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パワー・トゥー・ザ・ピープル [メルカドスEMI社事例] | デジタル技術で深刻化する環境問題に対処する

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世界銀行の報告書によると、ほんの数年前まで、インドの農村部に暮らす何百万人もの人びとには、電気が安定的に供給されていませんでした。

インフラ老朽化、電力流通の非効率性、増加し続ける人口、需要と供給の絶え間ないギャップ…。その理由は複数の問題が組み合わさったもので、問題解決にも光のささない日々が続いていました。

 

 

この問題の解決に向けて、インド政府は2016年、電化推進政策プログラムをスタートしました。

プログラムの目標は、すべての家庭、企業、その他の電力消費組織に24時間365日途切れることなく常に電力へのアクセスを提供するというものでした。

 

お客様課題

「毎日、1時間ごと、15分ごとに、必要な電力量を正確に知る必要がありました。」

 

「州は、何よりもまず、必要となる電力量を事前に調達しなければなりません。そのためには、毎日、1時間ごと、15分ごとに必要な電力量を正確に知る必要がありました。これが大きな問題でした。」

インドのエネルギーセクター向けのソリューションを専門とするコンサルタント会社「メルカドスEMI」のマネージングパートナーであるラチット・クマール・アガルワル氏は、当時をそう振り返ります。

 

州政府にとって、供給のバランスを取るための鍵は、正確な需要予測でした。しかし当時、州政府はスプレッドシートを使用して手動計算で予測を出していたのです。

過去の需要データは分析されていたものの、計算結果は精度不足でした。そのため、配電会社は過度な購入や購入不足を繰り返しており、経済的損失を生み出し続けていました。予測は高すぎても低すぎても問題なのです。

 

そして電力規制当局であるインドの中央電力規制委員会(CERC)が、「49.9ヘルツから50.05ヘルツの間」と全国送電網の動作周波数帯域の範囲を従来よりも狭めたとき、問題はさらに複雑化してしまいました。アガルワル氏は状況を以下のように説明します。

「周波数をこの範囲内に維持するには、電力会社はまず需要を正確に見積もる必要があります。そして需要に基づき、正確な電力量を準備しなければなりません。この範囲を超えてしまうとペナルティが発生する可能性があるのです。

つまり、必要な量だけを正確に購入できるよう、消費電力量を事前に知ることが肝心だということです。」

 

IBM選定理由と将来の展望

「私たちはすでに前年度の需要データを持っていました。必要なのは過去の気象パターンだったのです。」

 

 

インドで最大の消費者基盤を持つウッタル・プラデーシュ州とビハール州は、夏と冬に極端な天候に襲われる地域です。2020年初頭、メルカドスEMIはこの両州から支援要請を受けました。

両州の要請は、AIを予測プロセスに取り入れるためのソリューションでした。そして履歴データだけではなく、需要に影響を与えるすべての要因をよりよく理解したいということでした。

 

想像に難くないように、エネルギー消費量予測と天候には強い相関があります。アガルワル氏は当時のことを以下のように語りました。

「6か月にわたる電力会社との詳細な話し合いから得られたのは、正確な気象データが需要の予測に非常に重要な役割を果たすという洞察でした。」

その後、メルカドスEMIはIBMのWeather Company Data Packagesを基盤としたAIベースの需要予測ソリューションを開発しました。この「jouleOS」ソリューションを活用することで、天気予報士は前日に電力要件を予測することができるようになったのです。

 

需要予測ソリューションの開発にあたり、メルカドスEMIは、需要を正確に理解するためのモデル開発からスタートしました。そして完成したモデルは、州の過去の需要データを、The Weather Company History on Demandが提供する過去の気象パターンデータと組み合わせて解析したものです。

その後、ソリューションは進化し、現在はIBM Environmental Intelligence Suiteを介して気象データAPIにアクセスするようになっています。この機能強化により、従来の気象データに加えて地理空間分析コンポーネントや、ダッシュボードによる視覚化やアラート機能を組み合わせて活用することができるようになりました。

