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SAP S/4HANA のインフラの切り札!「 インテル® Optane™ パーシステント・メモリー on IBM Cloud 」に迫る

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 DX ( デジタルトランスフォーメーション ) の取り組みが活発になる中、既存の SAP ERP ユーザーだけでなく、基幹システムを自社開発 / 構築していた企業もSAP S/4HANA を導入し、業務プロセスの標準化、最適化を進め、企業システムの「 デジタルコア 」を強化しています。

 SAP S/4HANA は、従来の基幹系システムのコンセプトとは違い、「大量のオンライントランザクション処理を実行しながら、リアルタイム分析/レポーティングを高速実行する」次世代型の基幹系システムです。

 この 2 つの異なるタイプの処理を 1 つのシステムで実現可能にしたのが、インメモリーデータベース「 SAP HANA 」のテクノロジーです一方でメモリー利用による高速性能とインフラストラクチャーのコストのバランスに悩む企業も少なくありません。今回はそのような悩みを解決するための新しいテクノロジー「 インテル® Optane™ パーシステント・メモリー 」について、その特徴とSAP S/4HANA で利用するメリット、そして、IBM Cloud で提供するサービスや顧客システム動向について、IBM さんとインテル 石橋様、SAP ジャパン 椛田 ( かばた ) 様に語っていただきました

 

―― まず、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーの特徴について教えてください

( Intel 石橋様 インテル® Optane™ パーシステント・メモリーはこちらの IBM ソリューションブログで紹介させていただいた通り DIMM の形状をした新しい記憶デバイスです。
上記ブログで紹介させていただいたとおり、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーにはDRAM のように使えるメモリーモードと AppDirect モードと呼ばれるストレージのように再起動でしてもメモリー上のデータが消えない不揮発性をもった二つのモードがあります。また、デバイスとしての位置づけは DRAM メモリーと SSD ストレージのギャップを埋めるためにあるため、性能や価格も DRAM と SSD の中間に設定されています。
どちらのモードにおいても「 読み込み性能が速い 」、「 メモリーの大容量化が可能 」、「 DRAMと比較してコストパフォーマンスが良い 」といった特性があります。
メモリー性能としては DRAM ほどではありませんが、読み込み性能に関しては DRAM に迫ります。また、2022 年現在インテル® Optane™ パーシステント・メモリーの 1 枚あたりの容量は 128 GB256 GB512 GB で提供されているためDRAM モジュールと比べ大容量なシステムが構成しやすいです。また同じ容量で比べるとインテル® Optane™ パーシステント・メモリーは DRAM よりもバイト単価が安く設定されております。今回ご紹介させていただく SAP HANA は AppDirect モードをサポートしているためインテル® Optane™ パーシステント・メモリーのこれらの特徴を最大に引き出すことが可能だと思います。

―― このインテル® Optane™ パーシステント・メモリーを使った SAP S/4HANA システムでのメリットを教えてください

( SAP 椛田様 )  「 SAP S/4HANA という次世代 ERP システムデータベースとしてインメモリーデータベース「 SAP HANA 」を利用しています。インテル® Optane™ パーシステント・メモリーを SAP HANA のメモリーで活用することによって、高速なシステム性能を維持したまま、インフラストラクチャーコストを最適化することが可能になります。インテル® Optane™ パーシステント・メモリーの「 読み込み性能が速い 」、「 メモリーの大容量化が可能 」、「 DRAM と比較してコストパフォーマンスが良い 」という特徴を SAP HANA で活かすことが可能です。
 まず、SAP HANA のアーキテクチャーを簡単に解説します。インメモリーデータベースの言葉通り、「 全てのデータをメモリー上に保持して高速なデータアクセスを提供する 」ことが SAP HANA の特徴になります。メモリーヒット率が 100% なのでデータ処理が高速なのは当たり前ですが、それだけではなく、検索項目に必要な最低限のデータアクセスや CPU の SIMD ( Single Instruction Multiple Data ) を活用した高速データ処理を実現しています。
SAP HANA の標準機能として大量データを高圧縮してメモリー上に保持するので、既存のデータベースサイズと比較してかなり少ないデータサイズになります。とは言え、全てのデータをメモリー上に展開し、複数年のデータを保持して、さらにビジネスが活発になれば、データ量も増加し、同時に性能要件も厳しくなります。
 大量のメモリーを搭載すれば性能が良いのは当たり前ですが、一方でインフラストラクチャーのコストが上がってしまうので、「性能は維持したままでコストも最適化したい」という難しい問題を解決する必要がありました。その問題を解決する最適解の一つが、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーになります。
 具体的には、SAP HANA のメモリー構造は、更新トランザクションを実行する「ワーク用のメモリー領域」と、高圧縮でテーブルデータを保持する「読み込み専用のメモリ領域」に分けられます。この読み込み専用のメモリ領域は更新トランザクションの応答性能には影響せず、かつ、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーの読み取り性能は DRAM とほぼ変わらないと聞いていますので、検索処理は従来通り、高速な性能を実現します。

SAP S/4HANA の全てのビジネスデータが同時に更新される、という状況は基本的には起こらないので、この読み取り専用のメモリ領域が大きければ大きいほど大量のデータを保持することが可能で、過去の実績データも利用した分析 / レポーティング、そして、機械学習を活用した予測分析も利用しながら、適切なビジネス判断とアクションが可能になります。

また、SAP S/4HANA のデータを長期レンジで分析/レポーティングするための専用のデータウェアハウスパッケージアプリケーション「 SAP BW/4HANA 」でもインテル® Optane™ パーシステント・メモリーのメリットを享受することが可能です。

