顧客体験(CX)とは

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顧客体験(CX)とは

顧客体験(CX:カスタマー・エクスペリエンス)とは、オンライン上か店舗であるかを問わず、顧客が企業やブランドとのやり取りで生じる顧客の認識を総合的に表したものです。

顧客体験には、顧客体験管理(CXM)が伴います。CXMとは、企業とやり取りするすべての人に理想的な体験を提供することによりビジネス成果を向上させるための戦略、技術、実践を指します。

顧客体験によって感情的な絆が生まれて、より多くの顧客を獲得し、顧客ロイヤルティーを深め、顧客生涯価値を高めることで企業が競争上の優位性を築くことができます。

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顧客体験で競争上の優位性を生み出す方法

顧客体験は、企業とその価値提案を競合他社と差別化する要因となり、その基盤となる人的要素には、企業が顧客に対して示す理解度、サービス、扱いに対する満足度などが含まれます。こうした差別化の最終目標は、顧客と感情的な絆を形成することで、顧客の生涯価値(獲得した各顧客から企業が実現する最終的な利益)を最大化することです。顧客との関係強化は利益増大につながり、株主利益は平均3倍になる可能性があります(McKinsey社調査)1

優れた顧客体験は、顧客ロイヤルティーを高め、顧客維持率を向上させ、顧客への売上を拡大することで、顧客生涯価値(CLV)の最大化につながる可能性があります。さらにブランドの評判と収益向上の促進にも寄与します。既存顧客による口コミやオンライン上のブランドへの支持から得られるこれらの結果は、新規顧客の獲得につながる可能性もあります。

今日、総合的な顧客体験の影響力を過小評価するわけにはいきません。業界分析企業のGartner社2によると、顧客体験を競争基準とする企業は3分の2を占めています。Standard & Poor’s社の(2021年)の調査によると、IT幹部らはデジタル・トランスフォーメーションの最も重要な推進力として顧客体験の向上が挙げたことが判明しています3。さらに、Forrester社によると、顧客体験リーダーの約65%が、2024年に顧客体イニシアチブの予算の増加を予想しています4

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顧客体験戦略の要素

顧客体験戦略の要素として以下の4つが挙げられます。

  • 顧客中心
  • カスタマー・ジャーニー・マップの策定
  • 顧客ペルソナ
  • 顧客関係管理(CRM)

顧客中心

企業が顧客体験に焦点を当てるための最初の重要なステップは、顧客の認識と感情を両者の関係の中心に据えることです。これには、企業のブランド・プロミスを顧客のニーズと感情の理解に基づいて策定することが含まれます。見込み客や既存顧客のそれぞれが、関係の段階ごとまたは接触機会ごとに求めていることに対する理解をできるだけ深めることで、このステップを実現できます。

多くの企業にとって、これは大きな変革です。役員や経営幹部から従業員に至るまで、多くの場合でサポートが求められます。これまで顧客中心のキャリアを積んで来なかった経営者やマネージャー、あるいはこれまで取引メトリクスや財務KPIを特に重視することで成功を収めてきた経営者やマネージャーにとっては、難しい調整となる可能性があります。またこれには、前述したように、モバイル・アプリケーションから支払い処理、高度な分析、人工知能(AI)に至るまで、新しいテクノロジーへの多額の投資が必要になります。

配達遅延、カスタマー・サポートやコンタクト・センターとの食い違い、その他の問題などの不快な顧客体験は、根拠がなくても、故意に他の顧客と比べて不当な扱いを受けたと感じさせてしまう可能性があります。

対照的にポジティブな顧客体験は、会社が自分のためだけに存在するなどの好印象を残します。さらに重要なのは、寛大な感情さえ抱く可能性があります。PwC社によると、ブランドでのポジティブな体験を優れた広告よりも重要と評価する消費者の割合は65%にのぼります。同じ調査では、顧客は素晴らしい体験のために最大16%を上乗せして支払うことも判明しています5

カスタマー・ジャーニー・マップの策定

購入者のペルソナは、顧客体験管理プログラムの出発点です。カスタマー・ジャーニーのマップ策定の次のステップには、カスタマー・ジャーニー全体にわたるやり取りを定義し、最適化する作業が含まれます。企業は、顧客のライフサイクル全体を通じて各ペルソナが持つタッチポイントを観察する必要があります。これは、顧客が企業について知ることから始まり、最初の購入決定を下すプロセスを経て、製品またはサービスの継続的な使用に入り、再度購入するか二度と購入しないかの決定が含まれます。

カスタマー・ジャーニー・マップを策定する背景には、潜在顧客や既存顧客が各接点で目的を持って行動しているという前提があります。その目的とは、問題の解決や、質問への回答、選択肢の比較、To Doリストの消化など具体的な行動を指します。したがって、できるだけ早く簡単に満足のいく形で目的を達成できるようお客様を支援することで、優良顧客となるジャーニーを予定どおりに進行できます。企業は、このプロセスを通じて最も重要な顧客を導くために、カスタマー・サクセス・チームを結成することがよくあります。

