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第3回 Z世代にバトンを渡す“システム運用”|公益業界におけるプラットフォームの現状と方向性
2022年04月04日
カテゴリー IBM Consulting | デジタル変革(DX) | 基幹業務システムの刷新 | 業務プロセスの変革
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連載コラム「公益業界におけるプラットフォームの現状と方向性」
第3回 Z世代にバトンを渡す“システム運用”
現在“旧料金システム”を運用しているのは“X世代”が主流となっています。“ベビーブーム世代”が作り上げたシステム(旧料金システム)を“X世代(団塊世代ジュニア)”が引き継いで運用して今に至っているケースが殆どでしょう。そして2030年には“Z世代”にバトン・タッチする事になります。
注意しなければならないのは「“X世代”が引き継いだシステム運用は、そのままのスタイルでは“Z世代”にバトン・タッチ出来ない」という事です。
もちろん現在の運用スタイルがサポートされなくなるという事ではありません。今のままのスタイルで運用を継続する事は技術的には可能です。但し「オペレーターが魅力を感じるシステム運用」を意識するなら、運用変革が必要になります。現在システム運用をリードしている “X世代” の熟練者は、自分を “Z世代” に置き換えて考えてみて下さい。“Z世代”は2000年以降に生まれて、生まれた時からデジタルに囲まれて生活してきた世代であり、人生100年時代のマルチステージを行き来する世代であり、日本の雇用形態自体も“ジョブ型雇用“にシフトしている時代に仕事を求めている世代です。今のシステム運用のスタイルは、その世代にとっての “ジョブ” として魅力的でしょうか?特に、自由化対応新システムを構築しているようなケースにおいては、新旧2種類のシステム運用に直面する事になります。この2種類を可能な限り共通化する事が運用変革のアプローチ(下図)です。
運用スタイルの目指す方向性は「全システムの運用共通化」だと思います。システム個別の運用が無くなれば、運用者は覚えた手順をすべてのシステムに適用する事が可能となりますから、無駄に多くのスキルを身に付ける必要はなくなります。
現実問題としては、システム固有のスキルをゼロにする事は困難だと思われます。そうであるならば、システム固有のスキルはオペレーターの(技術者としての)価値になるスキルに限定する事を目標とすべきです。
例えば、IBM Z(IBMが提供するメインフレーム)の設計・構築・性能評価等のスキルは技術者としての知識の拡大でもあり、他のプラットフォームの運用にも役に立つものですから、有用なスキルと言えるでしょう。
一方、特別な画面を操作するスキル(画面の使用方法に関するスキル)は、特定の環境でしか利用できないのであれば、有用な価値のあるスキルとは言えません。
例えば、メインフレームで稼働しているジョブの結果を確認する為に「TSO」にLOGONして「SDSF」を操作するというような運用を行う場合には「TSO」「SDSF」の画面操作のスキルも要求されますが、そのようなスキルが2030年にシステム運用を行う “Z世代” にとって価値のあるスキルだと言えるでしょうか?上述の例だけでなく、多くのシステム運用の局面で流用性の低いスキルが求められるケースがあります。このような魅力の無いシステム運用を脱却する為に、システム運用の改革におけるUI(UX)の刷新は重要です。技術的には、上述のような陳腐化した画面を使わなくて良いようなソリューションが提供されています。
日本のお客さま、特に歴史のある公益業界のお客さまの現場においては、“X世代”が慣れ親しんだ画面を使い続けることで、運用変革が進んでいないケースが殆どです。2030年に残るシステムが存在するのであれば、そのシステムの運用は、“Z世代”にとって魅力的なUI(UX)であるべきです。“X世代”が慣れている画面を“Z世代”に押し付けてはいけません。
運用の画面を例に挙げて説明しましたが、単に従来の運用画面がWebになったというだけでは、UI刷新の域を超えません。現在は様々なシステムの稼働状況をREST APIを経由して入手出来る機能(下図)が提供されていますから、メインフレームと分散系システムを意識する事なく、シームレスにシステム運用を実施する事も可能です。運用共通化の為の機能は今後も継続的に拡張される予定です。
システム運用だけでなく、アプリケーション保守においても同様の事が言えます。アプリケーション開発者が身に付けるスキルは言語や方法論であり、「ISPF」の使い方ではありません。エディター等は全プラットフォームで共通化されるべきです。下図は現在のアプリケーション開発のイメージです。
メインフレーム・アプリケーション開発は特殊な環境だというイメージがありますが、開発環境はEclipseベースの環境で、Java開発等と共通化されています。COBOLという言語が特殊だという意見もありますが、多くの場合エディターやデバッグ環境とセットで特別視されているケースが殆どです。多くの開発者にとっての難関は開発環境の理解と習得であり、言語は大きなハードルとは成りません。
次回は “旧料金システム” のモダナイゼーションについて整理したいと思います。
加藤 礼基
日本アイ・ビー・エム株式会社
IBMコンサルティング事業本部
公共・通信メディア公益デリバリー
プラットフォーム・コンサルティング 部長
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