さまざまな種類のデータとワークフローを描いた図

公開日:2024年6月24日
寄稿者:Ivan Belcic、Cole Stryker

ワークフロー図とは何か

ワークフロー図は、ビジネス・プロセス、プロジェクト、または作業をフローチャートの形式で視覚的に表現したものです。ワークフロー図は、特殊な記号と表記法を使用して、作業が実行される段階的なプロセスを示します。

ワークフロー図は、ビジネス・プロセスの各ステップと、その作業を提供する担当者を明示します。このタイプのフローチャートの最も一般的なユースケースをいくつか紹介します。

曲がりくねった川と風景を俯瞰した写真。
ワークフロー図のメリット

ワークフロー図を作成して使用すると、次のような幅広いメリットが得られます。

 

  • 業務の最適化:ワークフロー図は、ビジネス・プロセスを合理化することで効率性を改善します。ワークフローの最適化により、あらゆる規模の企業で生産性が向上し、非効率が排除され、コストの削減や収益の増加につながります。
  • プロジェクト管理の改善:プロジェクト・マネージャーは、複雑なプロセスやチームを調整する役割を担っており、ワークフロー管理はその中心的な業務のひとつです。ワークフロー図を使用することで、プロジェクト・マネージャーは、チームが可能な限り効率的に協働できるようにします。
  • プロセスの文書化:ワークフロー・チャートは、中核となるビジネス・プロセスを視覚的に表現した貴重な情報であり、法的要件、コンプライアンス要件、または監査要件に必要な文書を提供します。
  • 明確なコミュニケーション:ワークフロー図は、コミュニケーション手段を明確にし、従業員や部門の具体的な責任を体系化します。多くの組織は、ワークフロー図をオンボーディング・リソースとして使用しています。
  • セキュリティーの強化:ワークフロー図を作成してセキュリティー・プロセスを監視することで、潜在的な脆弱性を浮き彫りにすることができます。セキュリティー・プロセスを可視化すると、セキュリティーのベスト・プラクティスの実施とサポートに役立ちます。
  • ワークフローの自動化:ビジネス・プロセスの自動化により、効率性が大幅に向上します。ワークフロー図では、 自動化できるワークフローの部分を特定できるため、チーム・メンバーはより要求の厳しい作業に集中できるようになります。
基本的なワークフローの図形と要素

ワークフロー図は、ワークフローの各ステップを示す標準化された記号、図形、または画像で構成されています。現在、ワークフロー図ソフトウェアがオンラインで入手できるため、既製のテンプレートを使用してワークフローを簡単に構築できます。これらの作図ツールには通常、次の記号があります。

  • 楕円形:ワークフロー図の開始点と終了点を定義します。
  • 長方形:プロセスのステップや、取るべき行動を表します。
  • ダイヤモンド:次のステップにつながる決定点を表します。
  • 平行四辺形:ワークフロー・プロセスにおけるデータのインプットまたはアウトプットを示します。
  • シリンダー:プロセスで使用されるデータと、そのデータにアクセスする方法と場所を示します。
  • コネクター:1つのステップから次のステップへの作業の流れを示す矢印付きの線です。
ワークフロー図の種類

ワークフロー図はもともと、反復可能なタスクと作業プロセスをよりわかりやすく説明するために開発されました。これらの視覚ツールは進化を遂げて、今日、組織は特定のニーズやコンテキストに対応するためにさまざまな種類のワークフロー図を使用するようになりました。次のワークフロー図の例は、最も一般的な導入を表しています。

  • ANSI図:米国規格協会(ANSI)の図は、ワークフロー図の記号を標準化し、将来繰り返し使用するための汎用言語を作成しました。
  • SSDフローチャート:構造化システム設計(SSD)フローチャートは、大規模なプロジェクトや複雑なプロジェクトに役立ちます。これらのプロセス図は、プロジェクトの各フェーズをより管理しやすいステップに分割し、効率性を高めます。
  • スイムレーン図:スイムレーン・フローチャートは、プールのスイムレーンをモデルにしています。ワークフローを従業員、チーム、部門ごとのタスクに分割し、それぞれを独自のレーンとして表します。
  • データ・フロー図:データ・フロー図は、システム内のデータの流れを図式化したものです。また、プロジェクト内のさまざまな利害関係者に割り当てられた責任を含めることもできます。
  • UMLアクティビティ図:ソフトウェア開発者はもともと、システムの設計を視覚化する標準的な手段を実現するために、統一モデリング言語(UML)を開発しました。現在、UML図はソフトウェアに限定されず、Eコマースの顧客体験やWebサイトの開発など、さまざまな条件付き行動フローを表します。
  • SIPOC図:このワークフロー図の形式は、シックス・シグマの手法から生み出されました。サプライヤー-インプット-プロセス-アウトプット-顧客(SIPOC)図は多くの場合、テーブルとして作成され、組織全体のプロセス改善に使用されます。
  • BPMN図:ビジネス・プロセス・モデル表記法(BPMN)図は、ビジネス・プロセスの概要を示します。BPMN図は、より大きなエコシステムや業界を示す複数のサブチャートで構成されることが多く、エンタープライズ・レベルのプロセスの概要を示します。
条件付きワークフロー・プロセスと線形ワークフロー・プロセス