カスタマー・ジャーニー・マッピングは、顧客体験戦略を策定するための実用的な知見を提供することを目的としています。最初の目標は、それぞれのペルソナの各顧客タッチポイントに対しエンドツーエンドのマップを完成させることではなく、企業の業績が明らかに最も劣っているタッチポイント、または最大の利点を提供するペルソナに焦点を当てることかもしれません。

顧客ペルソナ

顧客ペルソナとは、バイヤー・ペルソナとも呼ばれ、企業の顧客または潜在顧客の重要なセグメントを代表する架空または半架空の人物のことです。例えば、スキーやスノーボードの用具を製造する会社では、初心者スキーヤー、中級者スノーボーダー、上級者スキーヤー、あるいはスキーやスノーボードを始める子供の親を表すペルソナを作成できるでしょう。

ペルソナは、さまざまなソースのデータに基づいて作成されます。例えば購買行動、Web分析、アンケート、評価とレビュー、ソーシャル・メディアへの投稿、カスタマー・サービスやサポート・チームとのやり取りなどの要素はすべて、ペルソナに影響する可能性を秘めています。顧客のライフサイクルのさまざまな段階で、各顧客セグメントの人々の要望やニーズを企業が視覚化できるようにすることを目的としてペルソナは作られます。

顧客関係管理(CRM)

顧客関係管理(CRM)は、顧客のライフサイクル全体を通じて顧客とのやり取りから得られたデータを収集、追跡、分析し、それに基づいて行動する実務であり、この実務を簡素化および自動化するために使用されるソフトウェア・システムのカテゴリーをも指します。

最初の顧客体験管理システムはインターネットが登場する前から存在していました。これは営業チームとカスタマー・サービス・チームが、顧客との直接的なやり取り(対面または電話、Eメール、ダイレクト・メール)を最適化し、パーソナライズするために使用されました。今日、CRMシステムは、組織の顧客体験戦略のすべての要素にとって不可欠なデータ・ソースとして機能します。多くのCRMシステムには、顧客データに基づいてエクスペリエンスを作成および提供するための高度なテクノロジーも含まれています。

顧客体験を向上させる方法

顧客体験管理の「最も難しい仕事」には、企業のあらゆる側面を、顧客のニーズだけでなく、感情的な欲求を予測し、それを満たすことに重点を置くように方向転換すること、それが真に優れた顧客体験を提供することに含まれます。顧客の心をつかむ、ということは、ブランド・ロイヤルティーを生み出し、顧客離れを減らし、生涯価値を最大化することです。

そのための優れた顧客体験戦略のいくつかの重要な要素と、それらを推進するテクノロジーは以下の通りです。

  • 部門間のコラボレーション
  • 顧客のセルフサービス
  • 従業員エクスペリエンス
  • オムニチャネル・アプローチ
  • パーソナライズされた体験

部門間のコラボレーション

顧客体験管理イニシアチブを成功させるには、組織のサイロの打破と新しい方法での情報共有、そして何よりも顧客体験と顧客満足度に対する責任の共有が不可欠です。顧客体験に力を入れる企業は、多くの場合、営業、マーケティング、カスタマー・サポートの複数の分野で、顧客データを統一して、顧客に関する信頼できる唯一の情報源を確立しています。また多くの企業では、顧客体験に影響を与える問題を部門間で協力させる権限を持つ経営幹部(通常は顧客体験オフィサー(CXO))を任命しています。

顧客のセルフサービス

担当者と連絡を取ることができる電話番号を提供したりフォームに記入したりすることは、顧客が情報を得る唯一の方法ではなくなりました。顧客は必要な情報、回答、サポートが自力で見つかりやすくなることを望んでいます。

よくある質問(FAQ)や、ナレッジベース、カスタマー・フォーラムも当然のことながら、顧客は次のサービスが用意されていることに対しても期待を寄せています。

  • カスタマー・サービスやサポート・チームとチャットまたはSMSメッセージで連絡が取れるサービス
  • オンラインで(電話ではなく)予約を取るサービス
  • 例えば、パンフレット、製品マニュアル、詳細な仕様、ハウツー動画、その他の関連情報からのデータが反映されている製品ページなど、文脈を伴う情報
  • 回答を素早く見つけられるように最適化された検索機能
  • 顧客セルフサービスに関しては、自動化が必ずしも良いとは限らない分野の一つ

顧客体験チームは、最新鋭の技術よりも、顧客の必要や要望を優先するように注意する必要があります。

従業員エクスペリエンス

ほとんどの組織は、顧客体験を向上させるには、従業員体験を強化する並行プラグラムが必要であるという結論に至っています。具体的には、従業員が顧客とやり取りしたりサービスを提供したりするのに使用するツールのユーザー体験と性能を強化するのです。IDC社の最近の調査によると、従業員体験の向上が「顧客体験の向上、顧客満足度の向上、組織の収益の増加」につながることに回答者の85%が同意しています6。同じ調査では、顧客満足度が従業員の生産性を評価するための重要なメトリクスであるという回答が58%を占めています。したがって、顧客の期待に応えるために可能な限り上質なツールとエクスペリエンスを従業員に与えることが不可欠と言えます。

