ワークロードとは
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ワークロードとは

最も一般的な意味でのワークロードとは、システムやネットワークがタスクを完了するかまたは特定の出力を生成するために、必要な時間とコンピューティング・リソースの量です。これは、特定の瞬間におけるすべてのユーザーとプロセスのシステム需要の合計を指します。

IT業界では、この用語は絶えず進化しており、特にクラウド・コンピューティングの台頭によりさまざまな意味を持つようになってきました。大まかに言うと、ITでは、ワークロードは、計算タスクまたは計算プロセス、およびタスクに必要なコンピューティング、ストレージ、メモリとネットワーク・リソースのことを指して用いられます。 

クラウド・コンピューティングのコンテキストでは、ワークロードとは、クラウドベースのリソースを消費するあらゆるサービス、アプリケーション、機能を指します。このクラウドのコンテキストでは、仮想マシン、データベース、アプリケーション、マイクロサービス、ノードなどがすべてワークロードとみなされます。 

ワークロードは、単一のアプリや計算の実行などの単純なタスクから、大規模なデータ分析の処理や相互接続された一連のアプリの実行などの複雑な操作まで多岐にわたります。ワークロードの管理はITリソースの最適化の重要な側面であり、システムのパフォーマンス、コスト、安定性、そして最終的には業務オペレーションの成功に直接影響します。

クラウド・コンピューティングと仮想化の普及に伴い、ワークロード管理はますます複雑になってきています1。 ハイブリッドクラウドマルチクラウド、パブリッククラウド・リソースの利用は、ワークロードが複数のプラットフォームやロケーションにまたがり、それぞれに固有の特性や管理要件があることを意味します。

コンピューティング環境とワークフローにまたがるワークロードの複雑な管理に対応するために、企業はバックエンドAPI、ワークロード自動化ソフトウェア、AIベースの予測分析、クラウド管理プラットフォーム(Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud Platform、IBM Cloud、Microsoft Azureなど)といった高度なツールに目を向けています。

また、企業は、費用、パフォーマンス、ライフサイクル、コンプライアンス、業務要件などの要素に基づいて、各ワークロードに最適な場所を決定する、ワークロード配置などの戦略も採用しています。これにより、各ワークロードが特定のニーズに最適な環境で実行されることを担保できます。

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ワークロードvsアプリケーション 

「ワークロード」という用語は、多くの場合「アプリケーション」と同じ意味で使用されます。ワークロードとアプリケーションはどちらも相互につながっており、ITインフラストラクチャーに不可欠な構成要素です(アプリケーションはワークロードとみなすことができます)が、その目的は異なります。  

アプリケーションとは、エンド・ユーザーが特定のタスクを実行し、特定のビジネス・ニーズを満たすのを助けるように設計されたプログラム、またはプログラムの集合です。ワークロードとは、これらのタスクの処理要求のことです。言いかえれば、ワークロードはアプリケーション(またはその一部)を強化しています。ただし、ワークロードは必ずしも単一のアプリに限定されるわけではないことに注意する必要があります。多くのワークロードは、アプリケーションにまたがってタスクを実行します。  

さらに、アプリケーションのライフサイクルは、ニーズが変化したり、高度なテクノロジーが登場したりすると変わる傾向があります。一方、ワークロードは、システム性能、ユーザートラフィック、リソース割り当て、処理ニーズなどのインフラ要因に基づいて変わります。  

ワークロードのタイプ

前述したように、ワークロードを使うということは、単一のアプリを実行するという単純なものから、接続されたアプリのエコシステムを実行するような高度なものまであり、その間にはさまざまなバリエーションがあります。したがって、ワークロードの導入を成功させるには、複数の種類のワークロードを使ったほうが良い場合があります。

ワークロードの主な種類には、次のようなものがあります。

トランザクション・ワークロード

トランザクション・ワークロードは、リアルタイムのユーザー操作を含み、通常、多数の短いオンライン・トランザクションの形をとります。トランザクション・ワークロードの導入には、複数の同時ユーザーを処理し、高速で一貫性のあるレスポンスを提供できるシステムが必要です。そのため、一般的にはeコマース・サイトで、購入、支払い、商品検索などを管理するために使用されています。

バッチ・ワークロード

バッチ・ワークロードは、一括で(多くの場合は順番に) 処理される非対話型ジョブです。バッチ・ワークロードは、かなりの処理能力を必要とするため、大量のデータを処理する環境(給与計算、請求書作成、気象モデリングなど)では一般的であり、対話型ワークロードやトランザクション・ワークロードとの干渉を防ぐため、オフピーク時に実行されることが多くなっています。 これらのワークロードは、タスクがより小さなサブタスクに分割され、複数のサーバーとプロセッサ間で同時に実行される並列処理を必要とする傾向があります。

