データ交換とは、システム、プラットフォーム、または利害関係者間でのデータの転送のことです。これには、リアルタイムのセンサー・データやアーカイブされた記録からサード・パーティー・データに至るまでの、幅広いデータ形式とソースが含まれます。
データが現代の組織にとって血液のようなものであるとすれば、データ交換はその流れを維持する循環システムです。データを共有することで、情報が適切なシステムと人に届き、オペレーションが促進され、情報に基づいた意思決定が可能になります。身体が健全な循環に依存しているのと同様に、デジタル・エコシステムは、管理対象データの流れによってサイロを解体し、データ資産の価値を解き放つことに依存しています。
データ交換は、データ管理の基本部分であり、データを安全かつ効率的に収集、処理、使用してビジネス成果を向上させます。それによって人工知能(AI)開発からデータ・プロバイダーとのエコシステム統合まで、さまざまな取り組みがサポートされます。データ交換は通常、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)、ファイル転送、ストリーミング・パイプライン、またはクラウドベースのプラットフォームを介して行われ、それぞれ異なるユースケースに合わせて調整されます。
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世界では毎日、約4億274万テラバイトのデータが生成されています。効果的なデータ交換が行われなければ、その情報(およびその価値)は利用されないままになります。EUだけでも、クラウド・データ・フローは2024年に推定770億ユーロの経済価値を生み出し、この数字は2035年までに3,280億ユーロに増大すると予測されています。
データ交換は、現代のデータ駆動型組織の基盤です。効果的なデータ交換ストラテジーを持つ組織は、断片化された社内外のデータを統合し、部門、パートナーシップ、ユースケース全体でより深い洞察を活用できます。
例えば、リアルタイムのデータ交換を通じて、Eコマース・プラットフォームは料金体系を動的に調整し、小売業者間でデータ・フローを共有し、サプライチェーンを最適化できます。あるいは同じようにデータ交換を通じて、病院スタッフは検査結果を外部の専門家とリアルタイムに共有し、診断時間を短縮して患者の転帰を向上させることができます。
データ交換はさらに、AIシステムが価値を学習して提供できるようにする上で重要な役割を果たします。データ交換によってさまざまなシステム間のデータの流れを合理化することで、AIモデルが最新かつ関連性の高い情報に基づいてトレーニングされていることを保証できます。
データ交換の主要コンポーネント(標準化されたスキーマ、安全なコネクター、管理された権限など)により、AIエコシステム内で多様なデータ・ソースを効果的に使用できます。これにより、組織は品質や管理を損なうことなくサード・パーティーのデータを統合できます。
データ交換は、タイミング、アーキテクチャー、アクセス・モデルなど、いくつかの側面に分類できます。これらの違いを理解することは、組織がより回復力のあるデータ共有ストラテジーを設計し、リアルタイムのデータ・フローから安全なサード・パーティー統合まであらゆるものをサポートするのに役立ちます。
リアルタイム交換:データはシステム間で即時またはほぼ即時に送信されます(たいていは特定のイベントに対する応答として)。これは、不正アクセス検知、IoT(モノのインターネット)の監視、または動的な料金体系などの、時間が重要な要素であるシナリオでは不可欠です。リアルタイムの交換は意思決定の合理化に役立ち、システム・アーキテクチャーに応じて、イベントでトリガーされるようにすることも、継続的にストリーミングすることもできます。
スケジュールされた(バッチ)交換:データは、1時間おき、夜間、毎週など、事前に定義された間隔で一括収集され、転送されます。バッチ交換は、コンプライアンス・ワークフローや抽出・変換・ロード(ETL)パイプラインで一般的であり、大規模なデータセットを移動する際に信頼して利用できます。旧式の方法、例えばファイル転送プロトコル(FTP)やクラウド・ストレージのアップロードは、特に最新のAPIがまだ利用できない場合に、それらのワークフローで引き続き一般的です。
ストリーミング交換:データは送信元から宛先に、小さな増分単位で継続的に流れ続けます。ストリーミングは、テレメトリーや推奨エンジンなどの大容量のシナリオで使用され、リアルタイムの洞察をサポートし、データセットが完了するまで待つ必要がなくなるため、レイテンシーが短縮されます。多くの場合、データ交換プラットフォームや大規模な分析パイプラインの中核部分となります。
APIベースの交換:APIはデータへの構造化されたプログラム可能なアクセスを提供し、リアルタイムとバッチの両方のワークフローをサポートします。システム間の通信を標準化し、ペイロードを検証し、特にマイクロサービス・エコシステムとクラウドネイティブ・エコシステムにおけるデータ統合を簡素化します。多くの組織では、カスタム構築されたコネクターまたは標準化されたAPIを使用して、直接統合によりAPIベースの交換を実装し、データ・フローを自動化して、手動による介入を減らしています。
イベント駆動型交換:このメソッドは、ポーリングまたはスケジュールされたジョブの代わりに、特定のイベントが発生したときにデータ転送をトリガーします。これは最新のアプリケーションやサーバーレス・アーキテクチャーにおいて一般的であり、必要なときに関連情報のみを送信することで運用効率を最適化し、ネットワーク負荷を最小限に抑えて、応答性を向上させます。
