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[事例] 旅客鉄道の運行管理をサステナブルにする予知保全 | ダウナー

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温室効果ガス排出量を「正味ゼロ」にする「ネットゼロ」。その実現には多くの努力と協力が必要であり、私たちみんなが、より持続可能な選択をする必要があります。

運輸部門は、世界の温室効果ガス排出の主要な原因となっており、日本においては2020年度CO2排出量の17.7%が運輸部門となっています。過去10年間にわたり、世界各国で政府と民間企業は、人や物の移動をより持続可能にするためのインフラ作りに取り組んでいます——どこへ、どのような交通機関を使って向かうのか——より良い未来に近づくには、賢い選択が不可欠です。

 

ダウナーグループについて

ダウナーは150年以上の歴史を持つ、全世界で44,000人以上のスタッフを抱え、総合的な都市サービスを提供するリーディングカンパニーです。オーストラリアとニュージーランドでの鉄道車両の資産管理サービスの提供をはじめ、公共事業、施設管理などの都市生活基盤に関するサービスや、顧客へのライフサイクルサポートを提供しています。

 

ニーズの変化 | 車両製造からライフスパン全体支援へ

オーストラリアでは、毎日何百万人もの旅行者が、都市鉄道や長距離旅客鉄道を利用して移動しています。ダウナーグループは、100年以上にわたって旅客鉄道の建設・運行を支えてきました。

ダウナーの鉄道・交通システム部門責任者であるアダム・ウィリアムズ氏は、ここ10年で各国政府の鉄道管理方法が変化してきていると語ります。

「以前は、鉄道車両の運用と保守は政府が行っていました。オーバーホールやアップグレードを任されることはありましたが、基本的には私たちは車両の製造だけを行っていたのです。ところが最近では、私たちは製造だけではなく、25~30年のスパンで車両メンテナンス作業をすべてパッケージ化して提供する『スルーライフ・サポート』を求められるようになったのです。」

 

「現在、私たちはオーストラリアの各主要都市で、毎日何百台もの車両を運行しサービスを提供しています。つまり、オーストラリア最大の旅客車両向けスルーライフ・サポート資産管理サービスのプロバイダーなのです。」

自分たちへの期待が管理サービスの提供だけではなく、より持続可能な交通網の実現に貢献することであると、ダウナーは深く理解しています。

ウィリアムズ氏は続けます。「現時点でほぼすべての西側諸国が、2050年までに何らかの形でネットゼロの実現を約束しています。その実現には、効率性と長期的な価値に焦点を当てたテクノロジーおよび新サービスへの投資が必要となります。私たちはそれを実行していきます。なぜなら、サステナビリティは私たちが注力したいことであり、同時に、私たちの成功に欠かせないものだからです。」

 

Maximoがもたらした変化 | メンテナンスできる列車数を2倍に

ダウナーは自社と社会のサステナビリティを追求するために、IBMテクノロジーを用いて「トレインDNA」という鉄道車両資産管理プラットフォームを構築しました。

しかし時間が経つにつれて、必要なものが単なるソフトウェアではないことにダウナーは気づきました。

「もっと未来に目を向けるべきだと感じました。乗客に、現在提供しているものを超えたサービスを提供すべきだし、国外にも目を向けた方が良い。しかし、それだけ大掛かりに見直していくには外部の力が必要だと考えたのです。」

 

ウィリアムズ氏がそう振り返るように、ダウナーは現在IBMコンサルティングと連携し、トレインDNAの継続的な開発と強化を進めています。

IBM Maximo Application Suiteを中核に据えたトレインDNAは、複雑な分析と準リアルタイムのデータを活用した予知保全を通じて、オーストラリア全土の200台以上の列車をサポートしています。

 

「IBMがフィジカルな資産管理に関する経験と能力を有していて、私たちの物理資産の価値を高めてくれることは最初から分かっていました。しかし当社が手にするデータからこれほどの価値を生み出し、私たちとお客様に提供してくれるとは思っていませんでした。

