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2021年: テクニカル・リーダーが押さえておくべきクラウド・トレンド・トップ4

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この投稿は、2021年2月24日に、米国 IBM Cloud Blog に掲載されたブログ(英語)の抄訳です。

テクノロジー・トレンドがどのように分散クラウド・アーキテクチャーに向かっていくのかを見ていきましょう

2020年、パンデミックに対応するためのワークフォースのオンライン化に伴い、最高技術責任者(CTO)は、可用性、バックアップ、およびディザスター・リカバリー機能の強化にITの優先順位を振り向けました。一般的に、パンデミックの期間はデジタル・トランスフォーメーション(DX)のスピードが速くなったといえますが、これをうまく活用して、パンデミック後のビジネス目標を達成するためにチームを適切に再配置しようとしていることが、2021年の主要なトレンドに反映されています。

こうしたトレンドは、最近のCTOラウンド・テーブル(*)からもわかります。

 

トレンド 1: AIの最適化

Affectiva様はテクノロジーを人間らしくすることを使命とする人工知能(AI)企業です。Affectiva様は、人間の知覚における複雑な信号をより正確に追跡するために製品を革新しています。大量のデータで学習した機械学習アルゴリズムと、大規模な反復作業に必要なクラウド・コンピューティングのリソースは、Affectiva様が顧客に提供しているものにとって不可欠なものです。Affectiva様のビジネスは、顧客や消費者が何を求めているかという微妙な部分を理解することに依存しているからです。

大規模なIT企業にとって、アプリケーションのユーザー・エクスペリエンスの革新、オペレーションの改善と最適化(AIOps)、あらゆる種類のデータからの洞察を得るためにAIクラウド・サービスを利用することが、クラウド関連のツール、プラクティス、サービスを活用することと並行して目標とされ続けています。

過去5年間、AI関連の目標はそれぞれ翌年度の優先課題として進められてきましたが、他のクラウド導入の課題がその達成を先取りしているといえます。2021年の初期に注目を集めているのは、米国政府やフォーチュン500社のネットワークへのセキュリティー侵害で、すでに数十年で最大規模となっていますが、その規模はまだ明らかになっていません。

昨今、ほとんどの企業が異なる目的で複数のクラウド・プロバイダーを利用しています。このため、AIを活用した業務いおける大きな課題は、機械学習の作業が行われる可能性のあるデータの分散された場所にあるといえるでしょう。

データ・サイエンティストがデータに簡単にアクセスできるようにすることを実現するために、企業は、すべてのデータ・ソースが異なるクラウドに向かうようなレイクを構築すべきなのでしょうか。そのような取り組み位向けて、データの出入りにかかる部分だけでもコストがかかる可能性があります。また、仮にコストが許容範囲内であったとしても、急速に進化するビジネスが、どのようにしてレイクを構築するのに適した長期的なサイトを選択するのでしょうか?

この問題を解決するための手段として、必要なデータ準備、機械学習、その他の人工知能ツールを、データが存在する場所、つまり複数の場所にある可能性が高い場所に直接持ち込むことが考えられます。

例えば、IBM Cloud Pak® for Data as a Service を使用すると、データ・サイエンス・チームは、IBM Cloud Pak ソフトウェアを維持する負担がなく、IBM Cloud 内の単一の統合されたビューから関連するデータ操作を監視および管理できるという大きなメリットを享受しながら、データ処理に必要なすべてのものをその場で手に入れることができます。IBM Cloud Pak for Data as a Service は、サービスとして提供する分散クラウドである IBM Cloud Satelliteと統合されています。

Affectiva様の場合、IBMクラウドのベアメタル・コンピューティング・リソースと高度なビジョン・アルゴリズムを使用して、人間の知覚分析サービスを立ち上げました。そのために、データをパブリック・クラウドに持ち込みました。これにより、Affectiva様は、顧客基盤が拡大しても、分散クラウド・コンピューティングの利用によって、顧客がデータを持っている場所であればどこでも必要なモデル・トレーニングと機械学習を行うことができるようになり、効率化を図ることができます。

 

Trend 2: クラウド・セキュリティーの基盤の進化

RBC(Royal Bank of Canada)様では、銀行の開発・運用チームがパブリック・クラウド・サービスを容易に利用できるようにする必要がありました。RBC様のような金融機関がそれを実現する唯一の方法は、ビジネスに不可欠なワークロードが稼働しているオンプレミス環境にクラウド・サービスを導入するか、または信頼できるセキュリティーと規制遵守の安全性が確保されたパブリック・クラウド・プラットフォームにワークロードを移行することです。

ここでは、これらのニーズを満たすIBM Cloud関連製品を2つご紹介します。IBM Cloud for Financial Servicesは、世界中の金融規制へのコンプライアンスを検証し、自動化するためのコントロールのフレームワークを備えたパブリック・クラウド・プラットフォームを正確に提供し、最高水準の暗号化基準(FIPS 140-2)でデータ・セキュリティーを提供します。

