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アフターコロナに鉄道会社が求められるものとは
2021年12月29日
カテゴリー IBM Consulting | 革新的テクノロジー
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本記事は、2020年12月18日に執筆した鉄道業界におけるPoint of View(戦略的見解)「Railway Point of View & Enterprise Architecture」の内容を一部更新して作成したものです。本投稿は、COVID-19で影響を受けた鉄道業界の市場環境およびアフターコロナに求められるものとそれに対する提言施策について説明しております。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行前の姿に戻らない事は明確である。各鉄道会社の経営手腕が問われる。
国土交通省が毎月発表している鉄道輸送統計調査(IBM外のWebサイトへ)によれば、JR、民鉄の鉄・軌道旅客輸送量(旅客数量)はCOVID-19の流行を機に大きく減少しています。2回目のワクチン接種率も高まり、COVID-19の発生から約2年が経った現在もCOVID-19の流行前と比べて約30%減少したままです。この先3回目のワクチン接種が控えており、より一層COVID-19への不安が払拭される可能性がありますが、一度根付いてしまった在宅勤務やオンライン会議がなくなりCOVID-19流行前の元の姿に戻る事は考えにくいでしょう。そのため、鉄道会社各社はCOVID-19によって失われた定期券収入をはじめ旅客による収入がCOVID-19流行前まで回復しない事を現実として受け止め、今後経営をどのように舵取りしていくかが問われてきます。
図1:鉄・軌道旅客輸送量(旅客数量)の推移 国土交通省 「鉄道輸送統計調査」を基に作成
アフターコロナにおいて鉄道会社が求められるものとは?
COVID-19によって鉄道会社各社は旅客収入という貴重な財源を一定数失ってしまい、それを今後どのように補っていくかという課題を突き付けられました。アフターコロナでは、ヒトの移動が減少しこれまで以上の大きな収益も見込めないため、会社をより一層筋肉質に変えていく(現状のコストを見直し、浮いたコストを稼げる箇所に投資する事で収益を改善する)ために現在の旅客による「移動に対して付加価値をつけること」「鉄道会社各社が保有している所有資産(ヒト、モノ、カネ)の見直し」の2点が必要であると考えます。以下、それぞれの詳細となります。
移動における付加価値の向上
- インバウンド、時差出勤、定期券をもたない乗客が増える等、移動においては、より一層多様なニーズが高まると予想されるため、今後は「個に則したサービス提供」が必要になります。
- 都心部では混雑を避ける傾向が強くなると予想されるため、フィジカルディスタンスを確保するサービスや混雑緩和を誘導する新たなサービスの提供が乗客から求められます。
- 定期券収入がコロナ前と比較して減少のまま維持されるため、旅客収入以外のビジネスの確立や移動に関する新たなサブスクモデルの確立等、ビジネスの変革がより一層必要になります。
所有資産(ヒト、モノ、カネ)の見直し
- 鉄道会社が所有する改札機や券売機は維持費が大きいため、台数の見直しや現状の在り方を変える等、ITを活用した抜本的な対策が必要となります。
- 鉄道会社が所有しているヒト、モノ、カネが今後増えていくことは考えづらいため、現在の限られた資源をいかに適正に活用するか、といった効率性・生産性の向上が必要となります。
- 所有資産の見直しが求められる中、その延長として資産の共有化も活発となり、鉄道会社同士による一部資産の共有化や鉄道会社同士のアライアンスやM&Aが行われていくと予想されます。
以上、アフターコロナにおいて鉄道会社が求められるものとして、「移動における付加価値の向上」と「所有資産(ヒト、モノ、カネ)の見直し」の2点を説明しました。次にそれぞれに対する具体的な施策を4つ提言します。
4つの提言施策
個に応じたデジタルマーケティング・共通プラットフォーム
- 顧客の趣味嗜好が多様化する中、これまで以上に「個に則したサービス提供」が求められています。商業部門が保有する購買履歴データに加え、交通系ICカードのデータや鉄道やバスの運行データを併せて部署横断的にDMPで分析・活用する事で、買い物客(個)に則した施策を打つことができ、商業部門の売上増加や旅客サービスの向上に寄与します。
- 多くの鉄道会社では各事業部が縦割り組織となってしまっており、組織のサイロ化が課題となっております。商業部門と鉄道・バス部門のデータの共有に留まらず、これまで部門毎に管理していたデータを部門横断で共有し、各事業部が必要なデータを活用出来るようにすることで、分析・戦略立案に活用でき、新たな示唆を導出できます。
