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IoT戦略を成功させる(失敗させる)データ管理とは

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「データは21世紀の石油である」という言葉が当然のこととして使われるようになった今、ビジネスにおけるデータの重要性に異議を唱える人はもはやいないでしょう。一方で、IoTビジネス成功への道のり(IoTジャーニー)においてもっとも取り扱いが難しいのも、やはりデータです。

当記事は、IoTジャーニーについて下記の疑問をお持ちの方におすすめです。

  • どれだけの量のデータをエッジ側で取得するのか?
  • どれだけの量のデータをクラウド側に送るのか?
  • 取得したデータで何をするのか?
  • どれくらいの期間データを保持するのか?
  • 不要になったとき、データをアーカイブする必要があるか?

 

当記事では、IoTジャーニーを成功へと導くためのデータ管理についてご紹介します。ぜひ最後までお読みください。(IoTジャーニー全体の流れについては、こちらのブログ記事『IoTデータから最大の価値を引き出すために – IoTジャーニー4つのステップ』をご参照ください。)

 

■ IoT本番展開への鍵はデータ管理

多くの企業は、IoTの全面展開を前にPoC(Proof of Concept、ピーオーシー、ポックとも)やパイロットをはじめ、さまざまな調査やテストを行います。

PoCは低コスト、低リスクでIoT戦略を磨き上げていくのに適した方法ですが、一方で成功裏にテストを終えていたにも関わらず、本番環境での展開時に予想外の問題にぶつかってしまう企業も少なくはありません。

デバイス増加には問題なく対応できても、そこから発生するデータの急増には対処しきれず、ストレージの問題が発生するケースが多いのです。

 

デバイスから上がってくるデータすべてをそのまま残すのは、賢明な方法ではありません。ストレージコストはうなぎ登りになりますし、そもそもデータがもたらす価値やその意味を見出し、証明する必要があります。

「問題の解消」「オペレーション効率の向上」「機器メンテナンスの合理化」「無駄の削減」 — データからパターンや傾向を見出し、適用可能なエリアを確定させていくことで、こうした結果につなげることができます。そのために必要なのは、データ管理の方法を理解することです。

 

■ データ活用と管理

ビルの電力費用の削減に、IoTデータをどう活かせるかを考えてみましょう。まず頭に浮かぶのは、ビルにデバイスを取り付け、計測することかもしれません。

例えば、ビルの照明はどのようにエネルギー消費しているのか — 計測すべきデータは何でしょうか? 気圧や高度、温度や湿度など、なんでもかんでもデータとして集めれば良いというものではありません。電力コストに影響を与える要素が何かを検討し、理解する必要があります。

 

部屋ごとの照明のオン/オフの状況はどうでしょうか。使用されていない部屋での点灯や、外光が十分に取り入れられている部屋での照明の使用状況はどうでしょうか。

データ管理とは、利用可能な全データから、実際に意味を持ついくつかの判定基準へと絞り込むプロセスのことです。そしてIoTプラットフォームは、このプロセスを実行するためのパラメーター設定を支援し、必要なデータを保管するためのものでなければなりません。

 

■ データストレージ: 目的と保存期間

ビルの照明の例のように、ある特定の問題を解決しようとするときに重要なことは、異なるデータ・セットに相関関係があるかどうかを見極めることです。

例えば、照明を付けても自然光の明るさとほとんど変化がないとしたら? 部屋に人がいないのに照明を付けているとしたら? 照明のオン/オフを制御するためにはIoTデバイスからのリアルタイムデータが必要ですし、部屋が自然光だけで十分かどうかを知るのにもリアルタイムデータが必要です。

このように複数のデータを用いて、その発生状態が示す意味を関係性から見出していく必要があります。

そしてこうしたリアルタイム性に価値があるデータは、高速アクセスしやすいように短期保存用のストレージに保管するべきでしょう。

 

次に、6ケ月前に導入した照明の自動タイマーが、エネルギーコストの削減に役立っているかを考えてみます。

日照時間と電力コストに関係性はありそうでしょうか。ビルの繁忙期と閑散期、そして混雑エリアとの関連はどうでしょうか? — こうしたパターンを見つけるためには、数カ月おきに履歴データにアクセスする必要があります。ただし、これらのデータは、毎日や毎週のようにアクセスするものではありません。保存先は長期保存用のストレージで十分ですし、そうすれば短期保存用の高速ストレージを使用するよりも低くコストを抑えられるでしょう。

 

■ 高度な分析とIoTプラットフォームの選び方

ここまでに書いたような方法で、リアルタイムデータと履歴データの両データを用いた高度な分析が実践できれば、ビルの全体的な状況を分析することができるでしょう。

さらに一歩進めば、問題の発生を予測し、プロアクティブな対応を実施することもできます。

 

自社におけるIoTの具体的な活用方法(ユースケース)を検討中なら、データ戦略も合わせて検討することが重要です。同時に相応しいIoTプラットフォームの検討も忘れないでください。IoTジャーニーの成功に欠かせない要素です。

そしてデータストレージに関しては、多層アプローチを可能とするプラットフォームを見つけてください。コスト最適化と投資効果の向上に大きな価値をもたらします。

 

なお、産業用IoT(IIoT)プラットフォームの選び方については、最近のForrester社のレポートを解説した記事『ForresterがIBMをIIoTプラットフォームのリーダーと評価』も併せてお読みになることをおすすめします。

 

 

問い合わせ情報

お問い合わせやご相談は、Congitive Applications事業 にご連絡ください。

 

関連ソリューション: IBM Watson IoT Platform

 

関連記事: IoTデータから最大の価値を引き出すために – IoTジャーニー4つのステップ

関連記事: 本番志向!Watson IoT を活用してPoC貧乏からの脱出

 


当記事は、How data management will make (or break) your IoT strategyを抄訳し、日本向けにリライトしたものです。

 

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