AIが効率性を向上させる方法

タブレット・グラフで共同作業している同僚

共同執筆者

Teaganne Finn

Staff Writer

IBM Think

Amanda Downie

Staff Editor

IBM Think

AIが効率性を革新する

従業員が大量の事務作業に追われる、カスタマー・サービス部門が問い合わせ対応に追いつかず、データの解読に時間を費やすといった日常的な悩みも人工知能(AI)の導入によって過去のものとなりつつあります。

効率的なビジネスとは、単なる長期目標でも、一時的な成果でもありません。効率性の追求は、あらゆるビジネス領域において継続的に取り組むべき課題です。AIシステムを活用して効率性を高めることで、カスタマー・サービスの質が向上し、コスト削減や売上増加、さらにはロイヤルティの強化にもつながります。

こうした効率性に関するROI(投資収益率)を実現するためには、組織は他の従業員の力を借りて発想を広げて戦略を練り、AIとの連携方法を習得することが求められます。テクノロジーは常に効率性を推進する原動力であり続けましたが、AIは私たちの働き方そのものを根本から変えつつあります。

AIの使用は、反復作業の自動化、大規模データセットの分析によるパターンの特定と傾向の予測、複雑なプロセスの最適化、そしてより良い意思決定を可能にする洞察の提供を通じて、新たな効率性の時代を切り開いています。最終的に、対話型AI、生成AIエージェント型AIといったAIテクノロジーは、人間による労働力を支援しながら、戦略的かつ創造的な仕事に集中できる環境を整え、業務上考えられるボトルネックを取り除く役割を果たします。

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「The DX Leaders」は日本語でお届けするニュースレターです。AI活用のグローバル・トレンドや日本の市場動向を踏まえたDX、生成AIの最新情報を毎月お届けします。

効率性を根本から変えるAIの主な活用法

サプライチェーンの最適化

サプライチェーン管理におけるAIの活用は、業務の効率性を高め、コストを削減し、全体的な対応力の向上にも寄与します。AIモデルは予測分析を通じて、データ分析と需要予測をより正確に行い、在庫レベルの最適化を支援しています。AIは、過去のデータを分析し、市場の動向や天候、経済状況などの外部要因を予測することで需要の変動を予測し、企業が在庫切れや在庫余剰を回避する手助けをします。

また、AIは自動化を通じてワークフローを効率化し、サプライチェーンの中断を減少させることができます。AIを活用すると予知保全が可能になり、サプライチェーンの透明性を向上させることができます。機械学習モデルは、設備の性能を分析し、故障の兆候を早期に検知することで、コストのかかる故障や計画外のダウンタイムを防ぐことができます。これにより、企業は保守作業を事前にスケジュールし、スムーズなオペレーションを維持することができます。

プロセスの最適化と非効率性の削減を実現するAIの能力は、サプライチェーンを変革し、ますます複雑化するグローバル・マーケットプレイスで企業が競争力を維持する支援を行っています。

オフィスでミーティングをするビジネスチーム

IBMお客様事例

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予知保全

機器が壊れたり、システムが誤動作したりすると、オペレーションが停止する可能性があります。AIアルゴリズムはこの状況を変え、設備の故障を事前に予測します。AIエージェントは、センサー・データと過去の保守記録を分析して、予知保全を決定および実装できます。また、AIは故障モード影響解析(FMEA)モデルをより効率的に構築することもできます。これにより、研究の開発に費やす時間と労力が削減されます。

AIツールが提供する積極的なアプローチにより、資産の寿命を延ばし、短期的および長期的に運用コストを削減することが可能になります。予知保全に使用されるアルゴリズムは、リアルタイムのデータに基づいてパターンや差し迫った障害を特定します。組織は、AIを活用することで、生産性の最大化や運用効率の向上といったメリットを活かすことができます。

タスクの自動化

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)、別名ソフトウェア・ロボティクスを導入することで、AI搭載のチャットボットが定例業務を自動化し、人間の労働力はより複雑で戦略的な業務に専念できるようになります。RPAは、APIとユーザー・インターフェース(UI)の操作を組み合わせることで、データ入力、請求書処理、カスタマー・サービスによる依頼対応など、ルールに基づいた反復作業を統合して実行します。

RPAとAIは明確に異なりますが、両社は互いに補完し合っています。AIは、RPAによるタスクの自動化を支援し、より複雑なユースケースにも対応できるようにします。AI搭載のチャットボットは、人間の従業員が数日または数週間かかっていた作業を、わずか数時間で完了させることができます。このタイプのAIは、職場の人間による労働力の効率性を向上させ、目的のある業務の重要性を浮き彫りにします。

需要予測

予測不可能な市場の状況により、企業は顧客の需要を予測することが困難になり、次の重要なトレンドを先取りしようとする中で、不透明な状況に置かれることがよくあります。しかし、AIと機械学習(ML)は、需要予測を戦略的なツールに変え、企業が競争力を維持する手助けを行っています。こうしたテクノロジーは、季節性や市場力学の変化といったさまざまな要因を考慮しながら、大量のデータを迅速に処理・分析できます。