- 現在会社毎に所有しているデータを会社内に留まらず、必要に応じて会社横断で共有・活用する事で、MaaSなど乗客の利便性向上や新たなサービス確立の足掛かりとなります。
スマートステーション
- 訪日外国人や車いす利用者など、駅の利用者のニーズが多様化している昨今では、個に則したサービス提供が求められます。ITを活用して駅構内の案内サービスの更なる高度化を実現する事で、利用者がより使いやすい駅を目指します。
- 人手不足が叫ばれている中、AIやロボットへの期待が高まっています。駅ナカ業務にて、AIを活用した券売機、AIを搭載したロボット案内を実現することで、人手不足の解消や人件費の削減を目指します。
インテリジェント・トラム
- 予期しないタイミングでの車両故障が乗車の機会損失に繋がっています。各車両にセンサーを設置し、車両の状態を常時監視する事で、不具合を把握でき、未然にダウンタイムを減らすことを目指します。
- アフターコロナではこれまで以上に混雑への不安が高まると予想されます。これまでの時刻表による運行から乗客の人数に合わせて車両を提供する形に変更する事で、混雑緩和や供給過多を防ぐことができ、限りある資源を有効活用する事ができます。
スマートメンテナンス
- 保全部門では部品情報や工事情報など管理すべきモノ・情報が溢れており、管理者の負担となっています。全ての情報を1つのシステムで管理することで、一元的な資産情報と在庫の管理を実現し、管理者の負担軽減や在庫最適化を目指します。
- メンテナンス業務においては、熟練者と経験の浅い方での業務のばらつきや、熟練技術者の退職が課題となっています。過去の不具合やメンテナンス履歴を統合して分析することで、不具合に適したメンテナンス業務を発見し、保守経験の浅い方でも早くて正確な保守作業が可能となります。
以上、4つの提言施策について本ブログでは概要のみ説明しましたが、内容の詳細につきましては本記事の下部にある連絡先までお問い合わせください。また、下記の図にて上記で述べた「アフターコロナにおいて求められるもの」と「4つの提言施策」それぞれの関係性を整理しております。
図2:「アフターコロナにおいて求められるもの」と「4つの提言施策」の関係性
IBMが提供するソリューション
IBMでは業界に精通のあるインダストリー・コンサルタントやシステム構築のデリバリーメンバーが多数在籍しております。上記で述べた4つの提言施策について、IBMでは以下のソリューションを提供し、デジタルトランスフォーメーションのパートナーとしてご支援することができます。
提言施策 | IBMが提供するソリューション |
1. 個に応じたデジタルマーケティング・共通プラットフォーム |
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2. スマートステーション |
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3. インテリジェントトラム |
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4. スマートメンテナンス |
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COVID-19の流行は競争開始のゴングだった。
以上、このレポートでは、COVID-19の影響を受けた業界の1つである鉄道業界に焦点を当て、アフターコロナに求められるものとそれに対する提言施策を述べました。日本でのCOVID-19の流行からまもなく2年が経とうとしておりますが、依然として鉄道会社各社の経営状況は芳しくありません。この状況を踏まえて各社が運賃値上げを模索する一方で、先日、小田急電鉄(株)が小児運賃を全区間一律50円にすることを発表し、鉄道業界に衝撃が走りました。これまでは他社の動向を伺いながら足並みを揃えて施策を実施してきましたが、今回の小田急電鉄(株)の発表を受けて、その習わしは失われつつあると考えます。そして、今後もこのような新たな施策を各社が個別で実施していくと思われます。このようにCOVID-19により鉄道業界では既に熾烈な競争が始まっています。COVID-19によって抜本的な改革が必要に迫られる中、他社に先手を越されない為にも先手先手のアクションがこの先必要になってくるのではないでしょうか。
川内野 佑太
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
製造・流通・統括サービス事業
航空・運輸・旅行サービス部門 インダストリー・コンサルタント
Yuta.Kawachino@ibm.com
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