SaaS統合とは

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共同執筆者

Tasmiha Khan

Writer

Michael Goodwin

Staff Editor, Automation & ITOps

IBM Think

SaaS統合とは

SaaS統合とは、クラウドベースかオンプレミスかを問わず、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)アプリケーションを他のアプリケーションやシステムに接続するプロセスです。

SaaSを統合することでアプリケーションが円滑にデータを要求および共有できるようになり、ワークフローのオートメーションが促進され、さまざまな業務プロセスで機能が強化されます。

SaaSは、サービス・プロバイダーがアプリケーションをホストし、インターネット経由で顧客が利用できるようにするクラウドベースのソフトウェア配信モデルです。ユーザーはローカル・デバイスでソフトウェアをインストールおよび保守しなくても、オンデマンドでこれらのアプリケーションにアクセスできます。SaaSプロバイダーはクラウドでアプリケーションをホストし、基盤となるインフラストラクチャー、セキュリティー、更新をすべて管理します。

SaaSアプリケーションは、新興企業から大規模なグローバル組織まで、あらゆる規模の企業に迅速な導入と最小限の管理コスト、コストの予測可能性というメリットをもたらします。SaaSソリューションは通常サブスクリプション・ベースで、拡張性と自動更新が備わっており、インターネット接続があればどこからでもアクセス可能です。これにより、組織はインフラストラクチャーに多額の先行投資を行わずに、最先端テクノロジーを利用しながら中核のオペレーションに集中できます。

こうした利点から、SaaSは現代のソフトウェア配信モデルの主流となり、あらゆる業界でSaaSの採用が促進されました。SalesforceやHubSpotなどの顧客関係管理(CRM)システム、Microsoft 365やSlackなどの連携ツール、SAPやOracleといった企業資源計画(ERP)ソリューションは、SaaSアプリケーションが現代ビジネスで果たす重要な役割を例示しています。

このユビキタス性は現代の事業運営における変革力としてのSaaSの役割を浮き彫りにし、さまざまな分野で効率性、柔軟性、イノベーションを推進しています。人工知能(AI)機械学習(ML)モノのインターネット(IoT)デバイスの組み込みにより、これらのツールが強化され、採用が促進されました。業界アナリストのGartner社は、2025年末までに世界のSaaS支出が22%増加し、総コストは2,950億米ドルになると予測しています。1

SaaSアプリケーションには多くのメリットがありますが、組織にとっての価値は、付随する課題やリスクを効果的に軽減できるかどうかによって決まります。IT環境がますます複雑になるにつれて、ワークフローの断片化、データ・サイロ、既存システムとの互換性の問題など、新たな課題が生じます。SaaS統合は、組織がこうした問題に対処する際に役立ちます。これにより、業務プロセスのオートメーションに必要な異種のアプリケーションやシステム間の円滑な接続とデータ・フローが容易になるのです。

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SaaS統合の仕組み

SaaS統合は、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を利用してSaaSアプリケーションと他のエンタープライズ・アプリケーションおよびシステム間で情報交換を可能にすることで機能します。APIとは、ソフトウェア・アプリケーションが相互に通信してデータ、特徴、および機能を交換できるようにする一連のルールまたはプロトコルです。

APIは、データ転送を承認する前にまずアプリケーションを認証することで機能します。データは通常、JSONやXMLなどの標準形式で交換されます。SaaSアプリケーションには、リアルタイムで更新され、変更が発生すると即座に同期とデータ更新を行うものもありますが、その他のSaaSアプリケーションはバッチ処理に依存しています。バッチ処理では、一定期間のデータを蓄積し、予定された間隔で一括送信します。

SaaS統合は、都市を走る道路の相互接続ネットワークのように考えることができます。街中にある各建物は異なるアプリケーションまたはシステムを表しており、それぞれに特定の機能と目的があります。道路(この例えではAPI)はこれらの建物をつなぎ、車(データ)がある場所から別の場所へスムーズに移動できるようにします。道路がなければ、建物はみな孤立して運営され、リソースを共有したり、効果的に連絡を取ったりすることができません。

