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AIが「ビジネス・ユーザーの業務自動化」と「システム運用管理の自動化」を支援 ─ Watson Orchestrate、IBM Cloud Pak for Watson AIOps

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今日の企業では多くの業務がIT化され、多数のシステムがオンプレミスやクラウドで稼働しています。ビジネス・ユーザーはさまざまなツール/アプリケーションを駆使して日々の業務タスクを実行し、IT運用担当者は多様な場所で稼働するシステムを常に監視しながら安定運用と迅速な障害対応に努めています。新型コロナ禍が続く中でニューノーマル時代を迎え、デジタル変革の加速や業務生産性のさらなる向上が叫ばれる中、ビジネス・ユーザーとIT運用担当者は従来と同じアプローチでこれらを実現していけるでしょうか? ── IBMは、この課題に「AIを活用した自動化(AI-Powered Automation)」で挑みます。2021年5月に開催された年次イベント「Think 2021」では、ビジネス・ユーザーの業務をセルフサービスで自動化するソリューション「Watson Orchestrate」と、ハイブリッドクラウド環境におけるIT運用担当者の業務を自動化する「IBM Cloud Pak for Watson AIOps」が披露されました。本記事では、IBMが考える「AIを活用した自動化」のコンセプトと、両ソリューションの主な特徴と最新情報をご紹介します。

  1. 「AIを活用した自動化」でビジネスとITのパフォーマンスを高める
  2. “AIによるビジネス・プロセスとITの自動化”の共通基盤となる「Automation Foundation」
  3. Watson Orchestrate ─ “AIコンシェルジュ”がビジネス・ユーザーの業務を自動化して生産性向上を支援
  4. 会話の内容を理解して複雑なタスクも自律的に実行 ─ Watson Orchestrateの活用イメージ
  5. IBM Cloud Pak for Watson AIOps ─ Turbonomic社の買収でアプリケーションやネットワークの管理機能がさらに強化

鬼頭 巧

鬼頭 巧
日本アイ・ビー・エム テクノロジー事業本部
データ・AI・オートメーション事業部
ストラテジー&ソリューション統括部長

ミドルウェア製品を主管し、IBM Cloud Paksの日本市場における立ち上げをリード。メインフレームからクラウド、ソフトウェアまでの幅広い知識と経験を基に、お客様のDX推進を支援。製造業の担当経験を生かし、クラウドを活用した新規事業の企画からソフトウェア/インフラの提案まで、お客様のビジネス変革を包括的にサポートしている。

 

上野 亜紀子

上野 亜紀子
日本アイ・ビー・エム テクノロジー事業本部
データ・AI・オートメーション事業部
ストラテジー&ソリューション統括部
オートメーションリーダー

WebSphere製品やコンテナ・プラットフォームなどのアプリケーション基盤から、ハイブリッド・マルチクラウドおよびエッジコンピューティング環境における運用管理ソリューションまで幅広い製品群を担当。テクニカル・セールス部門のマネージャーとして、さまざまな業界のお客様への提案や技術支援を経て、現在はこれらの製品群の日本における戦略策定やオファリングの展開をリードしている。

「AIを活用した自動化」でビジネスとITのパフォーマンスを高める

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、企業を取り巻くビジネス環境は大きく変わりました。人の移動が強く制約される中で社会/経済の推進力としてデジタルが果たす役割が一層高まる中で、多くの企業経営者は自社のデジタル化の成熟度の低さを課題として実感し、今後デジタル変革(DX)を大きく加速させる必要性を感じています。

そうした中で開催されたThink 2021の基調講演において、CEOのアービンド・クリシュナは、「企業がDXをさらに加速していくためには、ビジネス・プロセスの中にAIを積極的に取り入れてインテリジェント化し、スピードと効率性をより高めていく必要があります。また、それを実現するためにはAIを組み込んだインテリジェントなデジタル・プラットフォームが不可欠です」と説明。IBMは引き続き、これまで推進してきた「ハイブリッドクラウド」と「AI」に重点を置くことに加えて、自社のさまざまな製品やテクノロジーにAIを活用したインテリジェントな機能を搭載していく方向性を示しました。

