AIハードウェアとは、人工知能(AI)システム用に設計された専用コンポーネント、またはハイパフォーマンス・コンピューティングから転用されたコンポーネントのことを指します。これらは、AIモデルのトレーニングやデプロイに求められる、負荷の高い処理を扱います。
大規模言語モデル(LLM)やニューラル・ネットワークなどのAIシステムでは、機械学習(ML)、ディープラーニング(DL)、その他のAIアルゴリズムによって使用される大規模なタイプのデータセットを処理して、人間の思考、学習、問題解決の方法を再現するために、高帯域幅のハードウェアが必要です。
一般的な中央処理装置(CPU)などの汎用ハードウェアはほとんどの計算タスクを実行できますが、AIインフラストラクチャーにはそれよりもはるかに多くの計算能力が必要です。AI開発やAIトレーニングに関連するような負荷の高いAIワークロードには、AIアクセラレーターやAIチップなど、特定の最適化が施されたAIハードウェアが向いています。これらのハードウェアは、拡張性とエコシステムの効率化に適しています。
業界が急速に進化を続ける中、AIの革新はほぼ毎日のように話題となっています。AIの時代に突入しつつある今、AIハードウェアは、こうした印象的なAIアプリケーションを支える重要なインフラストラクチャー要素となっています。
例えば顔認識のような、いまや当たり前のように使われているAIアプリケーションも、その動作はAIハードウェアに大きく依存しています。顔認識では、画像をローカルで処理し、承認済みの画像と照らし合わせ、正常なばらつきを識別して、携帯電話やタブレットのロックを解除する必要があります。AIハードウェアがなければ、Face IDやスマート・アシスタントといった技術は、実用性が低く、コストも高くなってしまうでしょう。
AIハードウェアの主なメリットは次のとおりです。
AIハードウェアは、複雑でリソースを大量に消費するAIワークロードを高速に実行するために最適化されています。AIチップが異なれば、速度を上げるためのアプローチも異なりますが、一般的には並列コンピューティングの恩恵を受けています。これは、大規模で複数の要素から成るタスクを、より小さく単純なステップに分割して同時に処理する手法です。
汎用CPUは、タスクを一度に1つずつ順番に処理する逐次処理を採用していますが、AIチップは専用のハードウェアアーキテクチャを通じて並列処理を行い、数千、場合によっては数十億もの演算を同時に実行します。複雑なAIワークロードをより小さな処理単位に分割し、それらを並列に実行することで、AIハードウェアは処理速度を飛躍的に向上させることができます。
ほとんどのAIハードウェアは、特殊なAIシステム内での動作に特化して設計されていない場合でも、少なくともAIアプリケーションに共通するような負荷の高いオペレーションに特化して構築されています。
特定のタイプの AI ハードウェアは、ハードウェアレベルで再プログラム可能です。この機能により、高度に専門化されたユースケースに合わせて簡単に調整、テスト、再調整できます。また、ニッチなAIアプリケーション向けに特化して設計されたものもあります。AIハードウェアの中には、もともとは別の用途向けに開発されたものもありますが、汎用ハードウェアでは対応できないような、高度なAIタスクの性能基準を満たすよう設計されています。
これまでAIテクノロジーは、非常に電力消費が大きいことで知られてきました。AI向けに新たに開発された、あるいは既存のものを転用した多くのAIハードウェアにも、当初は同じことが当てはまっていました。しかし、時間の経過とともにAIハードウェアの電力効率は向上し、現在では、負荷の高いAIワークロードの処理に本来向いていない従来のハードウェアと比べて、はるかに効率的になっています。
現行および次世代のAIハードウェアは、低精度演算などの機能を備えており、より少ないトランジスタでワークロードを処理できるため、消費電力を抑えることができます。こうした進歩は環境負荷の軽減につながるだけでなく、収益面でもメリットをもたらします。
一部のAIモデルでは、AIハルシネーション(幻覚)と呼ばれるエラーが時折発生しますが、精度が最重要なアプリケーションにおいて、AIハードウェアは不正確な出力の抑制に役立ちます。医療のようなクリティカルなアプリケーションでは、ハルシネーションを減らし、可能な限り正確な結果を得るために、最新のAIハードウェアが必要不可欠です。
最も一般的なタイプのAIハードウェアはAIチップです。これは高度な半導体マイクロプロセッサーで、特化型のCPUのように機能します。Nvidia、Intel、AMDなどの大手メーカーのほか、Cerebras Systemsなどのスタートアップ企業も、さまざまなチップ・アーキテクチャを備えた集積回路を設計しています。これにより、さまざまな種類のAIソリューションにより適合でき、エネルギー効率が向上し、ボトルネックが軽減されます。
AIハードウェアには、リアルタイムな計算結果を提供する低遅延相互接続など、他の種類の次世代ハードウェアも含まれますが、主なカテゴリーはプロセッサーとメモリの2つです。