AIソリューションは販売パターンを分析し、将来の売上を予測することができるため、より正確で適応性のある予測が可能になります。これにより、組織は料金体系の予測を行い、リソースを重要な場所に適切に配分することができます。複雑なデータを処理できるというAIの能力は、従来の需要予測方法を大きく超えており、企業にとって重要な将来の顧客需要パターンに関する洞察を提供します。

クリエイティブ・アシスタント

営業チームとマーケティング・チームは、顧客成長を促進する次の重要な広告キャンペーンで協力することがよくあります。そして、それは常に創造的なプロセスから始まり、今やAI導入ツールの大幅な支援を受けてテキストを書いて要約してます。

ChatGPTのような製品は、AI搭載のライティング・ツールとして人気を集めており、プロジェクトの完了にかかる時間を短縮し、クリエイティブ職の人材がさらに多くの仕事に取り組める柔軟性を提供しています。さらなる編集や微調整が必要になる場合もありますが、こうしたライティング・ツールは、ライターの行き詰まりを解消し、コンテンツを素早く整えるのに役立ちます。

今日、世界には膨大な量のコンテンツが存在しているため、組織は広告やソーシャル・メディア、オンライン広告で注目を集める必要があります。この短い形式のコンテンツは、AIツールを活用することで、クリエイティブ職の担当者が迅速にオリジナルで魅力的なコンテンツやビジュアルを制作することができます。これにより、より効率的なデザインとクリエイティブなプロセスが構築され、同時に人間の従業員の専門知識も活用することができます。

プロセスの最適化

組織のビジネス・プロセスは、成功するための重要な要素であり、各部門の円滑かつ効率的な運営を実現する手助けをします。AIプロセスの最適化には、AI、MLモデル、自然言語処理(NLP)など、いくつかのテクノロジーが採用されています。AIやその他のテクノロジーを活用することで、組織は不要な作業を排除し、かつては業務の遅延を招いていたプロセスを効率化することができます。

AIは、これまでのパフォーマンス・データを見て分析し、うまく機能したかどうかを判定して、プロセスを最適化します。そして、効果的と判定したデータを複製して使い、非効率なプロセスを取り除きます。またAIは、組織のシステムにある間違いや矛盾を検知し、問題になりそうな箇所を事前に見つけ出すことができます。

AIによる市場動向やユーザー行動の分析は、企業が顧客の行動を特定・予測するのにも役立ち、営業チームとマーケティング・チームの目標設定やターゲットの明確化を効率化することができます。

品質管理

AIによる品質管理では、高度なアルゴリズムとMLを活用して製品を検査し、効率的かつ正確に欠陥を特定します。AI駆動型の品質管理は、品質基準の遵守を確保し、無駄を削減するのにも役立ちます。こうしたAI機能は、倉庫の組立ラインで製品の画像を分析し、人間の目では見逃されがちな欠陥を検知することができます。

さらに、AIによる品質管理は、合成テストやデジタルツインなど、本番前に仮想環境でプロセスをシミュレートするテスト・ツールを可能にします。この本番前テストを行うことで、組織は潜在的な問題を排除し、開発・立ち上げプロセスの早い段階でそれらに対処することができます。これにより、より効率的な製造結果と信頼性の高い品質管理プロセスが実現します。

カスタマー・サービス

顧客は優れたカスタマー・サポート体験を期待しており、企業はその期待に応えることを最優先事項として取り組む必要があります。組織はこれまでカスタマー・サービス部門でテクノロジーを活用してきましたが、生成AIツールは組織が大きな前進を遂げる手助けをしています。カスタマー・サービス部門にとって人間の労働力が重要であることはこれからも変わりませんが、生成AIのチャットボットは顧客からの複雑な問い合わせを理解し、ユーザーによるセルフサービスを可能にします。

カスタマー・サービスは、AI搭載のテクノロジーやパーソナライズされた体験の開発において貴重なユースケースとなっています。AIツールを活用することで、企業はよくある質問への回答を自動化し、ユーザーに合わせてパーソナライズされた推奨事項を提供できます。AIは、顧客の行動や過去の購入履歴を分析して、パーソナライズされた製品やおすすめのコンテンツを導き出すことができます。AIは、組織がカスタマー・サービス部門にアプローチする方法を再構築し、ユーザーと労働力にとってより効率的で顧客中心のプロセスを実現しています。

意思決定を支援

企業は日々重要な意思決定を行う必要があります。現在、人間の意思決定者は、データ、分析、AIの力を活用して、意思決定を強化しています。AIが意思決定プロセスで使用されるタイミングはさまざまで、使用される分析手法によって異なります。AIの各段階には、意思決定の自動化、意思決定の強化、意思決定の支援が含まれます。各システムは、何らかの形で意思決定を提供します。

自動化の場合は、処方的分析と予測分析を用いて意思決定を行いますが、強化の場合は、1つの意思決定や複数の意思決定シナリオを推奨します。そして、意思決定の支援は、AIが診断や予測分析を通じてサポート役を果たすことです。意思決定におけるAIの活用は、状況の時間的要素や複雑さに依存します。

