サービスとしてのハードウェア(HaaS)とは

デスクに座ってノートPCで作業しているオフィス・ワーカーを上から見た画像

執筆者

Mesh Flinders

Staff Writer

IBM Think

Ian Smalley

Staff Editor

IBM Think

サービスとしてのハードウェア(HaaS)とは

サービスとしてのハードウェア(HaaS)とは、企業がハードウェアを直接購入するのではなく、必要なハードウェアをマネージド・サービス・プロバイダー(MSP)からサブスクリプションでレンタルまたはリースする調達モデルです。

サブスクリプション・モデル(通常は変動価格制)を利用することで、企業は、コンピューター、ネットワーク機器、自動化ソリューションなど、他の方法では価格的に手が届かないようなさまざまな機器を導入できます。

企業(HaaS契約ではエンドユーザーと呼ばれる)がHaaSデバイスの使用に対して月額料金をMSPに支払うと、通常はMSPがオンプレミスでの設備の設置と保守、関連するアップグレードの提供、保証対応、契約終了に伴う解約および撤去を行います。

HaaSは、サービスとしてのインフラストラクチャー(IssS)やサービスとしてのプラットフォーム(PaaS)と並んで、中小企業が多額の初期費用を支払うことなく、大企業と同じ最先端のハードウェアにアクセスできる費用対効果の高い方法として普及しています。

HaaSとIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャー)の比較

サービスとしてのインフラストラクチャー(IaaS)は、サーバー、仮想マシン(VM)などのITインフラストラクチャーのリソースをインターネット経由、従量課金制で提供するサービス・モデルです。

HaaSと同様、IaaSモデルを使用すると、必要な最新のテクノロジーを実際に購入するよりもはるかに少ないコストで利用できます。また、同様のサービス・レベル契約(SLA)条件に基づいて運用され、提供しているリソースの保護、更新、保守については、サービス・プロバイダーが責任を負います。ただし、HaaS とは異なり、IaaSはコンピューティング・リソースをほぼすべてパブリックまたはプライベートクラウドを通じて提供し、オンプレミスに設置されることはほとんどありません。

HaaSとPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)の比較

サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)は、 アプリケーション開発のための完全なオンデマンドのクラウド・コンピューティング・プラットフォーム(ハードウェア、ソフトウェア、インフラストラクチャーなど)を組織に提供するサービス・モデルです。

HaaSと同様、PaaSモデルも、オンプレミスで独自のプラットフォームを構築・保守するコストや複雑さを伴わずに、VM、コンテナなど、あらゆる最新のアプリケーション開発テクノロジーおよび管理テクノロジーのメリットを享受する機会を提供します。

HaaS とは異なり、PaaS プロバイダーは、サーバー、ネットワーク、データベースなど、ユーザーが料金を支払うコンピューティング・リソースをプロバイダー自らのデータセンターでホストします。HaaSサービスモデルは幅広い目的で物理ハードウェアを提供しますが、PaaSは最新のアプリケーション開発環境をサポートするために必要なコンピューティング・リソースの提供のみに焦点を当てています。

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HaaSの仕組み

HaaSプロバイダーは、HaaS契約の条項においては通常「物理インフラストラクチャー」と呼ばれる、プロバイダーが所有するハードェア・コンピューティング・リソースの使用量を顧客に課金します。顧客は月額料金を支払い、多額の先行投資を行うことなくハードウェアを使用できます。

HaaSモデルで共有されるハードウェアの種類

組織は、HaaSモデルの下でさまざまな種類のハードウェアやコンポーネントを共有します。サービスとしてのハードウェアというモデルの汎用性により、CPUからサーバー、データセンター、高度な医療機器に至るまで、あらゆるものを使用する幅広いセクターのエンド・ユーザーを同一のプロバイダーが抱えることができます。以下にいくつかの例を示します。

デスクトップPCおよびノートPC

組織は、従業員が最新のデスクトップPCおよびノートPCを使用できるようにする必要がありますが、テクノロジーは常に変化しています。1年や2年で古くなってしまうかもしれないものに多額の先行投資をするのは無駄遣いかもしれません。HaaSモデルでは、組織は最新のデスクトップPCやノートPCをリースし、インストールとメンテナンスをアウトソーシングすることさえできます。テクノロジーが変化した場合、一部のHaaS契約においては、プロバイダーは古いモデルを新しいモデルと交換する必要があります。

