最高AI責任者(CAIO)が複雑さを乗り越え、新たな価値への道を切り拓く

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組織におけるAIへの期待はかつてないほど高まっています。経営層は従業員に速やかな適応を求め、AIを全社規模で活用するための高い目標を掲げています。今や「価値」が最重要テーマであり、注目されているのはROIです。
CAIO職の登場
AIによるビジネス成果を加速し、全社的に統括するため、最高AI責任者(CAIO)という役職を設ける組織が増えています。多くのCAIOが、価値創出の拡大と測定可能な成果の実現にすでに成功しています。
この新しい役職を検証するため、IBM Institute for Business Value(IBV)は、ドバイ未来財団(DFF)およびオックスフォード・エコノミクス(Oxford Economics)社と連携し、2025年第1四半期に22地域・21業種にわたり、600人超のCAIOを対象に調査を実施しました。
全体で2,300超の組織にアプローチしたが、現在CAIOがいると回答したのは26%にとどまりました。2023年の11%からは増加(出典)したものの、まだ決して多くはありません。CAIOの57%は社内人材から任命されており、66%は「今後2年以内に大半の組織がCAIOを置くようになる」と予測しています。
CAIOには、組織変革を推進する明確なミッションが課されています。職務は、AI戦略の策定、AI実装の指揮、AI予算の管理、AI導入に向けたチェンジマネジメント戦略の策定など多岐にわたります。
CAIOは、組織に大きな成果をもたらし得る影響力の高い役職です。CAIOを置く組織はAI投資のROIが10%高く、また「イノベーションにおいて同業他社を上回っている」と回答した割合も24%高くなっています。
CAIOは、AI投資のROIを押し上げる。

組織にCAIOが必要となるタイミングはいつか
調査対象となったCAIOは、自らの役職が創設された目的として、1つはAI戦略の推進とAI導入の加速の2つを挙げています。CAIOは現場の業務を改善しながら、経営の最上層でAIに関する議論を促進・主導します。AI変革を先導するビジョナリーであり、AIポートフォリオ全体を束ねる「接着剤」のような存在でもあります。
組織がAIをパイロット運用している段階では、この「接着剤」としての役割はそれほど重要ではありません。だが、パイロット段階から全社的プログラムへと移行する局面では、明確な方向性を定め、共通の目標に向けて社員を束ねる役割が求められます。
CAIOの重要な責務の1つが、複雑性への対処です。現在、一般的な組織が活用する生成AIモデルは11種類だが、2026年末までには少なくとも16種類に拡大される予定です(出典)。
61%のCAIOが、AI予算の管理を任されている
CAIOが成功するために必要な条件は何か
リーダーは孤立して仕事をするものではありません。このことは、とりわけCAIOによく当てはまります。CAIOの職責は、ビジネスとテクノロジーの橋渡しを担い、AIによる価値創出という共通目標に向けて時間と労力を注ぐ役割を果たします。
しかし、こうした幅広い任務をCAIOが単独で完結するのはできません。実際には、他の経営層との連携こそが職務を果たす唯一の道です。CAIOは、最高イノベーション責任者(CINO)や最高テクノロジー責任者(CTO)と連携し、AI、エンタープライズIT、テクノロジー戦略の整合性を保つことが求められます。また、最高データ責任者(CDO)とは、データ戦略、データ品質、AIガバナンス、分析の各領域で協働することが重要です。さらに、最高情報セキュリティー責任者(CISO)とは、データの脆弱性やサイバーセキュリティの脅威に対応するために連携が不可欠です。そして、最高人事責任者(CHRO)とは、社員の支持を得るための体制づくりに協力することが求められます。
同様に、CAIOは他の経営層にとっても重要なリソースであり、CAIOの76%がAIに関する意思決定の相談を受けています。経営層全体と積極的に連携することで、CAIOはAI戦略をビジネスやテクノロジー、イノベーション、セキュリティー、人材の各戦略と整合させ、AIを活用した成果目標を全社で共有し、注力することができます。
CAIOは経営層の各種戦略を整合させ、AIのインパクトを増幅させる。

CAIOの57%はCEOまたは取締役会の直属である
CAIOはどのようにAI投資のROIを最大化できるか
CAIOは組織のAIの神経系の中枢に位置しています。この俯瞰的な立場から、AIトランスフォーメーションを加速し、取り組みを戦略に整合させ、競争力の源となるAIイニシアチブを優先して推進します。
ただし、このAI神経系を機能させるには、テクノロジーの統合が不可欠です。実際、「自社のITインフラはAIを全社的に展開できる」と強く同意した経営層は全体の25%にとどまっています(出典)。さらに、共通のビジネス目標を軸に、情報を集約する必要があります。
CAIOはサイロや障壁を解消し、重要なAIイニシアチブを支援して、これらの課題に対処します。調査では、測定可能なビジネス成果を上げているCAIOは、「測定」「チームワーク」「権限」の3領域に重点を置いていることが明らかになりました。
AI経営の次の一手を、確かな知見から
本レポートでは、CAIOが複雑性を乗り越え、AI導入によってROIを最大化するための最新データとインサイトを掲載しています。さらに、CEO、CAIO、COO、テクノロジーリーダー(CTO/CIO/CDO/CISO)、CHROといった各CXOが実践できるアクション・ガイドを収録。
加えて、日本版監修者による独自の考察を通じて、日本企業が直面する課題や成長へのヒントを提示しています。ぜひレポートをダウンロードし、AI活用の戦略立案にお役立てください。
著者について
松瀬 圭介(日本版監修), 日本IBM 執行役員 コンサルティング事業本部 生成AI日本統括Saeed Al Falasi, Executive Director, Dubai Center of Artificial Intelligence, Dubai Future Foundation
Lula Mohanty, Managing Partner, Asia Pacific, IBM Consulting
Irfan Verjee, Transformation Strategy Leader, MEA, IBM Technology
Anthony Marshall, Global Leader, IBM Institute for Business Value
Jacob Dencik, Ph.D, Research Director, IBM Institute for Business Value
発行日 2025年10月30日








