人類は古来、単純な風車を使って水を汲み上げたりするなど、機械的な目的で風力エネルギーを利用してきました。今日、風力発電は、風からエネルギーを回収するために風力タービンを利用しています。風力タービンは、小規模(一戸建て)から大規模(風力発電所)まで稼働し、湖や海など陸上または沖合で建設できます。
太陽光発電と並んで、風力発電は、世界中で再生可能エネルギーの容量を増加させる可能性が最も高いと考えられています。2023年、新規に風力発電を設置する市場のトップ5は、中国、米国、EU、インド、ブラジルでした。1洋上風力発電の機能を進化させ、生産コストを削減し、風力タービンの発電効率を向上させるイノベーションが、業界の成長を促進しつつあります。
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初期の風力発電の機械的使用のいくつかは、中東の人々が風車を使って穀物をひいたり、中国で水を汲み上げたりするために使われていました。その後、早くも12世紀には、風車はヨーロッパで湖や池の水抜きのような産業目的に利用されました。
19世紀までに、風力エネルギーは発電源になりました。英国の電気技師であるJames Blythは、1887年に最初の風力タービンを構築したとされています。そして、風力エネルギーの先駆者であるアメリカ人のCharles Brush氏とデンマーク人のPoul la Cour氏は、風力エネルギーを利用して個々の建物に電力を供給していました。2
しかし、商用風力発電が実行可能なエネルギーの選択肢として登場したのは、20世紀後半になってからでした。最初の実用規模の風力発電所(風力タービンのグループを含むプロジェクト)は、1980年代にアメリカに設置されました。2000年以降、この業界は急速に成長し、過去20年間で世界の風力発電設備容量は98倍に増加しました。3現在、世界中の風力タービンは、年間2,100テラワット時(TWh)以上の電力を生産しています。4
現代の風力タービンには、プロペラのようなブレード(またはローター・ブレード)があり、風力でローターを回転させます。ローターは発電機を回転させ、それはナセルと呼ばれるタービンの中心にある箱のようなコンテナの中に配置されています。ローターの回転によってクリーンな電気が生成され、配電網に供給したり、各家庭に電力を供給したりできます。このプロセスは、運動エネルギーとしても説明できます。その運動エネルギーは回転エネルギーに変換され、それが電気エネルギーに変換されます。
最も一般的な風力タービンは水平軸風力タービン(HAWT)であり、3つのブレードを備えたファンに似ています。その他に、キッチン・スタンド・ミキサーのように回転するブレードを備えた垂直軸風力タービン(VAWT)もあります。
風力から生成される発電量は、タービンの大きさとブレードの長さによって異なります。風力タービンは、ローター・ブレードの直径を161メートル以上に広げると、213メートル以上の高さに到達する場合があります。これらの巨大なタービンは、最大9.5メガワットの電力を生産できます。ただし、ほとんどの風力タービンは高さ約79メートルで、ブレードの長さは39メートルほどになります。そういったタービンは、最大1.8メガワットの電力を生成します。5
風力の応用方法には、主に陸上発電、分散型、オフショアの3つがあります。
ほとんどの風力タービンは陸上に設置されており、陸上ベースの風力エネルギーが最も頻繁に使用されています。陸上型風力発電の一般的な例は、事業規模の風力発電所であり、多くの場合、公共事業会社が運営し、その後電力を販売します。米国エネルギー省(DOE)は、陸上における公共事業規模の風力エネルギーを、最もコストの低い電力源の1つと考えています。
分散型風力エネルギーは、小規模に電力を生産します。通常、これは、各家庭、製造現場、農業地帯、または農村地域にオンサイトで風力発電を提供する1つまたは複数の小型風力タービンを特徴としています。分散型風力エネルギーは、オンサイト発電に加えて、マイクログリッドやハイブリッド・エネルギー・システムにも接続できます。分散型風力エネルギー設備は、通常、20メガワット未満です。
オフショア風力発電は、陸上風力発電よりも、規模とタービンの数の両方においてはるかに大きくなる場合があります。洋上風力タービンのブレードはサッカー場ほどの長さになるものもあり、タワー自体の高さはワシントン記念塔の1.5倍にもなります。6
