緑の農地の間の未舗装道路を、収穫された作物を積んだ白いトラックを上空から見た図

故障保全とは

故障保全、定義

故障保全(事後保全、故障後保全とも呼ばれる)は、企業が機器の故障後に設備の機能を回復させるために使用する保全戦略です。

他の保全管理手法とは異なり、故障保全には、設備の故障を未然に防ぐことを目的とした定期的な保全や日常的な保全活動は含まれません。

故障保全プログラムにおいて設備が故障した場合、修理技術者が問題を診断し、作業指示書を作成します。他の保全手法がリアルタイムの状況監視(CBM)予測分析を利用するのに対し、故障保全は完全にイベント駆動型であり、設備が故障した後にのみ保全作業が始まります。

故障保全は、設備管理の最も古く、最も単純な手法の一つであり、現在でも多くの業界で広く利用されています。工業環境、倉庫、医療施設、公益事業インフラ、輸送車両はすべて、保全戦略の要として故障保全方式を採用しています。最近の報告によると、工業環境だけでも、故障保全を主な戦略としているのは保全チームの38%に上ります。1

故障保全は、予期せぬダウンタイムや緊急保全と関連付けられることが多いものの、戦略的に活用すれば非常に効果的な手段となり得ます。優秀な保全チームは、最も重要な設備に対しては予防保全プログラムを採用し、重要度の低い設備については故障保全を行っています。

故障保全向けCMMS

コンピューター化保全管理システム(CMMS)は、最新の保全プログラムのさまざまな側面を自動化および強化するために設計されたソフトウェア・ソリューションです。人工知能(AI)機械学習(ML)モノのインターネット(IoT)の台頭により、CMMSツールは多くの保全戦略の中心となっています。

故障保全プログラムにおけるCMMSソフトウェアは、故障まで使用する保全計画の対象設備と、他の保全方式を使った定期保全が必要な設備を追跡します。

CMMSツールによって改善できる故障保全活動の一部を以下に示します。

故障保全と是正保全

故障保全は是正保全と呼ばれる別のタイプの保全と密接に関連していますが、両者には重要な違いがあります。

故障保全は設備が故障した場合にのみ必要となりますが、是正保全は設備のライフサイクル全体を通して実施することができます。また、是正保全は通常、故障保全を必要とする設備よりも修理の必要性がそれほど深刻ではない設備を対象とします。最後に、故障保全とは異なり、是正保全では計画外ダウンタイムがほとんど発生しません。

これらの手法はどちらも、予防保全と予知保全の施策を取り入れ、設備の故障を未然に防ぐことを目的とした保全戦略である、先回り保全とは大きく異なります。

故障保全の仕組み

故障保全プロセスは、他のより高度なタイプの保全と比べて比較的単純です。ここでは、各ステップを詳しく見ていきます。

1. 診断

オペレーターが故障した設備を特定すると、故障保全修理が開始されます。

技術者は問題を詳細に診断し、故障を文書化します。通常はCMMSツールを使用して作業指示書を作成し、保全チームに問題を詳細に説明します。

2. 優先順位付け

損傷した設備の重要度に応じて、保全チームは緊急保全手順を使用してすぐに修理を行うか、後で修理をスケジュール設定するかを決める必要があります。

設備の重要性の評価は、故障保全の最も重要な部分の一つです。重要性の低い設備が故障した場合でも、多くの設備は中断することなく稼働し続けることができるからです。例えば、保管設備の電球が切れた後に交換しても、中核となるビジネスの運営にリスクはほとんど、あるいはまったくないため、電球は通常、故障後保全手法を使って保全されます。

3. 修理

故障保全の修理段階では、技術者は機器の故障の根本原因を診断し、損傷した部品を交換または修理します。

この段階での一般的な保全手順には、問題を特定して解決するための点検、テスト、および分解が含まれます。修理段階でのその他の保全活動には、摩耗したベアリングを交換したり、ボルトを締めたり緩めたり、さらには必要に応じて生産システム全体の再構築も含まれます。

戦略的な在庫管理予備部品は修理において重要な役割を果たし、多くの場合、CMMSが設備の重要度に応じて部品やコンポーネントを配分することを支援します。

4. テスト

設備を再び使用する前に、技術者はその機能を徹底的にテストして記録し、適切に機能していることを確認するために、修理前後の保全データを評価します。

CMMSツールは、オペレーターがパターンを特定して、計画外ダウンタイムを回避できるように、設備の性能履歴を収集および分析して、この段階における今後の保全手法を最適化します。