分析ワークロード

分析ワークロードの特徴は、大規模なデータセットに対して実行される複雑なクエリです。小規模で単純なトランザクションを伴うトランザクション・ワークロードとは異なり、これらのワークロードは、多くの場合、人工知能と機械学習を活用して詳細なデータ分析を行い、動向、関係、インサイトを特定します。データ・スループットが高いため、分析ワークロードは一般的にデータウェアハウスやビッグデータ分析に使用されます。   

データベース・ワークロード

ほとんどの企業のアプリケーションは、機能するために基盤となるデータベースに依存しています。データベースのパフォーマンスが低いと、それを利用するアプリにボトルネックが発生します。データベース・ワークロードにより、このような問題へ対処しやすくなります。データベース・ワークロードは、データベースに依存する他のアプリの検索機能を高速化し、最適化するように微調整されています。また、チームはメモリ/CPU 使用率、入出力(I/O)スループット、クエリ実行率などの指標を分析することができます。 

ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)ワークロード

HPCワークロードでは、大きな計算能力を必要とする複雑なシミュレーションや数学的計算を実行します。たとえば、気象研究チームではエルニーニョに関連した気候パターンのシミュレーションを実行するかもしれません。バッチ・ワークロードと同様、HPCワークロードでは高レベルの並列処理を行う傾向があります。

テスト/開発ワークロード

チームでソフトウェア開発やテストのプロセスを行っているときは、多くの場合、コードのコンパイル、単体テストの実行、負荷テストの実行などのタスクを処理するテスト/開発ワークロードに依存しています。開発プロセス自体と同様に、テスト/開発ワークロードでは予測できない場合があり、開発者はニーズの変化に応じて、リソースを迅速にプロビジョニングまたはプロビジョニング解除する必要があります。

リアルタイム・ワークロード

これらのワークロードは、株取引アプリ、動画ストリーミング・サービス、スポーツくじプラットフォームなど、即時に結果を出すためにリアルタイムの超高速データ処理を必要とするIT環境ではしばしば重要な役割を果たします。

ハイブリッド・ワークロード

IT環境はますます複雑化しており、さまざまなタスクを同時に処理できるツールやリソースが必要になってきています。ここで、異なるワークロード・タイプの要素を組み合わせたハイブリッド・ワークロードが本当の意味での資産となります。

ハイブリッド・ワークロードの例としては、トランザクション・ワークロードで受信データを処理し、分析ワークロードでデータに対して複雑なクエリを実行し、バッチ・ワークロードを使ってレポートを生成するリアルタイム分析アプリケーションがあります。  

ワークロードの状態と使用パターン

過去10年間におけるクラウド・コンピューティングの出現は、SaaS (Software-as-a-Service)、コンテナ化された マイクロサービスベースのアプリケーション、仮想マシン(VM)、サーバーレスコンピューティングなど、新しいワークロードタイプの開発を促してきました。企業は、生成AI(GenAI)ワークロードのユースケースさえも模索しています。 2タイプに関係なく、ワークロードはその状態(ステートフルまたはステートレス)によって分類することもでき、クラウド・ワークロードの場合は使用パターン(静的または動的)によって分類することもできます。 

ステートフルなワークロード

ステートフルなワークロードは、セッション間で情報とステータスを保持する必要があるため、以前のやりとりのデータを「記憶」します。ステートフルなアプリケーションでは、ユーザーがログアウトして再度ログインすると、アプリはユーザーの情報とアクティビティを記憶します。セッション終了後もデータが残るデータベース・システムは、ステートフルなワークロードの好例です。

ステートレスなワークロード

これらのワークロードでは、ユーザーの次のセッションのためにユーザー・データを保存しません。各セッションは、新しいやりとりとして実行され、応答は以前のユーザー・データから独立しています。ステートレスなワークロードは、開発者が状態の情報を管理する必要がないため、アプリの設計を簡素化できますが、ユーザー・エクスペリエンスのパーソナライゼーションがより複雑になる可能性もあります。 

静的なワークロード

静的なワークロードは、長期間にわたって一貫したスケジュールで比較的一定量のコンピューティング・リソースを使用します。

動的なワークロード

動的なワークロードは、一時的なワークロードとも呼ばれ、コンピューティング需要に基づいてコンピューティング・リソースを調整、構成します。

オンプレミスのワークロードvsパブリッククラウドのワークロード

クラウド・コンピューティングの導入が進むにつれて、ワークロード管理の実際の使い方も同様に変化しています。現代では、企業は通常、従来のオンプレミスデータセンターとクラウド・インフラストラクチャーを組み合わせて利用し、ワークロードを効率的に管理しています。 オンプレミスのワークロードは、組織の施設内でローカルにホストされている組織独自のハードウェア・インフラストラクチャー上で実行されます。パブリッククラウド・ベースのワークロードは、サードパーティのクラウド・サービス・プロバイダー(CSP)によって管理されるサーバー上で実行され、オフサイト(多くの場合、世界中の複数の場所)に配置されます。どちらのインフラストラクチャーも、企業のワークロード管理に利点があります。 