 

―― このインテル® Optane™ パーシステント・メモリーを利用したサーバーについて、IBM Cloud で提供しているサービスについて教えてください

(IBM 伴さん)IBM Cloud は、クラシック環境( IBM Cloud Bare Metal ServerIBM Cloud for VMware Solutions )、IBM Cloud Virtual Server for VPCそして Power Virtual Server の 3 つのプラットフォームで SAP 認定を取得しております。この 3 つのプラットフォームの内、クラシック環境の Bare Metal Server としてインテル® Optane™ パーシステント・メモリーを提供しております。

IBM Cloud ポータルのカタログから SAP 認定にチェックを入れると下記のようにクラシック環境( Bare Metal Server、VMware Solutions ) と Virtual Server for VPC のメニューが出てきます。ここで Bare Metal Server のメニューをクリックします。

「 サーバー・プロファイルの選択 」の画面で、「 サーバー・タイプ 」の中から ” SAP ” にチェックをつけると SAP 認定 Bare Metal Server の一覧が表示されます。その中で ” サーバー・タイプ+ XX RAM + XTB Persistent Memory ” が、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーです。多くのラインナップを揃えており、最小 384 GB RAM + 1.5 TB Persistent Memory から最大 6 TB RAM + 12 TB Persistent Memory までを提供しています。( 参照: SAP note 2414097 – SAP Applications on IBM Cloud Classic Infrastructure environment )
Bare Metal Sever ですので、データセンターに在庫さえあれば、すぐにご利用いただくことが可能です。また必要な期間のみご利用いただくことが可能ですので、PoC として利用したい、検証環境または DR 環境として利用したい等のご要望に合わせてご利用いただくことができます。

―― この環境を利用した SAP のシステムの海外事例・国内事例はありますか?

(IBM 伴さん)代表的な国内事例があります。流通業のあるお客様が IBM Cloud の国内のリージョンで SAP Business Warehouse powered by SAP HANA システムでご利用になっています。当初、 IBM Cloud の SAP 認定 Bare Metal Server をご利用でした。しかしトランザクション量が増え、メモリーの空き容量が日増しにひっ迫している中、新しいビジネス上の機能を追加する新規の要件が出てきた際に、メモリーサイズとパフォーマンスの必要性に迫られました。その際、インテル® Optane™ パーシステント・メモリーを使えば、新しいビジネス上の機能を追加した場合でもパフォーマンス要件を満たしつつ、かつコストも低減化できる点をお客様にご納得いただき、ご採用いただくことができました。

 

―― 最後に、IBM × Intel × SAP がタッグを組んで提供する SAP S/4HANA システム導入することの価値について教えてください

( インテル 石橋様 )SAP 認定がありインテル® Optane™ パーシステント・メモリー容量選択肢が多いクラウドインスタンスを提供しているのは IBM Cloud だけなのでお客様にとって SAP HANA の最適な構成を選択できるのがメリットだと思っています。

( SAP 椛田様 )  SAP S/4HANA 、そして、SAP HANA は最新のハードウェアテクノロジーを最大限に活用することによって高性能を実現しています。これらのビジネスアプリケーションが高速実行されることで、各企業のビジネスの最大化に貢献できると考えています。

IBM 伴さん )日々最新のハードウェアテクノロジーを提供している IBM Cloud 上で、SAP S/4HANA そして SAP BW/4HANA でお客様の価値、そしてビジネスの最大化を実現すべくインテル® Optane™ パーシステント・メモリーを活用し、SAP 社 × Intel 社 × IBM 社 の 3 社の三位一体でお客様のビジネスをサポートさせていただけるのではないかと考えております。

 

石橋 史康

石橋 史康
インテル株式会社
インテル Optane グループセールス
テクニカル・ソリューション・スペシャリスト

2002 年より日本 IBM にてオープン系システム、HPC クラスター、Supercomputer Blue Gene シリーズなどのインフラの設計・構築・運用を中心に活動。2015 年より日本オラクルにて Oracle Linux/Oracle VM のテクニカル・セールスとして活動。2017 年よりインテル株式会社にてテクニカル・セールスを担当、国内外のお客様に Optane 製品を中心とした最新テクノロジーについて紹介している。

椛田 后一 ( かばた きみかず )
SAP ジャパン株式会社
インダストリー & カスタマーアドバイザリー統括本部
SAP HANA CoE  シニアディレクター

SAP ジャパンにて、インメモリーデータベース SAP HANA を中心としたデータベース、データマネジメント領域の製品を担当。お客様のデータ利活用プロジェクトの構想段階から、導入、運用までお付き合いしている。根っからのデータベース好き。

 

伴 幾子
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
アドバイザリー・クラウドプラットフォーム・テクニカル・スペシャリスト

1999 年日本アイ・ビー・エムの関連会社にて、AIX のインフラの設計・構築・運用をインフラエンジニアとして活動。2008 年外資系コンサルティングファームにて、SAP ベーシスとして活動。2017年より日本アイ・ビー・エムにて、マネージド付き SAP クラウドのテクニカル・セールスを担当。2020 年より SAP 認定IaaS SAP on IBM Cloud のテクニカル・セールスを担当。インフラの知見と SAP ベーシスの経験を活かし、SAP システムのクラウド化の提案を中心に活動。2022 年より RISE with SAP on IBM Cloud の日本の IBM Cloud のフォーカルを担当。
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