ハイブリッドクラウド管理(HCM)とは、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウド、エッジの各設定にわたる組織のITインフラストラクチャとサービスの監視・管理を指します。
ハイブリッドクラウドのアーキテクチャは、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドのインフラストラクチャの組み合わせによるリソースとサービスを統合します。この環境は、自動化されたワークロード をオーケストレーションして、ビジネス・ニーズとユースケースに基づいて、最適なクラウドベースの環境でデータを迅速かつ安全に共有します。
現代の企業組織がハイブリッドクラウド・コンピューティングに依存しているのは、従来のオンプレミス・インフラストラクチャーの設定よりも高い柔軟性、拡張性、コストの最適化ができるからです。IBM Transformation Index: State of Cloud によると、ビジネスおよびITのプロフェッショナルの77%以上がハイブリッドクラウドの手法を採用しています。
ハイブリッドクラウド環境は、3つの重要なコンポーネントで構成されています。
オンプレミス(「オンプレ」とも呼ばれます)とは、従来からあるコンピューティングの形態で、組織がオフィスビルやオンプレミスのデータセンターなど、自社の物理的な場所にあるハードウェアとサーバー上でコンピューティング・リソース、ネットワーク、ストレージ、ソフトウェアを実行・管理することを指します。
プライベートクラウドとは、すべてのリソースが分離されており、1人の顧客のためだけに運用されるクラウド・コンピューティング環境のことを指します。プライベートクラウドは、クラウド・コンピューティングの多くのメリットならびにオンプレミスのITインフラのセキュリティーとコントロールを組み合わせたものです。
パブリッククラウドはクラウド・コンピューティングの一形態で、マルチテナントのクラウド・サービス・プロバイダー(CSP)(Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud Services、IBM Cloud、Microsoft Azureなど)が、個々の仮想マシン(VM)やパブリッククラウド・サービスなどといった、パブリッククラウドのリソースを公共のインターネット上でホストします。
クラウドベースのサービスや管理ツールには、以下のようなものがあります。
ハイブリッドクラウド環境には、環境間のデータ転送もサポートする強力なネットワーク機能もあります。この接続は通常、ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)、仮想プライベート・ネットワーク(VPN)、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API) を使って行われます。
エンタープライズ・ビジネス向けのハイブリッドクラウド・モデルは通常、マルチクラウド (複数のクラウド・プロバイダーが提供するクラウド・コンピューティング・サービス)と統合されています。マルチクラウドのアプローチで、組織は複数のクラウド・ベンダーからサービスを選択でき、プロバイダー1社に過度に依存する可能性を防ぐことができます。ハイブリッド・マルチクラウドにより、企業はベンダー・ロックインを回避し、柔軟性とコスト管理を最適化できます。
ハイブリッド・マルチクラウド環境は、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)経由で通信させる独立した小さなサービスでソフトウェアを構成するクラウドネイティブなソフトウェア開発で用いる手法、マイクロサービス(またはマイクロサービス・アーキテクチャー)をサポートする際に重要になります。従来のモノリシックな手法とは異なり、マイクロサービスではDevOpsや他の開発チームが個々のサービスを個別のエンティティーとして扱うことができるため、開発、テスト、そしてクラウドへのデプロイメントが簡素化されます。
マイクロサービスはコンテナでデプロイされます。コンテナとは、あらゆる環境で実行するために必要なアプリケーション・コードと仮想化されたオペレーティング・システムの依存関係のみで構成された、軽量なソフトウェア・パッケージです。コンテナ・オーケストレーション・プラットフォーム(通常はDocker SwarmまたはKubernetes)が、クラウド環境全体へのデプロイメントを自動化します。
ハイブリッド・マルチクラウド管理の手法は、エンタープライズ・ビジネスにおいて標準的なITインフラストラクチャー・モデルとなっており、97%以上の企業が2つ以上のクラウドを運用し、ほとんどの組織が10以上のクラウドを運用しています(PDF)。
組織はハイブリッド・マルチクラウドのクラウドITモデルを構築し続けていますが、複数のクラウド・プラットフォームを採用すると、あらゆる業種の企業にとってますます複雑な問題が生じてきます。複雑な課題には以下のようなものがあります。
ハイブリッド・マルチクラウドにはさまざまな不確定要素があるため、チームはクラウド資産全体でオペレーションを監視・観察することが難しくなります。セキュリティー脅威を予測することが難しいだけでなく、データのサイロ化と断片化が生じる可能性もあることから、ビジネス価値を高めるデータ駆動型インサイトを取得することが難しくなります。可視化をしないと、クラウド・スプロール(組織がクラウド・コンピューティングのリソースを意図的に管理できないこと)が生じ、非効率的なだけでなく、不要なコストにつながる可能性があります。
