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CRMにおけるAI

2024年7月11日

共同執筆者

Teaganne Finn

Content Writer

IBM Consulting

Amanda Downie

Inbound Content Lead, AI Productivity & IBM Consulting

CRMにおけるAI

人工知能(AI)顧客関係管理(CRM)に組み込むことで、組織は顧客情報を簡単に整理、管理してビジネス・プロセスを自動化できます。

AIの予測機能によりワークフロー機能が強化され、組織は顧客とのよりパーソナライズされたコミュニケーションを構築できるようになります。

CRMでAIが効果的に使用されるようにするには、組織はデータの正確性とプライバシー対策を実施する必要があります。すべての顧客関係と顧客エンゲージメントの基盤は、組織のセキュリティーと組織に対する顧客の信頼に依存します。

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CRMにおけるAIの台頭

AIを活用したツールとCRMシステムを組み合わせることで、顧客とのやり取りにデータ主導のアプローチが生まれ、消費者と企業の両方にとってのやり取りが改善されます。CRMソフトウェアにAIと オートメーションを統合すると、組織は顧客の行動、ニーズ、好みなど、重要な要素に関するより深い洞察を得て、顧客データを次のレベルに引き上げることができます。

しかし、ここまでの道のりはどのようなものだったのでしょうか。顧客エンゲージメントはCRMの核心部分です。テクノロジーが進歩するにつれて、顧客のニーズは進化してきました。CRMソフトウェア・ベンダーはAIの推進者でしたが、AIが人気を博し、企業と顧客のやり取りに革命を起こし始めたのはごく最近のことです。

CRMシステムはもともと、経理部門が保管および使用する顧客情報と顧客とのやり取りのデータベースでした。時間が経つにつれて、システムにはマーケティング、営業チーム、顧客サポートなど、他の部門向けの機能やツールがさらに組み込まれるようになりました。しかし、ビジネスが成長するにつれて、顧客の期待も高まり、顧客維持の必要性も高まりました。

CRMプラットフォームによって生成される膨大な量のデータは従来のシステムでは処理しきれなくなり、新しいソリューションを見つける必要がありました。ここで、生成AIツールが登場し、今日のCRMシステムの動作方法を変えました。

今日の企業がAIおよびCRMパートナーを探す場合、IBM CRM(IBM watsonx Assistant)をはじめとして、Salesforce CRM(Einstein GPT)、Hubspot CRM(ChatSpot)、Freshworks(Freddy AI)、Zoho CRM(Zia)、Pipedrive CRM(AI Sales Assistant)など、さまざまな選択肢があります。

実用的な会議概要、Eメールのカスタム・テンプレート、自動チケット・ルーティングなどの新しいAIベースのツールにより、CRMプロセスが変化しました。インテリジェント通知の使用などの他のテクノロジー・ツールは、販売パイプラインに関する洞察を提供します。顧客体験は現在CRMの核心であり、顧客が期待するパーソナライズされたタイムリーなやり取りを実現するために、リアルタイムのデータ・インサイトに依存しています。

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顧客体験における生成AI

IBM Institute for Business Valueは、サイバーセキュリティーにおける生成AIから顧客体験まで、さまざまなトピックを扱った「CEO向け生成AIガイド」という、調査に基づいた一連のガイドを公開しました。IBM Institute for Business Valueは、すべてのリーダーが知っておくべき3つのことと、それに対して何ができるかを特定しました。

1. 生成AIは人生を変えるほどのインパクトのあるエクスペリエンスです。

営業、マーケティング、サービス機能など、ビジネスのあらゆる領域からの顧客データを使用することで、顧客体験をパーソナライズし、CRMデータを最大限に活用できます。

経営者にできること:AIができることの使用に関する目標を高く設定します。生成AIはすべての企業で利用される可能性があります。結局のところ、CEOがビジネス・ニーズに合わせてこの機能をどのように使用するかを選択することが重要になります。設計者が生成AIを使用してコンテンツ作成を強化し、AIテクノロジーを活用できるようにします。生成AIを使用して、ユースケース固有のガイドラインを確立することで物事をシンプルにし、自社所有データに投資することで、オープン・モデルを補完します。

2. 顧客の信頼は新たな「通貨」です。

生成AIが顧客に提供できるものは、企業自体からの信頼の基盤に依存します。IBM Institute for Business Valueは、「企業経営者の80%が、生成AI導入の過程で説明可能性、倫理、偏見、信頼性が大きな懸念事項であると考えている」ことを明らかにしました。1

経営者にできること:CEOは共感を持ってリーダーシップを発揮し、倫理的な取り組みを優先する必要があります。顧客の懸念に特化した生成AI倫理を開発することで顧客との信頼関係を構築し、顧客満足度の確保に役立つ信頼できる体験を提供します。最初から生成AIをユーザー・エクスペリエンスに組み込み、マーケティング・キャンペーンをパーソナライズし、顧客に直接的に働きかけることで、信頼をさらに深めていきます。

