業務の自動化

保険業界におけるIntelligent Workflowとは

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岡野 秀昭

岡野 秀昭
グローバル・ビジネス・サービス事業本部
保険ビジネスコンサルティング
アソシエイト・パートナー


保険、銀行、カード業界を中心に、マーケティング・営業・事務・コンタクトセンター領域における20年程のコンサルティング経験を有する。
AIやルールエンジン、ワークフロー、データの有効活用など、先進ソリューションを活用した数多くの業務変革プロジェクトをご支援。
MBA (米ペース大)

 

1. デジタル時代の競争が激化

2018年経済産業省が発表した「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」に端を発したDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が日本全体の産業界での大きな流れとなっており、言うまでもなく保険業界においても新しいデジタル技術を活用した、新たなサービス・ビジネスモデルを創出する取り組みが急務となっています。
また、同時にムーブメントとなっている働き方改革や、新型コロナ感染症対策として在宅勤務を主とした態勢構築の必要性もこのデジタル化の取り組みに拍車をかけており、本格的な「デジタル時代」を舞台とした激しい競争が幕を開けたといえます。

 

2. デジタル変革の成熟度レベル

保険業界においても、お客さまや代理店向けサービス向上や事務効率の向上などの取り組みを通じて、すでに一定レベルまでテクノロジーを活用して自動化や効率化など、ビジネス・業務におけるデジタル化を進めて来られています。
ただ、これまでのデジタル化の取り組みのほとんどは、以下のような阻害要因によって、業務領域ごとにサイロ化された業務プロセスを対象として、局所的に自動化や効率化を図るものにとどまっています。 (図中の”レベル3”)

経営面・人材面・技術面での課題 (出典:経産省DXレポート)

1. 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができず、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化
2. 経営者がDXを望んでも、データ活用のために既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中(=経営改革そのもの)、現場サイドの抵抗も大きい

図1. デジタル変革の成熟度レベル
図1. デジタル変革の成熟度レベル

 

成熟度レベル デジタル変革の状況 特徴
レベル 5 先進デジタル企業 ✔プラットフォームを活用し、エコシステムを形成
✔カスタマー・エクスペリエンスを激変させている
レベル 4 部門横断的に実践 ✔既存システムの制約から解放されフルにデジタル化
✔他社に先んじたDXの効果を享受している
レベル 3 部門レベルで実践 ✔既存システムの制約の中でDXを本格的に推進
✔DXの効果を実感している
レベル 2 小規模な実験 ✔一部デジタル化とマニュアル処理との組み合わせでDXを実験
✔DXの効果について疑心暗鬼

 

3. 先進デジタル企業へ向けた”インテリジェントワークフロー”

この本格的な「デジタル時代」の競争に生き残り、”先進デジタル企業”を目指すべく、DXの成熟度レベルをシフトさせていく必要があります。弊社では、この成熟度レベルを向上させてくれる重要な概念の一つとして、“インテリジェントワークフロー”を提唱しています。

これは従来ではIT化やデジタル化といった施策が業務プロセスや組織に個別に適用されていたものを、事業環境の変化にも柔軟に対応できる自動化を見据えた形で、AI等の先進テクノロジーやデータを活用しビジネス・プロセス全体をシームレスに連携し、企業全体に活用できるプラットフォームに移行し、全社業務のさらなる発展を実現するといった新たな概念です。グローバルでは、この概念に基づく変革により成果を上げる企業もすでに出てきているといいます。

言い換えれば、全社的な規模でこれまでの自動化レベルをレベルアップさせることで、真の先進デジタル企業への変革が実現されるということです。

これまでの自動化レベル

  • 静的: データは分断、システム硬直化
  • 部分的: サイロ化した組織の範囲内
  • 機械的: ルールを所与とした小改善

これからの自動化レベル

  • 動的: ルールやプロセスが、新たな洞察に応じて、スピーディーに自動的に変更
  • 横断的: 外部を含めEnd to Endで最適なオペレーション、人の介在が極小化され、業務継続性が向上
  • 人間的: 社内外のデータを活用した知見に基づく、人間的な判断も含めたワークフロー

