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デジタルツインとは

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デジタルツインのクイック・ガイド、デジタルツインの概要、組織にとってのデジタルツインの重要性について説明します。

接続された世界に適したマシンを設計する際、従来のオペレーション・マネージャーやエンジニアのツールボックスは、ずいぶんと中身がないように見えることがあります。資産とシステムが複雑になるにつれて、それらに適した開発、管理、保守の方法も進化する必要があります。私たちに必要なのは、デジタル・ディスラプションによって促進されるソフトウェア主導型製品の新しい現実に対応できるツールです。デジタルツインの話に入りましょう。デジタルツインは物理資産の重要な部分を「鏡に映すことで生まれた」技術進歩です。デジタルツインを活用すると、物理資産を使って現時点やかなり先の未来について、起きていることや起こりそうなことを垣間見ることができます。


基本的なことから始める:デジタルツインとは

覚えやすい定義が必要であれば、次を試してみましょう。

「デジタルツインはライフサイクル全体にわたるオブジェクトまたはシステムの仮想表現であり、リアルタイム・データを使って更新され、シミュレーション、機械学習、および推論を使用して意思決定を支援します」

簡単に言うと、物理的なモノをそのまま写したもの(または対になるものの片方)にあたる非常に複雑な仮想モデルを作成するということです。この「モノ」に該当するのは、車、建物、橋、ジェット・エンジンなどです。物理資産上の接続されたセンサーで仮想モデルにマップできるデータを収集します。デジタルツインを細かく見れば誰もが、現実世界における物理的なモノの状態について重要な情報を確認できるようになりました。


デジタルツインで現在を理解し、将来を予測する

つまり、デジタルツインは、エンジニアやオペレーターが製品について現在の状態だけでなく、将来の状態も理解できるようになる重要なツールです。接続されたセンサーからのデータを他の情報源と組み合わせて分析することで、これらを予測できます。

さらに詳しい情報を入手する準備ができましたか? 「IBMの概要:デジタルツインとは」をご覧ください。

この情報を使って、組織はより多くのことを短期間で学習できます。また、製品のイノベーション、複雑なライフサイクル、および価値の創出を取り巻く古い境界を崩すこともできます。

デジタルツインにより、メーカーやエンジニアは次のような多くのことを実現できます。

  • 実際のユーザーが使用している製品のリアルタイムでの視覚化
  • デジタル・スレッドの構築、異種システムの接続、追跡可能性の向上
  • 予測分析による前提条件の詳細化
  • 遠方の機器のトラブルシューティング
  • システムズ・オブ・システムズ内の複雑さと連携の管理

これらのいくつかを詳しく見ていきましょう。


デジタルツインのユース・ケース:エンジニアの視点

作動中のデジタルツインの例を見てみましょう。デジタルツインの主なユーザーはエンジニアですので、彼らの視点を活用しましょう。

エンジニアの仕事は、自動車、ジェット・エンジン、トンネル、家庭用品などの製品をライフサイクル全体を考慮して設計、テストすることです。つまり、設計中の製品が目的に合致していること、摩耗や裂けに耐性があること、および使用される環境に適切に対応することを確認する必要があります。


現実世界のシナリオをコンピューター上で作成

例えば、車のブレーキ・システムをテストするエンジニアは、さまざまな現実世界のシナリオでシステムがどう動作するかを把握するためにコンピューター・シミュレーションを実行するでしょう。この方法には、テスト用に物理的な車を複数台作るよりも、大幅に期間の短縮化とコストの低減を図れるというメリットがあります。しかし、欠点もいくつかあります。

まず、上記のようなコンピューター・シミュレーションは、現在の現実世界の出来事や環境に限定されます。将来のシナリオや状況の変化に対して、車がどう反応するかを予測することはできません。次に、現代のブレーキ・システムは単なる機構や電気装置の域を超え、数百万行のコードで構成されてもいます。

こうなると、デジタルツインとIoTが必要になります。デジタルツインは接続されたセンサーからのデータを使用して、ライフサイクルの最初から最後まで資産のストーリーを伝えます。つまり、テストから現実世界での使用に至るまでです。IoTデータを使用すると、資産の正常性とパフォーマンスについて、例えば温度や湿度といった具体的な指標を測定できます。このデータを仮想モデルまたはデジタルツインに取り込むことで、エンジニアは車両自体からのリアルタイムのフィードバックを通じて、車の性能を完全に把握することができます。エンジニアリングPOVについて詳しくは、お客様事例「Ushering in Industry 4.0 with an agile approach to systems engineering」を参照してください。


