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変わる男性の育児休業取得とその効果 ~男性育休が「当たり前」となる組織を目指して~

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男性育休に関する法改正のポイントと日本IBMの実績(2022年)

令和3年6月、厚生労働省により育児・介護休業法が改正されました。令和4年10月1日には「子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設」や「育児休業の分割取得」といった新たな育児休業の制度が施行され、日本社会全体において男性による育児休業(男性育休)の取得を促進するための動きが加速しつつあります。

日本IBMグループでも、IBM独自の制度である育児特別休暇が、2021年の導入以降徐々に認知度を高め、申請プロセスの簡略化と、有給にしたことも奏功して2022年の男性育休取得率向上に大きく貢献しています。

(参考)日本IBMにおける男性の育児休業取得実績

2021年=44%
2022年=78%
(IBM人事データより)

国の制度である育児休職についても、2022年の平均取得期間が4ヶ月を超えて2021年の倍以上に延び、男性も長期で育休を取る文化が徐々に定着しつつあることを示唆しています。また、2022年10月には、育児・介護休業法の改正に合わせて「出生時育児休業(産後パパ育休)」を導入。一般には男性向けの休業制度とされていますが、IBMではLGBTQ+を考慮し、「自身の配偶者/パートナーが出産する場合」には、性別を問わず利用できるものとしています。

本記事では、実際に育休を取得した男性社員へのインタビューを通して、男性育休を取り巻く環境の最新状況や変わりゆく意識、そして社員の育休取得を支援する企業や組織の在り方・課題とその対応について考えてみたいと思います。

田中布美
筆者:田中布美
IBMコンサルティング事業本部, ハイブリッドクラウドサービス
DXパートナーシップ推進担当マネージャー

インタビューを受けていただいた皆さん(以下、本文では敬称略)

内海洋輔
内海洋輔さん
2000年 日本IBM入社。アーキテクトとしてサービスビジネスに従事。お客様プロジェクトを担当する傍ら、旧制度の時代に第一子・第二子の2回に渡り育休を取得。
佐々木敦守
佐々木敦守さん
2006年 日本IBM入社。クラウドソリューションリーダーとしてクラウド案件のソリューショニングとアーキテクチャ策定に従事。自身の育休経験を元に、管理職として配下メンバーの取得も支援。
松坂祐輔
松坂祐輔さん
2015年 日本IBM入社。ITスペシャリストとしてサービスビジネスに従事し、お客様プロジェクトを担当。昨年の第一子誕生を機に、2回に分割して育児休業を取得。

インタビュアー:筆者および鈴村敏央さん(IBMコンサルティング事業本部)
ともに、普段は管理職の立場で配下メンバーの育休取得を支援。

男性育休を取り巻く環境と意識の変化

- はじめに、皆さんが育休を取得された背景やきっかけを教えてください。

(内海)出産を前に、「パートナーは出産する女性の立場で命を懸けている中で、男性の自分は何をすべきか?」と考えました。両親を頼るのも難しい状況だったため、パートナーと一緒に家事・育児が出来るよう、第一子・第二子ともに2~4か月の休職を取得しました。

(佐々木)今年、第三子で初めて3週間の育休を取得しました。上の子の時には育休取得という発想自体がなかったのですが、ネットで検索したら2020年のIBM記事を発見!同じ会社の男性社員の経験談を見て、「私もいける!」と背中を押されました。

(松坂)昨年、第一子が誕生しました。分割、かつ有給で取得できるとのことで、IBMの独自プログラムによる短期の育休取得を決めました。担当プロジェクトの状況もふまえて、出産の3か月後と更に半年後に14日間ずつ取得をしました。

- 実際に取得してみて、家族や友人など周囲の反応はいかがでしたか?

