NAS(ネットワーク接続ストレージ)とは

ネットワーク・サーバーの背面にあるさまざまなインターフェイス

共同執筆者

Stephanie Susnjara

Staff Writer

IBM Think

Ian Smalley

Staff Editor

IBM Think

NAS(ネットワーク接続ストレージ)とは

NAS(ネットワーク接続ストレージ)とは、複数のユーザーがWi-Fiまたはイーサネット・ケーブルを介して電装制御プロトコル/インターネット・プロトコル(TCP/ IP)ネットワーク経由でファイルを保存および共有できる集中サーバーです。

NASは、NASボックス、NASユニット、NASサーバー、またはNASヘッドとも呼ばれます。

NASは、手頃な価格で保守が簡単なネットワーク・ストレージ・オプションを提供します。 NASテクノロジーは数十年前から存在していますが、近年人気が再燃しています。

Fortune Business Insightsのレポートによると、ネットワーク接続ストレージの市場規模は2023年において346億2,000万米ドルと評価されています。この調査では、NAS市場が2024年には403億3,000万米ドル、そして2032年までに1,295億2,000万米ドルに成長し、予測対象の期間中における年平均成長率(CAGR)は15.7%としています。効果的なストレージ・テクノロジーの需要は、毎日扱うデータの激増に伴うものです。従来のプライベートクラウド・ストレージと比較したNASの費用対効果の高さも、NAS市場の成長を促進しています。 1

企業にとって、ネットワーク接続ストレージ(NAS) は、一元的なファイル共有や、データのバックアップ、アプリケーションの保管、メディア・ファイル管理、リモートアクセス、長期アーカイブを促進するという重要な役割を果たします。保存すべきデータの量が増大する中、ストレージ・テクノロジーは、クラウドNASとオンプレミスNASを統合できるハイブリッドクラウド・ストレージ環境に進化してきています。

NASのビジネス・ユースケースには次のようなものがあります。

  • データ保護
  • メディア・ストリーミング
  • コラボレーションとファイル共有
  • 仮想デスクトップのホスティング
  • Cloud Integration
  • ウェブベース・アプリケーションやサーバー・アプリケーションのテストおよび開発
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その他のNASコンポーネント

 
  • ストレージ・ドライブ:
    • ハード・ディスクまたはHDD(ハード・ディスク・ドライブ):ハード・ディスク・ドライブ(HDD)は、NASユニットにストレージ容量を提供し、NASユニットを簡単に拡張できるようにします。データ・ストレージに必要な容量が増えるに従って、システムの需要を満たすためにハード・ディスクを追加できます。これは「スケールアウト」NASと呼ばれています。より最新のシステムでは、フラッシュ・ストレージをHDDとともに、またはスタンドアロン構成として使用します。通常は、NASデバイスのユースケースにより、使用するHDDのタイプが決まります。例えば、組織全体で大容量のメディア・ファイルを共有するには、自宅で個人が使用するファイル・システムよりも多くのリソースが必要になります。
    • ソリッドステート・ドライブ(SSD):ほとんどのNASデバイスはHDDを搭載していますが、スピードと高性能を求める場合には、ソリッドステート・ドライブ(SSD)(通常、NANDフラッシュ・メモリを使用して永続的なデータを保存する半導体ベースのストレージ)がより良い選択肢となります。
  • ネットワーク: 1つまたは複数のネットワーク接続されたNASデバイスは、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)またはIPアドレスを割り当てたイーサネット・ネットワークを介して接続されます。
  • ネットワークプロトコル:伝送制御プロトコル/インターネット・プロトコル(TCP/IP)によりデータ転送が可能ですが、データ共有のためのネットワーク・プロトコルはクライアントの種類によって異なる場合があります。例えば、Windowsクライアントには通常サーバー・メッセージ・ブロック(SMB)プロトコルがあり、LinuxやUNIXクライアントにはネットワーク・ファイル・システム(NFS)プロトコルがあります。
  • 中央処理装置(CPU) :すべてのNASデバイスには、ファイル・システムの管理、データの読み取りと書き込み、ファイルの処理とファイル・サービスを行うCPUが搭載されています。
  • オペレーティング・システム:標準のオペレーティング・システムは数千ものリクエストを処理できますが、NASは軽量なOSを使用しており、リクエストをデータ・ストレージとファイル共有の2種類に絞っています。
  • ネットワーク・インターフェース:NASデバイスは、ネットワーク・インターフェースを介してネットワーク接続 (イーサネット・ケーブルまたはWi-Fi)を行います。一部のNASデバイスには、デスクトップ、モバイル、その他のデバイスと直接接続するためのUSBポートがあります。
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NASの種類

スケールアウト・ファイルベース・ストレージ(FBS)

スケールアウトFBS(スケールアウトNAS)とは、ストレージ容量を拡張するためにハードディスクを追加することを意味します。 IDCの調査によると、回答者の41%が、データセンター内のスケールアウトFBSに40%以上のアプリとワークロードをデプロイしています。この調査は、このストレージ・システムのワークロードがパブリッククラウドのファイルベース・サービスと並行して増加し続けることも示唆しています。ただし、スケールアウトFBSは、他のストレージ・プロバイダーと比較してコストが低いため、特に魅力的です。