ネットワーク・デバイス

デスクトップPCやノートPCと同様に、ルーター、スイッチ、その他のネットワーク関連機器も、高度に接続された先進的な職場環境を維持するうえで欠かせません。残念ながら、これらの機器も高価であり、しかも常に急速に進化し続けています。HaaSサービスモデルは、組織が従業員や顧客に対して常に最新のテクノロジーで接続できるようにする一方で、多額の先行投資や、新モデルの登場によって購入済み機器が陳腐化する可能性を回避するために役立ちます。

データ・ストレージ

クラウド・ソリューションは、その容易さと拡張性により現代のデータ・インフラストラクチャー環境において支配的ですが、一部の企業ではセキュリティー上の理由から、データをオンプレミスに保管する必要があります。特に人気の高いHaaSストレージ・ソリューションはネットワーク接続ストレージ (NAS)です。これは、顧客の敷地内にある中央サーバーで、ユーザーが Wi-Fi またはイーサネット・ケーブル経由で伝送制御プロトコル/インターネット・プロトコル(TCP/IP)ネットワークを通じてデータを保管およびアクセスできるようにするものです。他のほとんどのHaaSソリューションと同様に、NASは、オンプレミスのストレージ・ソリューションで、サーバー自体がユーザーのローカル・ネットワークまたは建物内に物理的に配置されています。

周辺機器

ノートPCやデスクトップPCといった主要なコンピューティング・デバイスが機能するには、プリンター、モニター、キーボード、マウス、スキャナーなど多くの周辺機器が必要です。HaaSモデルでは、これらのデバイスを前払いで購入するのではなく、リースします。これにより、組織は周辺機器の更新と保守についてサービス・プロバイダーの専門知識によるメリットが得られ、常に最新のモデルを使用できるようになります。

専用コンポーネントとデバイス

HaaS は、多くの場合、高度に専門化されたニーズや要件を持つ業種にサービスを提供します。例えばヘルスケア分野では、医療画像処理、電子カルテ(EHR)に使用される特殊な機器やデータ・ストレージを、HaaSフレームワークにより入手できます。HaaSモデルを使うと、医療従事者は多額の初期費用を支払うことなく、こうした専門的で高価な機器を利用できるようになります。

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HaaSの長所と短所

サービスとしてのハードウェア(HaaS)は、さまざまな規模、さまざまな業種の企業にとって必要不可欠なものです。この仕組みにより、企業はハードウェアの管理を適格なサードパーティに委託して、中核業務に専念できます。最近の報告書によると、世界のHaaS市場規模は2022年に700億米ドルに達し、今後5年間は年平均成長率(CAGR)25%で成長すると見込まれています。1

しかし、HaaS モデルには課題も伴います。ハードウェアのインストールと保守をサードパーティーと調整するのはコストがかかり、複雑さを伴います。また、規制の厳しい業種では、セキュリティーやコンプライアンスの問題が発生する可能性もあります。

多くの企業は、HaaSのメリットはそのリスクを上回ると判断しており、MSPはヘルスケアや法律といった専門的な業界の顧客を安心させるために、セキュリティーおよびコンプライアンス機能を常に向上させています。結局のところ、HaaSがビジネスに合っているかどうかは、長所と短所の両方を比較検討し、大局的なレベルで判断すべき問題です。ここでは、HaaSの長所と短所を詳しく見ていきます。

HaaSソリューションの長所

  • 資本的支出の削減:HaaSは、企業が重要なITインフラストラクチャーの機能を支えるハードウェアへの支出を削減できるようにすることで、資本的支出(CapEx)から事業運営費(OpEx)に資金を移動させてキャッシュフローを改善し、コア・ビジネス機能に対して資金をより効果的に活用できます。
 
  • 高度なサイバーセキュリティー保護の利用:最新のAllianz Risk Barometer Reportでは、あらゆる規模の企業において、業界をまたいでサイバーセキュリティーへの懸念が高まっていることが示されています。2 HaaSにより、組織はマネージド・サービス・プロバイダーの専門家が提供する定期的なパッチと更新を通じて、利用可能な最先端のサイバーセキュリティー対策を講じることができます。例えば、HaaSモデルでユーザーが従業員用に携帯電話をリースする場合、マネージド・サービス・プロバイダーはその携帯電話について、最新のサイバーセキュリティー保護のインストールと更新を行う責任を負います。このアプローチにより、サイバーセキュリティーに関する負担は、他の業務も行う社内ITエンジニアから、マネージド・サービス・プロバイダーが提供する専任のサイバーセキュリティー専門家に移ります。
  • 最先端テクノロジーの使用: 最新テクノロジーへの投資における最大の欠点の1つは、数年後には陳腐化する脅威です。HaaSを使用することで、組織はサブスクリプション・モデルを通じて最新かつ高度なツールを利用できるようになり、ツールが古くなっても、多くの場合は資本的支出を増加させることなく、簡単に交換できます。
  • 専門知識とサポートのアウトソーシング:現代の企業が頼りにしている最先端のソリューションの多くは、適切に機能するために専任のスペシャリストが必要です。HaaS契約により、企業はマネージド・サービス・プロバイダーが雇用する専門家に設置やサポート、保守を外注しながら、必要なデバイスの最新モデルによるメリットが得られます。

