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[事例] 鉄道プロジェクトビクトリア | 複雑なプロジェクトを「時刻表」通り「安全運行」で

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■ 州都メルボルンの最も複雑な鉄道プロジェクトを「時刻表」通りに「安全運行」で

鉄道プロジェクトビクトリア(Rail Projects Victoria: RPV)は、オーストラリア ビクトリア州政府機関です。

そのRPVが現在中心となって進めているのが、オーストラリアの歴史上最も複雑な取り組みの1つとも言われている、メルボルンで建設中の大都市鉄道インフラプロジェクト「メトロトンネル計画」です。

この大型プロジェクトを成功裡に導くためにRPVが導入したのが、IBM Engineering Requirements Management DOORS Nextソフトウェアでした。この導入により、RPVはプロジェクト管理にセキュアな環境と大いなる柔軟性と利便性を、そして内外からなる複数のステークホルダーとの多彩なコラボレーションを手にしました。

 

■ 取り組みの概要と結果

背景と課題

メトロトンネル計画は、110億豪ドルもの予算がつけられている超大規模プロジェクトであり、メルボルンの鉄道網を一変させるものです。何千もの要件を管理し、予算内で予定期間内に完了させることは、とてつもなく大きなチャレンジです。

変革とソリューション

RPVは、SaaSベースの要件管理ソフトウェアを使用することにより、要件の定義、追跡、分析、および管理をリアルタイムで支援する、堅牢なセキュリティと豊富なコラボレーション機能を持つ単一ソリューションを選択しました。

手にした結果

  • 豊富なコラボレーション機能を持つセキュアなクラウド環境 | すべての関係者がリアルタイムで選択的にデータを共有、および更新することが可能に
  • 計画変更に起因するリスクと遅延の軽減 | 要件間の相互依存性を特定・明確化
  • 再現性と一貫性を実現 | 取り組みの標準化による高い将来性

 

■ スプレッドシートの出る幕なし | チャレンジの背景

9キロメートルもの長さに及ぶ2つの鉄道トンネル、5つの地下鉄駅、地下と路面のインターチェンジ、55キロメートルの運行距離をカバーする信号コントロール…。

メトロトンネル計画は、数百人もの土木技師、電気技師、考古学者と、7,000人近くの建設作業者とのコミュニケーションとコラボレーションを必要とする取り組みです。また、さまざまな作業パッケージを用いる建設請負業者のコンソーシアム間の調整や、多数の利害関係者や公益事業者とのタイムリーなコミュニケーションも欠かせません。

RPVは、これらすべてを時間どおりにそして予算内で、成功裡に完成させなければならないのです。それも、480万人もの人口がいる大都市において。

 

計画は110億豪ドルの予算が割り当てられた超大規模インフラ開発プログラムであり、メルボルンの鉄道ネットワークを世界レベルのものへと変換させるものです。

スコープが非常に大きいため、プロジェクトは「初期工事」「トンネルと駅」「鉄道システム」「鉄道インフラ」の主要4パッケージに分割されており、2015年初頭のプロジェクト開始以来、すでに数千人の労働者と土木技師数百万時間を費やしています。

 

これだけの規模となると、スプレッドシートでの要件管理などあり得ません。

この超巨大で複雑性に溢れたプロジェクトの全責任を負い、すべての人・ものごとを管理監督して予定通りに進めなければならないRPVは、先進的で高度なソリューションを必要としていました。

 

システムアーキテクト兼複数任務責任者が語る「必要不可欠なもの」

RPVのシステムアーキテクトであり、複数任務の責任者であるマーク・チャドウィック氏はこのように説明しています。

「メトロトンネル計画には、プロジェクト全体をまとめて統合ビューを形成・提供できるツールが必要でした。これだけの複雑性を持ちコラボレーションを必要とするプロジェクトには、建設請負業者が必要な情報をセキュアに更新でき、それらが必要な関係者にセキュアに共有される機能が不可欠です。

それらをスムーズに実行できる適切なツールがなければ、請負業者は個別の方法を取り始めてしまうでしょう。そうなれば、情報の整理や統合に多くの無駄な時間が割かれるようになり、実作業と管理の間に数週間レベルのギャップが生まれてしまいます」

 

RPVは、コラボレーションの強化とデータのサイロ化を回避することに加え、多くの関係者や請負業者間の要件とその依存関係をしっかりと掴み、そのリスクを最小限にしなければなりませんでした。チャドウィック氏はその複雑性についてこう説明しています。

「複数のパッケージが関与すると、パッケージ間の相互依存関係が生まれてしまいます。そんな状況下で請負業者が変更提案をしてきた場合、あるいは実際に変更が発生した場合、その変更がプロジェクト全体にどのような影響を与えるかを把握するのは非常に困難なのです。」

 

■ 変革ストーリー | クラウド上のコラボレーション環境

メトロトンネル計画の複雑な要件を管理するために、RPVはエンジニアリング要件管理ソリューション「Engineering Requirements Management DOORS Next」を選出しました。IBMクラウドプラットフォームを通じて提供されるSaaSベースのソフトウェアです。