オムニチャネル・アプローチ

顧客体験戦略には、次のような顧客エンゲージメントとコミュニケーションのすべてのチャネルを含める必要があります。

  • 印刷物、動画、音声による広告やPRなどの従来のメディア・メッセージ
  • ソーシャル・メディア・メッセージング。これは、会社のソーシャル・メディア・チャネルだけでなく、サードパーティーのブログやWebサイト上の顧客のコメントやレビューも含みます
  • 企業のWebサイト、モバイル・アプリケーション、チャットボット、eコマース体験などのデジタル・エクスペリエンス
  • 小売店での対面での連絡や、カスタマー・サポートやサービス・チームによる電話連絡を含む直接連絡

潜在顧客と既存顧客が1つのチャネルから別のチャネルにシームレスに移動できるように、メッセージングとエクスペリエンスはチャネル間で可能な限り一貫性を保つ必要があります。また、顧客が選択したチャネルでできるだけ多くの目標を達成可能にします。例えば、電話ではなくソーシャル・メディアを通じてカスタマー・サポートを受けることを選択した場合や、eコマース・サイトではなくアプリを使って購入することを選択した場合、顧客は選択したチャネルでそうした目標を実行できる必要があります。顧客体験は、顧客がどこにいても満足できるものでなければなりません。

パーソナライズされた体験

パーソナライズされた体験とは、顧客の特定の要望、要件、目的、好み、さらには性格に合わせて調整された対応、サービス、または製品のことです。パーソナライズされた体験には次のようなものがあります。

  • 顧客の名前で挨拶するWebサイト、アプリ、またはチャットボット
  • 提供済みのデータを繰り返し求めないカスタマー・サポート
  • 購入履歴(または動画の視聴履歴)に基づくおすすめ
  • 製品レビューのリクエストや追加の製品情報を提供する購入後のeメールまたはテキスト・メッセージ

パーソナライズされた顧客インタラクションの多くには、高度な分析、自動化、生成AIなどの強力なテクノロジーが関係しています。実際、IBM Institute for Business Valueの調査では、経営幹部の85%が、今後2年以内に生成AIが顧客との直接的なやり取に使われるようになると予想していることが判明しています。

一方で、よりシンプルなテクノロジーを必要とする企業もあります。Webサイトに訪れた顧客に、要望を尋ねるだけの「スプラッシュ・ページ」はその一例です。さらに、テクノロジーをまったく必要としない場合もあります。例えば、コカ・コーラのボトルに名前のラベルを貼るだけで、パーソナライズされた飲み物を友人に贈ることができます。

パーソナライゼーションは、その実行方法にかかわらず、優れた顧客体験を実現するための最重要事項と見なされるようになってきています。McKinsey社の最近の調査では、顧客の71%がパーソナライゼーションを期待しており、パーソナライゼーションが得られないと不満を感じる率は76%にのぼっています7

顧客体験を測定する方法

顧客体験を測定するには、定期的または特別なプロジェクトとしてではなく、日常の業務プロセスの一環として収集し、処理する必要があります。企業は通常、顧客のフィードバックを収集し、リアルタイムで満足度を測定するためのテクノロジーを導入しています。一般的なメトリクスには、次のようなものがあります。

  • 顧客満足度(CSAT)スコア
  • ネット・プロモーター・スコア(NPS)
  • カスタマー・エフォート・スコア(CES)

顧客満足度(CSAT)スコア

CSAT は、タッチポイント体験後に提供されるアンケートで満足(4)または非常に満足(5)と回答した回答者の割合です。

ネット・プロモーター・スコア(NPS)

コンサルタント会社Bain and Companyによって開発されたNPSは、タッチポイントを経験したユーザーに、その会社を他の人に勧める可能性を尋ねます。低スコアの数(6以下)が「推奨者」の数(9と10)から差し引かれ、最終得点はパーセンテージに変換されます。このパーセンテージの範囲は、-100(すべて6以下)から+100(すべて9と10)までとなります。通常、プラスのスコアを獲得することが最初の目標ですが、最も業績の高い企業はNPSスコア80を達成します。

カスタマー・エフォート・スコア(CES)

タッチした後、顧客は目標を達成するまでの難易度を尋ねられ、1(簡単)から5または7(難しい)の範囲で難易度を評価します。真の顧客ロイヤルティーを予測する上で、CESは、満足度を採点する調査よりも優れた指標として見なされることが増えています。

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脚注

1 What is CX?, McKinsey, August 17, 2022 
2 and 3 Customer Experience Focus Can Improve Equity And Credit Performance , S&P Global, September 16, 2021
4 Planning Guide 2024: Customer Experience , Forrester
5 Ingredients for Great Experiences, PWC
6 Employee Experience and Customer Experience , IDC, September 17, 2021
What is personalization? McKinsey, May 30, 2023