HaaSソリューションの短所

  • 運用の複雑さ:高度なハードウェアの設置と保守をサードパーティに外注できることはHaaSの利点の1つですが、不必要な複雑さが生じる可能性もあります。社内のITチームとMSPで働く技術者との間の調整には時間がかかる場合があります。ビジネス機能にとってクリティカルな特定の資産に障害が発生し、社内のITチームにそれを修復する能力がない場合、MSPの専門技術者が対応するまでダウンタイムが発生する可能性があります
  • 販売プロセスの混乱:ほとんどのHaaSソリューションは技術的に複雑であるため、顧客は、望ましい結果を得るために、あるコンポーネントを直接購入しつつ、別のコンポーネントはリースする必要に迫られることがよくあります。これは、長い販売サイクルや複雑な複雑な請求手続きにつながりかねません。リースしてきたHaaSソリューションが不要になったときに、購入したコンポーネントをどう扱うかといった問題が生じることは言うまでもありません。
  • データ・セキュリティー:MSPは、保管されているデータを危険にさらすことなくハードウェアを維持できると主張することがよくありますが、これは特定の業界では問題となる可能性があります。たとえば、法律や医療の分野では、データが侵害された場合、企業は高額な罰金を科されます。MSPが手順に従い、自社の運用マニュアルに従ってすべてを行ったとしても、その従業員が特定の業界に慣れていないゆえに犯した過ちにより、多額の罰金が科されたり、評判の低下につながったりする可能性があります。

HaaSのユースケース

サービスとしてのハードウェア(HaaS)は、さまざまな目的でさまざまな種類の企業で使用されています。ここでは、商品の配送に使用される車両の管理から、リモートワーカーの接続を維持する高度なビデオ会議機能の提供まで、最も一般的なユースケースをいくつか紹介します。

車両フリート

ピザの配達チェーンから航空会社に至るまで、さまざまな種類の企業がコア・ビジネスを運営するために車両フリートを利用しています。HaaSを利用することで、あらゆるメーカーやモデルの車両をMSPが所有し、サービスを提供するため、コックやパイロットなどのスペシャリストは訓練を受けた仕事に集中できるようになります。

オフィス環境

オフィス環境とその土台となるテクノロジーは常に進化していますが、ほとんどの企業は最新のツールや技術ソリューションを確実に揃えることを目指しているわけではありません。HaaSは、プリンター、コピー機、テレビ、その他オフィス空間に不可欠なハードウェアを企業がわずかな所有コストで揃えるためのクリティカルなソリューションです。

モバイル・ソリューション

現代の組織では、従業員を最新のモバイル・テクノロジーに常時接続しておく必要があり、そのためにHaaSモデルに注目することが多くなっています。HaaSモデルは、最新かつ最先端のスマートフォンをユーザーに提供し、企業のIT部門が更新とセキュリティーの確保を行う負担を軽減します。

インベントリー管理

HaaSプロバイダーは、製造地点から船、飛行機、トラックにより輸送し、顧客に届けるまで追跡および管理できるよう支援します。HaaSプロバイダーは、リアルタイムのステータス更新を提供するIoT(モノのインターネット)センサーや、在庫を最適化するAIツールなどの最新テクノロジーをサブスクリプション・ベースで活用することで、ユーザーの所有コストをなくします。

リモート通信デバイス

様々な都市、タイムゾーン、さらには大陸にオフィスを持つ企業にとって、従業員が最新のリモート会議ツールを使用してつながりを維持することは必要不可欠です。ZoomやMicrosoft TeamsなどのSaaSソリューションは、依然としてWebカメラ、ヘッドセット、スクリーンなどのハードウェアなしでは利用できません。HaaSプロバイダーは、クライアントが最新の通信接続デバイスを確実に利用でき、デバイスがクライアントのプロセスに安全に統合されるようにします。

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脚注

1. HaaS market report (2025 edition), Cognitive Market Research, May 2025

2. 13th annual Allianz Risk Barometer (2024), Allianz, January 2024