トレインDNAを使えば、すべての列車の詳細がリアルタイムで分かるのです。列車の現在地と時刻表上の位置、状態など、すべてを観察・確認することができます。運転士が今見ている画面を同時に確認することもできるのです」。

 

ウィリアムズ氏の言葉は、数値としても表れています。オーバーン保守センターにおいては、施設でメンテナンスできる列車数を実質的に2倍へと増やし、同時に20%の効率改善も実現しました。

この取り組みはより多くの列車の運行へとつながっており、乗客はよりタイムリーに行きたい場所に行けるようになり、サービスの価値を向上させています。トレインDNAは乗客により質の高いサービスを提供し、ダウナーの業績を向上させているのです。

アダム・ウィリアムズ | ダウナーグループ 鉄道・交通システム部門 成長担当責任者

 

Maximoは最新データが常にそろった、私たちにとっての「真実の書」

「IBMとの協業により、トレインDNAの管理用アプリケーションも多数開発しました。たとえば、列車保守施設や操車場でスタッフが日々接する何百もの客車の識別管理や、移動管理のためのアプリ。それから車両を電気系統から切り離し、メンテナンスチームが安全に作業できるようにする『トレイン・アイソレーション』などです。

これらの日々の保守作業の管理が主ですが、それだけではありません。人員計画やスケジューリングも、すべてMaximoを通じて行っています。資産の構成や健全性の管理などもすべてです。

Maximoは、1500台以上の車両から得られるすべての最新データが常にそろった唯一の情報源であり、私たちにとっての「真実の書」のようなものなのです。」

 

ウィリアムズ氏は、データ収集に関しても話しています。

「データ統合はすべてIBM MQにより行われています。各車両から、10分ごとに3万件ほどのメッセージが送られてきます。つまり、毎時3,000万件以上の大量のメッセージです。」

 

今後、ダウナーとIBMは、トレインDNA全体のデータの流れを合理化するためにIBM Cloud Pak for Integrationを導入する予定です。同時に、IBM Cloud Pak for Dataにより、分散したデータの統合、合理化、分析を行います。そしてトレインDNAをさらにパワーアップするために、共同チームはIBM Cloud Pak for Watson AIOpsを用いて、データ分析により認知・発信されるアラームや、それらに対応するワークフローの調整およびルール定義を行う予定です。

さらにダウナー社内では、IBM WebSphere Hybrid Editionを軸とした、同社の既存のアプリケーションのクラウドネイティブ・アーキテクチャ化への検討が進んでいます。そしてアプリケーション・パフォーマンス監視ソリューションであるIBM Instana Observabilityを用いることで、システム・オペレーターがリアルタイムにボトルネックを取り除き、問題を迅速に解決できるようにしていきます。

 

脱炭素化という大きな課題は、同時に大きなチャンス

2022年6月、ダウナーはIBMコンサルティングと新たな契約を締結しました。今後、共同開発プロセスを通じてトレインDNAの能力は一層高められていきます。また、ダウナーの国際成長戦略支援も予定されています。

この新しい契約のもと、ダウナーとIBMはエネルギー消費の削減に焦点を当てた「合同サステナビリティチーム」を結成しました。

 

ウィリアムズ氏は、ダウナーとIBMのエネルギー消費削減の取り組みについてこう話しています。

「一般社会が直面している『脱炭素化』という課題は、ダウナーのビジネス課題でもあります。しかしこの大きな課題は、同時に大きなチャンスでもあります。

『シドニー・トレインズ』や『メトロ・トレインズ・メルボルン』など、都市部周辺を走る旅客鉄道事業は地域最大の電力使用者の1つです。それらの鉄道システムがどのように最もエネルギーを使っているのか。あるいは天候や乗客の需要がどのように変化しそれにどう応じていくのがよいのか。

こうしたことを私たちがよりよく理解できれば、エネルギー使用量を最適化し、全体としてより良い結果を招き入れることができるはずです。」

 

ウィリアムズ氏は、取り組み検討領域について、以下のように話しています。

「現在、私たちは、それらをどうやって監視し制御するかを考えています。たとえば、エアコンの温度設定の調整方法はどうすべきか。エネルギー負荷のバランスはこれでよいのか。あるいは主要な電力消費源のひとつであるトラクションコントロールのリアルタイム調整はできないだろうか?