SaaS統合がさまざまなソフトウェア・アプリケーション間の円滑なデータ交換と調整を促進するのと同様に、道路ネットワークによって建物間で自由に情報をやり取りできます。ワークフローのオートメーションを強化し、さまざまな業務プロセス全体の生産性を高めるためにSaaS統合が重要であるのと同様に、この相互接続されたインフラストラクチャーは街の全体的な機能にとって不可欠なのです。

大半のSaaSアプリケーションには、すぐに利用できる独自のAPIや、REST APIなどの一般的なAPIタイプと互換性のある独自のAPIが公開されています。場合によって、特に複雑なシステムでは、SaaSアプリケーションを既存のアプリケーションやシステムと統合するために、追加のプログラミングや設定が必要になることもあります。

SaaSアプリケーションを統合することで、チームはさらに強力で効率的なワークフローを作り出し、オートメーションを一層有効に活用し、手動のデータ入力を最小限に抑え(ヒューマン・エラーが減ります)、アプリケーション・データからより多くの価値を引き出すことができます。

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SaaS統合プラットフォームと戦略

組織がSaaSアプリケーションを統合する方法はいくつかあり、それぞれに異なる利点と特徴があります。

サービスとしての統合プラットフォーム(iPaaS)

カスタム開発やポイントツーポイント統合などの方法でアプリケーションを接続すると、労力がかかり、柔軟性に欠け、コストがかかります。ハイブリッド環境やマルチクラウド環境の採用が進み、SaaSアプリケーションの数も増えるにつれ、このような複雑性により適した統合戦略の必要性が高まりつつあります。iPaaSソリューションは、このニーズに対応し、組織のデジタル・トランスフォーメーションを支援するよう設計されています。

iPaaSプラットフォームは、アプリケーション間のデータ・フローを標準化し、業務プロセスを合理化する集中ハブです。iPaaSソリューションは通常、アプリケーションやシステムの接続に必要な複雑性と時間を軽減する一連のテンプレートと事前構築済みコネクターを提供します。iPaaSプラットフォームは、技術者以外のユーザーでも統合を構築および管理できるようにするローコードおよびノーコードのツールも、直感的なビジュアル・インターフェイスとドラッグ・アンド・ドロップ型モジュールという形で提供しています。

iPaaSソリューションは、eコマース・プラットフォームとCRMの間の注文やインベントリーを同期するといったタスクを自動化したり、複数のデータ・ストリームをERPソフトウェアに接続したりする目的で利用できます。さらに、プロジェクトの承認を受けて請求書を送信したり、サービス停止中に影響を受ける顧客に技術者やサポートを派遣したりするなど、自動化されたアクションを実行できます。

iPaaSプラットフォームは、データ配信の承認やデータ・ガバナンスといった重要な統合要件も処理できるため、企業はこれらの機能を社内で開発する必要がなくなります。その結果、企業の連携が強化され、自動化された業務プロセスをより有効に活用できるようになるのです。iPaaSソリューションを利用すれば、組織は独自に統合を構築する必要がなくなります。ただし、iPaaS プラットフォームの問題をトラブルシュートするには、やはり技術的な専門知識が求められます。

組み込み型iPaaS(EiPaaS)

組み込み型iPaaSは、別のソリューションを提供します。SaaS企業は組み込み型iPaaSを使用することで、SaaS製品に直接、統合機能を付けることができます。EIPaaSサービスは、サードパーティーのアプリケーションとベンダーのプラットフォームの間で顧客向けの統合を促進し、顧客が自社のアプリをベンダーのサービスにリンクできるようにします。EIPaaSを利用すると、クライアントはプロバイダーのソフトウェア内で独自の統合を構築してデプロイできます。あるいは、ベンダーがクライアントに代わって複数の統合を構築し、どれを採用するかをクライアントに選んでもらうことができます。2

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)