ハイブリッドクラウドの導入には、複数のクラウド料金を管理することが含まれます。CSPに関連する標準的な従量課金モデルの場合、クラウドは使用したデータのギガバイト数などのメトリクスに基づいて課金されますが、ハイブリッドクラウドのコストは、複数のCSPやその他のサードパーティー・ベンダーによるクラウドの使用や課金の複雑さがあるため扱いにくくなる可能性があります。
ワークロードはあらゆる環境にあるさまざまなハードウェア・リソース上で実行されるため、組織にはワークロードの場所に関係なく、包括的に管理できる方法が必要です。完全ハイブリッドのマルチクラウド・プラットフォーム・テクノロジーと運用モデルから得られる価値は、単一のクラウド・ベンダーによるアプローチから得られる価値の2.5倍あることから(PDF)、ハイブリッドクラウド管理ソリューションのニーズが高まっています。
こうしたソリューションを利用することで、組織は以下のようなことができるようになります。
ハイブリッドクラウド管理は、複数の環境にあるデータ、サーバー、アプリケーションのライフサイクル管理を合理化します。これにはEdgeロケーションも含まれており、データ処理能力をエンドユーザーに近づけることで遅延の短縮し、ユーザー・エクスペリエンスを向上させます。
ハイブリッドクラウド管理を利用すると、企業はビジネスの需要に応じてリソース(ネットワーク、処理能力、データ・ストレージの容量など)を増減させることができます。
ハイブリッドクラウド管理は、分散されたエンタープライズ・アプリケーションの監視と可視化を自動化する可観測性のある機能を中心に構築されているため、問題の解決や解消の迅速化と自動化が可能になります。
ハイブリッドクラウド管理は、既存のレガシー・ワークロードを置き換えるのではなくて更新し、モノリシックなアプリケーションをマイクロサービスに分割することでソフトウェア配信のパフォーマンスを向上させるアプリケーション・モダナイゼーションをサポートします。 Amazon、Netflix、Uber、Etsyのような大手の組織では、さらに革新的な機能と、よりよい顧客体験を提供する迅速なアップデートで競争上の優位性を得るためにマイクロサービスを使用しています。
統合ハイブリッドクラウド管理プラットフォームの構築に関わるテクノロジーベースのツールを検討する前に、企業はハイブリッドクラウド管理のストラテジーを策定する必要があります。ハイブリッドクラウド管理のストラテジーは、個々のビジネス目標に応じて異なるように見えますが、組織はいくつかの基本的な手順から始める必要があります。
統合ハイブリッドクラウド・プラットフォームには、独自またはオープンソースのソフトウェア管理ツールを多数組み込むことができます。各組織のハイブリッドクラウド環境はそれぞれ異なりますが、ここでは最も一般的な管理ソフトウェア・ソリューションをいくつか紹介します。
ハイブリッドクラウド管理プラットフォームとは、オンプレミス環境とクラウド環境にあるワークロードの管理とオートメーションを合理化する統合ソフトウェア・ソリューションのスイートを指します。
このようなプラットフォームは、統合ダッシュボード(つまり単一の画面)を基盤にしており、販売パターンから予算支出、セキュリティー問題に至るまで、組織がビジネスのあらゆる側面をよりよく理解できるように支援します。また、管理者や開発チームが、従業員のデバイス、サーバー、ネットワーク設備、Edgeロケーション、その他のITインフラストラクチャー・コンポーネントを含むIT環境全体を監視・管理するのにも役立ちます。
ハイブリッドクラウド管理プラットフォームは、リソースのプロビジョニングの自動化、アプリケーションのデプロイ、セキュリティーの管理、パフォーマンスの最適化、データ駆動型インサイトの提供を行う際にAIや機械学習(ML)を活用するようになってきています。
Kubernetesのようなオーケストレーション・ツールを利用すると、ITチームはワークフローを自動化し、他のタスクに集中できるようになります。ハイブリッドクラウドの自動化はクラウド・バーストもサポートしており、プライベートクラウド内でアプリケーションの需要とコンピューティング容量が急増したタイミングを監視できます。設定したしきい値に需要が達すると、ワークロードのトラフィックはオンデマンドでパブリッククラウドにリダイレクトされます。ワークロードをパブリッククラウドに移行すると、プライベートクラウド内の重要なアプリケーションのリソースを解放することができます。
ハイブリッドクラウド管理ソリューションは、ゼロトラストのセキュリティー・アプローチをサポートしており、一元化されたダッシュボードですべての環境のあらゆるアクティビティーを監視して可視化し、利害関係者が潜在的なセキュリティー脅威を監視、特定、対応できるようにします。セキュリティー・ソリューションのコンポーネントには、以下のようなものがあります。
クラウド・コスト管理ソフトウェアは、組織がクラウド・リソースを監視して、オーバープロビジョニングを回避し、SaaS費用を削減し、投資収益率(ROI)を最大化するのを支援します。このようなツールは、コンピューティング、クラウド・ストレージ、ネットワーク・リソースの効果的な使用を自動化し、クラウド関連の全体的なコストを削減します。
ビジネスと規制の要件は常に進化しています。ハイブリッドクラウドのソフトウェア・ツールは、コンプライアンスの更新やアラートを自動化し、企業が日々進化する規則や規制に対応できるように支援します。
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