ネットワーク・トラフィック分析とは

 サーバー・ケーブルを扱うIT技術者

執筆者

Mesh Flinders

Staff Writer

IBM Think

Ian Smalley

Staff Editor

IBM Think

ネットワーク・トラフィック分析とは

ネットワーク・トラフィック分析(NTA)は、ネットワークの安全性を維持し、ピーク・レベルでのパフォーマンスを発揮するために、コンピューター・ネットワークからデータを収集して分析するプロセスです。

ネットワーク上で接続されたシステムやデバイスがどのように機能しているかについての洞察を得るため、ネットワーク・アクティビティーに関する綿密な調査が伴います。

ネットワークはほとんどの現代企業にとっての基盤であり、従業員が自由にコミュニケーションを取ったり共同作業したりすることを可能にし、重要なアプリケーションや事業のオペレーションを強化します。

NTAは、組織がネットワークのパフォーマンスを最適化し、ネットワーク・セキュリティーの脅威を軽減し、問題が広がる前にトラブルシューティングを行う上で役立ちます。

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ネットワーキングとは

ネットワーキング、またはコンピュータ・ネットワーキングとは、デスクトップ、モバイル・デバイス、ルーターなどの複数のコンピューティング・デバイスを接続して、情報やリソースを送受信できるようにすることです。

ネットワーク上のデバイスは、イーサネット、ワイヤレス(Wi-Fi)、セルラーなど、さまざまなタイプの接続に依存して機能を発揮します。また、相互に通信する方法や交換する情報の種類を管理する特定のプロトコルも遵守する必要があります。

最も広く浸透し、よく知られているネットワークはインターネットそのものであり、人々が通信し、仕事をし、楽しまむ上での原動力となっています。しかし、インターネットが普及するにつれ、ネットワークへの不正アクセスを試みるサイバー脅威の頻度とコストも増加しています。

IBM Cost of a Data Breach 2025 Reportによると、昨年のネットワーク侵害による世界的な平均コストは440万米ドルでした。これは大きい数字ではあるものの、その前年より9%減少しており、組織がNTAや脅威の検知と対応(TDR)を以前よりも真剣に受け止めていることを示しています。

ネットワーク・セキュリティーとは

ネットワーク・セキュリティーは、組織が依存するネットワークと通信システムをサイバー攻撃から保護することに重点を置いたサイバーセキュリティーの一分野です。企業はクラウド・コンピューティング人工知能(AI)モノのインターネット(IoT)などの新しいテクノロジーを採用するにつれて、デジタル・ケイパビリティーを拡大しています。しかし、そうすることで、システムやネットワークがサイバー攻撃に対してどれだけ脆弱であるかを示す指標である攻撃対象領域も拡大します。

毎年、マルウェアランサムウェアによるサイバー攻撃により企業は数百万ドルの損害を被っており、ネットワーク・セキュリティー・ソリューションの需要が高まっています。2024年、世界のネットワーク・セキュリティ市場は240億米ドルと評価され、今後7年間の年間平均成長率(CAGR)は14%と予測されています。1

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ネットワーク・トラフィック解析(NTA)の仕組み

ネットワーク・トラフィック分析の核となるプロセスは、通常、次の4つのステップに分類されます。

  1. データコレクター
  2. 処理
  3. 分析
  4. 視覚化

では、各ステップとそれに関連するツールや手法について詳しく見ていきましょう。

1. データ収集

ネットワーク・トラフィックを分析するには、まずトラフィックを収集する必要があります。組織は、ルーターやスイッチなどの単純なデバイスから、リアルタイムでデータを収集して分析できるより複雑なネットワーク監視ツールまで、さまざまなデータ収集ソースを活用しています。

データ収集のサブセットであるデータ・キャプチャーは、ネットワーク上を流れ、加工が最もされていない状態にあるデータに焦点を当てます。データ・キャプチャーでは、ネットワーク・アナライザー、パケット・スニファー、侵入検知システム(IDS)などの専用ツールを使用して、多くの場合はソースから直接、非構造化データを収集します。

2. 処理

収集されたデータは、関連する情報が含まれているかどうかを判断するために特定の基準でフィルタリングする必要があります。この手法は、データ処理と呼ばれます。処理段階で評価される一般的な情報には、IPアドレス、ポート、ならびにハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)、ファイル転送プロトコル(FTP)、およびドメイン・ネーム・サーバー(DNS)などの一般的なプロトコルが含まれます。

