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CPUが大きな筐体だった時代〜映画『ドリーム』

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当記事をご覧になっている皆様に質問です。

現在、パソコンだけでなく、普段、皆さんが手にしているスマートフォンにも、コンピューターの「頭脳」にあたるCPU(Central Processing Unit)が入っていることはご存知だと思います。

以下の画像は、映画『ドリーム(2017年9月29日公開)』で、ドロシー・ヴォーンが使いこなしたメインフレーム・コンピューター IBM 7090を構成する主要ユニットです。これらの中のどれがCPUだと思われますか?

映画に登場するIBM 7090の主要ユニット ©2016 Twentieth Century Fox

画像の中央の椅子の前にある机のようなユニット、と思った方が多いのではないでしょうか? ただ、残念ながら、それは正解ではありません。

実は、画像の奥の壁に並んでいる筐体群-これこそが、IBM 7090のCPUにあたるIBM 7100 Central Processing Unitなのです。IBM Archivesには、IBM 7100 単独の記事がありませんので、Computer History Museumのページをご覧ください。 http://www.computerhistory.org/collections/catalog/102635776 (Computer History Museumのトップページにリダイレクトされる場合があるため、リンクは埋め込んでおりません)

CPUの性能は、現在は主にギガヘルツ(GHz)という単位で語られていますが、IBM 7090の時代にはそのような概念はありません。

調べたところ、IBM 7090の上位機種にあたるIBM 7094の資料に、CPUの性能に関する記述がありました。(モノクロ画像はIBM 7094で、左奥にIBM 7100が見えます。)

この時代のコンピューターの性能を測る指標は「マシン・サイクル時間」であり、「A basic machine operating cycle of 2 microseconds」と記述されています。microsecondとは「マイクロ秒」。「マイクロ秒」は100万分の1秒を表す単位です。つまり、IBM 7094のマシン・サイクル時間は2マイクロ秒ということになります。

では、現在のIBM メインフレームのCPUと比較するとどうなるのでしょうか。最新モデルのIBM z14のCPUクロックは5.2GHz。ただ、マシン・サイクル時間の記述を見つけられませんでしたので、今回は、IBM z13(CPUクロック 5GHz)のマシン・サイクル時間を用います。IBM z13 Technical Introduction (*)に、「the z13 adjusted the cycle time to 0.2 nanoseconds (5.0 GHz).」という記述があります。nanosecondとは「ナノ秒」。「ナノ秒」は10億分の1秒を表す単位です。IBM 7094の比較対象とするIBM z13のマシン・サイクル時間は0.2ナノ秒となります。

さて、IBM z13のマシン・サイクル時間である「0.2ナノ秒」は、IBM 7094のマシン・サイクル時間である「2マイクロ秒」よりも、どのくらい高速ということになるのでしょうか。これは計算するしかありません。
2マイクロ秒(100万分の1秒)÷0.2ナノ秒(10億分の1秒)=10,000
つまり、現代のメインフレームであるIBM z13のCPUは、ドロシー・ヴォーンの時代のIBM 7094のCPUよりも1万倍高速になっているのです。最新機種であるIBM z14のCPUはIBM z13よりも高速なので1万倍以上高速になっていることになります。

現在のIBMメインフレームのCPUは、この写真でご覧ください。これは、IBM z13sと呼ばれる機種に組み込まれているCPUです。(CPUの実際の大きさがイメージしやすいので、この画像を選択しました)
IBMメインフレームのCPUが、ドロシー・ヴォーンの時代と比較して驚くほど小さくなり、1万倍以上の高速化を果たせた理由は、IBMのメインフレームへの継続的な研究開発費の投資と、数多くの特許によるイノベーションです。

進化を続けるIBMメインフレームが数々の変革を成し遂げてきた中で、2002年のメインフレーム用のOS(z/OS)を必要としないLinux専用メインフレームの発表とOSS(Open Source Software)のサポートは、IBMメインフレーム技術にとって非常に大きな変革でした。そして、本年発表したデータ保護の新しい時代を牽引する新製品であるIBM z14は、IBMメインフレーム技術にとって2002年以来の大きな変革をもたらすことでしょう。

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現代のIBMのメインフレーム
これまでも、そして、これからも社会基盤を支えるIBMのメインフレームは、ブロックチェーン機械学習といった最先端のテクノロジーの基盤として、デジタル時代に求められる信頼を根幹から支えます。


(*)初版にあたる文書番号SG24-8250-00に掲載。IBM z13sが追加された改訂版の文書番号SG24-8250-01には掲載されていません。

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