3. 生成AIは、従業員体験の再発明に向けた扉を開きます。

平均して、経営幹部の87%は、生成AIによって作業を置き換えるのではなく、強化することを期待しています。生成AIでは、これまで機械が処理するには複雑すぎたタスクを自動化できます。人間と機械のパートナーシップを成功させることは、AIツールを導入する際の変化で組織が直面する最も大きな課題です。CEOは、AIをバリュー・チェーンのどこに取り入れるかを慎重に検討し、従業員への影響とウェルビーイングに関するすべての意思決定に照らして、生成AIを考慮する必要があります。

経営者にできること:最初から人間と機械が上手く連携できるようにし、どちらか一方が単独で実現できる以上の価値を生み出せるようにします。生成AIが従業員の効率と生産性をどのように向上できるかについて前向きなメッセージを発信し、良い印象を与えましょう。AIツール、インテリジェント・ワークフロー、ハイブリッドクラウド・プラットフォームを統合することで、従業員が最高レベルのパフォーマンスを発揮できるようにし、AI導入計画に従業員を参加させます。

CRMにおけるAIのメリット

強化されたレポートと予測分析

CRMにおけるAIの最も優れた機能の1つは、予測分析です。AI CRMソリューションには、履歴データと顧客の行動を分析する強化されたデータ分析機能が備わっています。これらの機能は、組織がデータの洞察、売上予測、ターゲットとする人口統計の合理化を行うのに役立ちます。

また、組織に統合されたインテリジェンスを提供し、データ分析をどのように収集して使用するかについての統一された意見も提供します。予測ツールは、顧客の解約率を管理し、販売プロセスに必要な変更を特定するのにも役立ちます。

さらなるパーソナライゼーション。

AIを使うことにより、高度にパーソナライズされたエクスペリエンスによって潜在顧客を引き付けることができます。また、アルゴリズムを通じて顧客データを分析し、顧客のニーズに基づいて個別化された製品やサービスを推奨することも可能です。

パーソナライズされたエクスペリエンスは、営業担当者にとって重要なセールス・ポイントとなり、大きな販売チャンスがもたらされます。このアプローチは、アプリ内、オンライン、SNS、または対面など、あらゆる販売経路で実行できます。

オートメーションの強化

AIとオートメーションは別々のツールですが、どちらもお互いに非常に価値があります。チャットボットやバーチャル・アシスタントなどのAIを活用したオートメーション・ツールは、日常的な顧客からの問い合わせに、24時間体制で対応します。

また、AI搭載のチャットボットなどのオートメーション・ツールを使用すると、スピーディーに顧客に対応しながら、従業員が困難なタスクに集中する時間を増やすことができます。

センチメント分析の重視

SNSの時代が到来し、AIは、顧客レビューのためのテキストとSNSチャネルの分析の面でも貢献します。これらのチャネルをリアルタイムで監視することで、企業は必要に応じて迅速にフォローアップを行うことができ、長期的な顧客維持に活用できます。

リードのスコアリングを改善

チームは、AIが分析したリード・スコアリングをもとに、リードをより効率的に優先順位付けし、コンバージョンの可能性を判断することができます。人口統計や行動などの要素は、営業担当者が最良のリードをターゲットにするのに役立ち、全体的な売上とアップセルを増加させます。さらに、AIはチームに代わってリードをセグメント化し、キャンペーンを管理するのにも役立ちます。

非構造化データの管理

CRMシステムは、複数の異なる通信チャネルから送信される非構造化データや複雑な企業データなど、膨大な量のデータを処理します。

CRMにおけるAIは、自然言語処理(NLP)や機械学習(ML)などのツールを使用して、他の方法では活用されないデータを意味のある方法で整理および並べ替えることができます。また、収集されたデータに基づいて、計画をスピーディーに実行に移すこともできます。

CRMにおけるAIの課題

CRMにAIを導入するには、課題が伴います。IBM Institute for Business Valueの調査によると、経営幹部の78%が自社の組織には生成AIを顧客や従業員のエクスペリエンスにまで拡大する用意があると回答しているものの、ほとんどの経営幹部が一貫した品質を確保する方法をまだ模索している状態です。半数以上(56%)の経営者は、生成AIによる成果をレビューして問題を解決するためのプロセスが整っていないと報告しています。こうした問題には次のものがあります。

時間:CRMシステムにAIを初めて導入する場合、組織の規模やビジネスの具体的なニーズに応じて時間がかかる場合があります。導入をスムーズに進めるには、効果的なチーム間のやり取りが欠かせません。もう一つの課題はコストです。CRMシステムに投入するAIが複雑になるほど、企業がそのテクノロジーの導入にかかるコストも増える可能性があります。