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故障保全の種類

故障保全には、計画外故障保全と計画故障保全の2つの主要なタイプがあります。組織は効果的な保全戦略を構築するには、それぞれを深く理解する必要があります。

計画外故障保全

ほとんどの保全計画では、計画外保全を事後保全の一形態として分類し、修理による設備のダウンタイム・コストが設備の故障コストを上回る場合に戦略的に使用します。

成功している保全プログラムでは、機器が予期せず故障し、即時の対応が必要な場合にのみ、計画外故障保全を使用します。緊急修理の状況では、設備が故障する前に技術者が警告をほとんど、あるいはまったく受けないことが多いため、保全チームは迅速に対応し、ダウンタイムを最小限に抑えられるように訓練を受ける必要があります。

緊急保全手順に、シャットダウンや残業のための作業費用、急な予備部品の調達が含まれる場合、コストがかさむ可能性があります。最も混乱を招くのは、緊急修理が、組織がコア・ビジネスに必要な製造工場のベルトコンベアなどの重要設備に影響を与えた場合です。

計画外ダウンタイムによって修理コストが増加し、業務が中断する可能性が高くなるため、保全チームは故障保全活動と、先回り保全予防保全予知保全の手法とのバランスを取る必要があります。

計画故障保全

計画故障保全は、計画事後保全とも呼ばれ、計画外故障保全よりも戦略的でコスト効率が高くなります。

計画的手法を使用することで、組織は重要度の低い設備を故障するまで稼働させます。これは事前に修理を行うよりも費用対効果が高いためです。この保全手法は、組織の収益に影響を与えない低コストで重要度の低い設備に対して最も効果的です。

計画故障保全は、不要な保全作業を削減し、重要な設備に対してリソースをより適切に割り当てるのに役立ちます。ただし、計画外保全よりも多くの調整が必要となるため、成熟度の低い組織にとっては障壁となる可能性があります。

計画的手法の保全スケジュールには、故障が安全上のリスクやより大きな業務の中断を引き起こさないようにするための定期点検を含める必要があります。さらに、技術者は、どの設備が低コストな故障後保全に適しているかを評価し、決定できるCMMSソフトウェア・ツールに精通している必要があります。

故障保全のメリット

故障保全は、ダウンタイムや頻繁な業務中断を引き起こすという評判があるにもかかわらず、正しく使用すれば依然として効果的な手段となり得ます。

そのメリットのいくつかを詳しく見てみましょう。

  • 初期保全コストの削減:故障保全は、組織が予防保全計画に必要な人件費、工具費、管理費などの初期支出を削減するのに役立ちます。故障後保全も、設備の交換コストが定期点検と修理よりも低く、運用全体へのリスクが低い状況では、非常に費用対効果の高い戦略です。
  • 保全作業の簡素化:故障保全は、綿密な計画やシステム監視を必要としないため、保全作業を簡素化できます。チームは日常的な保全活動を減らしたり、効果的な故障保全計画の一環として排除したりすることができます。これにより、部品と人件費のコストが削減され、ワークフローの停止が制限されます。
  • 設備利用率の向上:「故障まで稼働」モデルで運用される設備は、その耐用年数全体にわたって組織にとっての価値を維持します。故障保全は、部品やコンポーネントを早期に交換するのではなく、廃棄する前にそれらから最大の価値を引き出せるようにします。この手法は、設備のライフサイクルの性能を最適化するのに役立ちます。特に、故障時期が予測できる低コスト、低リスクの設備に対して有効です。
  • 不要な保全作業の削減:予防保全には多くの利点がある一方で、重複していて不要な日常保全作業が滞留してしまうことも少なくありません。例えば、まだ寿命がかなり残っているコンポーネントは、予防的手法で不必要に交換される可能性があります。保全は、設備が故障した場合にのみ保全作業を行うようにすることで、このような事態を防ぎます。