 

「私たちはすでに前年度の需要データを持っていました。必要なのは過去の気象パターンだったのです。

たとえば、ある特定のタイミングの需要が5,000メガワットの場合、そのタイミングの気象パラメータがどのようなものであったのか。そして気象パラメータの変化が、需要をどのように変化させたのか。その分析ができるようになったのです。」アガルワル氏はソリューションの進化をこう振り返ります。

 

 

ソリューションは行政の求めるデータ解決要件を満たすように進化を続け、最終的にメルカドスEMIはThe Weather Company Enhanced Forecast Dataを採用しました。

「IBMソリューションが提供する気象データには、本当に大きな助けを得ました。これにより、私たちはまず時間の観点で言えば15分刻みで7時間先まで、あるいは1時間ごとの予測できるようになりました。そして地理的な観点では、500平方メートル単位で予測できるようになったのです。」

このソリューションが完成する前、行政が頼っていたのはオープンソース・データベースの3時間刻みの気象データであったことを知れば、アガルワル氏の言葉がどれだけ大きな改善を意味するかお分かりいただけことでしょう。

 

現在、メルカドスEMIは需要予測モデルを独自AIエンジンと組み合わせて用いています。

同社はこのjouleOSシステムを「Power Portfolio Optimization」というソリューション群の一部として提供しており、その結果、配電会社はより正確に1日先の電力需要が予測できるようになりました。

今後は、ウッタル・プラデーシュ州とビハール州に続き、マディヤ・プラデーシュ州などでのソリューション採用が決定しています。

 

ソリューションと効果

10〜15%から1.8〜6% (需要予測誤差)

7時間おきから15分おき (気象情報の更新頻度)

 

ソリューションを採用した州では、需要予測の精度はほぼ即座に向上しました。従来の手動ベース・プロセス時のエラーマージンが10%〜15%だったのに対し、入力主要気象データソースがIBMのものに変わっただけで、初期エラー率はわずか5%〜6%となったのです。

そして日にちによってはエラー率1.8%、つまり98.2%の正確性を記録しています。

「天候以外にも、休日や特別な日という変動要素が他にもあります。しかし、電力需要予測において、最重要な役割を果たしているのが天候だということが明らかになりました。」アガルワル氏はそう指摘します。

 

メルカドスEMIは、The Weather Companyの気象データを使用し、前日の需要予測に加えてリアルタイム需要予測も行っています。

リアルタイム市場は2020年6月にインド卸電力取引市場によって開始され、いくつかの時間枠単位での取引が可能となりました。この動きに素早く対応したメルカドスEMIは、2021年1月、インド初のリアルタイム市場エンジンをウッタルプラデーシュ電力公社へ提供することに成功しました。

このリアルタイム市場エンジンは特定の時間における電力需要を予測するものであり、ウッタルプラデーシュの配電会社のリアルタイム市場での電力売買を支援しています 。

 

アガルワル氏はこう誇らしげに説明しています。

「午前10時17分に午後2時の需要を予測したいと思ったら、それを実現できるようになったということです。それも非常に高い精度で。詳細レベルで最大7時間先までの需要予測が可能となったのです。

これはインド初のソリューションです。私たちは気象情報源として、IBMの名を公式発表しています。」

 

Mercados Energy Markets India社について

メルカドスEMIは、2008年に設立された国際的に知られているコンサルティング会社で、、電気、石油、ガス、再生可能エネルギーの各セクター向けのソリューションを専門としています。

そのサービスと専門知識は、電力市場の設計、需要予測、電力ポートフォリオの最適化、ポリシーと規制、ユーティリティ管理、市場シミュレーション、ビジネス戦略、グリッドモデリングの分野をカバーしています。

 

製品・サービス・技術 情報


当記事は『Power to the people | Mercados EMI helps India predict electricity demand』を、日本の読者向けにリライトしたものです。

 

問い合わせ情報

 

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