読書メモ

『SDGsが生み出す未来のビジネス』で広義のマーケティングへ(読書メモ)

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SDGs関連の本はこれまで数冊読んでいますが、この本『SDGsが生み出す未来のビジネス』の特徴は「日本のビジネス」という視座にこだわっているところかと思います。

買う気満々でしたが、ありがたいことに献本いただきました。

 

この本の大きな流れは、まずSDGsの17のゴールと169のターゲットの確認、そしてSDGsのもう一つの切り口である「5つのP」*1の再整理、その後マーケティングの王道フレームワーク「マーケティング4P」との新結合による20のマトリクス「SDGs Marketing Matrix」*2の提唱と事例紹介と進んでいきます。

*1 SDGsのもう一つの切り口「5つのP」

*2 SDGs Marketing Matrix

読み進みながら感じたのは、「マクロ視点とミクロ視点の切り替えと融合」の重要さです。

本そのものの大まかな構成は先に書いた通りですが、実際に読み進めていく中でも何度となく繰り返しマクロとミクロの視点を行き来することとなります。

 

例えば、この本では多数の企業や組織のユースケースが紹介されていますが、マーケターは漠然と読むのではなく、個別の事例をSDGs Marketing Matrixのどの部分におけるアクションなのかを表に照らし合わせて認知していくことが重要だと思われます。

なぜなら、脳内で「点を面にプロットする」ことで、情報と知識を現実世界に適用させやすくするからです。そう考えると、本とは別にオンラインでも提供されているマトリクスの図を印刷しておき、手元に起きながら読み進めるのがいいかもしれません。

 

また、先ほど「マクロ視点とミクロ視点の切り替えと融合が重要」と書きましたが、これはこの本が取り扱っているのがSDGsであることにも起因しています。

SDGsは、本質的には切り離せない深い関連性を持つ社会課題群を、戦略的に17のゴールに切り離しています。それは、感性や情緒だけに訴えるのではなく、あえてロジカルに分類しそれを再構築することで、既存ビジネスや政治の世界に切り込みやすくするためです(少なくとも、私はそう理解しています)。

その点を踏まえ、分断された知識として終わらせてしまわないよう、脳内プロット作業により包摂的な捉え方をすることが重要だと考えらます。

 

そしてまた、新規事業開発や社会的責任に対する取り組みを実施する立場にある人や部署にとっては、全体戦略の見直しや拡大、あるいは絞り込みを考える際にもこのマトリクスの縦軸と横軸で見ていくのが良いのではないでしょう。

例えばMatrixで「プライスとプラネット」が交差するポイントである2Bに強みを持つビジネスがあるのであれば、「公正で透明性の高い価格」という価格のグッドポイントを、ピープルやピース、パートナーシップに広げるマーケティング施策を考えてみる。あるいは軸を逆にし「自然環境に対してフェアな仕入れ」という地球のグッドポイントを「環境に負荷をかけない」プレイスメントや、「資源の無駄につながらない」プロモーションも加えて伝えることができないかを考えてみる、といった具合に。

そうした実践的な使い方をされてこそ、この本は本当の価値を発揮するのかもしれません。

 

環境と社会と人間中心のマーケティング3.0は、伝統的なマスマーケティングとワンツーワンマーケティングのすべてを上書きしたわけではありません。依然としてマーケティング1.0や2.0が主流の市場や顧客も存在しています。

それでも、1から2へ、そして2から3へと、顧客も市場も成熟していきます。

著者も書いているとおり、プロモーション(宣伝、広告)はマーケティングの一部に過ぎません。SDGs Marketing Matrixの活用は、狭義のマーケティングに囚われているマーケターを、広義のマーケティングへと飛び立たせるツールであるとも言えそうです。

 


 

と、ここまでは(おれにしては)ロジカルにマーケティング視点で書きましたが、ここからは感性寄りで。

おれがこの本の中で一番惹かれたのは、SDGsの17のゴールを描いたオリジナルのカードです。これがすばらしい!!

というわけで、ここからは特に気にいったカードを紹介します。

 

カード1 | 貧困をなくそう | NO POVERTY

日本で相対的貧困状態の17歳以下は14%

後ろに見えるビジネスパーソンたちの足元にうずくまるような、崩れているPのフォルム…。

相対的貧困状態も孤独も、遠いどこかで知らない誰かが生み出しているものなのでしょうか。

 

カード4 | 質の高い教育をみんなに | QUALITY EDUCATION

登校しても教室に入れないなど不登校傾向にある(中学)生徒を加えると、その数は約43万人

デスクで勉強する子どもの足元に映る鏡像には、白いシャツをミシンで縫う姿…。

ファッションの世界だけではないですが、「超お得」の背景には、子どもの奴隷労働が関わっていることも。先日観た映画『The Price of Free』には衝撃を受けました(Youtubeにて現在無料公開されています)。

 

カード5 | ジェンダー平等を実現しよう | GENDER EQUALITY

世界の女性管理職比率は27%。日本は12%で、女性活躍推進法が目標とする30%には遠く及ばず

女性のマリオネットの紐の先にあるのは女性のマニピュレーターの5本の指…。

女性を不利な立場に留めてしまう「グラスシーリング(ガラスの天井)」という言葉がありますが、それを強固なものとしているのは男性ばかりではなさそうです。

 


 

最後に、本の中から気に入ったフレーズをいくつか紹介して終わりにします。

 

■ 社会課題を解決しなければ、地球システムを維持できないことは明らかです。もはや経済やビジネス以前の話なのです(…)頭ではわかっている。そういう方が大多数でしょう。それでも行動できないのはどうしてでしょうか。その理由の1つは、実際に社会課題をどのように自社のビジネスに結びつけたらよいのか、その方法を見つけづらく、それゆえに難しいと受けとめられているからかもしれません。

 

■ 課題にコミットしている企業を応援したくて、モノやサービスを買う若者が増えているのです。それは、応援したくない企業のモノやサービスを買おうとはしない、ということでもあります(…)多くの外食産業がプラスチック製ストローを廃止している動きも、こうした視点から見てみるとより納得しやすくなるのではないでしょうか。ストローを紙製に替えるだけでは、廃棄プラスチックの問題は解決できないかもしれません。それを承知のうえだとしても、そうしなければ顧客が離れていく可能性があるのです

 

■ 多くの企業の理念には、社会的大義が盛り込まれています。それを社内だけに留めず、顧客をはじめとする関係者との共有価値、いわばパーパスにすることが大切としているのです。モノの価値を伝えるだけでなく、パーパスを顧客との共有価値、つまり一方的に伝えるのではなく、共感してもらえる価値にすることが、マーケティングの重要な役割になってきたのです。

 

Happy Collaboration!

コラボレーション・エナジャイザー

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