Client Engineering

下平 旬範「こころが震えたあのとき」 – AI Engineer、Client Engineering事業部

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喜び、驚き、期待…。人は、誰かの心の震えを目にしたとき、自分の心も動くのではないでしょうか? そして仕事とは、人のそうした震えを生みだしたり、震えに応えたりしていくことなのかもしれません。

「あなたのこころが打ち震えたときのこと、教えてください。」
Client Engineering(CE)事業部でAI Engineerとして活動中の下平 旬範さんにお話を伺いました。

下平 旬範(しもだいら ときのり) | 日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 クライアントエンジニアリング事業部 AI Engineer
新卒入社した先端技術の研究支援・ビジネス化を行う通信系Sierにて音響エンジニアとして音響系のハードウェアやソフトウェアの開発・販売を行う。2021年9月日本IBM入社。机上の議論より、まずは作って、触ってみる、ということを大事にして活動中。

僕、こういうインタビューされるみたいな経験これまでにほとんどなくって、ちゃんと答えられるか心配だったんです。それで今朝、watsonx.aiに「どんな質問をされそうか考えて」と聞いて、ちょっと練習してきました。

参考 | watsonx.ai 機能―生成AI

 

にこやかにそう語る下平さんに、「…どうしよう。終わる頃には『そろそろインタビューも生成AIにやってもらった方がいいかもしれないですね』とか言われちゃったら」と、若干のプレッシャーを感じた筆者。動揺を隠しつつ、最初の質問を投げかけてみました。

「最近、震えていますか?」

 

そうですね。はい。たくさん震えてます。良くも悪くも。

僕、あまり心情が顔に出ないって言われることが少なくなくて。「なに考えているか分からない」って。でも、心の中では震えています。

 

——「なに考えているか分からない」って、どんな状況で誰に言われるんですか? ご本人として自覚は?

大学生の頃から、「お前は顔を見ていても、何を考えているのかわからないなぁ」って友人たちに結構よく言われてましたね。自覚は…「そうなのかもしれないな」って思います。

1人っ子だったからか、表情が薄いのかもしれないです。子どもの頃から遊ぶときも1人だったし。そのせいもあるのかもしれませんね。

インタビュー前半はたしかに「表情薄め」だったかも…

 

パチさんは「ゴールボール」っていうパラリンピックの種目にもなっている競技をご存じですか? ボールの位置を音で判断しながら得点を競い合うスポーツです。

前職では、視覚障がい者と健常者がゴールボール観戦を一緒に楽しめるよう、ボールが転がり移動しているかのように聞こえる技術を使った観戦システムのデモ作成などもやっていました。

でも、それ以外にもいろいろやりました。音響系のソリューションを担当する部門に所属していたので、ウェブ会議用のマイクスピーカーの開発が多くて、ハードウェア、ソフトウェア、外観のデザインなど、まるでスタートアップ企業に勤めているかのように、本当になんでも自分たちでやっていました。販売や発送をやることもありましたね。

僕はそういう自由にいろんなことがやれる環境が好きだったので、楽しかったです。

 

昔を思い出しながらゆっくりと語る下平さんの表情は柔らかで、きっと良い思い出がたくさんあるのだろうと想像できた。しかしそれではなぜ、2年前IBMに転職したのだろうか?

 

…そうですね。自分たちでやれる環境はおもしろかったんですけど、でも、もっと主導権を持って仕事がしたいなあって。それに対象が音響という狭い範囲だったところに、ちょっと窮屈さを感じるようになっていました。

もともと学生時代から、製品開発のためのアイデア出しセッションなどで場が白熱していくのとか、そういうのも好きだったんです。ワクワクしながら参加していましたね。あんな風にもっと課題解決範囲の方法に幅が取れるといいし、お客様と一緒に共創しながら製品開発とかできたら、もっとずっと楽しいだろうなと思っていたんです。

それで転職活動をはじめたところ、IBM ガレージという名前と取り組みに出会ったんです。「これはおもしろそうだ」と転職を決めました。

 

その後、ガレージメソッドをさらに発展させお客様との共創を推進するIBM Client Engineeringに所属し、テクノロジー・エンジニアとして活躍していた下平さん。しかし最近、縁あってAI Engineerへとその役割を変更したという。

テクノロジー・エンジニアは、お客様の課題解決にあたりどんな技術をどのように用いるのかには明確な制約はない。その点においては「AIを用いてお客様の課題を解決する」という役割を持つAI Engineerよりも、活動範囲の幅は広そうだが…。そこに迷いはなかったのだろうか?

 

たしかに、技術面だけで言えばそういう側面もあります。でも、お客様との共創においてはテクノロジー・エンジニアは比較的後半でチームに加わることが多く、直接お客さまとやり取りする機会があまり多くなくて。僕が呼ばれる段階では、ある程度何を作るかはっきりしてからということも少なくなかったんです。

でもwatsonx.ai担当のAI Engineerになってからは、生成AIのスペシャリストとして、アイデア出しやニーズ整理などの早い段階からお客さまとの共創活動を始める立場となりました。こちらの方が僕にはあっているのかなぁと感じています。

 

——それでは、前のテクノロジー・エンジニアと今のAI Engineerと、心の震える大きさや震えかたに違いはありますか?