オンプレミスのワークロードでは、以下を提供できます。

カスタマイズ

オンプレミスのソリューションでは、組織はワークロードを完全にコントロールできます。これには、すべてのハードウェアとソフトウェアを選択しカスタマイズする機能が含まれており、標準のクラウド製品では簡単に満たせないITニーズを持つ組織にとっては特に有益です。

セキュリティとコンプライアンス

オンプレミス・ソリューションでは、特に厳しいデータ主権要件と監査プロセスを必要とする業界や地域の組織に対して、優れたセキュリティとコンプライアンスの管理を提供できます。データは共有クラウド環境ではなくローカルに保存されるため、厳格なセキュリティ・プロトコルを適用し、各チーム・メンバーのデータ・アクセスを制御することが容易になります。

さらに、一部の規制では、データを特定の地理的境界内に保存する必要があるため、企業はストレージがオンプレミスのワークロードに準拠していることをより簡単に保証できます。

予測可能なコスト

オンプレミスのインフラストラクチャーにかかる初期費用はかなり高額になる可能性がありますが、オンサイトのワークロードを維持するための継続的なコストは比較的安定しており、計画も容易です。組織に投資資金があり、長期にわたって一貫したニーズが見込まれる場合、オンプレミスのワークロードは財務的に健全な選択となる可能性があります。 

高速実行

場合によっては、オンプレミスのワークロードのパフォーマンスがクラウドベースのワークロードよりも優れていることがあります。オンプレミスのインフラストラクチャーでは、データをローカル・ネットワークから出す必要がないため、処理時間が短縮され、パフォーマンスのボトルネックの原因となる遅延の問題が最小限に抑えられます。 

オフライン・アクセス

インターネット接続が不安定な場合や一時的に接続できない場合でも、オンサイトのワークロードにアクセスできます。オフライン・アプリの可用性は、インターネット・インフラストラクチャーが貧弱な地域の企業や、24時間年中無休のアプリ利用が必要な環境の企業にとって、大きな利点となります。

一方、パブリッククラウドベースのワークロードでは、以下を提供します。

従量課金制の料金体系

クラウド・ワークロードは通常、運用支出モデルに従い、ユーザーは使用したリソースに対してのみ料金を支払います。これにより、クラウド・コンピューティングは、特に中小企業やスタートアップにとっては、ワークロード管理利用へのコスト効率の良い接点となる可能性があります。 

拡張性

クラウド・プロバイダーは、オンデマンドで割り当ておよび割り当て解除できる膨大なリソースを備えているため、組織はリソース需要の変化に応じてワークロードを簡単に拡張できます。

サードパーティによるメンテナンス

組織は、独自のアプリケーションとデータの管理と保護に責任を負ってはいますが、クラウドベースのワークロードによって、多くのメンテナンス作業(ハードウェア修理、ソフトウェア・アップグレード、セキュリティ・パッチの適用など)はプロバイダーの手に委ねられています。  

災害復旧

クラウド・サービスには、多くの場合、サーバーやデータセンターに障害が発生した場合でも、ワークロードの可用性を確保するためのインフラストラクチャーの冗長性だけでなく、災害復旧機能も含まれています。

イノベーションの加速

クラウド・ワークロードはすばやく実行し調整できるため、イノベーションのスピードが速くなり、クラウドベースの企業には競争上の優位性がもたらされます。オンプレミスでは数週間から数カ月かかることもありますが、クラウド・プラットフォームでは組織は数分で新しいアプリやサービスを導入できます。

多くの企業では、オンプレミスとパブリッククラウドの両方のアーキテクチャの利点を組み合わせたプライベートクラウド(別名、企業 クラウド )を使うことを選択しています。

企業がオンプレミスかパブリッククラウドベースのワークロード(またはその2つを組み合わせたもの)のいずれを選択するかにかかわらず、ワークロードを効果的に使用・管理することで、組織の意思決定を改善し、企業のITインフラ全体の効率、パフォーマンス、コスト効率を上げることができます。 

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脚注

Enterprises expect continued shift from legacy on-premises to mix of modern venues(ibm.com外部へのリンク)、S&P Global Market Intelligence、2023年3月27日。

Market Analysis Perspective: Worldwide Enterprise Infrastructure Workloads 2023(ibm.com外部へのリンク)、IDC、2023年9月。