サイバーセキュリティー:質の高い顧客サービスを提供するには、外部データと内部データを保持する必要があります。これらの多くは機密性の高い顧客個人データであり、安全に保管され、法律に従ってのみ収集されなければなりません。また、顧客は、自分のデータが収集された本来の目的に沿って使用および保存されていることを理解していることも重要です。

AIと人間によるサービスとのバランス:AIが導入されたCRMは、高度に自動化され、人間とのつながりが少なくなる可能性があります。すると、顧客は会社とのつながりが失われたと感じ、従来の顧客サービス部門との個人的なやりとりが恋しくなるかもしれません。したがって、ロボットが行うのは情報提供のみで、サポートは提供しないというメッセージを顧客に伝えることが重要です。

CRMにおけるAIのユースケースの例

CRMにおけるAIのユースケースは多岐にわたり、それはビジネスの目標に応じて異なります。重要なものには次のものがあります。

ビジネス・インテリジェンス:AIツールは、販売、マーケティング、顧客サービスなど、ビジネスのさまざまな分野に新しいアプローチを提供します。AIは顧客データの分析と洞察を提供し、よりスマートな長期的意思決定と顧客ニーズへの対応に役立ちます。

カスタマー・サービス:AIチャットボットなどのAIツールを企業のカスタマー・サービス・ストラテジーに組み込むと、お問い合わせに対して迅速かつ正確に回答できます。AI搭載のチャットボットは、顧客からのお問い合わせに24時間365日対応することでカスタマー・サービスを強化できます。

データ管理:CRMにおけるAIにより、データの入力、クリーニング、エンリッチメントなどの段階的なプロセスが自動化され、顧客データがクリーンかつ正確になります。さらに、AIを活用したCRMは、ビジネス全体にわたるすべてのAIプロセスの正確なデータ基盤を維持するのに役立ちます。

IT効率:CRMシステムでは、AIとオートメーションを組み合わせることで、日常的なタスクを自動化し、プロセスを簡素化できます。AIを使用するIT部門は、チケットのルーティングや診断などの日常的なタスクを自動化できます。

マーケティングのパーソナライゼーション:AIを搭載したCRMシステムは、購入履歴やエンゲージメントなどの受信データ・ポイントに基づいてマーケティング資料をパーソナライズし、顧客をセグメント化できます。

リード管理:リード・スコアリングにAIツールを使用することで、企業はCRMシステム内でリードの選別とスコアリングのプロセスを自動化できます。また、機械学習モデルは、リード特性や行動に関するより詳細な情報を収集し、アウトリーチ・アプローチをさらにカスタマイズすることができます。

予測顧客分析:AIがデータでできる機能は、特にCRMシステムのAIに関しては広範囲にわたります。AIを使用すると、企業は履歴データを使用して顧客の行動を予測し、顧客のニーズを予測できます。

プロセスの最適化:プロセスを最適化するためにCRMシステムにAIを導入すると、オペレーションをより良い方向へと誘導し、気付かなかった可能性のある非効率性を発見するのに役立ちます。企業はAIを使用してワークフローを分析し、システムのボトルネックを特定することもできます。

販売の最適化:AIテクノロジーは、予測分析を使用してリードを獲得し、価値の高い見込み客を優先することで、企業がCRM販売モジュールを改善するのに役立ちます。自動化されたワークフローは販売プロセスを効率化し、予測分析は顧客行動の予測に役立ちます。

CRMにおけるAIの未来

ハイパーパーソナライゼーションが今や高い基準として設定されているため、顧客体験はますます向上させていく必要があるでしょう。どの企業もデジタル製品またはサービスを販売しており、どのデジタル体験が最もパーソナライズされ、最も消費者の注目を集めるかを競っています。

ここで生成AIの真価が発揮されます。顧客がパーソナライズされたセール品のオファー、推奨事項の表示、比類のないカスタマー・サービスを要求する中、こうした期待にしっかりと応えていきます。AIテクノロジーが進化するにつれ、企業はCRMプロセスを強化できる、より高度なAI機能およびAIを活用したツールが登場することを期待できるでしょう。

音声認識や拡張現実など、さらに多くのAIツールが開発され続ける中、AIを導入するCRMには明るい展望が開けています。AIは、企業が顧客と関わる方法に革命をもたらし、今後も引き続き革命をもたらしていくことにより、顧客体験に対する世界の認識を進化させていくでしょう。CRMプロセスにAIを適応させ、これを組み込む組織は、常に時代の先頭に立ち、顧客関係管理の分野で成功するための準備を整えています。

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脚注

¹ 「IBM Institute for Business Value」、『CEOのための生成AI活用ガイド』、IBM。