プロジェクトマネジメント

プロジェクト・マネージャーに問われる「成長力」

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執筆者:武井 浩樹

Executive Project Manager, Global Business Services Project Management Center of Excellence Leader PgMP

優秀なプロジェクト・マネージャー(以下PM)の育成は、多くの企業にとって喫緊の課題であると言われています。企業を取り巻くビジネス環境の変化はますます激しくなっており、生き残りを賭けて企業は変革やイノベーションを起こすためのプロジェクトまたはプログラムを立ち上げますが、当初の目的を達成できずに終わるプロジェクトも数多くあり、その成否が企業の競争力や将来を決定付けるためです。

特にIBMは、サービス・ビジネスをプロジェクトまたはプログラムという形でお客様に提供しており、個々のプロジェクトの成否はお客様へ提供するサービスの成否そのものですし、当然ながらIBM自身のビジネスにダイレクトに影響します。そのため、一人ひとりのPMの能力向上(成長)は、今も昔も重要なビジネス課題であり続けています。

著者:武井 浩樹

ポスト・モダンPM時代を生き抜くために

プロジェクト・マネジメントという言葉が広く一般に知られるようになる前からも、プロジェクト(そのように呼んだかどうかは別として)を適切にマネジメントすることの重要性は認識されていました。しかしながらPMの能力は、いわゆるKKD(勘・経験・度胸)によるところが大きいとされ、PMが成長するためには、とにかく経験を積むという手法が一般的でした。

その後、PMBoKに代表されるプロジェクト・マネジメントに関する知識体系が整理され、適切なPM手法への理解と実践が、PMの能力向上にも不可欠なものとなりました(モダンPM時代)。このPM知識体系は、時代とともにより洗練され、また、新たな知識が付け加えられて発展を続けていますが、一方で近年、この伝統的なPM知識体系だけでは不足だと叫ばれ、いわゆるポスト・モダンPMの時代に我々はいるのだという認識を持つことが必要と感じています。

例えば、ますます複雑化するプロジェクトに対し様々な複雑化要因(Complex Factor)を適切にマネージする、企業にとってより大きな成果(ベネフィット)を産むために全体をプログラムとしてマネージする、変化に対するスピードを求めてアジャイル・アプローチを適用する等々です。これらは、ポスト・モダンPM時代に求められる新たな知識の例ですが、これらの例からも見てとれるように、明らかにPMに求められるスキルは増大/多様化しています。PMとして成長していくためには、この状況に尻込みすることなく、積極的に新しいことを吸収し、実践を通じて自分のものとしていく勇気と決意が必要であると感じています。

PMを生業とする人々は、その職業特性からか、手堅く保守的な人が多いのも確かですが、こと自分自身の成長に関しては、アグレッシブで挑戦的であるべきですし、そのような自発行動が強く求められている時代にいると思います。

より重要性を増すプロジェクト・マネージャーの役割

なぜこれほどPMに求められるスキルが増大し多様化しているのでしょう?
キーワードは不確実さ(Uncertainty)と曖昧さ(Ambiguity)でしょう。先にあげたプログラム・マネジメントは、不確実さや曖昧さがある環境下で、いかに個々のプロジェクトをマネージするかが重要なマネジメント視点と位置づけられています。アジャイル・アプローチにしても、不確実さや曖昧さをいかに克服するかという視点から発展してきました。

ビジネス環境の変化が激しい中で、いかに不確実さや曖昧さに対峙しながら成果をあげていくかが求められています。不確実さや曖昧さがある中で物事を進めていく訳ですから、PMに求められる能力においても、単なる管理(狭義のマネジメント)能力で十分なはずはなく、進む方向性を示しそこに向けて関係する人々を動かす、いわゆるリーダーシップ能力が必要であり、その重要性が一層高まっているといえるでしょう。

また、進む方向性が正しいこと(ビジネス戦略との整合)を判断・評価し、多様なステークホルダーに対して説明責任を果たすことのできる能力も不可欠です。これら2つの能力の重要性は、PMIが提唱するタレント・トライアングル(Talent Triangle)でも言及されています。このような能力を発揮することが、今の時代において経営陣がPMに求める期待であると言えます。PMとして自らの成長を考えるとき、この2つの能力の重要性は強く意識しておく必要があると感じています。また、企業が必要とする優秀なPMとは、これら2つに加えてPMとしての基本手法を体得・発揮できる基礎能力も含めた3つの能力がバランス良く、かつ、高いレベルにあることであると言えます。

一人ひとりのプロジェクト・マネージャーの成長を支える

「プロジェクト・マネージャーは孤独である」とよく言われます。プロジェクト遂行と結果に責任を持ち、多くの制約がある中で数々の困難な状況でも判断・決断を下していかなければならない状況を指して言われることですが、ともすると、成長する上でも同様かもしれません。現在のようにマトリックス型組織でプロジェクト・ベースで仕事を遂行している環境下では、昔のような上司⇔部下、または、先輩⇔後輩による徒弟関係も薄れがちであり、PMは一匹狼な状況になりがちです。

これを打破するためには、現場PMがお互いの経験を共有できる研修の実施や、組織を超えたPM同士によるメンタリングの実施、PMとしてキャリアアップしていくためのロードマップの明確化など、組織として一人ひとりのPMの成長を支える仕組みを様々な形で多層的に構築することも重要です。他にも、プロジェクト・マネジメントに関する外部団体活動への参加、社内外への論文発表など、PMとして一つ上の段階に成長するための機会は様々あり、これら機会の活用と自身のPM実践経験が組み合わさることで、PMとして成長し続けていくことができるのだと思います。私も担当するPMCoE(Project Management Center of Excellence)活動を通じてその一翼を担い、PM一人ひとりの成長に貢献したいと思っています。

結局のところ、優秀なPMを育成するのは、一人ひとりのPM自身の成長する意欲・意志と、それを支える組織としてのサポート体制が重要です。ポスト・モダンPM時代において、PMの役割が重要性を増す中、一人ひとりのPMの成長がますます求められています。

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