もう一つは、IBM Cloud Satelliteです。これは、オンプレミスでも、クラウドでも、エッジ・コンピューティングでも、必要な場所にクラウド・サービスを提供する分散クラウド・アーキテクチャーです。金融サービスの顧客体験を革新するために必要とするクラウド・サービスは、IBM Cloud Satelliteを利用して、最も重要なワークロードを保管しておきたいオンプレミス環境に直接配信されます。サテライトでは、RBC様は、IBM Cloud Satelliteのロケーションとして定義されたあらゆる環境でアクセスとアイデンティティー管理を使用します。IBMは、どのような場所でも、クラウド・サービスを最新の状態に保ち、利用可能性を高めるために必要なソフトウェアのバージョンとパッチを管理します。

 

Trend 3: エッジにおける5Gの低レイテンシーにより開かれたチャンス

Verizon様は、5G接続により、サービス・プロバイダーはネットワーク上で使用されるアプリケーションが、拡大した帯域幅の約束にふさわしい、一貫して優れた体験を提供できるようにしなければなりませんでした。これは、顧客とデータを交換するアプリケーション・サーバーをネットワークのエッジにできるだけ近づけておくことを意味します。しかし、エッジは何百万ものアクセス・ポイントで構成されており、すべてのアクセス・ポイントは定期的なソフトウェアの更新を必要とします。

これもまた、分散クラウドの得意分野です。IBM Cloud Satelliteは、デプロイメントの集中監視と管理機能を備えており、通信事業者が技術スタッフを大幅に増員することなく、エッジ・サイトで一貫してソフトウェアをデプロイし、更新する方法を提供します。そして、これがVerizon様とIBMクラウドがVerizon様の5Gサービスのロールアウトで提携している理由です。(参考:Verizon and IBM Cloud are partnering in the roll-out of Verizon’s 5G services (英文))

 

Trend 4: マルチクラウド環境の複雑さを分散クラウドで簡単に

IBM Cloud Satelliteの技術リーダーであるJason McGee は、IBM Cloud Satellite を、利用者が必要な場所でクラウド・サービスを開始できるクラウド・ソリューションとして紹介しています。ユーザーは自分ですべてをメンテナンスしなくても、クラウドのメリットのメリットを受けられます(柔軟性、クラウド環境の拡張性、API主導のサービス)。同時に、ユーザーは場所に依存しない柔軟性により、必要な場所でクラウドを利用することができます。

IBM Cloud Satelliteは、企業に大きなメリットを提供しています。Affectiva様のビジネスが拡大していく中で、分散クラウドがもたらす将来的なメリットについてはすでに述べました。Verizonで様は、IBM Cloud Satelliteを利用してクラウドに接続したまま、無数のポイントからエッジ・デバイスに近い場所にアプリケーションを配信し、どの場所にいても5Gネットワークの低遅延のメリットを最大限に生かすことができます。5Gを利用して世界中の5,000店舗にソフトウェアを展開する方法を考えなければならないのではなく、実際にアプリケーションを使いたい場所でクラウド・モデルを利用することができます。お客様は、IBM Cloud Satelliteの分散クラウド・アーキテクチャーにより、より良い体験ができるようになるでしょう。

RBC様にとってのメリットの一つは、RBC様が顧客にサービスを提供する際に、可用性、コスト、規模、敏捷性の面で大きな改善を受けていることを示す実際のデータを見られることです。同時に、他の多くの金融サービス事業と同様に、あらゆるサイバー・リスクに大変な注意を払っています。長年にわたり、RBC様は自社の構内にいくつかの深刻な防御策を構築してきましたが、現在では、より多くの柔軟性、可用性、コスト要因をオンプレミスで実現しています。さらに、IBMがIBM Cloud Satelliteのパワーと分散クラウド・スタックを構内に持ち込むことで、金融サービス分野全体で起こっている規制コンプライアンスの側面を組み合わせることができれば、すばらしいことだと付け加えています。

 

今回ご紹介したすべてのトレンドは、AIOpsの実現、環境全体のクラウド・セキュリティーの拡張、産業界がアプリケーションを一度に開発してエッジで多くの顧客に提供できるようにするなど、さまざまなユースケースの要件に対応するための分散クラウド・アーキテクチャーの汎用性を実証するために集約されます。

 

分散クラウドについてより詳しくは

なお、分散クラウドやIBM Cloud Satelliteについてさらに詳しいことは、こちらもご参照いただけますと幸いです。

  • IBM 分散クラウドお役立ち情報: こちら
  • IBM 分散クラウド Cloud Satellite 公式サイト: こちら

分散クラウドやIBM Cloud Satelliteに対するご質問やご相談がございましたら、ぜひ公式サイト(こちら)からお寄せください。


注(*)以下のパネリストによる最近のCTOラウンド・テーブル

  • Andrew Trossman: Vice President of Innovation at the Royal Bank of Canada (RBC)
  • Paritosh Bajpay: Vice President of Business Products from Verizon
  • Rana el Kaliouby: co-founder and CEO of Affectiva
  • Jason McGee: IBM Fellow and Vice President and CTO of the IBM Cloud Platform

翻訳:IBM Cloud Blog Japan 編集部

*このブログは、2021/2/24に発行された“2021 Planning: Top 4 Cloud Trends Tech Leaders Need to Know”(英語)の抄訳です。

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