故障保全の課題

バランスの取れた保全戦略において、故障保全は効果的なツールとなり得ますが、組織が認識しておくべき重大なリスクもあります。

  • 計画外ダウンタイム:組織が故障保全を敬遠する最大の理由の一つは、計画外ダウンタイムが発生するためです。設備に予期せず故障が発生すると、運用が完全に停止する可能性があります。予期しないダウンタイムは生産性を損ない、運用効率を低下させ、広範囲にわたる評判面の損害を引き起こす可能性があります。最近の報告によると、ダウンタイムは、製造会社にとって最低でも1時間あたり1万米ドル、場合によっては1時間あたり50万米ドルの損失となります。2
  • 修理費用の増加:緊急保全活動は通常、計画保全活動よりも費用がかかります。設備が突然故障すると、請負業者の緊急作業や予備部品の迅速な配送など、予期せぬ修理費用が発生する可能性があります。設備に壊滅的な故障が発生した場合、数日または数か月にわたって運用が停止し、修理コストが格段に増加するかもしれません。
  • 安全上のリスク:突然の設備故障は、作業者に深刻な安全上のリスクをもたらし、倉庫、製造施設、その他の施設に損害を与えるかねません。例えば、産業機械の誤動作や電気システムや加圧装置の故障は、従業員を危険な状況にさらす可能性があります。故障保全は、故障を防止するのではなく、故障に対応することに重点を置いているため、緊急修理を実施する際に直面するかもしれないあるさまざまな状況に対応して保全チームを訓練するのが難しい場合があります。
  • 設備の耐用年数の短縮:繰り返される故障は、低コストの設備であってもほとんどの設備の寿命を短くします。故障するまで設備を運用すると、摩耗や損傷が加速し、複雑なシステムへのストレスが高まり、連鎖的な設備の故障が発生する可能性があります。設備のライフサイクルを可能な限り長くする必要がある組織は、故障保全を避け、予防保全および予知保全プログラムに注力すべきです。
  • ワークフローの中断:故障保全は、ワークフローの継続性を頻繁に停止させ、生産スケジュールを中断させ、運用を複雑化させます。特に、重要設備に対して適用された場合は、その影響が顕著になります。重要な設備が故障すると、混乱はサプライチェーン全体に波及し、設備が修復されるまで事業運営が停止するおそれがあります。

故障保全の例

それらの欠点にもかかわらず、現代の保全業務は、全体的な保全戦略の重要な側面で依然として故障保全に依存しています。

さまざまな業界における故障保全の例をいくつか示します。

  • 照明システム:ほとんどの組織では、電球は重要度の低い設備であり、交換費用も安価であるため、故障するまで使い続けるという手法で照明システムを維持管理しています。計画故障保全により、倉庫、オフィス・ビル、その他の施設の電球は耐用年数が尽きるまで使用され、速やかに交換されることが保証されます。
  • 製造設備の部品:製造業では、技術者は生産高直接影響しないほとんどの機械の部品やシステムに対して、故障保全を行います。例えば、施設管理チームは、換気ファンや予備のコンベヤベルトなどの補助設備について、故障するまで稼働させ続けることがよくあります。これは、修理や交換が容易で、費用も安価であるためです。
  • 車両フリート:車両管理者は、耐用年数の終わりに近づいているすべての車両について、故障後保全を利用しています。事業者は、先回り保全に多額の投資をするよりも、新しい車両のために交換部品やコンポーネントを確保しておくことがよくあります。なぜなら、古い車両の大規模な修理費用は、その車両の交換費用を上回る可能性があるためです。
  • 重要度の低いIT設備: IT環境では、管理者はキーボード、モニター、プリンターなどの周辺機器の保全に故障保全を利用します。しかし、ITエコシステムは高度に相互接続されており、保全管理者が故障保全に過度に依存すると、連鎖的な影響を引き起こし、他のシステムやハードウェアに影響を与える可能性のある設備の故障のリスクが高まります。
  • 公益事業およびエネルギー・インフラ:エネルギー事業者は通常、重要設備に対して故障保全を避けますが、より重要度の低い設備の保全には利用することがよくあります。公益事業およびエネルギー部門が故障まで使用する保全計画で維持する設備の例には、非必須のバックアップ・システム、遠隔状況監視ディスプレイ、古い変圧器などがあります。
Mesh Flinders

Staff Writer

IBM Think

Ian Smalley

Staff Editor

IBM Think

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    脚注

    1 「25 Maintenance Stats You Need for 2026」MaintainX、2025年10月17日

    2 「Industrial downtime costs up to $500,000 per hour and can happen every week」ABB and Sapio Research、2025年10月14日