現在、最大のものはアイリッシュ海にあり、ニューヨークのマンハッタン島よりも大きいものです。オフショア風力タービンは、「固定ボトム」タービンとして水域の底に固定されるか、または浮遊物に固定できます。生成された電力は、埋め込まれた水中ケーブルを通って陸上に流れます。
最も急速に成長しているエネルギー源の1つである風力発電には、多くの利点があります。
化石燃料(石油、石炭、天然ガス)や従来の発電所とは異なり、風力タービンは温室効果ガスを排出しないため、環境への影響をほとんど与えずに風力発電プロジェクトを展開できます。実際、農家は農業や家畜の運用を継続しながら、自分の土地を風力エネルギー・プロジェクトにリースすることができます。また、風が吹く限りタービンは回り続け、強力な再生可能エネルギー源となります。
開発者や個人は、十分な風の流れがあればどこにでも風力タービンを設置できます。それは地球上の多くの場所にあります。これには、陸上、海上、さらには送電網や送電線にアクセスできない島など、より遠隔地にあるコミュニティーも含まれます。
陸上発電、事業規模の風力発電は、現在入手可能な最も低価格のエネルギー源の1つです。さらに、風力発電プロジェクトは運用費用が低く、燃料コストもかかりません。分散型風力エネルギーの活用は、住宅の所有者や地域社会がエネルギー料金を削減し、税額控除や報奨金を受けるのにも役立ちます。
風力発電には多くのデメリットはなく、またそのデメリットは多くの場合対処可能です。
風力発電は排出物がないため、主な環境課題は、風力発電所や風力タービンが近隣地域社会に与える影響(騒音の懸念など)や野生生物(オフショア発電所が海洋生物の生息地に与える影響など)を中心に展開します。
風力タービンや風力プロジェクトには、多くの場合、高額な初期費用がかかります。しかし、風力タービンは多くの場合、時間の経過とともに投資回収されます。さらに、再生可能エネルギー証明書(REC)や電力購入契約(PPA)などのメカニズムは、再生可能エネルギープロジェクトの開発者に財務上の確実性をもたらすのに役立ちます。
風力エネルギー生成は気象条件に依存します。つまり、タービンの回転には風が必要です。適切な気象予測とエネルギー貯蔵機能がなければ、風力発電は予測不可能で断続的になる可能性があります。
風力エネルギーのサプライチェーンは、まだ業界の急速な成長に追いついていません。原材料の価格、規制、供給には大きな変動があります。この一貫性の欠如により、長期的なサプライチェーン戦略が困難になることがあります。
風力業界全体で、いくつかの風力エネルギー・テクノロジーが進歩しています。
天候と気候は、風力や太陽エネルギーなどの再生可能エネルギー資源の生産に影響を与えます。サステナビリティーと気候変動への懸念が高まる中、風力発電所の発電量に関係する、風速を正確に予測できる新しいテクノロジーが重要となっています。今日の再生可能エネルギー予測ソリューションは、高度な分析、IoT(モノのインターネット)、気象データを使用して、風力発電所の高精度なエネルギー生産予測を生成します。
より深い水中に設置できる大規模な浮動タービンは、風力発電容量を2倍以上に調整できる可能性があります。米国官公庁・自治体は、2030年までに30ギガワットの洋上風力発電所を展開することによる、米国における洋上風力エネルギーの生産を拡大する取り組みを発表しました。7現在、これらの洋上風力資源を活用するために、TLP型、セミサブ型、バージ型、スパー型という4種類の浮体式プラットフォームが使用されています。
タービン・ブレードの空力プロファイルは、効率的な発電の鍵となります。一部の企業では、製造精度を確保するために、コンピューター・ビジョン、機械学習、エッジコンピューティング、IoT(モノのインターネット)など複数のテクノロジーを適用しています。さらに、熱可塑性物質のような先端材料の研究により、再利用可能な風力タービンブレードが将来的に実現しつつあります。8
データ統合、分析、視覚化によって、風力発電所の事業者は、保守業務を改善するための予測ソリューションなど、資産を詳細かつ正確に理解することができます。この可視性により、発電、タービンの可用性、風力発電のコンバージョン率、タービンの正常性に対するアウェアネスが向上し、アウトプットの最適化に役立ちます。