(内海)パートナーは、「取得するのが当たり前だよね、他に誰がやるの」という反応でした。夜間のミルクやおむつ替え、寝かしつけなどを担当し、最初から育児を一緒にスタートすることで育児スキルの遅れも防げました。パートナーの両親は「娘が頑張ればいい、そこまでして仕事を続けるの?」という反応でしたが、職場では、当時私は現場リーダーだったので、自ら取得することでチームメンバーに新しい働き方をメッセージできたと思います。

(佐々木)主に上の子の送り迎え・お風呂・ごはんを担当しています。リモートワークでも育児のしやすさはありますが、育休を取得すると「仕事中だと頼みづらい」という思いをパートナーが持つ必要もなく、きちんと負担軽減ができます。同世代の友人達はあまり育休を取得しておらず、日本社会全体でみるとまだ浸透していないという感覚で、珍しいねという反応も受けますね。

(松坂)朝は私が担当しています。リモートワークということもあり、普段から家事・育児をすることは当たり前でしたが、育休中はパートナーの両親とも一緒に育児ができ、「なんでもできるのね」と褒めてもらう場面もありました。私は年齢的にまだ周りに育児経験者が少なく、自分が先駆者として、友人達に育休のメリットを伝えていきたいですね。

- 皆さん、お手伝いモードではなく、しっかりパートナーと二人三脚で子育てしていますね!自分たちの世代は、自分も子ども側にカウントされて、負荷を上げる側でした。ご両親世代と意識の違いがあったり、世の中の浸透度もまだこれからですが、松坂さんの世代ではぜひ男性育休を浸透させていきたいですね。

男性育休を推進する組織や管理職の意識と取り組み

働き方の多様化で変わる男性の育休取得とその効果

- 新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)を機にリモートワークが普及し、働き方の多様化が加速していますが、育休に対する考え方の変化やメリットを感じたことはありますか?

(内海)ちょうど業務負荷の高い時期でもあったので、育休取得が仕事の仕方や自身のキャリアについて考え直す良い転機になりました。また、コロナ渦に登園できず、自宅で子どもの面倒を見ることになった時も、事前に家事・育児をしていたことで、スムーズに対応できたというメリットがありました。

(佐々木)育休取得期間中はちょうど第七波が来ており、保育園もたびたび登園自粛や臨時休園となり、上2人も自宅保育を余儀なくされたため、育休のメリットは大きかったです。リモートワークも共働きの子育て世帯にとっては本当に助かるので、働き方の多様化としてハイブリッド・ワークプレイスはぜひ続けてほしいと思います。

(松坂)育休期間が短いとどこまで家事・育児が出来るか不安でしたが、リモートワークをうまく活かして乗り切れました。寝返りやハイハイ期には、目を離すとすぐにどこかに行ってしまうので保護者一人では大変ですし、育休とリモートワークとの組み合わせで家事や育児ができたことのメリットは大きかったと思います。

- 昨今のワークスタイルの変化は、育休との相乗効果を生んでいるということですね!

育休取得を後押しする「所属長の最初の一言」

- 育休取得を所属長に話すにあたり、心理的な障壁などを感じることはありましたか?例えば昇進・昇給に響くのではないかといった不安はありましたか?

内海洋輔さんの育児の様子(内海)仕事で周りから頼りにされていることを自身でも感じていたので、プロジェクトやお客様へご迷惑をかけないよう、調整は早くから始めました。

評価への影響が気になりましたが、所属長が「休職により評価を下げることはない、量ではなく質で判断するので大丈夫」と言ってくれて、安心することができました。

- IBMでは育休を取得することによって評価や昇進・昇給に影響が及ぶことはないですが、所属長がその点をきちんと伝えて安心してもらうことが重要ですね。

(内海)所属長との信頼関係は大切ですね。取得を考えているメンバーには所属長の方から声をかけたり、休職の間もチームとして仕事を回せる工夫をしてもらえると、取得する側も安心感を持てると思います。

(松坂)パートナーである妻の妊娠が判明したことを所属長に報告したところ、第一声が「じゃあ育休考えるよね?」でした。ごくごく自然に言われたので、むしろ安心して育休を考えることができましたし、評価や昇進昇給における不安要素も一切なかったですね。