ロボティック・プロセス・オートメーションは、ソフトウェア・ボットを使用して、人間が実行していた反復的なタスクを自動化するテクノロジーです。SaaS統合では、RPAは複数のSaaSアプリケーションにまたがるデータ抽出、手動のデータ入力、その他の定型作業を自動化できます。RPAツールは、レガシー・システムと最新のSaaSアプリケーションを統合する際に特に有用で、ヒューマン・エラーのリスクを低減し、従業員をより戦略的な活動に集中させることができます。

例えば、人事部門では、RPAを使ってさまざまなプラットフォームにわたり新入社員情報を収集し同期できます。オートメーション・ボットを使って、従業員情報の入力、必要なフォームへの記入、人事システム内の従業員記録の更新、オンボーディング資料の配布、申請書類フォームへのアクセス、紹介Eメールの送信などの業務を行うことができます。このような自動化により、人による手作業が不要となり、オンボーディングを円滑かつ効率的に進めやすくなります。 RPAを実装すると時間は削減できますが、アプリケーションの更新やユーザー・インターフェースの変更によりボットのワークフローが失敗する可能性もあります。

カスタム統合(またはネイティブ統合)

カスタムSaaS統合戦略では、サードパーティの関与を避け、統合の構築と保守を社内の開発者に依存します。カスタム統合では、高い柔軟性とカスタマイズ性を実現できます。このため、標準的なアプリ統合では用意できない特定の機能を必要とする企業では、少なくともある程度はカスタム統合に頼らざるを得ないことも多くあります。この方法は、統合ニーズが限定的でカスタム統合要求が法外なコストにならない組織にも適しています。

けれども、たくさんのSaaSアプリケーションとオンプレミス・システムを連携している企業にとっては、多くのSaaSアプリケーション向けのカスタムAPI統合の開発は、複雑で時間とコストがかかってしまう可能性があります。この場合、開発とテストを複数回実施して、適切なデータ・フローを実現することがよくあります。カスタム統合を長期にわたり維持し更新し続けることで、技術的負債や高コストの修正につながり、将来の成長に向けた拡張性や柔軟性が損なわれる恐れがあります。

ミドルウェア

ミドルウェアの統合とは、SaaSアプリケーションとオンプレミス・システムを接続する仲介ソフトウェアを利用することです。ミドルウェア・ソリューションには、 エンタープライズ・サービス・バス(ESB) ツールや、技術スタック内のすべてのコンポーネントを接続するiPaaSプラットフォームなどがあります。従来のミドルウェア・ソリューションは、取得に費用がかかり、効果的に実装し管理するためには専門知識が必要なことが多いため、珍しいケースとなってきています。iPaaSは、SaaSアプリケーションや最新のエンタープライズ向けに設計されたクラウドベースの種類のミドルウェアであり、一般的には、従来のミドルウェア・ソリューションからのアップグレード版と考えられています。

SaaS統合のユースケース

あらゆる業界の企業がSaaS統合戦略を採用し、IT環境の接続の簡素化と業務プロセスの自動化を進めています。一般的なSaaS統合のユースケースは、次のとおりです。

販売およびマーケティング

HubSpotやMicrosoft Dynamics 365などのプラットフォームを統合することで、リードを自動転送できます。自動化されたHubSpotマーケティング・キャンペーンでリードを獲得できると、Microsoft Dynamics 365にこのリードが自動的に追加され、営業チームがフォローアップできるようになります。

eコマースとサプライチェーン管理

Shopifyなどのeコマース・プラットフォームの取引データをNetSuiteなどの基幹システムと統合することで、受発注、在庫、顧客データを自動的に同期できるようになります。顧客がShopify上で発注すると、Shopify上の対応データがNetSuiteに送信され、Shopify、その他の統合アプリケーションやシステムで、価格、在庫、出荷に関するリアルタイムの更新が反映されます。

人事・給与

人事チームは、RPAソリューションの自動化を人事ソフトウェアに実装して、人事ソフトウェアと社内システムの間でデータ入力と自動アクションを同期することができます。

SaaS統合のメリット

SaaSの統合には、シームレスなデータ統合、ワークフロー自動化、拡張性の向上、アナリティクスの統合、コスト削減と効率化、SaaS投資のROI向上など、数多くのメリットがあります。