デジタルツインを使用するということは、R&Dの効果が高まり、効率性が向上し、製品の生産終了に対してさらに総合的なアプローチが取れるようになるということです。


デジタルツインの価値:製品性能の把握

デジタルツインを導入した企業は、これまでとは違う視点から製品の性能を知ることができます。デジタルツインは潜在的な故障を特定し、遠く離れた場所からトラブルシューティングを行い、最終的に顧客満足度を高めるのに役立ちます。また製品の差別化、製品の品質、アドオン・サービスにも役立ちます。

顧客が購入後に製品をどう使用しているかがわかれば、豊富な洞察を得ることができます。つまりデータを使用して、(保証されている場合は)不要な製品、機能、またはコンポーネントを安全に除去して時間とコストを節約することができるのです。


遠方からの可視化に対するかつてない制御

デジタルツインのメリットは他にもあります。主なメリットの1つは、デジタルツインであれば、エンジニアやオペレーターは遠くにある物理資産でも詳細で複雑なビューを確認できることです。ツイン(対になるもの)を使うことで、エンジニアと資産が同じ場所にいる必要はありません。同じ国にいる必要もありません。

たとえば、シアトルにいる機械工学者がデジタルツインを使って、オヘア空港の格納庫に入っているジェット・エンジンを診断しているところを想像してみてください。あるいは、複数のエンジニアが海峡トンネルの全長をフランス側のカレーから視覚化しているところを想像してみましょう。視覚、音、振動、高度など十数種類のモダリティーに関わる何千ものセンサーが備わっているということは、エンジニアは世界のほぼどこからでも物理的なモノの「ツイン(対)を作る」ことができるということです。それは、視覚化に対してかつてない明瞭さと制御が可能になったことを意味します。


IBMのデジタルツインへの取り組み

IBMはデジタルツイン・テクノロジーを使って多くの作業を行ってきました。そしてその活用はさまざまな業界で増え続け、拡張現実(AR)が資産管理に組み込まれています。IBM Maximoラボ・サービスでは、従業員向けに多くのビジュアルおよび音声(自然言語処理)機能を「有効」にしています。こうすることで新しいディメンションの資産を確認し、重要なデータにすぐにアクセスすることができます。そして、バイザーに音声機能やビデオ機能の付いたARヘルメットを使って、これらの洞察を他のユーザーにフィードバックできます。これにより、働き方の次の進化形が「対話」になります。

また、デジタルツインはシステムズ・エンジニアリングのライフサイクルにおいて重要な役割も担っています。IBM Engineering Systems Designの重要な機能でもあり、チームはMBSEを使用して製品の設計と開発を簡素化できます。


コグニティブ・デジタルツインの未来

デジタルツインはかねてより、変化する顧客の好み、カスタマイズ、体験を把握してデジタル・ディスラプションの一歩先を行く組織の役に立っています。この情報があれば、企業は品質を改善して、コンポーネントからコードまでさまざまな製品をさらに迅速に提供することができます。しかし、デジタルツインの将来性はさらに広がる可能性があります。

コグニティブ・コンピューティングを使用するとデジタルツインの能力が高まり、科学的専門分野が増えます。自然言語処理(NLP)、機械学習、オブジェクト/画像認識、音響分析、シグナル処理などのテクノロジーと技法は、従来のエンジニアリング・スキルを強化する機能のほんの一部にすぎません。例えば、コグニティブを使用してデジタルツインのテストを改善すると、より頻繁に実行すべき製品テストを判別できます。また廃止すべきものを決定するのにも役立ちます。コグニティブ・デジタルツインを活用すれば、人間の直感を超越して将来のマシンを設計し改良することができます。「汎用型」モデルは無用になります。代わりに、マシンは個別にカスタマイズされます。というのも、コグニティブ・デジタルツインでは何を構築しているかだけでなく、誰のために構築しているかが考慮されるためです。

視聴する:IBM client Schaeffler embraces digital transformation

 


この投稿は2020年12月4日に米国IBM Blogに掲載された記事 (英語) を抄訳し、一部編集したものです。

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