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公開日:2024年5月29日
寄稿者:Alexandra Jonker, Tom Krantz

サステナビリティー・データとは

サステナビリティー・データとは、エネルギー使用量、温室効果ガス排出量、サプライチェーンなど、企業の環境、社会、経済への影響を測定したデータです。組織はこのデータに基づいてベースラインを確立し、意思決定にデータを提供し、リスクを管理し、報告要件を満たし、価値創造をサポートします。

ビジネスにおける持続可能性は、過去100年間で急速に推進されてきました。エネルギー効率の改善、再生可能エネルギーへの移行、生物多様性の保全といった持続可能なビジネス慣行は、環境、社会、ガバナンス(ESG)の指標に照らして分析されます。企業は、サステナビリティー・データを投資家向けのESG報告書や、より広範な対象者に向けたサステナビリティー・レポートで共有します。

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サステナビリティー・データの歴史

サステナビリティーの概念は、持続可能性の追求を通じて国を統一しようとする国連の下部組織、ブルントラント委員会によって広く普及しました。1987年、同委員会は『Our Common Future, From One Earth to One World』という報告書のなかで、持続可能な開発を「将来の世代が自分たちのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たすこと」と定義しました。1

サステナビリティーに対する世間な認識が高まるなかで、企業は事業活動から生じる環境上および社会的な悪影響を軽減する必要に迫られています。組織がサステナビリティーの3つの柱(環境、社会、経済)全体での影響を定量化するなかで、初期のサステナビリティー・データが形になってきました。

2016年までに、国連は持続可能な開発目標(SDGs)を策定し、17の目標を掲げました。SDGsは、2030年までにより持続可能な未来を達成できるように、持続可能な開発のためのグローバル規模の指針を示したものです。また、企業が独自のサステナビリティーへの取り組みを測定するための明確な目標を示し、サステナビリティー・データを贅沢なものではなく、必須のものにしました。

 

サステナビリティー・データの活用例

企業がサステナビリティー・メトリクスを活用する理由として、次が挙げられます。

サプライチェーン・マネジメント

サステナビリティー・データは、ESGのメトリクスに基づいて、バリュー・チェーンを最適化するための重要な洞察を提供します。一部の企業は、調達段階で原材料を倫理的に調達していることを確認するために、サステナビリティー・データを活用しています。燃料の使用量を追跡して、車両管理を改善するために活用している企業もあります。スカンジナビアの通信サービス・プロバイダーであるEltel社は、炭素会計を用いて車両のルートを最適化し、その過程で燃料の使用量と炭素排出量を削減しています。2

運用効率

企業はサステナビリティー・データを活用してオペレーションを改善し、サステナビリティーのパフォーマンスを正確に測定できます。たとえば、エネルギー使用量を追跡してエネルギーの使用を管理し、リソースの利用率を向上させることができます。スウェーデンの多国籍コングロマリットであるIKEA社は、サステナビリティー・データを活用して、二酸化炭素排出量を最小限に抑え、廃棄物管理を改善し、ビジネス全体で再生可能エネルギーに移行しています。3

ブランドの評判

一部の企業は、透明性の改善を求める利害関係者の要求に応えるために、財務報告書にサステナビリティー・データを含めています。サステナビリティー・データは、組織がサステナビリティー目標を達成するためのベンチマークとして、前年比で活用することで、ブランドの評判を高めることができます。インドを拠点とする多国籍企業であるMahindra Groupは、サステナビリティー・メトリクスを活用して、同社の目的に賛同してくれるインパクト投資家を惹きつけています。4

規制報告

サステナビリティー・データは、企業が報告義務を果たすのに役立ちます。企業サステナビリティー報告指令(CSRD)では、社会的および環境的影響を開示することを企業に義務付けています。サステナビリティー会計基準審議会(SASB)と気候関連財務情報開示タスク・フォース(TCFD)は、ESGおよびサステナビリティー・レポートの作成方法に関するガイダンスを提供しています。世界の上位250社(G250)のほぼすべての企業がサステナビリティー・レポートを公開しており、その報告率は96%です。5

サステナビリティー・データ管理とは

多くの組織は、サステナビリティー・データを最大限に活用するために、強力なサステナビリティー・データ管理を導入しています。

サステナビリティー・データ管理とは、サステナビリティー・データの収集、分析、最適化、報告を指します。サステナビリティー・データは、異種のサイロ化されたシステムや部門に分散していることが多いため、企業全体にわたる包括的なアプローチが必要です。

データ収集には、定量的データと定性的データの収集が含まれます。

定量的データ

統計情報、数値、数字で構成されたデータです。例えば、サステナビリティーへの取り組みや温室効果ガス排出に関するKPI、エネルギー消費指標などへの資本的支出が挙げられます。

定性的データ

数字以外の要素で構成されたデータです。例えば、労働条件に関する従業員のフィードバックや顧客満足度レポート、サプライチェーン・ベンダーとの調査などが挙げられます。

データを収集した後で、データ・セットを分析し、オペレーションの最適化、コストの削減、意思決定の改善の機会を模索します。たとえば、気象予報などの履歴データは、ロジスティクスの改善に役立ちます。場合によっては、サステナビリティー・データを通じて、潜在的なニーズ、リスクと機会を予測することも可能です。強力なサステナビリティー・データ基盤があれば、組織は報告と開示のプロセスを最適化し、脱炭素化の取り組みを加速できます。

サステナビリティー・データはどのように共有されているか

サステナビリティー・データは通常、 ESGおよびサステナビリティー・レポートを通じて開示されます。これらのレポートが義務付けられているかどうかは、地域によって異なります。ただし、企業はSDGsをフレームワークとして参照し、SASBやTCFD、国際サステナビリティー基準審議会(ISSB)などのガイダンスに従うことができます。

一部の組織は、ESGデータにサステナビリティー・データを含めることで、オペレーションをより包括的に把握しています。ESGデータとサステナビリティー・データは似ていますが、同じではありません。ESGデータは、投資家やその他の利害関係者が企業を評価するために参照できる具体的なメトリクスを提供します。サステナビリティー・データは、組織のリソースの利用とサステナビリティー管理戦略に対する、より包括的な全体像を提示します。

サステナビリティー・データは、リアルタイムのダッシュボード、スプレッドシート、その他のインタラクティブなデータの視覚化ツールを通じて共有できるため、組織の進捗状況を追跡し、改善の余地を見つけやすくなります。また、LinkedInなどのソーシャルメディア・プラットフォームを通じてデータを公開することで、サステナビリティーへの取り組みを強調し、ブランドの評判を高めることもできます。

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    脚注

    すべてのリンク先は、ibm.comの外部です。

    1 "Report of the World Commission on Environment and Development: Our Common Future," United Nations.

    2 "Eltel Group uses Normative to track its full carbon footprint," Evan Farbstein, Anne Veiksaar, Normative, 13 June 2022.

    3 "Our climate agenda," IKEA.

    4 "Leadership on ESG reporting has helped boost Mahindra’s brand and attract global impact investors," World Economic Forum, November 2023.

    5 "Key global trends in sustainability reporting," KPMG.