一般的なAIハードウェアの種類として挙げられるのは、グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)、テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)、ニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などの高性能プロセッサーです。AIチップなどのプロセッサーは、複雑なAIワークロードを処理するための計算能力を提供します。こうした強力なプロセッサーはしばしば高い消費電力を伴いますが、AIハードウェアは世代を重ねるごとに進化を続けており、電力効率の向上に努めています。
メモリーは、AI対応マシンを含むほとんどのコンピューターのインフラストラクチャーにおいて重要な役割を担っています。メモリー・ストレージ・アーキテクチャーとデバイスにより、AIシステムはAIタスクの完了に必要なデータや命令示に高速にアクセスできるようになります。システムのメモリー容量と速度は、パフォーマンスに直接影響します。メモリーが不足するとボトルネックが生じ、AIワークロードだけでなく、すべての動作が遅くなったり妨げられたりする可能性があります。
ただし、メモリーといってもさまざまで、すべてのメモリーのタイプに役割があり、特定のAIアプリケーションや汎用的なAI処理により最適化されたものも存在します。AIシステム内では、プロジェクトや運用上の特定の要件に応じて、AIプロセスのさまざまな部分に、異なる種類のメモリーが組み合わされて使用されることがよくあります。
AIハードウェアのユースケースは、AIそのものと同じくらい多岐にわたります。AIテクノロジーが高性能なグラフィックス処理やハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)向けのハードウェアを借用してきたように、現在はAIハードウェアを利用して自らのオペレーションを向上させています。データセンターからファストフードのドライブスルーに至るまで、AIテクノロジーが活用されるあらゆる場面でAIハードウェアは役立ちます。
実のところ、あなたはこの記事を読むためにAIハードウェアを使っているかもしれません。AppleやGoogleなどのメーカーは、AIチップを搭載したノートPCやモバイル端末を次々と発売しており、音声認識や写真編集といったモバイル向けAIタスクの性能向上に活用しています。AIハードウェアは高性能化と小型化がますます進んでおり、多くの処理をローカルで完結できるようになってきています。これにより、通信帯域の使用が抑えられ、ユーザー体験の向上にもつながっています。
そのほかの分野でも、AIハードウェアはクラウド・コンピューティング・インフラストラクチャーにおける重要な要素となりつつあります。エンタープライズレベルのAI対応GPUやTPUは非常に高価ですが、IBM、Amazon、Oracle、Microsoftといったプロバイダーは、これらの高性能プロセッサーを、クラウド・サービスを通じてレンタル形式で提供しており、コスト効率の高い選択肢として利用が広がっています。
AIハードウェアのその他のアプリケーションには、次のようなものがあります。
AIハードウェアは、自動運転車や自律走行車の開発において不可欠なコンポーネントです。これらの車両は、カメラやセンサーから得られる大量のデータをAIチップで処理・解釈し、リアルタイムで反応することで事故を防ぎ、乗員や歩行者の安全を確保します。
AIハードウェアは、コンピューター・ビジョンなどに必要な並列処理能力を備えています。これは、コンピューターが停止信号や交差点の交通状況を「見て」解釈するために役立ちます。
エッジコンピューティングは急速に拡大しているコンピューティング・フレームワークであり、企業のアプリケーションや余った演算能力を、IoT(モノのインターネット)デバイスやローカルのエッジサーバーなど、データソースに近い場所へ移動させます。デジタル・インフラストラクチャーがますますクラウド・コンピューティングに依存していく中で、エッジコンピューティングは帯域幅を高速化し、プライバシー強化を求める利用者に強固なセキュリティーを提供します。
同様に、エッジAIはAIオペレーションをユーザーの近くに移すことを目指しています。AIハードウェアはエッジ・インフラストラクチャーにおける有用なコンポーネントとなってきており、機械学習やディープラーニングのアルゴリズムを活用して、データを発生源でより効率的に処理することで、遅延の低減やエネルギー消費の削減を実現します。
AIテクノロジーは何十年にもわたって開発が進められてきましたが、ChatGPTやMidjourneyのような生成AIテクノロジーの飛躍的進歩などにより、ごく最近のになって急速に注目を集めるようになりました。こうしたツールは大規模言語モデルや自然言語処理を使用して、自然な会話を解釈し、ユーザーの入力にもとづいて新たなコンテンツを生成します。
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