NASゲートウェイ

NASゲートウェイ:NASとSANストレージ・アーキテクチャーを組み合わせることで、NASゲートウェイはレガシーNASにおける一部の制限に対処するために役立ちます。NASの拡張はハード・ディスク・ドライブを追加することで行えますが、その新しいディスクをネットワークに導入し、新しいドライブ上でファイル参照を再マッピングする必要があります。NASゲートウェイはストレージ・システムを分割し、個々のサーバーを互いに独立して拡張できるようにします。

エンタープライズNASと中小企業や消費者向けNASの比較

利用可能なNASシステムの種類は、企業、中小企業、消費者向けNASなど、ユーザーベースによっても決まります。

エンタープライズNAS

ハイエンドのNASデバイスには、RAIDベイにある複数のハードディスク・ドライブを組み合わせてパフォーマンスを向上させ、NASドライブに障害が発生した場合にデータを保護する独立ディスクの冗長アレイ(RAID)構成をサポートするために十分な数のディスクが搭載されています。

中小企業や消費者向けNAS

このタイプのNASシステムは、ルーター、PC、モバイル・デバイスを通じて複数の従業員がアクセスできる一元管理型ファイル・ストレージが必要な、在宅勤務ユーザーを対象としています。消費者向けNASは、ファイル・サーバー(ストレージ・サーバー)、プリント・サーバー、バックアップ・システム、マルチメディア・サーバーとしても動作します。 360 Research Reportsの調査によると、このセグメントは米国において、2021年から2027年の間に年平均成長率が7.3%になると予測されています。2

NAS、DAS、SANのデータ・アーキテクチャー

直接接続ストレージ(DAS)

NASシステムがネットワークに接続されるのに対し、DASデバイスは通常コンピュータに直接取り付けられます。DASはUSBやThunderboltケーブルを介して外付けドライブに接続することもできますが、あまり一般的ではありません。

DASデバイスは低コストで設定も容易ですが、拡張性には限界があります。ネットワーク経由でストレージにアクセスできないため、利用可能な外部ポートの数によってファイル・アクセスが制限されます。さらに、組織の規模が拡大するにつれて、DASシステムのバックアップコストが増加する可能性があります。

ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)

ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)システムは、ファイルレベルのストレージではなくブロックレベルのストレージを提供するという点でNASとは異なります。SANシステムは、ファイバー・チャネルなどの高速ネットワークを使用してストレージ・ユニットへのデータ・アクセスを提供するという点でも他と区別されます。

また、NASは冗長ストレージ・コンテナまたはRAIDで構成された単一のデバイスを使用しますが、SANストレージはSSDやフラッシュ・ストレージ、クラウド・ストレージなどを含むデバイスのネットワークを使用します。

構造化されたトランザクション・ワークロードは通常、SANシステムによって処理され、非構造化ワークロードは通常、NASの導入によって管理されます。最後に、SANのセットアップにはコストがかかり、複雑になる可能性があります。

NASのベンダーとオープンソースNAS

さまざまなデータ・ストレージの選択肢に対する需要が拡大していることを踏まえ、NASストレージ・デバイスとそれに関連するテクノロジーの範囲は多岐にわたります。エンタープライズNASのベンダーには次のようなものがあります。

  • Dell
  • IBM
  • HPE
  • Amazon Web Services(AWS)
  • Synology
  • QNAP
  • Seagate
  • Intel
  • Netgear
  • Western Digital

エンタープライズNASに加え、オープンソースのNASソフトウェア(Rockstor、OpenFilerなど)は、家庭や中小企業ユーザーがストレージのニーズを満たすための、費用対効果の高い方法となり得ます。

NASとクラウドの統合

NASデバイスとクラウドベースのプラットフォームを統合すると、NASデバイスとクラウド・サービスの間でデータを同期できるため、データへのアクセス性と冗長性が向上します。

業界の専門家によると、2025年までに新たなデジタル・データ・ワークロードのうち95%以上がクラウドベースのプラットフォームに移行し(2021年の30%から増加)、NAS市場をさらに牽引します。3

NASのメリット

中小企業や大企業は、次のようなメリットを得るため引き続きNASに頼ることになります。

柔軟性

NASシステムのWi-Fi接続はリモートアクセスを可能にし、分散した従業員間のコラボレーションを促進します。また、UNIX、Microsoft Windows、Apple Mac OSなど、様々なクライアントからのリクエストにも対応できます。これにより、クラウドベースのオブジェクトストレージのような高額な費用をかけずに、プライベートクラウドのような機能を実現できます。

拡張性

NASノードは、ハードディスクを追加、または大容量化してストレージ容量を簡単に拡張できます。デプロイメントが容易であるため、NASは魅力的な選択肢です。

データとセキュリティー

NASシステムは、全体的なデータ・セキュリティーを確保するために、ファイアウォールなどのネットワーク・セキュリティー機能を備えた組み込みのデータ保護サービスも提供できます。

コスト効率の高いネットワーク・ストレージ

NASシステムは、保守が簡単で、専用サーバーよりも経済的な場合があるため、費用対効果に優れています。

信頼性の高いバックアップ

NASデバイスはデータを自動的にバックアップでき、外付けハード・ディスク・ドライブに比べてバックアップの柔軟性が高くなります。

AI駆動型データ管理

今日の NAS システムには、ストレージ機能を最適化および自動化するために、人工知能(AI)を活用したデータ管理機能が組み込まれています。

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