それを具体的に示すものとして、Think 2021で新たに発表されたコンセプトが「AIを活用した自動化(AI-Powered Automation)」です。IBMはこのコンセプトに基づくソリューションの提供を通じて、ビジネス・オペレーションの自動化による業務生産性の向上や、IT運用の自動化と実用的なインサイトの提示によるIT運用の高度化、アプリケーションやデータの改善による顧客体験の向上などをご支援します。

IBMが提唱する「AIを活用した自動化」は、多くのベンダーがRPAなどで推進してきた従来の自動化とは大きく異なります。これまでの自動化は、固定化されたプロセスを、1つのシステムやソフトウェアに閉じて、コンピューター内で自動化するというものでした。

それに対して、IBMの「AIを活用した自動化」は次のような点を特徴とします。

【IBMが提唱する「AIを活用した自動化」の主な特徴】

  • 膨大な量の構造化および非構造化データを収集/整理/分類し、プロセスの実行状況を把握可能にする
  • 統合されたプラットフォーム上で、AIを活用して“ビジネス・プロセスとITの両方の自動化”を実現する
  • 人とボットのコラボレーションを改善し、人に行動するためのインテリジェンスを与える
  • インサイトを活用してワークフローをプロアクティブに最適化する

IBMはWatsonを発表して以来、企業のさまざまな業務でAIの活用を進めてきました。それらを通じて得た知見に基づいて「AIを活用した自動化」を「Discover-Decide-Act-Optimize」と定義してフレームワーク化しています。

「AIを活用した自動化」を徹底して推進していくためには、上図に示すように「Discover(プロセスの流れを把握する) ─ Decide(何をどのように自動化するかを決める) ─ Act(ビジネスとITの垣根を越えて行動する) ─ Optimize(継続的な改善のために最適化する)」という枠組みで取り組みを進めることが重要です。このサイクルを回すことにより、AIやテクノロジーを活用してビジネスやITのプロセスを継続的に改善しながらDXを加速していくことができるのです。

“AIによるビジネス・プロセスとITの自動化”の共通基盤となる「Automation Foundation」

IBMは現在、このフレームワークによる「AIを活用した自動化」を支援する具体的なソリューションとして、IBM Cloud Paksの製品群をご提供しています。次の図は、「AIを活用した自動化」に対応したCloud Paks製品の構成を示したものです。

図の下部に示すように、Cloud PaksはRed Hat OpenShiftをベースにしており、従来の仮想化環境からオンプレミスのIAサーバーやPowerサーバー、さらに各社のパブリッククラウド上、さらにはエッジの環境で稼働させることができます。

また、Cloud Paksの最新のリリースでは、統合されたプラットフォーム上で“ビジネス・プロセスとITの両方の自動化”にAIを活用して実現するための共通基盤として、図中に青い枠で示した「Automation Foundation」が導入されています。Automation FoundationはRPAやプロセス・マイニング、機械学習などの機能を備え、Cloud Paksやパートナー様のソリューションから共通に利用することができます。

Think 2021では、このAutomation Foundationを利用したテクノロジーおよびCloud Paks製品として、次の3つがクローズアップされました。

  • Watson Orchestrate:新たに登場した対話型AIソリューション。メールやチャット、業務アプリケーションなど、さまざまなツールが自動的に連携しながら、あたかもコンシェルジュのようにビジネス・ユーザーの業務を支援して生産性を高める
  • IBM Cloud Pak for Watson AIOps:システムで生成されるさまざまな稼働情報データをAIが解析し、複雑なハイブリッドクラウド環境の運用管理の高度化を支援する
  • IBM WebSphere Automation、IBM WebSphere Hybrid Edition:AIがWebSphere環境でのJavaアプリケーションやシステムの運用の自動化と効率化、既存Javaアプリケーションのマイクロサービス化によるモダナイゼーションを支援する

これらのうち、本記事では「Watson Orchestrate」と「IBM Cloud Pak for Watson AIOps」の主な特徴をご紹介します。

Watson Orchestrate ─ “AIコンシェルジュ”がビジネス・ユーザーの業務を自動化して生産性向上を支援

Watson Orchestrateは、ビジネス・ユーザーがセルフサービスで利用して日常業務の生産性を高めることができる対話型のAIです。

ビジネス・ユーザーは、Watson Orchestrateを日常業務で利用しているメールやチャットなどのツール、業務アプリケーションに対する単一のコンタクト・ポイントとして使い、自然言語による会話形式で指示を出します。Watson Orchestrateは、その会話の内容を理解して行うべき業務タスクを判断し、ユーザーに代わってメールやチャット、業務アプリケーションなどを連携させて自律的に業務タスクを実行します。