 

その選出経緯をチャドウィック氏はこう語っています。

「IBMほど知られているブランドはありません。私はIBMのサポート力と専門知識にまったく懸念はありませんでした。そして採用後、それが正しかったことが証明されました。

私たちは当初から、RPVと請負業者の両者が要件管理に共通のアプローチを取ることの重要性を理解していました。ですから、業者には契約段階からDOORS Nextの使用が必須であることに同意しサインを貰っていました。」

 

DOORS Nextはクラウドベースのエンジニアリング要件管理ツールであり、RPVと請負業者、そしてすべてのステークホルダーは、プロジェクト全体のデータへの接続を保ちつつ、同一ツール上に独自領域を持ちデータのプライバシーと知的財産を保護しながら作業を実施できます。

RPVは、セキュアな環境下に置かれたコラボレーティブな単一ツールを用いて、プロジェクトのライフサイクル全体にわたって要件をリアルタイムに管理することができます。

さらに、ソフトウェアのレポート作成・公開機能を使用することで、RPVは必要なデータを含む完成度の高いドキュメントを成果物として入手しています。

 

チャドウィック氏はDOORS Nextのプロジェクト管理機能の利点をこう語っています。

「DOORS Nextは、作業パッケージ間で情報を共有する仕組みを有しています。ただし各パッケージには独自のプライベートエリアもあり、その内部で独自の情報を管理することも可能です。」

 

最優先事項は安全性 | セキュアな制御とハザード分析

RPVは、変更管理にはIBM Engineering Workflow Management Contributor SaaS(以前のIBM Track and Plan on Cloud)を使用しています。

要件の変更が必要な場合、RPVは変更要求を送信して独自のワークフローを実行させます。

要件仕様については、RPVはIBM Engineering Lifecycle Optimization(以前のIBM Rational Publishing Engine)という文書生成ソリューションを使用しています。

 

RPVの最優先事項は安全性です。プロジェクトは国内および国際的な安全基準に準拠する必要があり、各請負業者は担当している開発ライフサイクルに応じて確実に基準に準拠する必要があります。

複数の請負業者や異種システムからそれぞれの最新情報を収集する代わりに、DOORS Nextソリューション環境に情報を集約し、依存関係を管理しました。

 

これにより、リスクおよびインターフェイスに関する信頼できる唯一の情報をリアルタイムに入手することができます。プロジェクトにおける担当と責任に応じて作業パッケージを安全に管理し、必要な情報のみを共有できるのです。

 

「実行すべきハザード分析が多数あります。ハザードを軽減するには、複数の関係者による管理が必要になる可能性があります。

DOORS Nextにはコラボレーション環境が備わっており、危険なイベントを捕捉して危険分析をおこない、関係する請負業者に情報提供し危険を除外させます。」チャドウィック氏はそう説明しました。

 

■ DOORS Nextとクラウドサービスが描き出したRPVの未来

プロジェクトのライフサイクル全体で可視性とトレーサビリティを向上させるIBMの技術は、予期しない変更がもたらすリスク、遅延、不要な支出の可能性を事前に提供し、その軽減を支援します。

 

チャドウィック氏は、クラウドサービスの利用なくして、計画を進めることはできないと言っています。

「DOORS Nextとクラウドサービスを使用することの根幹的な利点は、すべてのユーザーがプロジェクト全体でリアルタイムに情報を共有できるという、コラボレーション環境にあります。

次に重要なのが変更管理です。データベースにすべての関係と契約要件が含まれているので、請負業者が変更を提案または開始した場合、要件間の相互依存性を容易に理解できるのです。

その変更がプロジェクトにどのように影響するか、そしてそれがRPVとクライアントにとって何を意味するのかが明確なのです。」

 

RPVは、メトロトンネル計画を通じて得た知識と技術的能力を適用して、今後に向け標準化された要件管理フレームワークを開発しています。

そしてメルボルン空港鉄道リンクや州内鉄道の改修などの別プロジェクトにもフレームワークを適用することで、RPVと請負業者たちはプロジェクトのライフサイクル全体を通じてより高い効率を手にしようとしています。

 

チャドウィック氏は最後にこう言いました。

「私たちは従来のフレームワークの定義を進化させ、未来のためにさらにより良いものを生み出そうとしています。しかし現段階においても、すでにこれまでよりはるかに優れたプロジェクト基盤を手にすることができました。」

 

「鉄道プロジェクトビクトリア」について

2015年にメルボルンメトロ鉄道局として設立された後、2018年に「鉄道プロジェクトビクトリア」へと名称を変更した政府機関。オースラリアビクトリア州内にて多数の主要インフラストラクチャプログラムを計画・管理。メルボルンに本社を構える。

当記事は、事例「Rail Projects Victoria」を日本のお客様向けにリライトしたものです。

 

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