ログ・データとは、コンピューター・システム、アプリケーション、ネットワーク内で発生したイベントの詳細な記録です。大規模言語モデル(LLM)でトレーニングされたAIおよびMLツールは、ログ分析の自動化、データセット内のパターンや異常の特定、そしてシステムやアプリケーションの動作状況に関するリアルタイムの洞察の提供を支援します。
生成AIなどのデータが豊富なテクノロジーの台頭により、組織が収集して処理する必要があるデータの数は飛躍的に増加しています。最近のレポートによると、企業レベルで分析を必要とするデータ・ログは、過去5年間において最大で前年比250%増加しています。1
AIツールやソリューションの発展に伴い、多くのIT運用チームはログ・ファイルやデータの収集、処理、分析にAIおよびMLツールを積極的に活用しています。現在、MicrosoftによるAI搭載Azure Monitor Log、AWSによるCloudWatch、IBMによる IBM® Watson AIOpsソリューションなど、世界有数の大手企業がAIを活用したログ分析ツールを提供しています。
ログ分析とは、ログデータを調査して、システムのパフォーマンス、最適化、セキュリティーに関するより深い洞察を得るプロセスです。ログ分析は、ITチームがログ・データを収集、処理、保管するために用いているプロセスであるログ管理と密接に関連しています。ログ管理とログ分析はどちらも、アクセス・ログ、エラー・ログ、イベント・ログという3種類のログを扱います。
ITオペレーション(ITOps)チームやDevOpsエンジニアは、データの取り込みや整理から、AIで強化された高度なデータ分析や可視化技術の適用に至るまで、ログ分析のワークフロー全体にAIを活用しています。
ログ分析は、エンジニアが分析する必要があるハードウェアおよびソフトウェア・システムからデータを収集することから始まります。AIは、ネットワーク・デバイス、サーバー、アプリケーションなど、さまざまなソースからのログ・データの取り込みを自動化することで、このステップを効率化します。
データ分析段階において、エンジニアはデータ処理中にログから抽出した有用なデータを精査し、特定のシステムやアプリケーションが機能しない理由についての手がかりを探します。AIおよびMLツールは、高度な異常検知とパターン認識機能により、価値実現までの時間を短縮し、ログ分析の精度を向上させます。
ログ・データの価値は、システムの全体的な健全性についてどれだけの洞察を得られるかによって決まります。AI、特に生成AIは、分析段階で得られた洞察を、リアルタイムのシステムの健全性を示す鮮明なビジュアルに変換することで、データの可視化を強化します。現在の高度なAIダッシュボードは、中央処理装置(CPU)の使用率、ネットワークの遅延などの主要なメトリクスを可視化することで、潜在的な問題の特定に役立ちます。
今日のペースが速く、データ量の多いIT環境において、従来のログ分析ツールでは、現代の企業が求めるようなシステム・パフォーマンス関する洞察を十分に提供できない場合がよくあります。生成AIやハイブリッドクラウドといったデータの豊富なテクノロジーの普及により、データ量は指数関数的に増加しており、従来的なログ分析アプローチでは対応しきれない場合が多くなっています。
AIを活用したツールは、これまで人間の入力が必要だった多くのプロセスを自動化および高速化することで、ログ分析を変革しています。ここでは、ログ分析にAIを使用することで得られるメリットをいくつか紹介します。
現代のDevOpsチームは、プロセスを合理化し、システムやアプリケーションがどのように機能しているかについての認識を高めるためにAIを活用しています。例えば、最終的なテストとデバッグの段階では、AIがデータを集約し、コードの異常やパターンにフラグを立てることで、市場にリリースする前に開発者が修正できるようになります。
ITオペレーション(ITOps)チームは、効果的なログ分析ツールを使用して大量のデータにアクセスして観察し、パフォーマンスの問題を特定します。AIは、チームの戦略的アプローチを一元化し、これまで注意を必要としていたリソース集約型タスクの多くを自動化するために役立ちます。
例えば、従来のログ分析ツールからITチームに送られる「アラート」の多くは重要ではなく、対応の必要がないものです。AIはこうしたアラートに目を通し、重要なものだけをチームに通知するようにトレーニングできます。
AIエージェントは、大規模なデータセットの異常やパターンを精査するだけでなく、継続的に取り込むデータから学習し、適応して、対応を行えるようにトレーニングすることも可能です。
例えば、従来の「パッシブ型」あるいは「ルールベース型」のAIツールがデータログ内のパターンを検出するだけであるのに対し、AIエージェントはその意味を解釈し、必要に応じて是正措置を講じることもできます。
予測分析は、過去のデータを用いて将来の結果を予測する高度な分析の一分野です。エージェント的および自律型AIツールは、アプリケーションの問題が支障を引き起こす前に検知し、特定し、解決することで、このプロセスを大幅に強化します。
例えば、ログ・データ内の傾向を特定し、それを同じアプリケーションの履歴データと比較することで、AIエージェントはサーバーや仮想マシン(VM)のスケールアップやスケールダウンといった対応を自動化し、ダウンタイムや潜在的な障害を回避できます。
おそらく、ログ分析における自律型AIの最も革新的な機能は、AIエージェントが分析した既存のパターンに基づいて合成ログデータを生成する機能です。この手段により、DevOpsチームは本番環境にコードをリリースする前に、さまざまなシナリオをシミュレーションしてテストすることが可能になります。以前は、このレベルのソフトウェア・テストには、手動での入力と膨大なリソースが必要でした。
例えば、自律型AIを使用することで、新しい金融サービス・アプリを開始するDevOpsチームは、手動入力なしで、ブルートフォース攻撃、マルウェア、サービス拒否などのさまざまな攻撃に対してコードをテストできます。自律型AIは、実際のインシデントから収集されたログ・データを学習することで、インシデントを正確に再現する合成ログデータを生成し、既存のコードをテストできます。
自律型AIおよびエージェント型AIは、自然言語処理(NLP)を活用することで、アナリストが使い慣れた会話形式のクエリーを通じてAIと対話できるようにします。NLPは、AIエージェントとのユーザー体験を向上させるとともに、重要なプロセスの効率化と高速化を実現します。
例えば、IT運用チームのメンバーは、ログ・データの概要を調べて洞察を得るのではなく、「今日は何か異常なアクティビティがありましたか?」とだけ入力すればよいのです。そうすれば、AIエージェントは人間のように応答します。
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