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Pla-chain(プラ・チェーン)・ラウンドテーブルレポート

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7月11日午後、東京三井化学本社にて資源循環のためのコンソーシアム「Pla-chain(プラ・チェーン)」会員の第3回ラウンドテーブルが開催されました。

今回Pla-chain事務局より、会場での取材許可と、当日使用された資料と開催後のアンケート結果を共有いただいたので、その取り組みと参加者の声をご紹介いたします。

 

この日のラウンドテーブルの主要アジェンダは約90分間のグループ討議。だがその前に、情報共有を目的とした2つの短い講演が行われた。

1つ目の「石塚化学産業におけるトレーサビリティを付与した再生材の販売実証」では、石塚化学産業の石塚勝一代表取締役によるビデオメッセージに続き、ブロックチェーン技術を活用し、プラスチック・リサイクル素材トレーサビリティを担保する「RePLAYER®ブロックチェーンプラットフォーム」の取り組みが紹介された。

業務シナリオに基づく実証実験の結果紹介では、回収から出荷、その後の入荷から商品化までの全行程において、管理コードが変化しても途切れることなくトレーサビリティを収集・証明し、静脈物流においても問題なくトレーサビリティ確保が実現できたという実験結果が報告された。

その後のRePLAYER®ブロックチェーンプラットフォームのデモでは、リサイクルの由来となった元材の回収日時や、環境貢献係数としてc-LCA(carbon Life Cycle Analysis: カーボンライフサイクル分析)情報が一目で確認できることが実機デモを通じて示された。

そして最後に、5月に東京ビッグサイトで開催された「2023 NEW環境展」での石塚化学産業の展示の模様と、その際に集まった業界関係者からのコメントなどが共有された。

 

2つ目の野村総合研究所の橋本俊樹氏による講演「再生材の品質に関わる欧州の認証制度とトレーサビリティ」では、現状プラスチック資源循環において世界をリードしている欧州における動向が解説された。

詳細は割愛するが、多岐にわたる指令・規格や認証制度の中でも、特に欧州認定協力機構(EA: European Cooperation for Accreditation)が昨年承認した「Recycled Plastics Traceability Certification」と、マスバランス方式(原料の投入量に応じて、生産する製品の一部にその特性を割り当てる手法)で製造されたバイオマス原料や再生原料などの製品を、サプライチェーン上で管理・担保する認証制度「ISCC PLUS認証」に対する注目度が高いことが強調された。

また、欧州からも資源循環管理システムが新たに登場してきているものの、使い勝手や作業量において関係各所の負荷が大きいことが認識されており、それが世界共通の問題であることも指摘された。


 

ここからは、15名ほどのオンライン参加者を含め約50名の参加者が4グループに分かれて討議を行い、最後にその内容を発表する時間となった。

グループごとのテーマは、第1回アンケート結果、及び第2回ラウンドテーブルでの討議内容を踏まえて、以下に設定された。

  • 再生材の品質基準の構築
  • 安定供給網および回収網の構築
  • 資源循環型社会を推進するインセンティブ制度
  • トレーサビリティシステムによる管理対象物質の管理

 

なお、グループ討議に先立ち、現在Pla-chainが考える重要なスタンスが改めて確認された。それは「できるところからやっていく」こと。

Pla-chain内で協力してできることはすぐに始める。足りないピースがあれば、仲間の輪を広げる努力をする。そうやって、コンソーシアムのメンバー同士が業界の垣根を越えて共創し、まずは小規模であってもアクションを起こして実証実験から社会実装を目指そうというものだ。

 

ここからは、各グループ討議の中で印象に残った発言や視点、そして開催後のアンケートに寄せられたコメントを、いくつか取り上げていく。

 

再生材の品質基準の構築

  • 品質保証については、国も巻き込んだルール作りが必要ではないだろうか。どのような施策が取れるか詰めていく必要があるだろう。
  • 再生材の品質は元材の品質次第という状態。身元の不確かなものの混入をどう防いでいくか。
  • いずれ異物除去の手間を大幅に削除するイノベーションが生まれるとは思うが、それまでどのようにつないでいくか。

 

安定供給網および回収網の構築

  • 供給側と需要側、それぞれ現状でできることとできないことをしっかり洗い出し、うまくすり合わせていく必要がある。
  • 回収後の再生プロセスにおいては「洗浄水」「廃水」「薬品処理水」などが大量に出る。リサイクルのウォーターフットプリントにも気をつけなければならない。
  • 参加者内でも産廃業者に対する理解が古いままで、アップデートされていないのではないか。

 

資源循環型社会を推進するインセンティブ制度

  • 実施例のあるもの、あるいはアイデアをお持ちの方を中心に、次回はもう少し具体的なやり方に踏み込みたい。
  • 資源循環のために回収資源が長距離輸送されるのでは別の環境負荷につながる。リサイクルの「エリア分け」あるいは「地産地消」も視野に入れていくべきだろう。
  • パートナーシップの形成を含め、広域認定などに対しても積極的にトライしていきたい

 

トレーサビリティシステムによる管理対象物質の管理

  • 「今できること」が重要なのは間違いないが、同時に、足元ではなく中長期的な課題解決を見据えた討議もスタートさせたい。
  • 外国、特にアジアからのプラ製品が大量に入ってきている現状への対応が不可欠。共通トレーサビリティシステムを日本から「輸出」する必要もあるのではないか。
  • トレーサビリティのデータシステム化に至る道筋にまだ不明瞭な点が残っているのではないか。

 

取材を通じて最も印象に残ったのは、メンバーがそろって「できるところからやっていく」を念頭に置き、変化をスタートする当事者として参加していることで、Pla-chainの強みと、素材資源循環型社会が実現する未来への期待を強く感じました。

今後、どのような取り組みがここから生まれてくるのか。Pla-chainに引き続き注目していきます。

 

Pla-chain入会申込フォーム

https://lp-eq.mitsuichemicals.com/LP=31

 

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TEXT 八木橋パチ

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