AIは単純な意思決定によく適用されますが、AIの使用度合いによっては、複雑な意思決定や、場合によって混沌とした意思決定にも適用できます。

AIが効率性に影響を与えている業界の例

人事

AIテクノロジーは、人事業務の自動化や意思決定の支援に活用されています。これにより、データに基づいた人材獲得や従業員の昇進・定着のアプローチが可能になります。求職者と雇用者の双方にとって、バイアスを減らし、全体的な求人体験を向上させることを目指しています。AIツールは人事チームを支援しており、従業員の記録管理、給与処理、採用、オンボーディング、および福利厚生管理において活用されています。

ヘルスケア

医療分野において、AIはすでに不可欠な要素となっており、さらに重要な役割を果たし続けています。医療におけるAIの一般的なユースケースとしては、臨床意思決定支援と画像分析があります。AIアルゴリズムやその他のAI搭載アプリケーションは、診療所の医療従事者をサポートしています。最近では、AIによる仮想看護アシスタントがテストされており、またAI搭載のロボットが侵襲性の少ない手術にも使用されています。

財務

AI、特にMLアルゴリズムは、金融業界で効率性と正確性の向上に活用されています。AIは、データ分析、予測、投資管理、リスク管理、サイバーセキュリティー、不正アクセス検知、カスタマー・サービスなどのタスクにかかる時間を短縮します。従来の手作業によるプロセスを採用していた金融機関は、アルゴリズム取引、信用スコアリング、コンプライアンスなど、AIによって大きな更新を迎えています。

製造業

AI は業界を変革し、世界中の製造業に影響を与えるよりインテリジェントで効率的なオペレーションを可能にしています。製造業におけるAIの一例として、デジタルツイン・テクノロジーがあります。これは、使用されているプロセスの仮想レプリカを作成し、実際の物理資産に介入することなく、リアルタイムでパフォーマンスをシミュレーション・分析することができます。

小売業と商取引

AI搭載の小売テクノロジーは、オンラインストアや実店舗を問わず、小売業界の多くの側面で活用されています。AIテクノロジーは、小売業における顧客体験、ビジネス運営、意思決定を向上させ、AIアルゴリズムを使用して顧客の行動を分析することで、パーソナライズされたショッピング体験を提供します。また、AI搭載の仮想アシスタントやチャットボットを活用することで、顧客にリアルタイムでサポートを提供し、顧客体験を向上させることもできます。

AIエージェントを使って効率を高める

最新のAI時代には、 AIアシスタントとAIエージェントが含まれています。AIアシスタントは事後対応型で、ユーザーのインプットに基づいてタスクを実行します。AIエージェントは事前対応型で自律的に動作し、ユーザーに代わってタスクを完了させ、戦略を立てて割り当てられた目標を評価することができます。

AIアシスタントは、何らかの基盤モデルに基づいて構築されています。LLMは、テキスト関連のタスクを扱う基盤モデルの一部です。例としては、バーチャル・アシスタントが挙げられます。代表的なものには、AppleのSiriやAmazonのAlexaなどがあります。これらのバーチャル・アシスタントは、「Hey Siri、今日の天気はどう?」などの一般的な質問に対して、あらかじめ設定されたタスクを実行したり、モデルの学習に使用されたデータに基づいてプロンプトに応答したりできます。

一方、AIエージェントやコパイロットは、生成AIの機能を活用して、単一のプロンプトを受け取り、そのプロンプトを完了するために必要なタスクを分解し、タスクを実行して結果を出すことができます。たとえば、エージェントやコパイロットは、ウェブや電話などの異なるプラットフォーム向けのコンテンツを作成するために、こうした方法を使用することがあります。

例えば、新しい化粧品ブランドを立ち上げようとしていて、目指す方向性やブランドの語り口は決まっているものの、具体的なマーケティング資料はまだ用意されていない場合を考えてみましょう。AIエージェントを活用すれば、広告コピーを作成したり、プレーン・テキストを企業のブランディング・ガイドラインに沿ったフォーマット文書に変換したりすることができます。また、ターゲットを絞った顧客セグメントに基づいてパーソナライゼーションを提案でき、A/Bテストや顧客フィードバックの収集も支援できます。

別の例として、AIエージェントは自動運転車のナビゲーション・システムにも使用されています。AIエージェントを搭載した車両は、車両の正常性をリアルタイムで分析し、交通や道路の状況を予測して、最も最適で効果的なルートをドライバーに提供できます。

業務の効率とAIの未来

生産性の向上には、すべての従業員の生産性を最大化し、業務効率を高めることが不可欠です。これはあらゆる組織にとって最優先課題といえるでしょう。これを実現するには、従業員のスキルアップや、新製品対応のためのリソースの割り当てが必要になってきます。より効率的に達成するには、AI機能の導入が有効です。導入の対象となる分野は、戦略の実行、クリエイティブ業務、ワークフロー管理、医療・健康、人事、製造、営業、財務、小売およびeコマースなど、多岐にわたります。

AIは組織を未来へと進め、人間の従業員が職場で可能な限り効率的に働けるように推進しています。これは、変化に対してオープンで、AIを活用して、これまで気づかなかった効率性を明らかにする意欲のある従業員にしか機能しません。

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