- 松坂さんの当時の所属長は私でしたが、組織内に過去に育休を取得した男性が数名いましたし、パートナーがおめでた=育休について聞くというのは所属長としても自然な感覚でしたね。

佐々木敦守さんの育児の様子(佐々木)私の所属部門では男性の育休経験者が周りにいませんでした。管理職である自身が取得することで、これから育休を検討するメンバーにポジティブな影響を与えられると考えました。

営業職だったので給与面を考慮し、短期の分割取得をすることでプロジェクトへの影響も抑えられました。自分に最適な取得方法を工夫し、調整ができれば問題もないと思います。

- 管理職が自ら取得するのはとても良いロールモデルになりますね。管理職は、メンバーの皆さんが育休について「スムーズに話せるような雰囲気作り」や「ブランクを気にせずに戻れるチーム」を普段から心がけることが重要ということですね。

これから育休取得を検討する皆さんへのメッセージ

- 最後に、これから育休を取得しようと考えている人やその周囲の皆さんへアドバイスやメッセージを頂けますか。

(内海)人生に何度もない貴重な機会だから取ってみよう!と伝えたいです。子どもと一緒にいられる時間は短く、すぐに大きくなってしまいます。仕事や金銭面など色々と調整は必要ですが、自分も主体的に動いて育児に慣れることは重要です。所属長の方は、ぜひメンバーの育休取得を支援してあげてほしいと思います。

(佐々木)コロナでリモートワークが定着したことで、我が家では「お父さんは家にいるもの」がスタンダードになっています。「リモートワークなので育休を取らなくてもいけるかも」と思う人もいるかもしれませんが、取得することで仕事とのメリハリも保てます。個人的には、男性も1か月は育休の取得を必須とし、逆に取得しないことを例外にするのもいいのでは?!と思います。

松坂祐輔さんの育児の様子(松坂)私は純粋に娘と一緒にいられたことが良かった!と思います。周りの男性社員にも「ぜひ取ってください!」と伝えたいですし、30歳になった私の周りでは「取るのは当たり前」という考えが定着しています。普段から仕事の状況を鑑み、早めの調整と相談をすることで、ぜひ皆さんにも積極的に育休を取得してもらいたいと思います。

男性育休が「当たり前」となる社会を目指して

今回のインタビューを通じて、皆さんの「家事・育児はパートナーと一緒に行うもの」という意識が当たり前に浸透していることがとても印象的でした。

男性育休を取り巻く環境は、法改正や企業の独自制度、そして働き方の多様化も相まって、家庭の状況や仕事との兼ね合いで「自分に合った育休制度の利用」ができるようになってきていると思います。早い段階からパートナーと相談を始め、会社や組織(所属長)と一緒に準備を進めることで、誰もが当たり前に育休を取得する環境を実現することができます。

そして重要なのは、企業や組織としての風土づくりです。

「取るのが当たり前」というメッセージをトップダウンで継続的に発信をしていくとともに、取得する社員と直接接する管理職の意識や振る舞いが、企業レベルで男性育休を推進する風土を創るためのキーになると思います。

社員から相談を受けた際の「所属長の最初の一言」は、社員が安心して育休を取得するためのきっかけになり、また社員の休職や復職に「常にReady」な組織でいることが、管理職として実践すべき重要なポイントになると感じました。

多くの企業の、特に男性の管理職は、年代的に「自分自身は育休取得を考えたことがない」という方も多いかもしれません。しかし、これらを実践する上で、男性であれ女性であれ管理職自身の経験有無は関係ありません。男性も女性も一緒に家事・育児をしていくものという意識を管理職自身が持ったうえで、育休を単なる「制度」と捉えるのではなく、社員が輝ける組織であるために必要なことと捉えて、社員との信頼関係構築や、育休の取得を支援していくことが重要と思います。

日本の各企業が、100%の人が当たり前に育休を取得でき、社員一人ひとりが輝ける組織であることを目指して、私達はこれからも社員の思いに耳を傾けながら、情報発信を続けていきたいと思います。


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