

国際協力

一部の国ではネットゼロ目標を法律で定め、特定の期日までにこれらの目標を達成することが法的義務となっています。多くの国がパリ協定などの国際協定を通じて協力し、それぞれの取り組みを調整し、相互に説明責任を負っています。企業にとってパートナーシップや協力協定は、サプライチェーンの効率を向上させ、排出量を削減するのに役立ちます。

ネットゼロの課題

ネットゼロの達成には課題がないわけではありません。その最大の要因の1つは、低炭素経済への移行コストです。これは長期的な節約と経済的機会につながる可能性がありますが、特に発展途上国や中小企業にとっては、初期費用が障壁になることがあります。ネットゼロへの移行を達成するには、サプライチェーンとバリューチェーンに大幅な変更を加える必要があり、特に世界規模でそれを実行するのは困難な場合があります。

また、排出削減が現実的で検証可能であり、行動によって裏付けられていることを徹底する必要もあります。温室効果ガス排出量ネットゼロの誓約は多くの組織が行っていますが、その多くは意図を誓約しただけで、ネットゼロ目標をどのように達成するかについてはほとんど、あるいはまったく実行していませんでした。この状況により、グリーンウォッシングにも厳しい目が向けられるようになりました。グリーンウォッシングとは、組織が利害関係者の間で環境活動や実績の主張を誇張するために、気候変動対策について不正確または不完全な印象を与えることです。

ネットゼロには上記のような問題や課題がないわけではありませんが、この運動が以前には存在しなかった気候変動対策に拍車をかけたことは間違いありません。 世界中の組織や管轄区域による集団的な気候変動対策により、気候政策、ベンチマーク、排出の透明性が生まれました。一部の投資家は、組織のパフォーマンスの評価にネットゼロの取り組みを含めています。同様に、組織はこれらの成果を達成することを公に約束しています。

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