シームレスなデータ統合

SaaS統合により、業務アプリケーション間のスムーズで正確なデータ・フローが可能になります。これにより、エラーを最小限に抑えることができ、すべてのエンドポイントでリアルタイムの更新が実現できます。

ワークフローの自動化

SaaS統合ソリューションにより、(クラウドベースかオンプレミスかを問わず)複数のアプリケーションやシステムにまたがるワークフローを作成しやすくなり、従業員が行わなければならない手作業や反復的な作業を減らすことができます。

eコマース・プラットフォーム、CRMプラットフォーム、データ・アナリティクス・ダッシュボードがすべて接続されている場合、営業担当者は、複数のアプリケーションを確認したり、別の従業員に手作業でのデータ移行・入力を依頼したりせずに、特定の顧客に関する必要な情報をすべて取得できます。さらに、こうしたアプリケーションがすべて社内の機械学習ワークフローに一本化されていれば、データから正確な洞察を抽出できます。

拡張性の改善

自社に合った統合戦略を選ぶことで、市場の変化や新ツール・アプリケーションの統合で得られる新たな機会にすばやく対応できます。

アナリティクスの統合、情報に基づく意思決定

SaaSアプリケーションを統合することで、基幹システムをその他のオンプレミスやクラウドベースのアプリケーションおよびシステムに接続できます。環境を一本化することで、包括的な業務ビューと完全なデータ・セットを得られるようになります。これにより、統合データから実用的な洞察を抽出して、戦略的な計画と情報に基づいた意思決定をしやすくなります。

コスト削減と効率性の向上

SaaS統合がうまく行った場合は、広い範囲にわたるITサポートやカスタム開発をそれほど必要としなくなり、IT間接費が削減でき、手作業に費やす時間が減り生産性を上げられます。

SaaS投資のメリットを最大化

SaaSアプリケーションを統合することで、企業はアプリケーションの機能を最大限に活用できるようになり、ROIを最大化できます。アプリケーションを統合しエコシステムを構築することで、組織はコラボレーションの強化、ワークフロー効率化や生産性向上が実現できます。

SaaS統合の課題

SaaS統合には数多くのメリットがありますが、次のような課題もあります。

データ・セキュリティーとコンプライアンス

サイバー攻撃やデータ侵害が増加するにつれ、データを保護し、 GDPRHIPAAなどの規制要件を満たすことがこれまで以上に重要になってきています。SaaSアプリケーションを統合するにあたり、法令を遵守し機密情報を保護するために、堅固な暗号化、厳密なアクセス制御や、定期的なセキュリティー監査などが必要となります。

複雑さと開発

多くのSaaSアプリケーションを使っている複雑なITアーキテクチャーの場合は、SaaSの統合戦略に重大な課題をもたらす可能性があります。互換性のないアプリケーションやシステム間のギャップを埋めるためにカスタム開発が必要になることも多く、効果的な実装と管理のために専門的な技術知識が必要になることもよくあります。ビジネス・リーダーが統合ソリューションを決定する際には、組織の構造と複雑さを考慮することが重要です。

パフォーマンスの問題

複数のシステム間で大規模なデータセットをリアルタイムで同期すると、パフォーマンスの問題が起きることがあります。遅延により、応答時間が長くなり、システム間のやりとりの効率が落ちて、ユーザーや顧客の体験に大きな支障をきたす恐れがあります。

メンテナンス

ITチームは、基盤アプリケーションが更新されても継続して機能するように、統合フローを定期的に更新する必要があります。更新中のダウンタイムを管理し、システム障害を最小限に抑えるには、慎重な計画が必要です。

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脚注

Gartner Forecasts Worldwide Public Cloud End-User Spending to Surpass USD 675 Billion in 2024”, Gartner, 20 May 2024.

What is iPaaS”, Chrystal China, 10 July 2024.