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ドロシー・ヴォーンが活用したプログラミング言語〜映画『ドリーム』

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映画『ドリーム(2017年9月29日公開)』に登場するIBMメインフレーム・コンピューターに限らず、コンピューターを用いた高度な計算を行うためにはプログラミングが必要でした。もちろん、それは現在も同じなので、「プログラミング」という言葉から「プログラミング言語」を連想される方が多いと思います。

「プログラミング言語」にはさまざまな種類があります。現在、大学などにおけるプログラミング演習で用いられるプログラミング言語は、C++、Javaあたりなのでしょうか。最近では、機械学習の分野で利用されることが多いスクリプト言語のPythonなども対象となっているのかもしれませんね。

では、ドロシー・ヴォーンの時代のプログラミング事情はどうだったのでしょう。そして、ドロシー・ヴォーンはどのようなプログラミング言語を活用していたのでしょうか。答えの1つは以下のシーンにあります。

図書館でFORTRANの本を手に取るドロシー・ヴォーン ©2016 Twentieth Century Fox

9月29日の映画公開後に劇場でご覧いただくと、このFORTRANの本が置かれていた場所にも、当時の社会状況が影を落としていたことをわかっていただけます。それでも、ドロシー・ヴォーンがFORTRANを学習、習得し、チーム・メンバーに教育することで、ウエスト・コンピューティング(西計算グループ)の全員は、NASAにとって不可欠な存在となったのです。

FORTRANは、IBMのジョン・バッカスが考案してチームとともに開発した、FORmula TRANslator または FORmula TRANslation という「数式翻訳」を意味する言葉に由来する名称のプログラミング言語です。(写真は、FORTRAN 25周年にあたる1982年に一堂に会したFORTRAN開発チームのメンバーです。FORTRANの歴史的な詳細は IBM 100 – FORTRAN でご確認いただけます。)

FORTRANそのものをご存知ないとしても、TOP500と呼ばれるスーパーコンピューターの性能値のランキングで使用されているLINPACK ベンチマークの名前をご存知の方は多いと思います。実は、LINPACK ベンチマークは、アメリカのアルゴンヌ国立研究所でFORTRANライブラリーとして開発されました。すなわち、FORTRANは科学技術計算のような大規模な計算に向いているプログラミング言語として、現在でも活用されているのです。ドロシー・ヴォーンの時代のNASAがFORTRANコンパイラーを持つIBM 7090を導入したのはある意味において当然のことと言えるでしょう。

では、当時のプログラミングをめぐる状況はどうだったのでしょうか。実は、1957年にFORTRANが商用リリースされるまでは、ほとんど全てのプログラミングは、機械語、つまり、アセンブラーによって行われていました。その結果、特定のコンピューターのアセンブラーで作られたプログラムには可搬性が無く、そのコンピューターでしか使えなかったのです。一方、FORTRANの場合は、FORTRANコンパイラーを持つコンピューターであれば、FORTRANで作ったプログラムを利用できました。換言すれば、さまざまなコンピューターごとにFORTRANコンパイラーが存在していたことになります。IBMにおいてもIBM 704用のFORTRANコンパイラーに始まり、ドロシー・ヴォーンが使用したであろうIBM 7090版のFORTRAN IVなど、多様なFORTRANコンパイラーが存在しました。つまり、FORTRANはコンピューターの機種やオペレーティング・システムの違いを超えて活用され、1966年にはアメリカの規格が制定されることで標準化された、最初のプログラミング言語なのです。

ちなみに、メインフレーム用のプログラミング言語というと、COBOLを想起される方が多いことでしょう。どちらかというと事務処理を意識した言語であるCOBOLと、科学技術計算を意識したFORTRANは対極の言語とも言えます。現代においても進化を続けるIBMのメインフレームは、対極にある両言語のみならず、C言語やPL/I、さらにはJavaをサポートするとともに、zAAPというJAVA実行環境を提供する特別な装置を提供したり、各種のOSS(Open Source Software)のプログラミング言語(例えば、SwiftNode.jsGo言語など)をサポートするなど、常に最先端の開発環境を取り入れています。長い歴史を持つプログラミング言語と新たな言語の両方を使用できるのがIBM メインフレームの特長と言えるかもしれません。

NASA Technical Reports Server(NTRS)に保管されている“A self-study course in FORTRAN programming. Volume 1 – Textbook”の序文(PDFの7ページ目)、“A self-study course in FORTRAN programming. Volume 2 – Workbook”の序文(PDFの6ページ目)、に、自習書の作成に貢献したラングレーのメンバーの1人としてドロシー・ヴォーンの名前が記されています。

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これまでも、そして、これからも社会基盤を支えるIBMのメインフレームは、ブロックチェーン機械学習といった最先端のテクノロジーの基盤として、デジタル時代に求められる信頼を根幹から支えます。


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