Watson Orchestrateの大きな特徴の1つは、さまざまな業務タスクを定義した「スキル」によって機能を拡張できる点です。例えば、電子メールを扱うためのスキルやチャットを扱うためのスキルを登録すると、Watson Orchestrateはそれらに基づいてビジネス・ユーザーとの会話の内容から実行すべきタスクと必要なスキルを自律的に判断し、タスクを実行します。タスクはユーザーが自ら定義できるほか、今後IBMやパートナー各社からさまざまなスキルが提供される予定です。

会話の内容を理解して複雑なタスクも自律的に実行 ─ Watson Orchestrateの活用イメージ

Watson Orchestrateの活用イメージをつかんでいただくために、簡単なシナリオをご紹介しましょう。ある企業で働くキャロルさんは、日頃、カレンダーやメール、チャット(Slack)、Salesforceなど、さまざまなツールやアプリケーションを使って業務を行っています。Watson Orchestrateは、キャロルさんの業務をどう支援してくれるのでしょうか。

このように、Watson Orchestrateは登録されたスキルと会話の内容から必要なスキルを自律的に判断し、必要に応じて追加の情報を得ながら業務タスクを実行します。

次に、もう少し複雑な業務タスクを実行してみます。

【Watson Orchestrate活用イメージ2:見積書の作成と上長への承認依頼】ある顧客に提出する見積書を作成したいキャロルさんは、その顧客にはどの程度の割引率を適用できるかをWatson Orchestrateに尋ねました。すると、Watson Orchestrateはコンテキストやキーワードから使用するスキルを内部的に検討し、このケースでは「ディスカウント」スキルが適切だと判断して実行します。

「ディスカウント」スキルは、ルール・エンジンや意思決定支援システム「IBM Operational Decision Manager」の機能などを呼び出して推論を行い、「今回のケースでは35%まで割り引きが可能だが、25%を超える場合は上長の承認が必要である」ということをキャロルさんに伝えます。それに対して、キャロルさんは28%の割引率の適用と見積書の作成、そして上長への承認申請を指示します。

この指示を聞いたWatson Orchestrateは、タスクの実行に必要なスキルを自律的に判断すると、それらのスキルを使ってSalesforceを使って指示された割引率の見積書を作成し、次にワークフロー管理ツール「IBM Automation Workstream」でキャロルさんの上司に見積書の承認申請を出します。それが終わると、キャロルさんにタスクの実行完了を報告しました。

画面左側がSlackを介して行われているキャロルさんとWatson Orchestrateの対話の内容、画面右側はWatson Orchestrateに登録されているスキルの管理画面です。

このように、Watson Orchestrateは複数のツール/アプリケーションを使って行う業務も、必要なスキルや細かなタスクの順序を自律的に判断してツール/アプリケーションを動的に連携させながら実行します。

これまで標準化/自動化を行うことが難しかった業務や、人が都度判断しながら実施していたプロセスなど、Watson Orchestrateはビジネス・ユーザーが日々行っているシンプルな業務タスクから複雑な業務タスクまでを対象にしています。しかも、従来のRPAのように固定的なタスクを事前に定義する必要はありません。ツール/アプリケーションを使うためのスキルを登録することで、1人ひとりのビジネス・ユーザーがセルフサービスで自分の業務に適した自動化/効率化を図ることができるのです。

なお現在、Watson Orchestrateはプレビューとしてベータ版を公開しており、今年後半に前出のCloud Paks製品群の1機能としてリリースが予定されています。当初は英語対応版のみが提供され、その後のバージョンアップで各国語への対応が進められる計画です。

【Watson Orchestrate参考情報】
Watson Orchestrateの詳細およびプレビュー版はこちらをご覧ください。

IBM Cloud Pak for Watson AIOps ─ Turbonomic社の買収でアプリケーションやネットワークの管理機能がさらに強化

次にご紹介するのは、AIOpsソリューションのIBM Cloud Pak for Watson AIOpsです。AIOps(AI for IT Operations)とは、AIを適用することでシステム運用管理を自動化/高度化することを指します。