データ処理の目的は、未加工データをより簡単に分析できる、価値のある実行可能なデータに変換することです。この処理ステップは、ネットワークに対する潜在的な脅威を特定し、パフォーマンスを最適化し、あらゆる問題のトラブルシューティングを行う上で重要です。

3. 分析

ネットワーク・データが収集および処理されると、分析の準備が整います。NTAが依存するデータ分析には、行動、プロトコル、統計、ペイロード、フローの5つの一般的な種類があります。

  • 行動分析:行動分析では、ネットワーク・トラフィック・パターンのパターンに注目し、ベースライン・モデルに依存して疑わしい活動を特定します。現在のリアルタイムのフロー・データをベースライン・モデルと比較することで、行動分析では、増減や急増がサイバー攻撃や他の何かの証拠であるかを判断できます。高度な行動分析ツールは、AIと機械学習(ML)を使用して、異常な行動や潜在的な脅威を識別します。
  • プロトコル分析:ネットワーク・プロトコル(ネットワーク上でのデータの送受信方法を管理するルール)は、全体的なネットワークの正常性とトラフィック・フローに関する重要な手掛かりを提供します。プロトコル分析では、ネットワーク上のデバイスやシステムが遵守しているプロトコルを分析することで、発生している通信のタイプが脅威であるかどうかを判断できます。
  • 統計分析:統計分析では、ネットワークのトラフィック量とトラフィック・パターンを調べ、傾向や異常の特定を試みます。NTAツールは、量、パケット・サイズ、プロトコル配信などのネットワーク・メトリクスに関する数式を使用して、異常がサイバー脅威や別のネットワークの問題を示す可能性を推定します。
  • ペイロード解析:ペイロード解析は、ネットワーク・パケット(ネットワークを介して送信されるデータの小さな単位)の内容を詳細に調べ、その意味を解釈しようとするものです。ペイロード分析では、WebアドレスやEメールの件名などのアプリケーション層情報を調べることで、セキュリティー・チームがネットワーク上で発生している通信の種類を把握し、セキュリティー脅威を発見できます。
  • フロー分析:フロー分析は、ネットワーク上に接続されたデバイスやシステム間のネットワーク・トラフィックの流れを調査します。パフォーマンスの問題やセキュリティー脅威を示す可能性のある問題パターンの証拠を探します。フロー分析を効果的に実施すると、セキュリティー・インシデントを解決し、ネットワーク・トラフィックが1カ所で遅くなっている潜在的なボトルネックを特定するために役立ちます。

4. データの可視化

最後に、ネットワーク・トラフィック・データが収集、処理、分析された後、組織全体にレポートできる形式でデータを表示する必要があります。この手順は、データの可視化と呼ばれます。NTAの最終ステップには通常、チームや管理者が洞察を理解し、それに対処するためのストラテジーを策定するのに役立つダッシュボードやグラフ、チャート、その他の視覚化手法が含まれます。

ネットワーク・トラフィック分析のメリット

ネットワークが複雑になるにつれて、組織はネットワーク・トラフィックを監視し、ITインフラストラクチャーに対する潜在的な脅威を特定するために、ネットワーク・トラフィック分析(NTA)にますます依存するようになっています。

オンプレミスからクラウド、ハイブリッド、さらにはマルチクラウド環境に至るまで、ネットワーク管理者はファイアウォールやウイルス対策ソフトウェアなどのエンドポイント・ソリューションがニーズを満たす上で不十分であることに気づき始めています。その結果、彼らはNTAへの依存度をさらに高めています。ネットワーク・トラフィック分析(NTA)は企業にいくつか主要なメリットをもたらします。

トラフィック・パターンに関する洞察

NTAは、管理者がネットワーク上を流れるトラフィックの種類とそのトラフィックが通過するルートに関する洞察を明らかにする上で役立ちます。NTAはトラフィックのパターンを明らかにすることで、ネットワークのパフォーマンスを最適化し、トラフィックで回避可能な遅延が発生する潜在的なボトルネックを特定するのに役立ちます。