うーん、難しいですね。どっちも同じくらい震えています。震え方もそんなに大きな違いはないかなって思います。

前から変わらないのは、僕は、普通に生活や仕事をしていたら知ったり見聞きしたりできないことに触れることができると、心が震えるんです。いろんな業界の裏側や実情を知ったときなんかですね。

それから技術的なことも大好きなので、そこも震えるポイントです。テクノロジー・エンジニア時代は、製造業のお客様からテスト機器をお借りしていろいろ試して、新しいものを作り出していくことがおもしろくてワクワクしていました。

参考 | 高齢者の転倒という社会課題への3社共創チャレンジ

 

AI Engineerになってからは、最初から最後までお客様との共創に伴走し続ける感じなので、楽しさやこころが震える頻度は増えましたね。「つらさに震える」も増えちゃいましたけど(笑)。

それから、チームになってみんなでワイワイやって、斬新なアイデアが出てきたときも震えます。

…そうやって考えると、CEの一員となってから、ずっとやりたいことができているし、心震えることができているなーって感じますね。

 

——最近ではどんなことで心が震えましたか?

先日、パチさんからRaise the Flag.(レイズザフラッグ: 以下「RtF」)さんのAIを用いた機能の開発のことで相談いただいたじゃないですか。「視覚障がい者の方たちに、生成AIを使ってこういうことはできないかな?」って。

あのとき、まずRtFさんの「視覚障がい者の世界を変える」というビジョンとそれに真摯に取り組み続ける姿勢にめちゃくちゃ心が震えました。それから「もうここまで実現しているのか!」って驚きました。そして、watsonxをはじめとしたAIに対するこんなニーズが社会にあって、それに対して僕も貢献できそうだと思ったらすごくワクワクしました。それですぐその場でアプリを作り始めて、翌日完成したデモを紹介したんです。

あの体験がすごく嬉しかったんで、実は今もこっそり開発を続けているんです。まだ狙っているレベルからは少々遠いですけど。

参考 | ダイバーシティーハッカソン勉強会 with 株式会社Raise the Flag. | PwDA+クロス3

 

とても楽しそうに、そして嬉しそうにアプリのデモを紹介する下平さんの姿と、ここからステキな未来へとつながっていきそうな気配に、筆者もとても嬉しくなりました。

それでは、AI Engineerとなってからは他にどんな震えがあったのか聞いてみます。

 

直近では、とある金融関連のお客様で、AIを用いて行うプロトタイプ制作を進めていて、「これは技術的にうまくはまりそうだ」と嬉しくて震えましたね。

僕はAI Engineerのチームの中でも、特にwatsonx.aiの生成AIを担当しているんです。それで自分ごととしては、これまでは急いでコードを書こうとするとどうしてもミスが増える、慎重に進めると時間がかかってしまうという自分の作業におけるジレンマがあったのですが、watsonx.aiを用いることでその困り事がずばり解消されました。僕的にはドンピシャな技術です。

 

——今後、下平さんは生成AIがどのように発展していくと想像していますか?

今のところ、ビジネスにおける生成AIの実践ケースは、そのほとんどが作業量削減やコストカットに使われています。先ほど話した僕のケースもそうですね。

でも、生成AIの可能性はもっともっと大きなものだと思います。これからは「生成」の名前の通り、自分たちだけでは思いつかなかったビジネスプランを考えたりとか、そういう売上を立てるものや、クリエイティブなものを作り出していくと思うし、僕もそういう取り組みを進めたいなと思っています。そして世界初や日本初の新しい事例を作っていきたいですね。

今、アイデアを出すところからアプリやプログラムを作るところまで、全面的にすべてを手がけるようになり、以前よりも大変さも増えましたけどやりがいもグッと増えたと感じています。

これは望ところだし、やっぱりお客様の心を振るわせたいです。お客様に心震えていただくことが、ビジネスにおいては一番の自分の心が震えることなんじゃないかなと思っているので。

 

この夏まで日本IBMに在職し、担当リーダーとしてお客様との共創活動をリードしていた丸山 杏那(まるやま あんな)氏に、下平さんへの印象とその仕事ぶりに対するメッセージをいただいた。

当時、私は担当していたお客様との「これまでにない共創のカタチ」を実現したいと意気込んでいました。そんな私の活動を知って、「自分もぜひその共創を一緒に実現していきたい」 と仲間に加わってくださったのが下平さんです。

「これまでにない共創のカタチ」を実現するチャレンジは、想像よりもはるかに大変な道のりでしたが、下平さんのエンジニアとしての矜持と圧倒的なスキルで、重要な成功体験を着実に積み上げてくださいました。

その人柄や熱意は多くの仲間に感銘と刺激を与え、いつの間にか共創チームも拡大。「新しいことをやってみたいけど、どう始めたら良いかわからない」と悩める人たちの先導者として、道を切り拓く下平さんに、私自身とてもたくさんのことを学ばせていただきました。
本業を全うするだけでなく、自己実現の機会を自ら求め、成し遂げてしまう下平さんの今後のさらなる飛躍を、心から応援しています!!


 

「僕にとっては、IBMが推奨する『自由な働きかた』も、心震える大きな理由の一つです」と語る下平さん。どんな働きかたをしているのか聞いてみると、想像以上にテクノロジーと大自然がダイナミックに組み合わされていました。

「車内で寝泊まりも仕事もできるように、ワゴン車の後部座席を改造してノートPCと外付けモニターを装着できるようにしたんです。それでこの間、雲海が見たくて、仕事を早めに切り上げて東京の自宅から志賀高原に向かいました。

高原で早起きして雲海を目にしたときは「うわー」って感激しましたね。そしてそのあとは、車のルーフに衛星インターネット『スターリンク』を立てて、ネットにつないで仕事をしました。スターリングですか? 快適ですよ。スピードもかなり早くて家のWi-Fiより速いくらいです。

この冬は雪山で仕事してみたいですね。

こちらは霧ケ峰高原でテレワークをしたときの写真。リモートワーク・モードに変身させた後部座席と、心が洗われるような見事な夕焼け。

 


TEXT 八木橋パチ

 

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