図2. これからの自動化(インテリジェントワークフロー導入後)
図2. これからの自動化 (インテリジェントワークフロー導入後)

 

インテリジェントワークフローの概念を適用することで、「データ」 + 「スキル」 + 「テクノロジー」 の組み合わせが上手く機能し、全社レベルでの業務変革の実現を可能にしていきます。
インテリジェントワークフローの特徴

  • ワークフローは、End to Endで人手による作業と自動化された作業をつなぐ
  • インテリジェントな業務プロセスは、継続的に学習され高度化
  • ワークフロー・プラットフォームは、オープンでエコシステムやネットワークと連携可能

図3.インテリジェントワークフロー(イメージ)
図3. インテリジェントワークフロー (イメージ)

 

4. 推奨アプローチ: まずは”クイックアセスメント”からスタートしてみませんか

上述した通り、現行業務はパターン増大により複雑化する一方で、テクノロジーの進化によりデジタル化・自動化・判断支援の範囲も広がっています。どの保険会社においても、現行業務ではこれらの要素技術の組み合わせ・プラットフォーム化により、業務領域ごとに業務最適化の実現されているレベル感が異なっています。
それぞれの業務領域において、デジタル化による変革の実現効果を最大化するための施策検討のために、まず最初に現状業務のクイックアセスメントから始めてみることをお勧めします。

図4.検討アプローチ
図4. 検討アプローチ

 

図5.保険における改善余地が大きい業務領域(一般的想定)
図5. 保険における改善余地が大きい業務領域 (一般的想定)

 

5. 具体的な進め方 (例): デジタルによる業務プロセス全体の可視化

インテリジェントワークフローの適用を実現していくためには、まず現状業務プロセスの可視化が欠かせません。
ただ、これまでの主要プロセスに特化したアナログ的で主観的な分析に頼っていては行き詰まりを迎えるため、全社レベルでの取り組みにおいては、デジタル技術を活用してより効率的かつ的確に可視化を行うことが不可欠となってきます。

  • (ヒアリングやマニュアル等での可視化の問題点) 膨大な時間が掛かる上、主観的なものになるため、主要プロセスに偏った可視化となってしまう
  • (デジタル活用による可視化の利点) より短時間でデータに基づく客観的かつ定量的な判断が可能となり的確な対策が可能となる

図6.デジタルによる業務プロセス全体の可視化
図6. デジタルによる業務プロセス全体の可視化

 

この際、先進デジタル技術を活用し、業務プロセスを定量的に全網羅的に可視化することが出来る、「プロセスマイニング」という手法を適用することが最適なアプローチであると言えます。
特に、システム上親和性がある領域に対しては、既存システムに手を入れることなく業務プロセスのイベントログの取得が可能であり、高度な分析を容易にできます。 (※適用可否は既存システム環境に依存するため事前調査は必要)

例えば、ビジネスルールから逸脱したプロセスや、不必要に時間のかかっているプロセス(=ボトルネック)など、全て定量的にデジタルによる可視化が可能となります。データにもとづきプロセスを可視化し、本来の実行能力を測定可能で、問題のあるプロセスを検知し、本来の実行能力を発揮させるための施策の検討を強力にサポートしてくれます。

図7. プロセスマイニングツールの活用イメージ
図7. プロセスマイニングツールの活用イメージ

 

(1) プロセス活動をITシステムでサポート
(2) システムやデータベースからの関連するローデータを特定
(3) 異なるソースからの生データは変換され、イベントログにマージ(文脈に応じて適宜データを追加)
(4) プロセスマイニングツール実行によりプロセスが可視化され、システム上のボトルネックを特定

このようにして、先進デジタル企業への変革を実現するためには、最初の現状把握の段階からデジタルを活用した最適な施策の立案、実行を推進していくことが成功の近道であると考えます。

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