自動異常検知

最新のNTAソリューションは、AIとMLを利用して問題の特定と解決を自動化します。AI搭載ツールは運用の可視性を強化し、企業のネットワーク・パフォーマンスとコスト効率を向上させます。IBM Institute for Business Value(IBV)の調査によると、経営幹部の51%がすでにITネットワークの特定の側面において自動化を進めてしています。この数字は今後3年間で82%に成長すると予測されています。

利用に関する意識の向上

NTAは、ネットワークがどの程度使用されているかをリアルタイムで明らかにできます。この洞察により、管理者は、ワークロード(特定のタスクに必要な時間とコンピューティング・リソースとして定義される)をより戦略的に分散し、ネットワークが最大容量で動作することを保証できます。

セキュリティとトラブルシューティングの強化

NTAは、AIおよびML監視ツールからの詳細な測定値を利用することで、管理者がネットワークの状態やトラフィック・パターンの突然の変化を検出し、適切なアクションをとれるように支援します。一部の高度なソリューションでは、生成AIを使用して、トラフィックの分類やインシデント追跡のプロセスを高速化します。

帯域幅管理の改善

NTAを使うと、管理者はベースライン・メトリクスに照らしてネットワーク・トラフィックを継続的に測定することで、他のアプリケーションよりも多くの帯域幅を使用するアプリケーションを特定し、それに応じてネットワーク・リソースを割り当てることができます。

より多様なデータ・ソース

強力なNTAは、セキュリティー・チームがネットワーク上で監視するデータの種類を多様化できるようサポートするため、洞察を得るための単一のデータ・ソースに依存する事態を避けられます。たとえば、最新のネットワーク管理システムは、フロー・データ、パケット・キャプチャー、ログ・データを組み合わせて、ネットワークのパフォーマンスを包括的に把握できます。

他のシステムとのシームレスな統合

高度なNTAソリューションは他のネットワーク管理システムに簡単に統合できるため、サイロ内に存在することはありません。たとえば、現代の企業の多くは、NTAソリューションと簡単に組み合わせることができるセキュリティー・インシデントおよびイベント管理(SIEM)ツールに依存しています。

ネットワーク・トラフィック分析の5つのユースケース

現代の企業はイノベーションのペースに対応するためにデジタル・トランスフォーメーションの取り組みを強化しており、ネットワーク・トラフィックを綿密に監視および分析する必要性がこれまで以上に重要になっています。

ここでは、最も一般的なユースケースをいくつか紹介します。

異常な場所からのトラフィックの検出

最新のネットワーク・トラフィック分析(NTA)ソリューションは、IPアドレス・フィールドを使用することで、サイバー脅威の発生源である可能性が高い場所からのネットワーク・トラフィックを追跡できます。NTAツールは、アカウント共有やアカウントの乗っ取りなど、さまざまな一般的な地理位置情報違反を発見するようにプログラムできます。検証済みプライベート・ネットワーク(VPN)の不正使用を検知して、データに不正アクセスすることも可能です。

DNSトンネリングを防止

DNSトンネリングは、悪意のあるトラフィックを通常の正当なDNSトラフィック内に隠すことで、ネットワーク・セキュリティーを侵害する技術です。NTAソリューションは、DNSパケットを網羅的に検査し、DNSクエリーと応答の両方に正規のトラフィックのみが含まれるようにします。

不審なデバイスを特定

リモートワークやモノのインターネット(IoT)テクノロジーの台頭により、ネットワーク経由で接続されるデバイスの数は飛躍的に増加しました。NTAソリューションは、すべての許可されたネットワーク・デバイスのアクティビティーを追跡し、ネットワークにアクセスしている無許可デバイスの検出を支援して削除できるようにします。

リアルタイムで脅威を監視

クラウドの複雑さが増しているため、最新のIT環境には大きな攻撃対象領域があり、マルウェアやランサムウェア、その他の一般的なサイバー脅威の侵入口が多数あります。強力なNTAは、ネットワークの複雑さに関係なく、リアルタイムの脅威インテリジェンス、識別、および軽減を提供します。

関連するポリシーと規制の遵守

グローバル企業では、複数の地域で規制の対象となるデータがネットワークを通過することがよくあります。包括的なNTAソリューションは、ネットワーク上を流れるデータが、転送中に適用されるすべての規則や規制に準拠し続けることを保証する上で役立ちます。

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脚注

1. Network security market size, Fortune Business Insights, June 2025