ワークフロー図は、線形シーケンスと条件付きシーケンスという2つのプロセス構造のいずれかを示します。

線形シーケンス

線形ワークフロー図は最も単純なタイプであり、代替のステップや経路のない直接的なステップバイステップのパスで構成されます。

条件付きシーケンス

より複雑なこのワークフロー図は、ワークフローのさまざまなステップやパスを進めるために必要な条件やアクションを示しています。ほとんどのワークフロー図には、いくつかの条件付きシーケンスが含まれています。

ワークフロー図の起源

19世紀の機械エンジニア兼経営コンサルタント、ヘンリー・ガントは、タスクの順序付けと優先順位付けを行うための初のワークフロー図を開発しました。ガントは、経営科学の専門家、フレデリック・ウィンスロー・テイラーと提携して、ビジネス関連の科学的管理の新しい形式としてワークフロー・プロセスを考案しました。その結果が、現在でも使用されているガント・ワークフロー図です。

この2人の研究は、プロセスと品質管理を改善するためのワークフローの図式化に関する深い研究を後押ししました。

ワークフロー図、フローチャート、ビジネス・プロセス・マッピングの比較

ワークフロー図とフローチャートの違いは、ワークフロー図がプロセス・フローチャート・タイプの1つであるのに対し、他のシステムやプロセスを文書化するために他の多くのタイプのフローチャートが存在することです。

一方、ビジネス・プロセス・マッピングとは、人事、施設、データ、アクティビティなど、ビジネス・プロセスのあらゆる側面を整理してマッピングする手法です。プロセス・マイニングは、データを使用してワークフローを発見し、最適化します。ビジネス・プロセス・モデリングは、データ駆動型アルゴリズムを使用してワークフローの包括的な視覚表現を生成する関連分野です。

ワークフロー図のユースケースとアプリケーション

どのような組織でも、ワークフロー図を導入することでメリットを得られます。ここでは、ワークフロー図を組み込んだビジネス・プラクティス管理の例をいくつか紹介します。

  • IT:IT部門や組織は、セキュリティー監視にワークフロー図を使用します。機器の使用に関するベスト・プラクティスや管理にも適用できます。
  • 医療:ワークフロー図は、医療における取り込みフローを大幅に改善し、従業員のプロトコルを更新できます。
  • 教育:教育機関では、複数の部門の承認ワークフローと部門間のプロセスをマッピングするためにこれらを使用しています。
  • 小売:小売および調達チームは、ワークフロー図を使用して、サプライチェーン・プロセスと製造を最適化し、顧客体験を向上させています。
ワークフロー図と事業運営

ワークフロー図は、最も一般的な事業運営アプローチの多くと自然に組み合わされたものです。

シックス・シグマ

ガントとウィンスローの研究の直接の結果として、ワークフロー図はシックス・シグマ運用アプローチの出発点として進化しました。この分野の名前は、統計学者がプロセスの完全性からの逸脱の程度を表す方法に由来しており、 シックス・シグマの失敗率は0.00034%です。

シックス・シグマ手法を使用すると、企業は共通の指標と5~7のステップを使用して、プロセス・フロー、顧客とのやり取り、エクスペリエンスを合理化できます。ワークフロー図は、ビジネス・プロセス分析やeコマースの購入者のプロセスのステップの微調整など、シックス・シグマのステップや手法に含まれるあらゆる領域に適切に対応できます。

最も広く普及しているシックス・シグマ・モデルの2つは、DMADV(定義、測定、分析、設計、検証)とDMAIC(定義、測定、分析、改善、制御)です。

ビジネス・プロセス・リエンジニアリング

ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(BPR)とは、企業のビジネス・プロセスを全面的に見直すことです。人工知能(AI)搭載アルゴリズムと自動化を使用して、冗長性を排除し、エンドツーエンドのプロセスを合理化します。ワークフロー図は、戦略的なビジネス・トランスフォーメーションに備えて組織のビジネス・プロセスを初めて分析する際の貴重な出発点となります。

総合品質管理

総合品質管理(TQM)は、チーム・メンバーと経営陣の間のコミュニケーションを改善することで、製造エラーを特定して排除するための継続的なリアルタイム・プロセスです。製造プロセス全体に責任を分散することを目指しています。ここでは、ワークフロー図を使うことで、より注意が必要な領域や明確化が必要な領域を特定できます。

リーン・システム

リーン・システムは、オーバーヘッドを削減し、「非付加価値」アクティビティ、つまり、得られる利益よりも多くのリソースを使用するアクションやプロセスを排除することで、組織のワークフローを合理化できるようにします。ワークフロー図は、効率性向上のために回避できるワークフローのステップを特定したり、他のステップと組み合わせたりするのに役立ちます。

制約理論(TOC)

制約理論は、効率性を最適化するために制約(ワークフローを妨げるボトルネック)を除去することに焦点を当てています。ワークフロー図は、他の方法では発見するのがより困難なこれらの制約を明らかにする点で優れています。

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