メッセージ・キューとPub/Subシステム:Apache KafkaやRabbitMQなどのテクノロジーは、メッセージ・ブローカーを使用してデータ・プロデューサーとコンシューマーを分離します。このパターンにより、スケーラブルな非同期データ・フロー(一方のシステムがデータを送信すると、他方のシステムが後でそれを処理する)が実現し、多くの分散情報システムが下支えされます。これによって組織はプラットフォーム間でコネクターを柔軟にサポートできるようになります。メッセージが複数の加入者に同時に公開されるブロードキャスト・スタイルの配信は、パブリッシャー/サブスクライバー(Pub/Sub)モデルを介して実装することもできます。
プライベート交換:データは信頼できる当事者間で共有され、通常は強力なガバナンス、コンプライアンス、監査管理が行われます。このモデルは、個人情報(PII)などの機密データを優先するユースケース、クラウド・データ共有サービス、内部データ・ファブリックの安全なデータ共有をサポートします。
パブリック交換:データは、パブリックAPI、データ・マーケットプレイス、または官公庁・自治体リポジトリーを介してオープンに共有されます。これらの交換は収益化、アクセシビリティー、イノベーションを促進しますが、データ品質と整合性を確保するために、強力な検証ポリシーと使用ポリシーを必要とします。Microsoft Azure Data ShareやIBM Sterling Data Exchangeなどのデータ交換プラットフォームは、これらのプロセスを組み込みのガバナンス・ツールと権限モデルを通じて標準化し、保護するのに役立ちます。
ピアツーピア交換:システムは中央ブローカーに依存せず、多くの場合、対称的に直接接続します。このモデルは、フェデレーテッド・データ・システム、分散型ネットワーク、サプライチェーン交換をサポートし、外部データ・ソース間の相互運用性を維持しながら、回復力と自律性を実現します。
データ形式(「データ言語」と呼ばれることもあります)は、データ交換で重要な役割を果たします。形式は、テキスト・ベースとバイナリー・ベースという2通りの方法に分類できます。
これらの形式では、人間が読み取れるテキストでデータが保管され、シンプルさや、システム間での互換性やデバッグの容易さのために一般的に使用されます。
JavaScript Object Notation(JSON)は、リアルタイムのデータ共有に広く使用されている、軽量で言語に依存しない形式です。柔軟な構造と最新のアプリケーションとの幅広い互換性により、Web環境やモバイル環境に最適です。
XML(Extensible Markup Language)は、W3C(World Wide Web Consortium)標準によって管理される構造化テキスト形式です。複雑な階層、広範なメタデータ、厳格な検証をサポートしているため、医療や金融の業種・業務や、規制コンプライアンス目的でよく利用されています。
カンマ区切り値(CSV)は、フラットな表形式のデータを表すためのシンプルなテキスト・ベースの形式です。最小限の構造と幅広い互換性により、レポート、分析、迅速な統合によく選ばれる選択肢となっています。
Yet Another Markup Language(YAML)(「YAML Ain't Markup Language」と表記されるときもある)は、構成ファイルやアプリケーション間のデータ交換によく使用される、人間が読み取れる形式です。複雑な構造をサポートし、JSONと互換性があるため、機械と人間の両方の相互作用を必要とするシステムに柔軟に対応できます。
これらのコンパクトであり機械で読み取り可能な形式は、パフォーマンスに合わせて最適化されており、分散環境や制約のある環境での高速データ交換に最適です。
CORBA(Common Object Request Broker Architecture)では、バイナリー・エンコーディングを使用して、システム間で複雑なデータオブジェクトを交換できます。これはプログラミング言語やプラットフォーム間の相互運用性を促進しますが、その複雑さとファイアウォールでの制限があることから、現代のデータ統合イニシアチブではあまり一般的ではありません。
Googleによって開発されたプロトコル・バッファー(またはProtobuf)は、構造化データをシリアル化する(転送用に変換する)ために使用される、コンパクトであり言語に依存しない形式です。これらはリアルタイムのデータ交換に非常に効率的で、マイクロサービス、API、リモート・プロシージャー・コール(RPC)で一般的に使用されます。
Avroは、Apache Hadoopエコシステム内で開発された、行指向のシリアル化形式です。ビッグデータのユースケース向けに設計されており、動的スキーマのサポート、圧縮、Kafkaなどのデータ交換プラットフォームとの強力な統合を備えています。
Thriftは、Facebook(現Meta)によって開発された、シリアル化形式およびRPCフレームワークです。複数のプログラミング言語をサポートし、パフォーマンスと柔軟性のバランスが取れているため、分散システムや相互運用可能なデータ・ワークフローに役立ちます。
最新のデータ交換は、組織に大きな価値をもたらします。ただし、この価値を実現するには、いくつかの技術的および運用上の課題を克服する必要があります。
データ・サイロを排除し、複雑さを軽減し、データ品質を向上させることで、卓越した顧客体験と従業員体験を実現するデータ・ストラテジーを設計します。
watsonx.dataを使用すると、オープンでハイブリッド、かつ管理されたデータ・ストアを通じて、データがどこに保存されていても、すべてのデータを使用して分析とAIを拡張できます。
IBMコンサルティングと連携することで、企業データの価値を引き出し、ビジネス上の優位性をもたらす洞察を活用した組織を構築します。