実際、これらの行動によりもし数パーセントでも節約できれば、ネットワーク全体、そして国全体の二酸化炭素排出量に大きな影響を与えることができるのです。」

 

ダウナーは現在IBM Garageチームと連携し、イノベーションへの道筋をより加速するための設計作業を共同作成しています。

「IBMと協力し、ウォーターフォール型のアプローチから、より迅速なリリースサイクルを実現する、より実験的でアジャイルな試みを促進していきます。

すでにそうした取り組みを進めている分野の一つが、収集した資産データを用いた予知保全です。すでに結果へとつながっており、空調システムにおいては、ある箇所を通過する空気の流れの変化が故障の前兆であることが判明しました。この現象を掴んだことで、問題発生前に修理チームを派遣することができるようになりました。」

 

ウィリアムズ氏は説明を続けます。

「従業員の安全性を高めることと、測定の再現性を高めるための、ドローンやその他のロボット検査機器の試験運用も開始しています。

メンテナンスチームが点検を行うスペースには、本当に厄介で、潜在的な危険を抱えている場所が多いのです。つまずきや足を滑らせての怪我は後を絶ちませんし、それが高所で起きたときには命にかかわる大事故へとつながりかねません。ドローンなら、空中から安全に測定することができます。

また、ドローンに一度学習をさせれば、検査で発見された異常箇所がすぐに技術者に報告されます。これまでのようにメンテナンスチームが危険箇所を歩き回ったり這いずり回ったりしなくても、ドローンデータを用いることで、より的確に目的を絞った保全決定を下せるようになります。」

 

「次世代保全」が導く未来の共創

「車両の信頼性は51%向上しました。これは「平均故障間隔」と呼ばれるもので、車両が故障によりサービスに影響を与える前に、どれだけの距離を走行できるかを測定するものです。現在、当社の長期サービスの平均は7万5,000kmを超えており、世界トップクラスです。」

 

信頼性向上はすべての人にとって大きな恩恵です。乗客は、これまで以上に安心して目的地に時間通りに到着することができるようになり、従業員もトレインDNAの包括的安全ポリシーに守られています。そして同時に生産性も向上しました。ダウナーは従業員をほぼ増やすことなく、車両保有台数を21%増加させることができたのです。

「プロジェクトスタート当初の2010年は、30日、60日、90日おきのメンテナンス体制を敷き、より大規模で段階的なオーバーホールを行っていました。それゆえに、特に複数の列車が同時に大規模修繕となった際には、ワークロードの調整は本当に困難を極めるものでした。

それが今では、Maximoが取得したデータによって、私たちは列車で何が起きているのか理解できるようになったのです。

現在、私たちはメンテナンスの周期をより最適化しています。故障がいつ起きるかを予測できるようになったことで、介在期間を最小化することができました。そしてこれまでのところ、定期メンテナンスの間隔を以前の2倍にすることができました。」

 

ウィリアムズ氏の言葉には、ダウナーがIBMを選択したことへの大きな満足が溢れています。

「IBMとの関係は、もはや単なる取引相手ではなく、コラボレーションとコ・クリエーションの関係へと進化しました。どのようにダウナーの製品やサービス開発に取り組むのがベストなのか、共に話し合いながら進めています。私たちは、お互いの能力を最大限に発揮しより多くを実現する「1+1を3にする」考え方と方法論を、生み出したのです。」

ダウナーとIBMコンサルティングは、今後も強力な連携で、ビジネス全体のイノベーションを促進し続けます。

 


当記事は『Predictive maintenance. Predictable trains.』を日本向けに編集したものです。

 

 

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