今日の企業システム環境は、オンプレミスやパブリッククラウドの上で従来型からクラウドネイティブまで多種多様なアプリケーションが稼働しており、それぞれが稼働ログやパフォーマンス・ログ、イベント情報など、さまざまなIT運用データを生成しています。システムの状態を正確に把握するには、それらのデータを頼りにするほかありませんが、膨大なデータを人手で確認/解析するのは不可能です。

そこで、これらのIT運用データを1カ所に集約してAIで総合的に分析することで、システム全体の状況をリアルタイムに把握できるようにするとともに、AIならではの高度な分析によって障害の予兆検知も行い、さらに障害対応もAIの支援で迅速化/高度化しようというコンセプトで誕生したソリューションがCloud Pak for Watson AIOpsです。昨年のThink 2020で発表されて以来、四半期に一度のバージョンアップにより順次、機能強化が進められてきました。

【関連記事】
『ハイブリッドクラウド環境のIT運用データをAIが分析し、障害検知/対応を支援する「IBM Cloud Pak for Watson AIOps」』
『AIOpsで複雑化するシステム運用管理の課題を解決! ハイブリッド・マルチクラウド時代は運用管理もAIが支援』

また、多くのお客様は従来からお使いの監視ツールに加えて、今後はクラウド活用の進展に応じてクラウドネイティブに適した監視ツールを新たに導入されることでしょう。そのようなお客様に対して、Cloud Pak for Watson AIOpsと非常に親和性の高いツールとして提供しているのが、クラウドネイティブ化によって複雑化したシステム環境に関する“可観測性(Observability)”を提供する「IBM Observability by Instana APM」です。

Instanaは、IBMが昨年に買収した米国Instana社の製品であり、システムが生成するさまざまなデータを自動的に解析することで、お客様がシステムの状況をリアルタイムに観測し、その振る舞いを理解できるようにします。複雑で何が起きているのか理解できない不透明なシステムを、全てが理解できる透明なシステムへと変えるツールがInstanaなのです。

【関連記事】
『複雑化するクラウドネイティブ環境の“可観測性(Observability)”をInstanaで確保する』

さらに今年5月、IBMはInstanaと同様にCloud Pak for Watson AIOpsと組み合わせて使うことで大きな効果を発揮するツール「Turbonomic」の開発元である米国Turbonomic社の買収を発表しました。

Turbonomicは、アプリケーション・リソース管理(ARM)やネットワーク・パフォーマンス管理(NPM)の機能を提供する監視ツールです。例えば、動的に構成が変わるハイブリッドクラウドやマルチクラウドの環境で「アプリケーションがどのようにリソースを使っているのか」を監視し、どこがボトルネックになっているのか、どこでリソースが不足しているのかを可視化/分析します。

ネットワーク管理に関しても強力な機能を備えているほか、パブリッククラウドのコスト管理機能も備えており、例えば「このパブリッククラウドのコストが嵩んでいるので、別のベンダーのクラウドに移そう」といったコスト/資産管理を行うためのツールとしても活用できます。

Cloud Pak for Watson AIOpsにInstanaとTurbonomicが加わることで、お客様は自社のハイブリッドクラウド環境全体で何が起きているのかを詳細かつリアルタイムに把握し、運用管理をより高度化していくことが可能となります。

なお、AIOpsの領域に関しては、Instana、Turbonomicの買収以外にも、次に示すようにベンダー各社との連携やOEMなどのパートナーシップを随時拡大/強化しています。

以上、今回はThink 2021で「AIを活用した自動化」のためのソリューションとしてフォーカスが当てられたWatson OrchestrateとIBM Cloud Pak for Watson AIOpsの特徴と最新情報をご紹介しました。これらのソリューションに関してより詳細な情報をご希望のお客様は、ぜひ弊社担当営業までご連絡ください。デモも交えて詳しくご紹介させていただきます。

関連リンク
詳しい製品ページ
障害検知/対応を支援する「IBM Cloud Pak for Watson AIOps」

【関連動画】
IBM Watson AIOps Demo (日本語字幕入り, 3分58秒)


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